「主人公、ヒロイン、ライバル……物語の登場人物にはそれぞれ役割がある」
それは大人が子供に物を教える時の様な光景、口調。
「一見すれば何の価値も無い、道端の小石の様な存在。そんな人間が、物語の大局を左右する鍵を担っている。そうした展開も世の中にはあるだろう」
だがその場には一人しかいない。また、誰かと通信している様子も無い。
「無論、私や貴女にも役割はあるさ。……我々に真の意味での自由は無い。今この瞬間、この様に私が語っている事自体が定められたレールの上での出来事とも考えられる」
如何様にも色を変えて光り輝く何かがある。それに向けてこの人物はずっと語りかけていた。
「役割を放棄した人形と役割を与えられなかった転生者。私は彼らが羨ましいのかもしれないな。それこそ力尽くで排除すべき存在だと思ってしまう程に」
その言葉に反応したのか、その何かから二つの別の何かが生まれた。それはISであってISではない何か。篠ノ之束が関与していない、この世界に存在するはずが無いISコア。後にアナザーコアと名付けられる、ヒトではないイレギュラー。
「貴女も私に賛同しているのかな? ――――マザー」
返ってくる言葉は無い。マザー、母と呼ばれたそれはただ輝き続ける。
「……まあ、どちらだとしても構わんさ。こうして私の手の内にある限り、変わりはない」
――――この世界、転生者は二人も必要としない。
「果たして、どちらが消えるべき存在なのか……。それを確かめる時は直に訪れる。そして君達は最悪の結末を回避しようと、どの様に足掻くのか……」
笑う、わらう、ワラウ。それだけが楽しみかの様に、ただただ狂った様に笑い続ける。つい先程生み出されたアナザーコアが、その輝きを増す。そして現れたのは二対一組の運用をベースに開発された機体。核、あの世界で最も忌避される禁忌をその身に宿した兵器として一つの完成型。
――――自由と正義。フリーダム、ジャスティスと呼ばれた機体がそこにはいた。
「そう言えばさ。織斑君達のISスーツ姿は見たことがあるけど、セイエイ君のISスーツは見たこと無いよね?」
教室でISスーツのカタログを手に談笑していた女子。その内の一人が唐突に疑問を述べた。
「機体展開中のせっつーは全身装甲だし~」
「言われてみれば……。いつも制服から直接展開してた」
「あれってエネルギー消費するんだよね?」
「あんた、忘れたの? ガンダムとかのGNドライヴ搭載機は、各能力をGN粒子に依存するから機体のシールドエネルギーは余りがちになるのよ。ISバトルの時もその分を考慮して少な目に設定されてるから、エネルギーを多少消費しようが致命的な影響にはならないってわけ」
「それってちょっとズルくない?」
「私はそうは思わないけど? 武器が多くても半分以上はビーム兵器。コンスタントには使えないけど、そのビームも封じる手段が確立された。それにもしドライヴに異常が出たら性能ガタ落ちって話だよ? 私は怖くて遠慮したいな」
「セイエイ君ってガンダムしか起動出来ないんだよね」
「恵まれてるのかそうでないのか、判断つけにくいよね」
教室内の女子、その視線の多くが刹那に集まる。その中に同情が混じっているのは気のせいか。
「刹那、言われてるぞ?」
「言わせておけ。否定する様な内容じゃない」
「お前はホント、達観してるな」
――――不気味な程に。
言いかけたその言葉を秋二は発する寸前で飲み込んだ。仮に言ったとしても目の前の男はそれを軽く流すと、理性では思っている。だが本能がそれを止めた。根拠は無い。
話しかければ反応する。冗談は流す。疑問には可能な範囲で答えている。多くの生徒から目の敵にされているという厄介事を抱えてはいるが、普段の刹那に問題は無い。だが、この学園で日々を過ごす内にちょっとした疑問が秋二には生まれていた。
――――刹那は、本当に自分と同じ転生者なのか?
