IS×AC<天敵と呼ばれた傭兵>   作:サボり王 ニート

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ようやく学園スタートです。
文と文の間に線を入れるようにしました。


1章 クラスメイトにイレギュラー
13 学園初日


What are you fighting for?

 

――私は人類のために戦う。

 

――例えそれが誤った道だとしても。

 

――人類を守り人間を犠牲にし。

 

――ただ、己が導き出した答えを信じて。

 

――答えは見つけた。さぁ、戦おう。

 

――――――――――――――――

 

「全員揃ってますねーSHRを始めますよー」

子供が無理をして大人の服を着た。

そんな印象を受けても可笑しくないほど、背が低く、童顔なIS学園1年1組副担任山田真耶。

にっこりと、子供のようにほほ笑むその前に、一人ダラダラと汗をかいている少年がいた。

IS学園。

世界最強の飛行パワードスーツISの操縦者育成用の特殊国立高等学校であり、パイロットとしての操縦技術を磨く他、メカニックとしてのISの実物を使って実用的な知識を得るために生み出された学園。

学園の土地はあらゆる国家機関に属さず、いかなる国家や組織であろうと学園の関係者に対して一切の干渉が許されないという国際規約があり、そのため他国のISとの比較や新技術の試験にも適しており、そういう面では重宝されている。

だが、この規約は半ば有名無実化しており、全くの干渉がないとは言い切れないのが実情である。

尚、IS学園に所属する人間の大半の生徒、教師は女性。挙句、女尊男卑の風潮からか男性の入学志願者及び就職者は、男にISの知識は必要ないのでお断りという体制を取っているため。

男女間におけるIS知識の格差を生み出す差別的な学園だという男性からの批判的な意見がある。

しかし、そこで得るISの実戦データ、特にセカンドシフトやワンオフアビリティーの軍事的な恩恵が多いため学園の存在は様々な事情を持ちながらも黙認されている。

(これは…想像以上にキツイ…)

日本にて発見された、世間では唯一男性なのにISが使えると世界中から注目されている少年、織斑一夏。

周りが、女子。しかも、殆ど全員が平均以上の顔立ちを持つと来れば、一般的な男子高校生ならクラスメイトが全員女子だ天国だハーレムだ、と喜ぶだろう。

しかし、その生徒28人分から送られてくる異性としてではなく、珍獣を見るかのような奇異な目ならどうだろう。

一般的な男子高校生ならそんな事を思う以上に、異性からくる過剰な緊張から来るストレスに気がやられてしまうだろう。

男とはそういう者である。

それはISが使える一夏でも変わらない。

(箒…)

一夏は、周囲から来るあまりにも重い視線から救いを求めるような視線を窓際に送った。

その先には夜より暗い漆黒の色をした細く、腰に届くほどの長い髪を明るい緑色のリボンで束ね、馬の尻尾のような髪形所謂ポニーテールと呼ばれる髪を後頭部で一つにまとめ後ろに垂らした髪形をして、顔は凛とした刀のような鋭さを持つがどこかあどけなさが残る一夏の幼馴染である少女、篠ノ乃箒がいた。

一夏から送られる視線に箒は気が付き目があったのだが、残念ながら一夏は顔を背けられた。

(それが六年ぶりにあった幼馴染に対する態度かよ…)

薄情な幼馴染に悲観する一夏だが、時間は進む。

今は、SHRの自己紹介中だ。

しかも、織斑は『お』なのだから出番が早い。

「…君!織斑一夏君!」

「は、はい!?」

突然目の前にいる、半ば涙目になっている教師に呼ばれ、声が緊張のためか裏返ってしまい、周囲から聞こえるクスクスとした小さな笑い声に一夏は少し後悔した。

「わぁっ!大声出してごめんなさい。でも自己紹介。今、あから始まってお、何だよね?自己紹介してくれるかな?駄目かな?」

「します!自己紹介します!だから落ち着いてください」

副が付くとはいえ、担任の教師にぺこぺこと頭を何度も下げられ、まるで懇願するかのような必死に頼む姿に一夏は少し動揺したがすぐに立ち上がる。

ふぅと、一夏は自分を落ち着かせるために一息つきそのまま振り返る。

そこには、変わらず女子女子女子。

背中に比べると倍近くは感じる視線に尻込む己を一夏は叱咤して、口開けた。

「え、えっと……織斑一夏です。よろしくお願いします」

礼。

(やった。やったぞ…)

そんな達成感に身を浸りながら下げた頭を上げるとそこには。

これで終わりなの?

