傭兵は人類を守りたいと思ってた。
だから、守るために戦った。
でも、人類の中から愚か者達が現れて。
傭兵が守ろうとする平和を乱そうとした。
傭兵はひたすら戦った。
ただ人類の平穏を願って。
プロローグ
To nobles.Welcome to the earth.(高貴なる者たちよ、汚れた地上へようこそ)
クレイドル07
革命を成すには常に犠牲がつきものだ。
「うわぁ!!」
それは仕方ない事だ。
「畜生・・・ここまでなのかよ・・・畜生ぉおお!」
だが、これは革命と呼ぶには・・・
「セレブリティ・アッシュ!!」
余りにも血が流れ過ぎた。
しかし、これは歪んでしまった世界には必要な犠牲だったのかもしれない。
AC×IS <天敵と呼ばれた傭兵>
堕ちてゆく。かつて彼と共に戦った、リンクスという破壊者でありながら、戦場を立つことに悩みながら、ヒーローという真逆な存在を目指していた人物が。
「くっ・・・!当たれ!」
「メリーゲート!下がれ!ぬぅ!化け物がぁ・・・!!」
堕ちてゆく。かつて彼と共に戦った、自社の製品を我が子の様に愛し、その破壊力を、自身の何倍にも大きな兵器を相手に、正面から撃ち合った人物が。
「雷電!こんな・・・きゃぁあああああ!」
堕ちてゆく。かつて彼と共に戦った、霧の中二機のネクストと数多のノーマルを相手に、互いに背中を預けながら戦った人物が。
堕ちてゆく、爆発してゆく、緑色の死の光を出しながら。
彼がその光景を見てただ思った。出来れば違う世界で出会いたかった。と。
嫌いでは無かった人物達を殺したことで心に少しだけ死んでいたと思った罪悪感が彼の中で目覚めたが。すぐに消し去る。
「さて、さっさと揺りかご様を壊すとしようかね」
彼の操る黒いネクストの左手に装着している
クレイドルを支えるエンジンブロックに彼が今まで壊してきた揺りかごと同じように斬り、墜落させようとしたが。
「まっ、待ってくれ!」
突然、クレイドル側から通信が送られてきた。
彼はMOONLIGHTを振う左腕を停止して、言われた通りに待つことにした。
「そちらの要求することはGAの名にかけてどんな事にも答えよう!金も、食料も、女も!全て出す!!だから」
またか・・・彼は、老人共のお決まりの言葉なのかと?疑問に思ってしまう。
「生きたいか?見逃してほしいのか?」
図星を当てられたせいか、彼の言葉に老人が黙る。
「・・・そうだ。だが、全て。全てを手に入れることが出来るんだ!き、君にとっても悪い話であるまい!!」
今頃になって何を言っているんだ。
そう彼の考えを代弁するかのように彼は、静にため息をついた。
話す価値なし。そう判断した彼は停止していた左腕を振るい。刃でエンジンブロックをチーズのように斬り捨てる。
「な!!」
老人からは驚きの声。当然だ。交渉人がいきなり銃を撃ってきたと同意義のことをしたからだ。
「き、貴様!」
「悪いがそれに似た言葉を何回も聞いた。じゃあな、GA」
通信を切り、OB<オーバードブースト>を起動。KRB-PALLASとQB<クイックブースト>による爆発的なスピードにより音速を突破。
右腕に装備している
揺りかごを守る。勇敢なネクストも尻尾を巻いて我先にと逃げたノーマルもすでにいない。
母無き揺りかごに抱かれた赤子はなんと弱いことだろう。
「さぁ墜ちろ。クレイドル07」
そして、真っ白な雲が一つもない晴天の青空に真っ黒な煙が上がっていった。
「GAの壊滅を確認。ミッションを継続。革命を続行する」
誰にも報告をする必要のない言葉を彼が発する。
「人が恋しいんですかね。天敵さんは」
彼が目を閉じるとふと思い浮かべるのは、もはや存在が危うい、ノーマル以上ハイエンドノーマル以下のノーマルを多少動きを良くした程度のカスタム機に乗るレイヴンとして、いつネクストが来て殺されるか、いつAFが現れ、潰されるか分からない中、死に物狂いで活動していた彼を、山猫へと変えてくれた元オペレーター。セレン・ヘイズを思い出す。
