光の巨人になりたかったのに、なっていたのは…… 作:特撮SS
ごめんなさい。調子に乗りました許してください。
連日連夜の深夜残業の為に休日も死んだように眠っていたのでなかなか続きを執筆できませんでした。
ゼロワンも終わり新ライダーのセイバーも録画したのをチラチラ覗いています。
それにウルトラマンZ面白すぎぃ!!!ブルトンソフビ買っちゃったよぉ!セブンガーの可動フィギュアも予約しちゃったよぉ………
長文失礼しました。それでは続きをどうぞ。
ソコに入って彼が最初に感じたのは空気を震わせる“音”だった。
アップテンポな音楽と二人の少女の歌声、そしてこの場にいる人々の歓声が天井まで響き、照明器具の近くいた実体の無い自身の体をビリビリと震わせる。
外からでも聞こえた歓声と歌声を間近で感じるとまるで轟音ともとれる激しい音だが、それでもその音を全く不快と感じない、寧ろこの空気を震わせる音がとても心地よく感じる。
入って数分ほど彼はこの場の空気に呑まれていた。会場全体に響く歓声に歌声、暗い観客席を彩るペンライトの光、何よりライトアップされた中央ステージを駆けながら歌う二人の少女達。この場の全てに彼は見惚れていた。
ーーー凄い……初めて見たけど、こんなに凄いんだ。ーーー
生前の彼の人生は、遅くまで仕事をして食事をして眠る、楽しみや幸福など微塵も感じない人生だった。
歌だって、小さい頃や学生だった頃は好きで色んな歌を同じ趣味の友人達と共に聴いていた。日本の歌から海外の曲まで色んな物を聴いた。だが、社会に出てからは歌を聴いている暇なんか無く、その時の友人達とも連絡を取らなくなり次第に全く聴かなくなっていた。
そんな彼が久しぶりに聴く歌はとても心地よく、歌が好きだった彼の心に激しくも優しく響いた。
ーーーそっか…これが…ライブなんだーーー
生前大人になってから全く感じることのなかった高揚感が彼を満たし、思わずこの場の人々と同じように声を上げてしまいそうになった。
その時ふと今自分のいる照明近くのスタンド席に丁度一人分席が空いていることに気が付いた。
見てみると薄いオレンジ髪の少女の隣が空いている。恐らくではあるが親族、或いは知人か友人が来れなくなり席が空いてしまったのではないか。
まぁ、あくまで彼の予想ではあるが、もしかしたらただトイレに行っているだけかもしれない。
そこで彼は思い付いた。実体の無いエーテル体だからこそできる事を。
ーーー折角だから席からライブを見てみようかな。前は来ることなかったし。ーーー
彼はゆっくりと降下し、空いている席にストンと降り立つ。
席からは歓声を上げペンライトを掲げふる観客達の腕が視界に入り天井部から見るよりも見ずらくはあるが、ここに居ることで妙な一体感を感じることができる気がした。
気づけば彼は周りの人々と同じ様に腕を掲げ声を張り上げていた。周りに聞こえることも無ければ見えることも出来ないが彼は周りと同じ様に声を上げる。
彼はただただ叫ぶ。あの頃の孤独を埋めるかの様に。
自分がキリエル人であることも、体の無いエーテル体であることも忘れてライブに夢中になっていると、ふと彼は自分に向けられる視線を感じた。
精神生命体であるからなのか、触覚や嗅覚、味覚などは感じられないが(実体化している際は感じるが)、やけに気配や視線には敏感に反応する体質になってしまった。
周りを見渡しても皆ステージの彼女達に釘付けで此方を見ている者など誰もいない
ーーー気のせいか?ーーー
長い間山籠りをして感覚がおかしくなってしまったのか、或いは無意識に人恋しくなってしまったのか……
理由はどうであれ自分の勘違いであろう。そう思い再びステージに目を向けようとした時、彼は視線の正体を偶然にも見つけた。
自分が今いる席の隣にいる少女だった。
少女はペンライトを握ったまま驚いた様に目を開いて彼を見ている。その視線は彼を見据えており間違いなく彼を認識している。
焦りからか周りの歓声がやけに遠く感じる。ペンライトとステージからの光が少女を照らしその瞳がキラキラと光っている。
そんな彼の心情とは反してライブはいよいよ最大の盛り上がりを迎えていた。会場の屋根が開き夕焼けの光がステージに差し込んでくる。
しかし、彼は彼女の瞳から目を離すことが出来ないでいた。驚愕の表情と見開かれた目が、赤く染まる彼女の顔が“あの時”の少女の顔を彼に思い出させる。彼の頭の中で目の前の少女とあの集落で助けた“あの子”の姿がゆっくりと重なる。
震えが止まらない。精神体である筈なのに呼吸も荒くなっているように感じる。
あ………悪…魔
ーーー…………違うーーー
………悪…魔
ーーー……違う………違うーーー
悪…魔
ーーー……俺は…俺は…君を……助けようと、
悪魔
ーーー……ッ!!!ーーー
急な吐き気に襲われ彼はその場から脱兎の如く逃げ出した。恐らくエーテル体の状態で出せる全速力で彼は会場から飛び出した。
先程まで彼を包んでいた高揚感も胸の暖かさも、まるで冷水のように冷えきってしまい、今の彼の心は不快感と恐怖で震えていた。
