IS 革新の為に   作:伝書鳩

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第13話 クラス代表決定

 入学式から数日が経った金曜日の夜、寮の門限などの都合上この時間帯でアリーナに人がいることは本来無い。だが今この場には千冬の監督の元、刹那とセシリアがISを展開して上空に待機している。刹那が展開しているのはガンダムヴァーチェの後継機、セラヴィーガンダム。分離・合体機構搭載のGNバズーカⅡ、両肩と両膝でGNキャノンを4門備えた上、GNフィールドは健在で防御面の性能も高い。ヴァーチェのコンセプトを継承しつつ総合戦闘力を向上させた機体だ。

 

「正直、受けてくれるとは思っていませんでした」

 

 この私闘はセシリアが希望し、千冬がそれに許可を出し刹那に持ち込んだ。刹那がこれを受けるための条件として出したのは、ギャラリー無しかつ秘密裏に行う事だけ。この数日の間、上級生達による試合の申し込みを全て足蹴にしているこの男にしては破格の条件だ。

 

「決闘の前の調整といった所か?」

「それもありますが、わたくしが純粋にガンダムと戦いたかったという要素の方が大きいです」

 

 セシリアにとって意外だったのは刹那が砲撃型のガンダム、セラヴィーを選択していた事だ。これまで入手した情報から、ブルー・ティアーズ相手には射撃型で来ると判断していたからだ。

 

「寝不足は美容の天敵ですから早々に始めましょうか。織斑先生、合図をお願いします」

 

 セシリアからの通信を受けた千冬は二機に開始の合図を送る。両機のハイパーセンサーが試合開始のカウントダウンを搭乗者に伝える。

 

 試合が始まると同時に両機が行動に移る。先手必勝とばかりに攻撃するセラヴィーとは対照的にブルー・ティアーズは攻撃する様子を見せず、回避運動しかしていない。

 

「火力ばかり追求した野蛮な機体ですこと」

 

 両手両肩両膝の計6門からなる砲撃だが、セシリアはそれを余裕で回避している。セラヴィーの攻撃は確かに一発の火力は高い。だがその半数以上の砲門は射角が限られているので、相手が回避に専念した場合牽制以上の役割を果たすことが出来なくなる。

 

「今度はこちらから攻める番ですわね――――ティアーズ!」

 

 セシリアの元から4基の自立機動兵器、ブルー・ティアーズが射出される。刹那がケルディムで扱うビットよりも総数が少ない分、戦闘中思考に割く負担が小さく操作性に優れる利点がある。セシリアの命令を受けBTは縦横無尽に動くと、瞬く間にセラヴィーへと襲いかかる。4基のBTがその銃口からレーザーを絶え間無く連射する。だが、BTから放たれたレーザーがガンダムの装甲に届く事は叶わなかった。

 

「……これが噂に聞くGNフィールドですか」

 

 そう呟いたセシリアの目に写るのは、粒子制御によってガンダムを球体状に包む様に展開された防御フィールド。GNフィールドの圧倒的な防御性能は、セシリアが呟きながらも撃ったスターライトmkⅢのレーザーを無効化した。

 

「でしたら!」

 

 セシリアはBTを操作し自らの周囲に呼び寄せ、スターライトを含めた5本のレーザーを一点に集中させGNフィールドの突破を試みる。セシリアの狙い通りにレーザーは寸分も違わず同時に着弾したが、GNフィールドを突破することは無かった。

 

「くっ!」

「それではまだ火力不足だ」

 

 そう言って刹那は両手のGNバズーカⅡを肩のGNキャノンと連結させる。

 

「――ツインバスターキャノン」

 

 先程よりも明らかに威力の高いビームがセシリアに向け放たれる。セシリア自身は問題なく回避するが、操作が遅れたのかBTの内1基がビームに飲み込まれた。

 

「ティアーズ!」

 

 その掛け声と共に3基のBTがセラヴィーを襲う。多くの貯蔵粒子を消費したのか、セラヴィーはフィールドを発生する気配を感じさせ無い。セラヴィーは大柄な機体ながらも、レーザーの回避を試みる。しかし全ての射線を回避するには至らず両手のGNバズーカⅡがレーザーを被弾、破壊される結果となった。

 

 煙の奥、ガンダムがいるはずの場所からこれまで以上のエネルギー反応が発生、それをハイパーセンサーがセシリアに送る。その通達と同時にセシリアが回避に入った瞬間、攻撃が放たれる。

