IS 革新の為に   作:伝書鳩

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第12話 CB式ブートキャンプ

 一夏達の準備が終わるまでの時間潰しと自分達の体慣らしを兼ねた刹那と箒の戦闘は、ハイパーセンサーが察知した新たな機体情報によってその終わりが告げられる。

 

「残念ながらタイムアップだ」

「……どうやらその様だな」

 

 先にピットのカタパルトから射出されて出てきたのは白式を装着した一夏、本日の主役という名の生贄――――メインディッシュである。やる気満々といった雰囲気を感じさせる一夏は、慣れない操縦ながらも空中で待機していた刹那達の元に移動してきた。

 

「悪い、待たせた。早速始めてくれ」

「そうか、ならまずは武器を展開しろ」

「おう」

 

 刹那の指示で一夏は唯一の武装である近接ブレードを呼び出す。

 

「出来たぞ」

「後はそれで目標に一撃を入れるだけだ」

 

 そう言った刹那が指示した先には箒しかいない。

 

「もしかして箒に?」

「ああ」

「ちょっと待て刹那おかしいだろ! 箒、お前も何か言うことがあるだろ!?」

「当然受け側は防御と回避ありだ、何も問題はない」

「はあ!?」

「剣道にはブランクがあり、ISは素人。そんなお前に遅れを取るほど私は弱くは無いぞ?」

 

 お前の攻撃は一発も当たらん。当然の様にそう告げた二人に対し、何も思わない程軟弱な思考を一夏はしていない。男には意地があるのだ。

 

「そこまで言うなら箒、夕飯の奢りを賭けようぜ」

「ゴチになるぞ、一夏」

「俺の負け前提で返事すんな!」

「刹那、私達はこれをいつまで続ければいい?」

「機体のフォーマットとフィッティング、一次移行(ファースト・シフト)が完了するまでだ」

「聞いたな、一夏?」

「ああ! いくぞ!!」

 

 力強い掛け声と共に、白式がサキガケとの間合いを詰めブレードを振るう。それは一夏が馴染んだ剣道をイメージしたのか、思いの外鋭い一撃だ。だが――――

 

「踏み込みが足りん!」

 

 箒に呆気無く切り払われる。

 

「それでは動きがバレバレだぞ、一夏!」

「それが――――どうした!!」

 

 初撃を防いだ箒の声にがむしゃらに応えながらも一夏は攻め続ける。特訓は始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 一夏と箒を見ていた刹那の元に、遅れてISを装着し射出された秋二が飛んでくる。

 

「……おい、刹那」

「なんだ?」

「なんだ? じゃなくてだな、この機体についてだよ!」

「ガンダムの思想を元にして篠ノ之束が構築した特殊装備喚装システム採用IS『衝撃』だな」

「この機体、どこからどう見てもインパルスとしか思えないんだが」

「篠ノ之束がガンダムをモチーフにした新型を作ると言ったときに、『偶然』彼女の手元にはガンバレルダガーのコアがあり、その後『偶然』フランスに現れたストライクのストライカーパックを駆使した戦闘を彼女が見て考えついた装備が『偶然』各種シルエットに酷似していて、機体の名前も『偶然』インパルスを和訳した衝撃になっただけだ」

「偶然?」

「ああ、全て偶然だ。ちなみに俺はこの機体の開発には一切関与していない」

「これじゃあ偶然じゃなくて必然だな。俺の中で偶然の定義がゲシュタルト崩壊しそう」

 

(織斑秋二のISの仕様は偶然ではなく必然なのだろう。これは前にハレルヤが俺に対して言った言葉と一緒だ。俺達CBがそうであるように、イレギュラーには何かがあるはずだ……!)

 

 明らかに現状の開発系譜から逸脱している衝撃(インパルス)という機体はその在り方が不自然にも程がある。白式という何かが狂った仕様の機体を作り上げた束ならその真逆、武装が銃一丁の機体を作ったと言われても不思議ではないからだ。

 

「今はお前もISの操作に慣れるべきだ。向こうみたいに俺に向けて攻撃しろ。反撃はしない」

「俺達も夕飯を賭けるか?」

「なら条件は一緒だな。日替わり定食を大盛りで頼む」

「お前も自分の勝利前提で返事すんな! っていうかそれ二番煎じだし!!」

 