もっと喋ってよ。

口では発していないが有無を言わせない女子生徒達の視線に、一夏はさらに焦ることになった。

「あー…えっと…」

(いかん…いかんぞ…このままでは暗い奴のレッテルが貼られてしまう…考えねば…)

一気に劣勢に追い込まれた一夏が考えること数瞬。

起死回生の一手、一夏はそれを思いつき、大きく息を吸い吐いた。

その行動に、この場にいる女子全員の期待が一夏に注がれる中、一夏は大きな声で高らかに宣言した。

「以上です!」

その瞬間、まるで芸人のように、滑らかにかつ素早く自然に複数生徒が席から崩れ落ちたという。

「あ、あのー…痛!!」

周りからの反応に、どこが可笑しい所ありましたかと言葉を紡ぐ前に一夏の頭上に痛みが走る。

(あれ?これって)

一夏は叩かれすぎて人物が特定出来るレベルまでに慣れてしまった痛みの発生源に顔を向けるとそこにいた人物。

一夏の想像通り、狼を思わせるような鋭い吊り目を持つ一夏の実姉、織斑千冬がいた。

「ブリュンヒルデ…?世界最強がどうして…うわっ!」

パァン。

教室内に再び、男の頭が叩かれた音が響いた。

 

――――――――――――――――――――

 

「同じ生徒に二度目か。この学校は生徒に対する暴行は許されているのだろうか」

エースは着なれていない制服に僅かな違和感を抱きながらも、一人長い廊下の壁に背を預け、腕を組み立っていた。

教師は生徒に基本的には殴ってはいけないもの。

教育機関に初めて通うエースですら、それぐらいは理解している。

(それにしても似ていたな…セレンに…………いや、もう止そう。セレンはセレン。彼女は彼女だ。俺がセレンを殺したという真実は何も変わらない)

つい先ほど出会ったばかりの、自身の教師であり、抑え役となっている女性。

織斑千冬の容姿や持つ雰囲気がエースの人生唯一無二心から信頼していた女性と似ていた事に、当初は幻覚か何かを見てしまったのだろうかと、かなりのショックを受けたエースだが、すぐに考えを改めた。

似ている人がいたとして、謝っても、罰を受けても故人は決して帰らないからだ。

(さて、俺はいつ入ればいいのだろうか)

千冬にここで廊下で少し待てと言われ、すでに数分が経ち時には。

「私の言う事はよく聞け。いいな」

と、軍隊さながらの宣言をしてみせる千冬の声や。

「キャァアアアアアア!!」

と、甲高い声。

「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」

と、エースの聞きなれない北九州という単語。

「躾けて!!」

と、言う少々マニアックな声に、15か16にしてもう目覚めてしまったのかとエースは感嘆した。

(学園か…随分とまぁ、楽しそうだな)

そんな事を考えているエースだが、無論ミッションは忘れていない。

ついでに、待たされていることも忘れていない。

「入れ。アレス」

待つことさらに数分後、ようやく来た千冬からの入室許可。

「了解…、いや、分かりました」

返事をした後、エースはIS学園1年1組の教室へと入った。

その直後、全身に降りかかる視線を淡々と受けながらエースは、黒板の前に立つ。

「こいつは扱い上転校生だ。今日入学式で色々と可笑しいとは思うだろうが気にするな。アレス自己紹介しろ」

たった一言千冬はエースに告げ、エースはそれに頷く。

「初見となる。俺は、エーアスト・アレスだ。呼びにくいのであれば、エースと呼んでくれ。見ての通り男で色々な都合があってこの学園に転校したのだが、これから一年間共に勉学を学ぶ友として歓迎してもらえると嬉しい。よろしく頼む」

最後にエースは僅かに微笑み、短い自己紹介を終わらせた。

 

――――――――――――――――――――――

 