 

「――――クアッドキャノン」

 

 4門のGNキャノンを同時発射する際にビームを収束させて一つにまとめる事で、攻撃範囲と威力を格段に向上させる。そしてこの攻撃はただ収束させたビームを撃つだけでは終わらない。

 

「ビームがわたくしを追って!?」

 

 これまで放った物よりもビームの照射時間が長く、機体の向きを大きく変える事でなぎ払いを可能にする。この砲撃もセシリアに当たる事は無かったが、残りのBTの内2基が被弾した。それを確認し、ここが勝機と判断した刹那は一気に攻勢に出る。

 

「トランザム!」

 

 セラヴィーの機体背部のガンダムフェイスが展開。フェイスバーストモードを発動させ粒子制御能力を更に高め、これまでよりも強固なGNフィールドが発生する。トランザムの恩恵で一時的にブルー・ティアーズを上回る機動力を得ると、両腕とGNキャノン内部の隠し腕にビームサーベルを装備させ一気に距離を詰める。砲撃が当たらないのなら接近戦で勝負を決める魂胆だ。

 

「機体が赤くなって6刀流!? ――――インターセプター!!」

 

 あまりにもデタラメなインパクトに驚いてしまったが、セシリアは瞬時に機体唯一の近接武装を展開した。セシリア自身6本のビームサーベルをインターセプターで受けきれると思っていない。しかし残ったBTとスターライトで迎撃しようにも、GNフィールドの突破は絶望的なので消去法でこれしか取る手段が残されていないのだ。

 

 

 

 

 

『セイエイ、攻撃を止めろ!』

 

 二機が接触する寸前で千冬からのストップが掛かる。刹那はビームサーベルへの粒子供給を強制的に絶ち、ギリギリのタイミングだったが攻撃を中止出来た。同時にトランザムも停止させる。

 

「…………」

「織斑先生……?」

『オルコット、今の攻撃が通っていたら勝敗は明らかだったのは理解出来るな?』

「…………はい」

『勝手だが織斑との試合前で機体に余計なダメージを残すのは避けるべきと判断させてもらった。監督権限でこの勝負はセイエイの勝ちとする。オルコットはこの後早めに寮に戻れ、セイエイには話があるので私の元に来るように』

 

 そういって千冬が通信を切ると、セシリアが刹那の方へと身体の向きを変える。

 

「勝負には負けてしまいましたが、得る物がある試合でした。ありがとうございます」

「気は済んだか?」

「ええ。あなたには悪いですが、月曜日の試合はわたくしが勝たせてもらいます」

「そうでなくては困る」

「――――あなた、彼の指導をしてるのではなくて?」

「そうだな。織斑先生に呼ばれてるので行かせてもらうぞ」

 

 セシリアの問いには答えず、刹那は行ってしまう。腑に落ちない刹那の言葉だったが、自分には関係ないと割り切りセシリアは自室へと戻っていく。一夏との勝負は月曜日。この休日の間にこの試合で得た物が自分に実行可能か判断、可能ならば自在に扱える様に訓練する必要がある。歩みを進めるセシリアの姿は敗戦直後とは思えない程上機嫌だった。

 

 

 

 

 

「……来たか」

「呼ばれたので。そこにいる会長も試合観戦ですか?」

「更識は私が呼んでおいた」

「お疲れさま。おもしろい物を見せてもらったわ」

「それは光栄です」

 

 ――――可愛くない反応ね。という楯無の言葉を遮る様に千冬が刹那に疑問をぶつける。

 

「あの機体が赤くなった現象は何だ?」

「端的に言えばガンダムの奥の手です」

 

 トランザムについて簡単な説明を二人にすると、楯無から当然の質問がされる。

 

「学園のジンクスやアヘッドでそのトランザムは可能なのかしら?」

「対応するシステムを積めば可能だが、使用後に機体性能は劇的に低下。その上、最悪のケースを想定すると擬似太陽炉のオーバーロードによる自爆で死人が出るぞ」

 

 自爆と死人。その言葉で二人がわずかに顔を歪める。

 

「瞬間的な戦闘力の向上は魅力的だが、そんな危険物を学園の人間に使わせる訳にはいかないな」

「演習中に自爆なんて起きようものなら、世界中からバッシングを受けますからね」

「という訳でジンクスとアヘッドにトランザムは搭載していない」

「聞きたかったのは以上だ。寮に戻――――る前にアリーナのグラウンドを整備するように」

 