 情報が不足している現状、考えていても答えが出る事は無いだろう。ならやれることをした方が余程有意義のはずだ。そう切り替えた刹那は自分に向け放たれた攻撃を捌く事に意識を集中した。

 

 

 

 

 

「篠ノ之さんもセイエイ君も中々ですね。一方が攻撃不可なのに加え相手との実力に差がある場合は距離を取って回避し続ける方が楽ですし一般的ですが、あの二人は相手の接近戦の間合いギリギリを付かず離れず維持してますよ」

「一夏達が初心者なのも大きい、あんな大振りでは次の動作が丸わかりだ」

「――――それにしてもGNドライヴの特性は厄介ですね」

「動きが異常なまでに滑らかだ。ガンダムが過去、各国の代表相手にあれだけ圧倒が出来たのもそれが理由の一つだ。…………最もジンクスのデータが意図的に配布された事によって、現行機との性能差は縮まったわけだがな」

「私も先日アヘッドに一度乗りましたけど、去年の各イベントでジンクスを選択する生徒が多かった理由がわかりました。データ反映による訓練機のアップデートが終わっていないと、機体によって同じ搭乗者でも動きの差が顕著に表れますから……」

 

 アリーナ内の様子を見ながら千冬と真耶が会話をする。その主な内容は太陽炉搭載機特有の操作性についてだ。使い手の慣れによる部分も大きいが、その動きを他者に伝える際は『滑る』という言葉を用いる事が多い。それにはモンド・グロッソを通じて世界中に流れたエクシアのイメージが多大に関与しており、それだけガンダムの登場が世界に与えたインパクトというのは大きい。

 

 千冬と真耶が画面越しに四人の様子を見ていると、しばらくして一夏と秋二の機体に変化が起き搭乗者の身体が光に包まれる。

 

「あ、どうやら二人ともファースト・シフトを終えた様ですね」

「当然といえばそれまでだが、攻撃を当てるには至らなかったな」

 

 機体の真の姿が現れるが、それは同時に織斑兄弟が賭けに敗れたのが決定した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 光が晴れ空中に浮かぶ二機は、それまでとは異なり白とトリコロールの機体カラーが特徴的だ。

 

「二機とも無事にファースト・シフトしたな。どうだ、さっきまでとの違いを実感出来るか?」

「さっきまであった違和感が全く無い。これが専用機ってことか。秋二、そっちはどうだ?」

「剣一本の一夏の白式とは違って俺の機体、衝撃は武装が豊富だな」

「近接特化ブレード・雪片弐型…………弐型?」

 

 束製の白式の武装に、他機との関連性を匂わせるワードが混ざっている事に箒が気づいた。

 

「――――雪片はかつて千冬姉が猛威を振るっていた専用IS装備の名称だ」

「あの姉さんが自分の手掛けたで無意味な言葉遊びをするとは到底思えないが……」

「そこの所どうなのさ、刹那?」

 

 秋二の問いに追随して詳細を求める三人の視線に怯むことなく刹那は応じる。

 

「その機体――――白式は授業で触れた従来の兵器を超えるISの制圧力なぞ皆無だ。まあそこは武器が雪片弐型のみだから当然と言えば当然だ。その代わり、攻撃力と機動性に機体リソースを注力した事でIS戦に限れば大きなアドバンテージを獲得している」

「アドバンテージ?」

「雪片の解説には適任者がいる、そっちに聞くと良い。それにこれから受ける訓練で、雪片弐型の出番は恐らく無いしな」

「適任者は千冬姉だよな。雪片の出番が無いってのはどういう意味だ?」

「直ぐにわかる。篠ノ之箒、織斑秋二はお前に任せる。好きにしろ」

「そうだな……一夏に遅れを取らない程度に鍛えるとしようか」

「箒さん。それって死刑宣告と変わらないですよね?」

「時間は限られてるんだ。秋二、さっさと始めるぞ!」

「これだから脳筋は困る――――ごめんなさい謝るんでサーベルの出力上げるの止めて!」

 

 箒と秋二が十分離れたのを確認して、刹那は再び一夏へと向き直す。

 

「さて……ここからが本題だ。お前の白式が近接型というのはいいな?」

「逆にそれ以外だったら怖いな」

「セシリア・オルコットもお前達同様、専用機持ちだ。その機体特性は第三世代型の自立機動兵器を有した中距離射撃型だ」

「自立機動兵器?」

「俗に言うオールレンジ攻撃だ。これは説明するよりも実際に体感した方が早いか」

 