初対面の全31人中、男子2人、女子29人。

そんな環境で男なら真っ先に仲良くなりたいと思う人物は同性である男だ。

何か因縁がない限りはこれは普通の流れである。

SHR後の僅かな時間で、一夏は早速エースに話しかけた。

「エースで当たってる?織斑一夏です。よろしく!」

「あぁ、噂は聞いている一人目のイレギュラー織斑一夏。こちらこそ、よろしく頼む」

エースから差し出されたその手を一夏は、異文化交流と喜びながら手を握る。

このたった数秒しかない交流の中で一夏がエースに対して抱いた感情は、境遇を分かち合える仲間を得たという喜びだった。

「いやー本当に助かった。たった数分だけでも辛かった辛かった」

「…まぁ、気持ちは察する。今でもひしひしと感じるしな」

ちらりとエースが、ひしひしと感じる視線の元である既に何個かに別れ始めた女子集団に見た瞬間、視線の元達は一斉に顔を背け、一部の者は下手な口笛を吹いた。

「そういえば、突然聞くのはどうかと思うけど…その首輪って何?」

「首輪?あぁ、これか」

首輪の話題に、再び視線がエースと一夏に集まる。

美形の二人組の男子の情報を一つでも多く聞きたいのだろう、いつの間にか騒がしかった教室が静まり返る。

「見ての通り首輪だ。残念ながら、外すことの出来ない」

「え、大丈夫なのかそれは?」

「大丈夫だと思うが、最近自分の喉がどんな形か忘れてきた」

「いつから着けてるんだよ…」

「大体一か月くらい前だな。寝て起きたら着いていた」

エースがそこまで話した後、キーンコーンカーンコーンという学園のチャイムが鳴り、教育施設に通った事のないエースには聞き慣れない音に僅かに戸惑ったが。

「じゃ、また後で」

そう言い席へと戻っていく一夏を見て、エースはチャイムの意味を理解した。

「…なるほど、学ばないといけない所が多いかもな」

その後始まった一時間の授業。

ISの基礎理論授業で開始10分で両手を頭に乗せて苦悶している一夏の姿に、一番後ろの席に座っているエースは苦笑いを浮かべた。

 

―――――――――――――――――――――――

 

一時間目終了後、一夏といかにも話したそうにチラチラと視線を送っていた篠ノ乃箒に適当に理由を付けてエースは一夏を送り。

教室内と廊下にいる他クラスの同学年やニ、三年生の者達の誰だろうという好奇な視線を受けながらも、エースはそんな事一切気にせずマイペースに本を読んでいた。

(日本語というものは難しいな。同じ発音でも漢字によっては意味が変わるのか…)

呼んでいる本は日本語辞典。

エースはISの知識については最初にディターミネイションとリンクした時に単語は全て覚え、授業にも問題なく、寧ろ不要なのだが。

元の世界では有澤自治区と呼ばれた日本に立ち寄った事がないので、日本語には苦労している。

なので、日本語の知識を早急に集めている。

因みに、IS学園に通う外国籍の人間は、入学前の試験に日本で生活する上で問題が起きないように日本語が使えるかテストをしている。

エースの場合実技試験しかしていなかった為、難を逃れたが、筆記で日本語を出されていたら多少苦戦していただろう。

「何読んでるの~?」

熟読中、のほほんとした甘く緩い声が隣から聞こえ、エースはそちらに顔を向けた。

声の持ち主は勿論、女子。

満面の緩い笑みと、制服の袖が長く手が見えないのが特徴的だった。

「日本語辞典だ。日本はまだ日が浅くてな、まぁ勉強だ」

たったそれだけのやり取りだが、周りの女子達の羨望の視線がその子に集中するが、その子はまったく気にしていない。

「そうなんだー大変そうだねー。あ、そういえば私、布仏本音ーよろしくエース君」

「あぁよろしく布仏」

「うん。日本人として分からない単語があったら教えるよー」

のほほんとした表情とは対照的に誇らしげに胸を張る本音。

思いもよらぬ助け舟にエースは感謝した。

「それは頼もしい。では、さっそくだが何故、日本人は主食の米の前におを付けてお米と呼ぶのが一般的なんだ?意味は同じだろう」

「えーと、昔の人が米さん米さん感謝します。あ、お付けなきゃ失礼だーって所からお米って呼ぶようになったんだよー」

「…………」

「えへー」

(厚意はありがたいが心配だ…)

助け舟が泥船である事を理解するのにエースは一秒も掛からなかった。

その後始まった二時間目、必読と丁寧に書かれた参考書を捨てたという一夏に降ろされた千冬の出席簿アタックをエースは再び苦笑いを浮かべながら眺めていた。

 

――――――――――――――――――――――――

 

「エース。頼む!ISについて教えてくれ!」

(なんとなく来るとは思ったが早いな…)