自分と刹那の最大の相違点、それは過去の記憶の有無。以前に聞いた話によると刹那に残されていたのはガンダムに関する知識、それだけだ。記憶の忘却、その反動が専用機のガンダムに加えてCBという組織からのバックアップだとしてもデメリットが重すぎだと思う。
刹那は強い。クラス対抗戦では負けたが、この事実に異論を唱える者はそういないだろう。特性の異なる四機のガンダムを操るその技量は、現時点で学年内で最高峰だ。
だからこそ違和感が生じる。ついこの間まで素人だった一夏。クラス対抗戦で、一夏は接近戦で刹那に引けを取らなかった。剣道を習っていたとは言え、一夏の成長の異常なまでの早さ。それに加えて篠ノ之束が手塩に掛けた白式のスペックの高さを考慮してもおかしい。そう感じるのは自分だけなのだろうか。
一夏の成長に比例するかの様に、自分も入学当初とは比較するまでも無い程に強くなっている。成長性をその道に注ぎ込んでいる一夏に接近戦では今の所負け越しているが、トータルでの戦績は五分五分だ。ブラストシルエットさんマジリスペクト……話がずれたか。
上記に加えて一夏や自分に呼応するかの如く、箒とセシリアも順調に成長している。例外が存在しないと仮定すれば、それに鈴や4組のクラス代表も含まれる。要は記憶を無くしてまで得たはずの刹那のアドバンテージ、時間が経つに連れてその価値が暴落しているのだ。
(こんなこと、誰にも相談出来ないしなぁ……)
「諸君、おはよう」
ざわついていた教室が一瞬にして静まる。我らが姉、織斑千冬の登場である。恐らく一夏はまた下らない事を考えているのだろう。そんなだから出席簿アタックの常連になるんだ。淡々と連絡事項を伝え終わると、ホームルームの進行が山田先生へと変わる。それはそれとして姉さんよ、年頃の少年に女子の下着姿は刺激が強いんですが。ISスーツが無いのなら運動着で良いじゃない。
「――――しかも二名です!」
……聞き逃した。山田先生、何の話ですか? 誰かがイベントの生贄になるんですか?
「失礼します」
「…………」
転入生? このクラスに二人も?
『俺達のクラスは下手をすれば国際問題に発展する危険要素の詰め合わせだ。覚えておけ』
ああ、俺達同様にこの二人もそうなんですね。わかります。でもその言葉、お前の口からだけは聞きたく無かった。投票を行えば、圧倒的大差で一位になるであろうお前からだけは。
「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れな――――」
その後に続く言葉が耳に入らない。原因は自己紹介をしている男としては華奢な体格の転入生。シャルル・デュノア――――ではなく、その隣に立っている銀髪眼帯の女子がこちらを睨み付けているからだ。…………訂正しよう、俺の後ろに座っている刹那を睨み付けているからです。おかげで四人目の男性適合者登場のインパクトが薄れてしまった。これは刹那の周囲の席なら共通する感想だと思う。お前は彼女に何をしたんだ。
「……挨拶をしろ、ラウラ」
「はい、教官」
刹那、アウトー。彼女、軍人じゃん。しかもドイツの軍人なので倍率が更にアップ、やったね!
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
「あ、あの、以上……ですか?」
「以上だ」
それだけ言うと、ラウラ女史は歩き始める。そして俺の横を通り過ぎた所で動きは止まった。
「刹那・F・セイエイだな?」
「ああ」
「貴様達が――――」
ラウラの平手打ち。刹那は攻撃を回避した。その攻撃は往復ビンタだった、ラウラの追撃。刹那は戻ってきたラウラの腕を掴んで防御した。二人は睨み合っている。教室は一瞬で緊張状態になった。……お前等人間じゃねえ!!
「私は認めない。ガンダム、CB。その存在を認めない。認めるものか……!」
「それは勝手だが、ドイツの――は感情のコントロールも出来ないのか?」
「っ!」
刹那、途中から聞こえない部分もあったけど明らかに挑発だよね? 火に油を注ぐなよ!
掴まれた腕を振り解くと、ラウラは空いている席に座った。刹那以上にコミュニケーション能力が欠如している人物が現れるとは、思いもしなかった。そしてドイツの軍人でガンダムという存在自体に敵意がある。……つまりそういう事だよな。じゃあ、俺と一夏も彼女に殴られる可能性があるって事ですよね、刹那みたいに防げねーよ。誰か助けて下さい。
「ホームルームはこれで終わりだ。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。今日は2組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」
こういう停滞した空気を無視して物事を進めれるのは我らが姉の長所だと思う。