 そう告げると刹那は機体を変更する。その光景は見る者にかつてのエクシアが行ったそれを彷彿させる。光がダブルオーを数瞬の間包んだ後には、それまでの青とは異なる緑の機体が現れる。

 

「ケルディムガンダム。見たままの通り射撃型の機体だ。そしてオルコットの機体同様、この機体はCBがビットと分類した自立機動兵器を装備している」

「嫌な予感しかしない……!」

「そういった直感は大事だ、きちんと自らの糧にしろ。シールドエネルギーを抜けない様、ビットの出力は最低限に抑える――――だから安心して避け続けろ」

 

 言い終えると共に刹那は機体各部に装備してあるシールドビットを展開し、オールレンジ攻撃を行う。本来ケルディム以降の系列機体はビットの制御をハロに依存しているのだが、刹那は自身でビットを操作している。それを可能にしているのはアレルヤ・ハプティズムやティエリア・アーデといったマイスターの影響によって、その脳量子波が強化された恩恵である。

 

「避け続けろって刹那お前鬼か! うおっ!?」

 

 白式のスラスター出力を上げてビットの包囲網を強引に抜け出そうとした一夏だが、不意に背後から攻撃される。振り向いた先にはGNスナイパーライフルⅡを構えたケルディムの姿があった。

 

「ビットの回避だけに意識が向くと、こうして本命の射撃を受ける事になる。わかったか?」

「……ここまで鬼畜だと一周回って清々しいな」

「難易度はまだ上がるからな?」

「上等! 勝つためだ、何でもやってやるよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二つに分割されたモニターにはそれぞれの状況が映っている。秋二は機体をソードシルエットに喚装させ、機体操作に四苦八苦しながらも箒のサキガケと正面から打ち合っている。一夏は既に機体のシールドエネルギーが三割程減少している。これはダメージよりもスラスターに割いたエネルギーの方が多い。今もケルディムのGNスナイパーライフルⅡのもう一つの機能である三連バルカンモードで追い回され、その先に待つビットに袋叩きにされた。

 

「セイエイ君はシールドビットと言いましたが、第三世代相当の自立機動兵器9基の操作。それに加えて自身も同時行動可能ですか……」

「セイエイは各ガンダムはコンセプトを引き継いだ機体と言っていたが、これはまるで別物だな。ビットの名称と形状から見て、あれは複数枚を組み合わせて盾の役割もこなすのだろう」

「以前の機体よりも各種機能が洗練されてる感じですね」

「ガンダムはまだ二機も残っている上に、過去の例から追加装備の存在も考えなければならん」

「エクシアの様にですか? それは考えすぎ……とは言えませんけど」

「エクシアのコンセプト――――セブンソードを引き継いだはずのダブルオーの武装は確認した分ではGNソードⅡとビームサーベルで計4本しか武器が無い。私にはその上があるとしか思えん」

「私としてはビームライフル、ソード、ビームサーベルと汎用性が高いGNソードⅡだけでも十分だと思うんですけどね。それでは今の射撃型、ケルディムについてはどう思います?」

「攻撃に特化させたビットの追加。またはビットが機能を発揮しない、使用できない特殊ケースの戦闘を視野に入れた装備構成といった所だな」

「……仮に、全部当たっていたらどうします?」

「……その時は私がガンダムのストッパーになるしか無いだろう。他の教員には荷が重く、更識に任すにしても相手がアレではあいつの負担も大きい」

 

 刹那が使うガンダムは明らかに対多数を意識している。残りの二機もコンセプトは違えど方向性は同様のはずだ。それよりも千冬が気がかりなのは、身の上を明らかにさせた後に刹那が学園中から敵意を集めかねない発言をした事だ。きっかけは一夏とセシリアの口論なのだが、これではCBが指示した箒の護衛以前に刹那自身が襲われかねない。

 

(膿を出せとは言ったが、度が過ぎれば自分の首を絞めるだけだ。わかってるのか?)

