Q.ひとは自分の同人誌が売られたい、という理由でヒーローになれるか答えよ 作:ピコッピコ
Q.北条が届けたリボンの持ち主はだ〜れだ?
個性把握テストが終わり、みんな帰路に着き始めた頃。
北条も例に漏れず、蛙吹梅雨と共に帰路に着いていた。
北条のみが乗る予定の駅前で、北条と蛙吹梅雨……距離を感じるから蛙吹で良いか。
蛙吹は北条を呼び止めた。
なんでも話したいことがあるらしい。
蛙吹は口元に指を当て、少し考え込んでは話そうとする…ということを何度か繰り返した。
少し顔が赤く、それでいて何だかモジモジしているように見えた。
──ま、まさか…こ、告白…か!?
北条はそんな答えに辿り着く。
思春期の男子高校生かよ。
──私の個性での可愛さとか、強さとか、私自身の有り余る魅力とか、そういうのに色々トキメイちゃったんだろうな……ヤダ、私ってば罪深っ……
北条はこれでも動揺していた。
いずれ、クラスメイト等から告白はされるだろうと考えていたが……まさかこんな早々にされるだなんて、思っても見なかったからだ。
まだ告白だと決まってないだろ。
──い、いやいや!でも、こんな、直ぐにはダメだよ。もっと時間経ってからじゃないと!!
北条は、こんな変態ではあるが、同時にとても
お付き合いするなら、相手を良く知ってから。
北条は脳内ピンクの、個性把握テストで善がっていた人間だとは思えない程誠実な人間だった。
「……あ、あのね。私、貴方に──」
「シー」
ついに話を切り出した蛙吹に、北条は自身の口に人差し指をかざす。
話を遮られたからか、北条の突然の行動に戸惑ったからなのか、その両方か。
蛙吹は動きを止めた。そこをすかさず追撃する。
「わかってる。ありがとう。でも…ごめんね……私、梅雨ちゃんと普通の友達で居たいの…ごめんね。」
蛙吹は、ポカン、と口を開いて困惑していた。
表情が出にくいらしい彼女は、何を考えているか細かくは分からない。
「ケロ……わかったわ、なぎさちゃん。」
ただ、その声色は悲しそうであった。
蛙吹梅雨は思い出していた。
入試試験で0ポイントが現れた時、颯爽と立ち向かった少女。
弟妹たちがお小遣いを貯めて、初めてプレゼントしてくれた、大切なリボンを届けてくれた、
北条 なぎさという、新しい学校で出来た、新しい友達。
蛙吹梅雨は、少しだけでも良いからお礼を言いたかった。
あのままでは、リボンはダメになっていただろうから。
ありがとう、と言いたかった。
だが、それは当の本人に拒まれた。
──…嫌がられちゃったわね。
蛙吹梅雨は、北条なぎさの表情を思い出す。
とても悲痛で、泣きそうな表情だった。
──もしかしたら……彼女は、私が離れてしまうと思ったのかしら。
そんな積もりではなかったのに、離れてしまう、と。友達では無くなってしまう、とそう思ったのだろうか。
そうなら……昔にも、同じようなことがあったのだろうか。
人は助けてくれた恩人のことを、何故か対等には見れない事がある。尊敬して、敬ってしまう。
彼女はきっと、対等な友達が欲しかったのだろうか。
私と同じように、友達が欲しかったのかもしれない。だから、恩人だと、ヒーローだと言われたくなかった。
友達だと肩を並べて笑いたかったから。
──あんな風に立ち向かえる人だもの、もしかしたら、そんな風に立ち向かって……一人ぼっちになってしまったのかもしれないわね。
手を振って改札を通った彼女を思い出した。
私は、彼女の友達で居たい。
対等に、肩を並べて戦えるような、そんなヒーローに成りたい。
そして、叶うなら伝えたい。
──ありがとう、なぎさちゃん。
……と。
A.蛙吹梅雨
キャラ崩壊していたら言ってください、泣きます。