眼つきが悪く。いつも仏頂面なくせに少し笑うだけで人を惚けさせてしまうような容姿が。
厳しくもたまに見せる優しさを持つ性格が。
常に凛としていて誰にも媚びず誰にも隙を見せないその姿勢が。
彼はそんな彼女が人として好きだった。人として尊敬していた。
「セレン・・・悪いな。まだ、もう少しだけ支えになってくれ」
自分で殺しておいてなんて身勝手だろう。なんて弱い天敵であろう。
だが、彼は歩みは止めない。今日殺した1億5千のためにも、今まで殺してきた10億以上の人々のためにも。
人類は一度、弱くならないといけない。人類は何度も、結束しなければならない。人類は永遠に、生き残らなければならない。
そのために強者を殺そう。そのために弱者を絶望に落とそう。
そのために人類種の天敵にすらなってみせそう。
システムを通常モードへ移行し、次の目標へ向けて進みだす。
オーメル、BFF、インテリオル、GAを壊滅させ、残った企業も壊滅こそしていないが、上層部のほとんどが消えどこも疲弊し混乱状態となっている。
彼という災害から生き残るために、アルテリア・カーパルスを占領された日よりローゼンタールが計画していた、企業連ではなく。
一つの国家として人々を平等に保護するという計画に残った企業達も参加を表明しつつある。
ネクストACは、ほとんどを彼が消した。彼という存在を生み出したネクストが今後の世界で運用されることはなくなるだろう。
アサルトセルも彼が墜としたクレイドルを支えていたエネルギーを得て、衛星軌道掃射砲(エーレンベルク)が宇宙への道を開けるための力を溜めつつある。
クレイドルは襲撃されるのを恐れ、コジマ粒子に汚染された大地に着いた。
「これで、テルミドールも少しは報われるかな」
革命の道を彼に示し、彼と旅団を家族と呼び、旅団の名を貶めた家族を憤怒を持って戦った、人類のために生き抜こうとした男。
「オールドキングは、呆れそうだな」
人類全滅という一つの道を示し、同志と思っていた彼に殺されたとしても淡々としていた男。
「セレン。地獄に行けそうにないが、もし会えたら・・・また死にそうだな俺」
彼を止めようと激戦の中、最後まで生き残り、命尽きるまで戦い抜いた女。
「もう十分にやった。あとは憎まれ役の幕引きだ」
彼は満足していた。シナリオ通りに世界が動いてくれるかは多少心配だが。
たとえ捕えられ、死を超す苦痛を味わい、人類全ての憎しみの対象となりながら死ぬことになっても構わぬほどに。
敵対反応を彼のネクストに搭載されているレーダー続いて脳内にあるレーダーが確認。
AMS<アレゴリー・マニュピレイト・システム>を通して彼が見た光景は。
夕方、日が落ちつつある荒野。元は緑生い茂ていたコロニーアナトリア跡地。
「ほう・・・俺みたいな自分勝手な屑には勿体無い相手だな」
OBの光はまるで翼の様。
全身が純白のフレームには戦いの歴史を物語る凹みや染料の剥げた後。
相手を威圧する複眼の青い目。
「今度は整備不良なんてことやめてくれよ」
その手に持つは漆黒の二丁の銃と二基の分裂ミサイル。
カラードランク『9』にして最強と呼ばれたネクスト。
ホワイト・グリント。
「俺が生きた証・・・最後に残させてくれ!」
APは10000を切っている。
武装は左腕にあるMOONLIGHTのみ。
機体のあちこちには穴が開き、コードが垂れ火花散っている。
関節部もまともな整備も出来ずに長時間の稼働させた結果、とっくに限界を迎え危険というメッセージを出している。
OBは使えない。メインブースターもイカれてしまったので酷使したら爆散してしまうだろう。
それでも、彼は挑む。