 バズーカ、キャノン、ツインバスターキャノン、クアッドキャノン。幾度と無く放つもセシリアに回避されたビームは、地表を抉ってその爪痕を誇示している。最後のクアッドキャノンに至っては、ビームをなぎ払った結果特にそれが顕著である。事情を知らない人間が見たら何者かの襲撃を受けたと想像するかもしれない。

 

「…………了解」

 

 刹那が整地作業を終えて自室へと戻るのは、日を跨いで更に数時間経ってからである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 月曜日、一夏とセシリアの決戦の日。放課後を迎えクラスの全員が試合会場である第三アリーナに集まっていた。一夏が準備しているAピットには付き添いで秋二と箒が向かっている。その二人に刹那も誘われたがそこは丁重に辞退していた。そんな刹那が今いるのは会場隅のスタンド席、それも多くのクラスメイトがいる場所とは丁度反対側だ。

 

「キミは彼の応援には行かないんだ? この一週間、指導したというのにね」

「対策はさせたが目的が違うんだよ――――更識楯無」

 

 刹那のすぐ後ろ。手摺りに寄りかかる様な体勢で声を掛けたのはIS学園生徒会長、更識楯無。

 

「この試合の対策というのは理由付けにしかすぎない。俺が織斑兄弟に望んだのは一刻も早くISに慣れる事、その一点に限る。それ以外はおまけだ」

「贅沢なおまけね。あなたの目的は彼等に自衛手段を早急に身に付けさせる事、でいいかしら?」

「その通りだ。わかっていたから黙認していたんだろう?」

「専用機を与えられると言っても、満足に扱えなかったら意味が無いもの。そんな彼等をあなたが能動的に鍛えてくれるのなら好都合、ガンダムのデータも取れるかもしれないしね」

 

 刹那と楯無が会話をしていると、アリーナ中央では一夏とセシリアの両者がにらみ合っている。アリーナ全体が静まった次の瞬間には、試合開始の合図が鳴り響く。

 

「へえ、初心者にしてはしっかりと射撃を回避出来てる」

「近接特化の機体がスラスター全開で回避に専念すれば当然の結果だろう」

 

 開幕直後、セシリアから放たれたレーザーを一夏は難なく回避。そのまま機動に緩急を付けながら続くスターライトからの射撃を避け、攻勢に移るタイミングを窺っている。一夏の意図を察したセシリアはブルー・ティアーズを展開し得意のオールレンジ攻撃を仕掛ける。

 

「……直撃はしてないけど、装甲に掠ってる?」

 

 アリーナには観客でも試合状況がリアルタイムでわかる様、大型スクリーンに選手のシールドエネルギーの残量などのデータを表示させている。先程のBTによるオールレンジ攻撃で一夏のシールドエネルギーは10程減っていた。

 

「ここからだ」

「ここからって何が――――あれは!?」

 

 セシリアはスターライトとBTを併用した牽制で一夏をアリーナ隅に誘導する。そして4基のBTが一カ所に集まる様に操作すると、同時にレーザーを発射させる。

 

 ――――『一本に収束』した高出力のレーザーが白式に向け放たれた。

 

「レーザーの収束化!? ISの機能上イメージ次第では可能でしょうけど、彼女がこの攻撃方法を使用した記録は無いはず。それをどうしてこのタイミングで……」

 

 一夏が回避をしようにもスターライトから放たれたレーザーが足止めとなり、なぎ払われた収束レーザーが白式を襲う。シールドエネルギーの残量を示す数字が急激に減り、表示された数字からは150近くのダメージが叩き出された事が伝わる。

 

「金曜日の夜に見せたクアッドキャノン、あれを彼女は自分に合わせた方法で行ったのだろう。あの威力ならば、セラヴィーのGNフィールドを抜く事が可能かもしれないな」

「あなたに危機感というものは無いのかしら。これからも同様の事は起こり得るのよ?」

「その結果CBが壊滅するのなら、所詮俺達はそれだけの存在だったということだ」

「――――それがCBの総意だとしたら、あなた達は狂ってるわ」

「知っている」

 

