Q.ひとは自分の同人誌が売られたい、という理由でヒーローになれるか答えよ 作:ピコッピコ
──
北条は相澤先生の言葉を思い出しながら、髪留めに触れた。
「そういえばさ、梅雨ちゃんの個性ってどういうのなの?」
「蛙っぽいことなら大体出来るわ。」
「何でも?」
「舌を伸ばしたり……毒液を出したりよ。」
「え、凄いね。じゃあ壁に張り付いたりとか出来たりする?」
「もちろんよ。」
「本当に凄いね…めっちゃカッコイイ。」
「ケロケロ!」
大きな丸い眼。艶とボリュームのあるロングの黒髪。猫背気味の女の子。ケロケロ、と蛙っぽさある口癖も可愛らしい。
北条は、蛙吹 梅雨と仲良くなろうとしていた。
コミュ障の北条は、全身全霊を込めて、この可愛らしい少女に話しかけ、見事話を続けている。
しかも、梅雨ちゃんと呼んでと言われたことで、北条は有頂天だった。単純である。
「行ってくるね。」
「応援してるわ、なぎさちゃん。」
「ありがとう」
北条は教科書通りのフォームで投げた。
球は綺麗な弧を描いて飛んでいき、地に落ちた。
53M
女子としては中々な数字だが、やはり低い。
「北条、お前まだ個性使ってないだろ。」
「すみません。ボールの感じを確認したかったので。」
北条は脊髄反射が如く勢いで返答した。
鋭い目付きで睨まれ、萎縮した内心を隠すのはお手の物。
実際はそんな理由などでは無い。
「…なるほどな。じゃあ、どんだけ時間かかっても良いから次は全力でやれ。」
「わかりました。」
北条は有無を言わせぬ圧力に屈した。
だが、これは北条にとっても悪い話ではない。
北条は落ち着く為に息を着くと、子供の頃から身につけている髪留めに触れた。
古ぼけた赤いリボン。錆びて塗装の剥げた金具。幼い子供が身につけていそうな小さな髪留め。
ボロボロなソレは、垢抜けた印象の北条には不釣り合いな物だ。
北条は髪留めを取ると静かに呟いた。
「………変身。」
突如北条の体が光に包まれる。
魅了されるように美しく、優しく、それでいて強烈な光。
皆は目を奪われ釘付けにされ、短略化された変身シーン(約15秒)の全てに惹き付けられる。
光が収まり、少しずつ北条の姿が現れた。
変身の名残か、北条はクルクルと周り、クリーム色のフワフワなツインテールが風に流され、太陽の光で爛々と黄金に輝く。
長い睫毛が揺れ、瞼が上がる。野に咲く花々を思わせる桃色の瞳が顔を出した。
突然姿が様変わりしたからか、はたまた、それが余りにも美しい少女だったからか。
皆一様に目を見開き、唖然と口を開けた。
中には頬を染め、目の行き場を失ったようにキョロキョロと挙動不審に動揺する者も居る。
──これだよコレ!!最ッッ高
ゾクゾク、と腰から走り抜け、脳が蕩けそうな程の快楽。
皆の瞬きがシャッターの様で、余りの素晴らしさに思わず、胸にせり上げる熱さを吐き出してしまいそうになる。食欲にも似た感動に涎が溢れそうだった。達しないか心配になる。
だが、それを行動に、それを現す程、北条は愚かでは無い。
完璧な
北条はボールを握りしめ、今度は自己流でフォームで投げた。
突如巻き起こるのは旋風にも似た暴風。北条が全力で投げた球は、壊れる1歩手前までの抵抗を受けながらも懸命に風を切っていき
697.8M
その距離、前回の約14倍。
爆豪勝己に比べれば、やや劣る結果だが、いやいやそれでも、とんでもない数字。
北条は変身を解くと、その場を後にした。
「……次は君だよ。」
「ヘッ?!あ、はい、すすすみません!!」
顔を真っ赤にした少年は、オドオドした様子で逃げるように去っていった。
──あ゛ぁ…これなのよ…!
北条は脳髄がかすかな痺れを感じているのがわかった。口を閉じなければ喘いでしまいそうな快楽だ……
もうこいつ退学にしろ