彼女の言葉が頭の中で響く度に、あの集落での殺戮が思い出される。人間を燃やし、踏み潰す感触。それを快感に感じていた自分。それら全てがフラッシュバックして彼を苦しめる。
先程自分が浸入した天井部からまるで這うように抜け出し、そのままステージの屋根の上で四つん這いで蹲っていた。
呼吸器官の無いエーテル体であるにも関わらず、荒くなった息を整えるように何度も深呼吸を繰り返し、自分に言い聞かせる様に何度も《…違う…違う…違う……》と呟いていた。
何度かソレ繰り返し、ようやく落ち着いた彼はヨロヨロと立ち上がる。
町を夕焼けの明かりが照し、夕日がビルの窓に反射してとても美しい光景が広がっている。
しかし彼の心はそんな景色を見ても全く晴れることは無かった。
ーーー………もう行こうーーー
未だに歓声が響くライブ会場から離れようとした。あれだけ心地よかった歓声も今はどこか煩わしく感じる。
兎に角ここから離れたい、あの歓声から遠ざかりたい。彼は今そんな気持ちで一杯だった。
しかしそんな時異様な気配を感じた。これまで彼が感じたことがない異様な気配。視線でもましてや人間の気配でもない。慌てて空中で静止し辺りを見渡すが、周りの景色に反して気配がどんどん大きくなっていくのを感じる。
ーーー何だ?…“ナニ”か来る?!ーー
そう感じた瞬間、先程まで自分がいたあのライブ会場から爆発音が響いた。
轟音と粉塵が舞うステージの上で、二人の少女は一瞬何が起きたのかと呆然としていた。
しかし、吹き上がる灰と煙が茜色の髪を揺らした時、天羽奏はナニかを感じとり表情を険しくして呟く。
「……“ノイズ”が来るッ!!」
次の瞬間、ソレは姿を現した。
慌てて会場に戻ったキリエルが見たのは、先程まで見ていた光景とはうって変わったまさしく地獄絵図だった。
爆煙立ち込める会場の中に先程までの歓声なく、代わりに怒号と悲鳴がそこかしこから飛び交っていた。
何より、逃げ惑う人々を不透明なナニかをが
襲っている。一見曲線的なその姿が可愛らしく感じるが、逃げるもの達の顔は恐怖と絶望に歪んでいた。
そのナニかが躓き倒れた男性に覆い被さる。すると彼は「助けてくれ!!」と声を上げながらゆっくりとその体が変色していき、やがてボロボロと崩れ去っていった。
ーーー触れただけで人間を?!……アイツらが…この世界を脅かす“怪物”…ーーー
人間を一瞬で殺すその様に驚愕と恐怖を感じながらも、キリエルは震える手を握りしめ恐怖を押さえ込む。
ーーーアイツらを……アイツらを倒せば…今度こそ俺は
キリエルは
一人の女性が瓦礫に躓きその場に倒れた。周りの人々は自身の事しか考えず彼女を助けようとする者は誰一人としていなかった。
背後から迫り来るは怪物の群れ、触れただけで人を一瞬で炭素の塊に変える
彼女は助けてもらえなかった事、背後から迫る死、その全てに絶望し何もかも諦めていた。声を上げる事も泣き叫ぶ事もせず、呆けた顔のままただ死を受け入れていた。
飛び掛かる無数のノイズ達に視界が覆われ彼女は静かに目を閉じ、目覚めることの無い永遠の眠りを向かえようとした。
『キリッ!!!』
声の様なものと何かがぶつかるような音が聞こえ、彼女はゆっくりと目をあける。
自分の前に誰か立ち、視界を埋め尽くすノイズを押し返そうとしているのが見えた。ノイズが影になりその人物の全貌は見えないが、もぞもぞと蠢くノイズ達をたった一人で押さえていた。
一体誰なのか、何故ノイズに触れられるのか、そんな疑問が呆けた表情の彼女の頭に浮かんだがそれを口に出す前に目の前の人影は唸り声をあげノイズの壁を押し返し始めた。
『~~~~ッ!!キリィッ!!!』
彼女からある程度距離が離れた所で力を込めてノイズの壁を突き放し、崩れたノイズの達に向けて右手をつき出す。
何をしているのかと思った瞬間、彼の右手から炎が吹き出ノイズ達を一瞬で焼き付くした。
燃えるノイズを見詰めていた彼がゆっくりと振り返り、彼女はようやく自身を救った者の全貌を確認することができた。
一言で言ってしまえば、怪人。
黒い筋肉の上に乳白色の骨格の様な物が飛び出しているように体の各所に浮き出ている。まるで骨と筋肉が逆転してしまっているかのような異様な外見に、右胸に赤く光る心臓のような器官。
そして、顔は歪んだ骨格が人間の悲しみのような表情を浮かべ、額には胸にある器官と似たような発光体が怪しく光を放っていた。
燃えるノイズを背にこちらを見据えるその姿は『次はお前だ』と言っているかのような威圧感を放っている。
女性の中に段々と『恐怖』と言う感情が浮かんできた。人間としての本能が、先程まで諦め死を受け入れていた彼女の体を動かし、脇目も振らず逃げたした。その表情は恐怖に歪み、ノイズよりも恐ろしいあの存在から一秒でも早く逃げようとがむしゃらに走った。
逃げる彼女のその背を、彼は何をするでもなくただじっと見詰めていた。
その顔は先程と変化はないが、その視線だけは本当に悲しんでいるように歪んでいると気付く者は誰もいない。彼自身も。
内容進んでなくない?
つ……次こそは……次こそは必ず!!
感想いつもありがとうございます。感想見ながらニヤニヤしている気色悪い自分がいる今日この頃。