 

 真耶にはあの様に言ったが、機体性能を考慮すると新型の前ではモンド・グロッソ時のガンダムが可愛く見える事実は千冬でも否定出来ない。勿論、実際に戦って遅れを取るつもりは更々無い。打鉄でも負ける事は無いと断言もできる。しかしそこでガンダムに勝利出来るか、となると状況が違ってくる。千冬の実力に付き合える機体が無いからだ。データを見た千冬は、学園に配備されている最新鋭機であるアヘッドでも無理だと判断を下している。

 

(セイエイ、力を求め続けた先に何がある? お前はいったい世界に何を望んでいる? お前が言う『来るべき対話』の前にCBが世界の脅威として排除される可能性だってあるんだぞ……!)

 

 この場に、千冬の疑問に返答できる人物は存在しない。仮に千冬が刹那に問いかけても、刹那はこの段階では何も言わない。千冬が危惧しているのは、世界規模でガンダム排除の風潮が生まれてしまうこと。そう考えてしまうのは、彼女が自身の経験として一個人の限界という物を熟知しているからだ。だから思いつかない、言われても信じない。人類の革新とその先についてなど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 刹那のビット操作にはある一定のパターンがあることに一夏は気が付いた。複数のパターンを切り替えているので一見するだけではわかりにくいが、流石に一時間以上その攻撃を受けていれば自ずとわかってくる。

 

(刹那に奇襲を仕掛ける!)

 

 手に持つ雪片弐型を強く握りしめ、一夏は決意する。どんな相手と戦うにしても、自分は近接戦を仕掛けなければワンサイドゲームで負けてしまう。なのでこれからするのは実戦を意識した結果導き出された結論故であり、鬱憤を晴らそうなどという魂胆は微塵も無いのだ。

 

 一夏は各種センサーを用い自分とケルディムとの相対位置を割り出させ、白式の現状最大加速で踏み込めるギリギリの距離を算出。ビットから放たれる攻撃を回避しながらそれをキープする。

 

(狙うのはビットの半分がエネルギー充填のために本体に戻るその時――――今だ!!)

 

 9基の内5基のシールドビットを粒子充填のため手元に戻るように動かそうとしたケルディムに向け、雪片弐型を構えた白式が一直線に突っ込む。上空からの加速を利用し上段から下段に向けて一気に振り抜かれるはずの雪片弐型だったが、金属音と共にその勢いは殺される。

 

「止められた!?」

 

 いつの間にかGNピストルⅡを両手に装備したケルディムがその刃部分で防御していた。

 

「残念ながら、俺にも似た経験があってな」

 

 過去に行われた刹那の対ファング訓練。本来ならアニューの出番のはずだったが、リボンズの意向で彼女はヒリングと共に箒の訓練をメインに担当する事になった。その結果、対ファング訓練は対フィンファング訓練へと進化し、その難易度は急上昇。無論大人げないリボンズが手加減するはずもなく、刹那は容赦無くボコボコにされた。最後に悪足掻き気味に反撃を行おうとするも、瞬時に武器は破壊された記録もある。次第にヒートアップした実戦さながらの訓練で、エクシアを始めとした各ガンダムは甚大なダメージを受ける。一部の機体に至ってはコアが修理を拒否する始末。刹那は半強制的に、機体運用をダブルオーを主軸とした後継機へと切り替える事となった。

 

「初日で反撃する程度に慣れたのなら、明日からはもっと厳しくしても大丈夫そうだな」

「厳しくって……どの程度だ?」

「明日実際に受ければわかる」

「刹那、もしかして説明するの面倒とか思ってないか?」

「否定はしない」

「おい!」

「区切りも良い、今日はこの辺で終わりにするとしよう」

「区切り?」

 

 刹那はそれまでの均衡状態からバックステップ気味に離脱してから一夏に告げる。一夏が機体状況を確認すると、白式の残りエネルギーは20を切っていた。

 

「あれ? ダメージは軽くしてあったんじゃ……」

「塵も積もれば……って事だ。後はスラスターの過剰使用が原因だ。無駄が多すぎる」

「特訓初日からコメントが辛辣過ぎんぞ!」

「代表候補生を甘く見てないか? その肩書きは伊達じゃない、気を抜けば負けるのはお前だ」

 

 言うだけ言って刹那はピットへと機体を飛ばす。その場に残された一夏は今日の手応えを実感していただけに、刹那の最後の言葉がいつまでも頭から離れなかった。




秋二の機体はインパルス。
次回はクラス代表決定戦の予定です。会長の出番があるかも……?

追記:感想で指摘を頂いた部分を修正しました。
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