あまりに立とうとしないクララにハイジがブチギレるお話 作:hasegawa
「そうなんですよ~お嬢様~! それでね? その時の院長先生ったら!」
「うふふ♪ まぁベッキーったら♪」
ここはイギリスにある寄宿学校“ミンチン女子学園“の屋根裏部屋。
セーラ・クルーとベッキーは、二人で楽しくおしゃべりに興じておりました。
「もうメガネは粉砕するわ、半月板は損傷するわで大変だったんですからっ!
ぜひセーラお嬢様にもお見せしたかったですっ」
「まぁ可笑しい♪ ベッキーって、とってもお話が上手なのね♪」
セーラは大富豪の娘として、元々はこのミンチン学園に特別寄宿生として入学して来ました。
持前の優しさと聡明さからすぐに皆の人気者となり、学園代表生徒を務める程の凄い女の子だったのです。
しかしセーラの11歳のお誕生会の最中、突然父が熱病で亡くなってしまった事、そして家が破産してしまった事を知らされます。
それにより学園を辞めさせられ、また身寄りを無くしてしまったセーラは、ここミンチン学園でベッキーと同じ“使用人“として働く事となったのでした。
「うふふ♪ これからベッキーの事、お笑い核弾頭って呼んでいいかしら?」
「いいですともお嬢様! 私の持ちネタは2兆個ありますからねっ。
いつでもお聞かせしますよっ」
仕事は辛いし、悲しい事も沢山あるけれど、それでもセーラは日々笑顔を忘れません。
友達であり、良き理解者でもあるベッキーと共に、この過酷な境遇にも決して挫ける事無く、懸命に過ごしておりました。
「 セーラ! セーラ・クルーはいるっ!? 」
「あっ……ラビニアお嬢様っ……」
その時、〈バンッ!〉と部屋の扉が開き、この学園の生徒の一人である“ラビニア・ハーバート“が現れます。
彼女はプライドが高く、とても傲慢な所のある娘で、いつもセーラに対してイジワルな事をするのです。
「こんな所にいたのねセーラ! さぁ! 私と一緒にいらっしゃい!」
「えっ、ラビニアお嬢様……? 私に何かご用でしょうか……?」
「いいから来なさいっ! ほら、さっさとするっ! ほらっ!!」
「……お嬢様っ!? お嬢様ぁぁぁーーっ!!」
突然の出来事にベッキーはうろたえ、必死に追いすがろうとします。
しかしセーラは無理やり手を引かれ、どこかへ連れ去られてしまいました。
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「さぁセーラ!! ここに“熱々のおでん“を用意したわっ!
これを60秒以内に完食なさいっ!」
「えっ!?」
今セーラの目の前には、マグマのように煮えたぎっているお鍋がありました。
机の上にはお箸と小鉢が用意されているのも見えます。お好みでからしなんかを入れても良いかもです。
「さぁセーラ・クルー!
きっと貴方がお腹を空かせていると思って用意したのよっ!
昆布で出汁を取り、素材を厳選し、2時間コトコト煮込んだのよっ!
まさか貴方、私が作った物が食べられないって言うんじゃないでしょうねっ!?」
ラビニアは高圧的にセーラに詰め寄ります。
アルハラなんて目じゃない程の仕打ちが、セーラを待ち受けていたのです。
「そしてそこっ! その机の横には、熱湯の入ったお風呂を準備させたわっ!
この熱湯風呂に入りながら、熱々のおでんを食べるのよセーラ!!」
「そんなっ!? そんな事っ…!」
ラビニアの言う通り、この部屋には何故か熱湯風呂までが用意されていました。今もモクモクと湯気が立ち登り、とても人の入れる温度では無いようです。
これに入れるのはきっと、一部の
「それに加えて、これっ! ここの床一面に、
バラエティー番組でお馴染み“足つぼシート“を敷き詰めておいたわっ!
足つぼの激痛に耐えながら歩き、
そしてドボンと熱湯風呂に入って熱々おでんを食べるのよセーラ!!」
「そ……!? そんな事私!?」
「もちろん歩く前には、このバットに額をつけて、10回周ってもらうわ!