「織斑兄弟。男子のお前達がデュノアの面倒を見てやれ」
「織斑先生、刹那には言わないんですか?」
「もうこの場にいないからな」
周囲を軽く見渡すと、言われた通り刹那の姿は見られない。一夏はデュノア氏と話をしている。改めて自己紹介でもしているのだろう。一息吐いた姉さんは言葉を続ける。
「…………秋二。あれを自分達と同じカテゴリーに当てはめるのは止めておけ。あれはヒトとして根本からお前達と違っている。馴れ合えば後が辛いだけだぞ?」
「……っ!」
弟である俺達を心配して掛けた言葉なのだろう。だけどそれは俺の心に深く突き刺さる。夢物語とも言える転生を果たした俺は、刹那と同様の扱いを受けても不思議は無い。
「男子共、早く行け。このままだと遅刻するぞ?」
「少し急ぐか。秋二、シャルル行くぞ」
「うん。案内よろしくね」
「――――ああ」
駆け足気味に移動する中、俺の胸中には言い様の無い不安がどうしても消えなかった。
青を基調とした全身を覆うスーツ。それにヘルメットを被った人物がグラウンドに立っている。該当するであろう人物は一人しかいない。だがその姿はどこからどう見ても不審者、それについて弁明の余地は無い。着替えを終えた1組と2組の生徒がグラウンドに集まるが、皆揃って遠巻きにその人物を見ているだけだ。
「刹那、何をしている」
誰もが思っていた言葉を代弁する人物が現れた。その者の名は篠ノ之箒、問題のスーツの存在を予め知っていた彼女は物怖じせずに踏み込んだ。
「クラスメイトのリクエストに答えただけだ」
「それはお前のISスーツ姿が云々って話か?」
「そうだ」
「そうか。なら問題無いな」
詳細を知るが故の納得。だがそれは大衆の望む答えでは無い。CBに毒されたのか諸々の価値観が大きくずれてしまった箒はその事に気が付かない。
「違うから! 問題はそこじゃない!」
「ん?」
「む?」
代弁者は一人では無いらしい。着替えを終えグラウンドに到着したばかりであろう秋二が二人のずれた会話にツッコミを入れた。
「刹那、その格好は?」
「俺のISスーツだ」
「その形状とヘルメットの意義は?」
「宇宙で活動するための措置。後は偏光バイザーで個人の特定を困難にしている」
「地上に降りてまでその格好を維持する理由は?」
「この姿は目立つだろ?」
「ああ」
「つまり、そういう事だ」
「だからそれじゃあ、わかんねーから!」
「アンタ達、コントでもしてんの?」
「鈴!?」
ここで鈴が追加投入された。
「どう見ても普通の受け答えだろ」
「刹那よ。そう言うのなら、ちゃんと詳細に答えろ」
「そのやり取りがコントって言われる理由って気が付かないの?」
「織斑先生ならこちらが言わない事まで勝手に推測・理解して納得するぞ?」
「俺を規格外の存在と同列に扱うな!」
「…………」
「…………」
「鈴、刹那。どうして黙ってるんだ?」
二人の視線は秋二の背後へと向けられている。
「誰がどう規格外か、後でじっくりと教えて貰おうか」
油を注し忘れた機械が動作する様に、ゆっくりとした動きで秋二は後ろを向く。
「……織斑先生、どうして出席簿を振り被っているのでしょうか?」
「これか? 決まっている。馬鹿共の脳天に振り下ろす為だ」
「俺は暴力には屈しない……!」
「これは暴力ではない。――――指導と言うんだ」
この日も出席簿による犠牲者がカウントされた。
「今日は模擬戦を実演してもらおう。セイエイと……」
「教官、私にガンダムと戦わせて下さい」
姉さんの考えを遮る様に銀髪眼帯ドイツ軍人の転入生、ラウラ・ボーデヴィッヒが即座に名乗り出た。頑なに刹那を敵視するその姿勢は、マジでガンダム以外は眼中に無いと言った感じだ。刹那には悪いが、彼女にはずっとそうしていてくれると俺の精神衛生的に助かる。俺はいきなりビンタをかます様な奴の相手は遠慮したい。
「……いいだろう。セイエイもいいな?」
「ええ。ちなみに、制限時間は?」
「20分が経過しても勝敗が着かなければ引き分けとする。仮に相討ちで医務室に運ばれようが、協調性に欠けるお前達ならいてもいなくても変わらん。逆にスムーズに授業が進むかもしれん」
姉さんよ、事実だとしても限度があると思うんだ。一夏は隣で肩を震わせて笑うのを堪えてる。お前、絶対に声に出すなよ。確実に飛び火するから。
「準備出来たな? では、始め!」
黒を基調としたラウラの機体、シュヴァルツェア・レーゲン。その姿の中で特に目を引くのは、機体背部の大型カノン砲だ。シールドエネルギーの消費を抑えやすい実弾装備、いかにも軍が好みそうな武器だ。それと対峙する刹那が今回選択したのはアリオスガンダム。この前のクラス対抗戦以降、授業や訓練時間を含めたあらゆる場面で刹那がダブルオーを使用している姿は見られない。当人曰く、調整中らしい。