「俺に聞く前に、再発行される参考書を読め。そこに全て書いてある」

「あんな電話帳みたいなの覚え切れるかー!」

二時間目終了後、一夏はさっそくエースにSOSを送ったが、エースは傭兵としてミッションを熟す義務があり、面倒を見る自信がないのでやんわりと断った。

「そう言うな。やらなければ覚え切れるかどうか分からないだろう?まずは大人しくやってみたらどうだ?」

「出来る気がしないから言ってるんだよ…」

たった二人しかいない男同士、エースが僅かな冗談を交えつつそれなりに仲良く談笑していると。

「ちょっと、よろしくて?」

白人特有の透き通る様な白い肌を持つ少女、目は海を思わせるブルー。

髪は明るめの金髪で僅かにロールが掛かり、愛らしさと高貴さを感じさせる。

腰に手を当て、モデルのようなポーズをとる姿は様になっているが、隠そうとしない人を見下すような目が。

良い印象全てを台無しにしているとエースは感じた。

「へ?」

「……」

「訊いてます?お返事は」

「あ、あぁ訊いているけど要件は?」

「まあ!何ですの、その返事。私に話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」

一夏が言った事は特に何も可笑しな所はないが、それがその少女の癪に障ったらしくワザとらしく声を高く上げた。

エースは面倒。

一夏は苦手。

二人とも、この少女と話す気はあまりない。

だが、話しかけられた以上、返さなければ周囲からの印象が悪くなる。

(どう返すのが正解だろうか…睨んだりでもしたら…うむ。やはり学園生活というのは難しいな。加減が分からん)

「悪いけど、俺、君が誰か知らないし」

しかし、エースが対応方法を思いつく前に一夏が口を開いたので、エースはそのまま一夏に任せることにした。

「私を知らない?このセシリア・オルコットを?イギリスの代表候補性にして、入試首席のこの私を!?」

(オルコット。まさかな…)

話に参加するどころか聞く気すらなかったエースだが、オルコットという単語から話を聞かざる負えなくなった。

エースの元いた世界。そこにいたウォルコット家という、BFFにリンクスを三人も輩出した名家があった。

その内の一人、BFFの王女と謳われた少女、リリウム・ウォルコットをエースは自身の手で殺した。

ウォルコットとオルコット。

字が違うとはいえ、何か因縁めいた物をエースは感じた。

「あ、質問いいか?」

「ふん。下々のものの要求に応えるのも貴族の務めですわ。よろしくてよ」

「代表候補生って何だ?」

見栄は身を滅ぼすと考えている一夏は本当に知らずにこの質問したのだが、聞き耳を立てていた女子生徒達をずっこけされるには十分すぎた。

因みにエースはただ呆れていた。

「…織斑。代表候補生。単語の意味を今一度考えてみろ」

呆れているからこそエースは憐みから少しだけフォローを加え、それに促され一夏は数秒考えた。

「そうか…国の代表候補生。…で、それは凄いのか?」

「凄い!?あなた、候補生を何だと思ってますの!?」

「オルコット。代表候補生の凄さとやらを理解してもらいたかったら、君の実績で証明した方が早いと思うが?」

このままではセシリアという火に一夏という油がどんどん注がれ、大爆発を起こしそうだと考えたエースは会話に加わった。

「あら?何も話さないただのかかしと思いましたら良い事を言うじゃないですの。褒めてあげますわ」

「お褒め預かり光栄だ。君の様に美しい淑女がどれだけの実力を秘めているのかとても興味がある」

「あらぁ、そちらの黒髪のとは違って、貴方は代表候補生である私の魅力をよく理解できているようですわね」

たった数分の会話の中で、セシリアの話し方、表情、仕草からどういった人間なのかをエースは理解し、自分の都合が良くなるようにエースはセシリアの機嫌を誘導した。

そしてそれが功を成し、機嫌が直ったセシリアは顔を口角を上げ、にやりと笑った。

(ちょろいというかなんというか…)

だが、国の代表候補生として肉体と精神両方を鍛えられていると考えていたエースは数十個くらいは褒め言葉を考えておいたが、たった一個ですぐに機嫌を直したセシリアに頭を痛めた。

「エース。お前本気で言ったのか?」

「そう思っているのであればお前はいつか人に騙されて痛い目に合うな」

「ん???」

と、小声で会話をしている二人に気が付いていないセシリアは上機嫌に話し出す。

「まず、代表候補生というのはどれだけ――」

しっかりと聞く気は元よりないエースは、チャイムが鳴るまでの間と割り切り適当に聞き流していたが。

「――入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」

「あれ?俺も教官を倒したぞ、教官」

「は……?」

「織斑…」

しかし、ひとりでに歩き出した油が火に突っ込んだ事により、今度こそ大爆発が起きた。

その後三時間目の二分前を告げるチャイムが鳴り、セシリアの貴方『達』また後でと、爆破対象に選ばれたエースは、IS学園の探索ついでに逃げようと心に決めた。

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