平衡感覚を失った状態で足つぼマットの上を歩き、
そして熱湯風呂に入って、おでんを食べなさいっ!」
なにやら色々混ざっていますが、そんな身体を張る系の芸人さんみたいな事、セーラはやった事がありません。しかし時は無常に進んでいくのです。
「さぁ行くわよセーラ! 準備はいいわねっ!?」
「えっ……!? ちょ……まっ!」
今セーラにバットが手渡され、ラビニアはストップウォッチを構えます。
「よーいっ! …………スタートッ!!!!」
ラビニア嬢の号令の下、その場でぐるぐる回り始めるセーラ。
突然の事に未だ戸惑いながらも、その身体は即座に動いてくれます。セーラはデキる子です。
「いーち! にぃ~い! さぁ~ん! ……その調子よセーラ!!」
「――――ッ!! ――――ッッ!!」
竜巻のような勢いでぐるぐる回り、身体能力の高さを見せつけるセーラ。あっという間に十回を回り終え、熱湯風呂の方へ向かって歩きます。
さすがは元、学院代表生徒です。
「さぁ次は足つぼシートゾーンよ!! 歩きなさいセーラ! 歩くのよっ!!」
「……い゛ぃッ! お゛っ!! 痛ぁッ! い゛ぃぃぃだッ!!」
フラフラと左右に揺れながら、セーラが足つぼシートを歩いて行きます。
額に嫌な汗を流し、苦悶の表情を見せながら、えっちらおっちら歩きます。
まるで生まれたての小鹿のようになりながら、懸命に足つぼゾーンを踏破していきました。
余談になりますがセーラの声は、風の谷のナウ〇カやカリオ〇トロの城のクラ〇スと一緒の声優さんです。
その愛らしく儚げな声で今「痛ぁッ! い゛ぃぃたいッ!」とか叫んでいるのです。
いろいろ台無しでした。
「よしおっけぃ! そこを抜ければ次は熱湯風呂よ!
さぁ飛び込むのセーラ! 飛び込みなさいッ!」
足つぼゾーンを終えたセーラを待っていたのは、今も湯気の立ち上る熱湯風呂。
セーラ・クルーはおっかなびっくり、お風呂に足をかけます。
「 お……押さないでねっ? ぜったい押さないで下さいねっ?! 」
入るのを恐れるように、踏ん切りが着かないと言うように、セーラがお風呂の上で制止します。
そしてラビニアに対して、念入りに念入りに「押すなよ!? 絶対押すなよ!?」と確認しました。
これは絶対にやっておかなければならない“儀式“。世界共通のお約束なのです。
「――――あ、ごめんあそばせ♪」
「!? あっっっつ!!」
その信頼に答えるよう、もちろんラビニアはセーラを突き落とします。
セーラはまるでお手本のように、頭から<ザバン!>と熱湯風呂に落ちました。出川さんもニッコリです。
「あああーーつい!! あああぁぁぁーーついッッ!!」
「さぁセーラ! おでんよ! そこからおでんにいくのよ!!」
風呂から飛び出そうとするセーラを宥めながら、ラビニアはおでんを差し出します。
まずは熱々のたまごからセーラの口に持っていきます。ラビニアは非常に“わかっている“女の子でした。
「熱ッ!! ちょ……バカッ! あっっつ!!
これホントあっっつッ!! リアルガチなのっ!!」
ほっぺにピタッと付けた瞬間、烈火のように暴れ狂うセーラ。
それでも果敢にたまごを食べようとしては落とし、食べようとしては落とし。必死こいておでんと格闘します。
非常にナイスなリアクション。上島さんもニッコリです。
「いいわセーラ!! 輝いてるっ! 貴方いま輝いているわっ!!」
「し……死ぬっ! おでんで死んでしまうッ!!
でも私負けないっ……。どんな不幸にも決して屈したりしないわっ!
――――私の心を、折ってごらんなさいッッ!!!!」
……その後見事におでんを完食してみせたセーラは、真っ赤な顔で「殺す気かッ!」と叫んだり、クワガタに鼻を挟まれてみたり、ベッキーとゴボウでしばき合ったりしました。
最後はラビニアも一緒に熱湯風呂に引きずり込んでみたりして、女の子同士「キャッキャ♪」と仲良く遊びます。
小公女セーラの心を折る事は、決して出来ないのです――――
「いいことベッキー?
リアクション芸にとって、鼻水っていうは“ダイヤモンド“よ」
セーラはそう熱弁し、リアクション芸のなんたるかを熱く語りました。
余談になりますが、後にセーラはダイヤモンドプリンセスと呼ばれる事となります。この時の会話が原因だったのかは定かではありません。
やがて夜も更けて寝る時間となり、部屋で一人きりになった時……、セーラ・クルーはふと我に返ります。
「隕石が落ちてきて、世界滅んだらいいのに――――」
ほんのちょっとだけ、思ってしまったのでした。
※アニメ小公女セーラは、世界名作劇場の中でも異色となる“イジメ“をテーマとした作品です。
しかしセーラは決して優しい心を忘れずに、どんな苦難にも負けずに頑張っていく。そんな素敵な女の子のお話なのです。
当作品はコメディであるにもかかわらず今回このような内容だったのは、このテーマに起因しております。
決してアンチ・ヘイトの為では御座いません。
そして原作アニメにおいてセーラは、これまでがんばってきた全ての苦労が報われ、最後に幸せを掴みます!
ネタバレ(?)は出来ないので詳しくは語れませんが、どうぞご安心下さいませっ。