「ここは何処だ?」
目を覚ますと赤と黒。いっそ芸術的とも言える空間だった。
たった二つだけの色に支配されていると言うのに、全く嫌みさもなく絶妙な配置。
芸術に興味のないただの女子高生にすぎない私でもわかる。
きっとただの人間では一生かけてもたどり着けない程の何かを持った空間だろう。
「ほう、もう意識を取り戻したのか娘よ」
「誰?」
私の両親はもう居ない。
学生時代からの親友だと言う近所の博士と一緒に旅行に行った時に事故に巻き込まれたらしい。
私は幼かったし、親戚のおばちゃんもその博士も私の事を取っても大事にしてくれた。
だから今となっては両親が居ないことを特に気にしては居ない。
でも、いきなり知らない声に娘と呼ばれるとイラッとするくらいの人間性は持っている。
「お前は馬車に轢かれて死んだ。だが、お前の死体に偶然私の血がかかった。そうしたらお前の心臓は再び鼓動をうち始めた」
そうだ、確か博士のいえに届け物をして帰る途中にいきなり馬車が現れたんだ。
そして避ける間もなく私は……
「そして、私はお前の中にある数滴の血液と言うわけだ。たった数滴の血液だすぐに意識をなくすだろう。だがその前に偶然とはいえ娘に贈り物をくれてやろうと思ってな」
「何? 一体何を言っているの?」
「時間がないといっているだろう。さてお前は一体何を望む?」
なんだと言うんだ。
こんなことを捲し立てられたっていきなり理解できるわけがないじゃないか。
私が望むもの……
「ほう、お前の望みはそれか娘よ」
「待って、私は何も言ってない」
「ではくれてやろう。これが貴様の望んだ力だ。喜べ娘よ!! 今のお前はただの吹けば飛ぶような弱者でしかないが、この力を使いこなしたときお前の敵はいなくなるだろうよ。この私の力に人間の成長力。それは私をも越えお前の仇などもはや障害にもならん」
仇って何の事?
私は力なんて望んでない。
私はただ、おばさんや博士それに友達達と一緒に平和に過ごしたかっただけよ。
「ふん、言葉にすることもできんか。それこそお前が本当は力を望んでいたしょうこだ娘よ。ではその力で私の退屈をまぎらわせておくれ。私から受け取った魅惑と破滅の力をその限界のない成長力で何処まで伸ばすか楽しみだ。出来れば私をほろ……いや、忘れろ。ではな我が最愛の娘よ」
「おい、まだ私は何もわかってない。言うだけ言って居なくなるなよ。言え!! 私に一体何をした!!」
もはや存在を感じない親に向かって怒鳴り付ける。
貴方も貴方も私を置いていくのか?
いつもそうだ。お父さんもお母さんも私を置いていった。
博士だってきっと私を置いていく。
だってあの人の目は自分を省みていない。
おばさんは確かに優しいが、どこか私に遠慮してる。
本当の家族にはなってくれない。
そして今私を娘と呼んだ貴方も私を置いていった。
「くそっ。誰が貴方の事を親と思うものか。貴方の本体にあったとき私から貴方を捨ててやる。今に見ていろよ。この力だって絶対に使いこなしてやろうじゃないか、誰もが私を無視できないように。誰もが私を愛するように」
もう私を置いていかないで……
誰か、誰でも良い私を愛してよ。
誰でも良い私を呼んで。
私の名前はアセルス。
呼べ!!
呼べよーーーーー!!
今はもう全く美しいと思えないその赤と黒の中私はたった一人にされた。
そして私が目を覚まし、その孤独な空間を去るまでに実に12年もの歳月を必要とするのだった。
大丈夫きっと引けるはず。