 二人の視線の先では一夏が雪片弐型の真の姿を呼び起こしていた。雪片の刀身は光を帯び、力強く輝いている。――――『零落白夜』、それは全IS中でもトップクラスの威力を誇る、バリアー無効化攻撃。一夏はその効果によって再度迫り来る収束レーザーを無効化すると、反撃に出た。

 

「俺は一足先に寮に戻る」

「あら、最後まで見ないの?」

「勝敗が見えた以上、この場に留まる理由が無い」

「参考までに結果を聞かせてくれる」

「この試合、勝つのは――――――――セシリア・オルコットだ」

 

 それだけ言って刹那は本当に寮に戻ってしまう。アリーナではセシリアが巧みな機動で一夏からの一撃を喰らわぬ様に、BTでの反撃を織り交ぜながら必死に回避を続けている。彼女の様子を見る限り、恐らく零落白夜の特性に気付いているのだろう。

 

「ホント、歪んでいるわ」

 

 楯無が何についてそう呟いたのか、彼女以外にそれを知る者はいない。それからしばらくして、試合の決着を知らせるブザーがアリーナに鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、火曜日。一夏のテンションが低い。それは付き合いの長い秋二や箒で無くても一目瞭然な位、低い。理由は一つ、セシリアとの試合で負けたからだ。

 

 零落白夜の発動後、それまで回避しか出来なかった一夏は一転、果敢に攻勢に出た。細かい回避に必要な機体制御はまだ行えない一夏だったが、最大の驚異である収束レーザーを無効化しながらスラスターの推力に物を言わせて接近を試みた。結果だけ言えば、一夏の渾身の一振りはセシリアに掠らせる事しか出来なかった。一夏の敗因は零落白夜の使用によるエネルギー切れ。これについては一夏が未熟だったというよりも、最後まで猛攻を避けきったセシリアが上手だったという方が正しい。一夏を責めるのは酷だろう――――試合後に千冬は一夏に容赦無く指摘していたが。

 

 時間ギリギリに刹那が教室に入ってくる。一部の生徒はあのような発言をしておきながら一夏が負けた事でその指導に当たった刹那に対して懐疑の意を込めた視線を送るが、当の刹那はそれを気にする様子は無い。妙にギスギスした空気が教室内を満たすが、チャイムが鳴りSHRが始まる事でそれは一時的に収まるのだった。

 

 真耶の口から、1年1組のクラス代表は織斑一夏に決定したという事が告げられる。試合に負けた自分の名前が挙がった事に一夏が疑問を挙げるが、理由はセシリアが辞退したからとの事が当人の口から語られた。セシリアにどういう心境の変化が合ったかは刹那に知る由は無いが、一夏への彼女の態度が軟化しているのを見て推測を打ち切った。その後、セシリアも一夏達の訓練に参加する事を表明すると、その過程で適正ランクの話になり刹那にも話題が飛び火してきた。

 

「セシリアがAランク、箒がCランク、俺と秋二はBランク…………刹那はどのランクなんだ?」

 

 一夏の疑問は当然だろう。ガンダムという異色の機体を扱う人間の適正ランクだ。興味があるのは一夏だけでなく、他のクラスメイトも同様らしい。

 

「知らん。俺はガンダム以外のISを展開出来ないからな。ランクの優劣はただの目安、試合の勝敗には関係無い」

「セイエイが言った事は事実だ。何の因果かは不明だがこいつは訓練機を扱えん、各員それは覚えておくように。一応言っておくが、お前達も今の未熟な段階でランクの優劣を付けようとするな。私から見ればお前達のランクがどれ程高かろうが、揃って平等に無価値でしかない」

 

 刹那に続いて発せられた千冬の言葉が教室内に響く。世界大会二連覇という偉業を成した女性の言葉は、とてつもなく重い。異論を言える人物はこの場に存在しなかった。

 

「そ、そうだ! クラス代表の候補には秋二も挙げられていたはず――――」

「俺はまだ一夏のように戦っていない。試合経験が出来たお前の方が適任じゃないかと思ってな」

「――――という相談を私は昨日受けたわけだ。クラス代表は織斑一夏、異存は無いな」

 

 一部を除いて、クラスメイトが団結した返事がされる。根回しと数の暴力というのは、このような場面でも発揮される事を改めて痛感させられる一幕だった。




一夏勝利フラグなど無かった。
セシリアの強化フラグは即座に回収という運びになりました。
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