機体展開後、上空で待機していた両機は同時に動き出していた。先程の開始の合図を受けてから初動に移るまでの速さは、互角。両者共に射撃武器で攻撃を行い、そして回避しあった。それ自体はこの学園に在籍していれば、既に見慣れた光景だ。
「認め難いのですが……彼女、能力は高いですわね」
「あれは意識してどうこう出来る領域じゃないわよ」
「眼帯付きであれか。世の中は広いな」
「どういう事だよ?」
ISの戦闘では普通のワンシーン。だがセシリアや鈴、箒はそれを見てラウラを評価する言葉を口にした。その事に疑問を挟んだ一夏だったが、それにはシャルルが答えた。
「一夏。オルコットさん達はボーデヴィッヒさんの反応速度の事を評価したんだよ」
「反応速度?」
「恐らくだけど、彼女には相手が銃のトリガーを引く瞬間が見えているんだ。彼女の動きをよく見てみると、撃たれる前に回避行動に入っているから」
「マジかよ……けどあんな高速戦闘の最中に、そんなのが可能なのか?」
「普通なら無理だよ。生まれ持った素質や長い時間を掛けて特殊な訓練を行った……とかでないととてもじゃないけど実戦レベルにまでならない。あれはそんな芸当なんだ」
シャルルの解説を聞いた生徒達の視線は、今もなおアリオスの射撃を軽々とあしらい続けているラウラへと向けられていた。ホームルームでの出来事で周囲との間には深い溝が生まれていたが、それは実力に裏打ちされた故の行為なのだと痛感させられる。そんなラウラの姿は姉に通じるものがあると秋二は思ったが、口には出さなかった。言葉にすれば出席簿が頭部に差し向けられるのは明白、賢明な判断だと内心で自画自賛する。
「――――セイエイはそのラウラと同レベルの反応速度を有しているぞ?」
それはこの瞬間まで千冬だけが気が付いていた事実。それが今、周知の事実へと変化する。その言葉が理解され一瞬の戸惑いが生まれた後、幾つかの視線が刹那へと注視される。
「あ、今砲撃が放たれるよりも一拍先に対応しましたよ。セイエイ君も超反応持ちで確定ですね」
「超反応、ですか?」
「いつからだったか、あの手の超人的な反応はそう呼ばれ始めた。世の中には自身の経験によって同様のパフォーマンスを実行出来る存在も数人、確認されているがな」
「何を隠そう、織斑先生もその内の一人なんですよ!」
「山田先生、それは昔の話だ。止してくれ」
やっぱり規格外じゃん、俺があの出席簿の餌食になる必要は無かったんだ! と思っても、言葉にしないのはお約束である。誰しも自分の身が大切なのだ。そう思うだろ?
「私の事はどうでもいい。お前達、今は模擬戦を見るのに集中しろ」
素直に視線を模擬戦中の二機へと向ける。アリオスが腕部のGNビームサブマシンガンを連射しながら、シュヴァルツェア・レーゲンを追い回している。そのビームの雨がその黒い装甲に直撃するのは時間の問題かと思った瞬間、ラウラが右手をビームが迫り来る方向にかざした。
――――ビームは、消えた。
「このシュヴァルツェア・レーゲンの停止結界の前に、貴様の攻撃は通らん」
「停止結界――――AIC、慣性停止能力か」
「やはり知っていたか。ハイエナの様な情報収集力は健在の様だな……!」
「それがどうした」
刹那は一度機体を巡航形態に変形させると、ラウラから大きく距離を取った。再度人型へと変形すると、拡張領域から武装を呼び出したのだろう。機体背部に何かしらの追加パーツ、右手には大型のビームキャノンを装備している。見るからに火力増強を目的としているのがわかる。だが相手は超反応持ち、その大型の武器で攻撃が当たるのか?
「ガンダムお得意の追加装備のお出ましか」
「さっきから随分と棘のある言い回しだな。何故だ?」
「貴様に答える必要は無い!」
瞬時加速(イグニッション・ブースト)で一気に間合いを詰め、近接戦闘に持ち込もうとするラウラ。それに対して刹那はGNキャノンのビームで迎え撃った。それまでのアリオスの武装とは比較にならない大威力のビーム。ラウラは回避するでも無く、今度は両手を同時に振るった。すると霧散するかの様に、ビームは消え去った。
「どうしてガンダムのビームが消されるんだ?」
過半数が思ったであろう疑問を一夏が口にした。俺もどういう原理なのかさっぱりわからん。
「それはですね! ガンダムやアヘッド等のビームはISのシールドエネルギーでは無く、ドライヴから供給されるGN粒子に依存してます。……ここまでは皆さん良いですよね?」
山田先生が解説してくれるのか。今日はいつもより五割り増しで頼もしい気がするな!
「ガンダムのビーム兵器はGN粒子を収束・圧縮したものです。ですので距離が離れすぎると収束の限界を越え、ビームは威力が低下したりするわけです」
「では、あれは収束の限界時間まで止められたのでビームが消えた。という事ですか?」
「デュノア君の解釈で恐らく正解でしょう。補足しますとオルコットさんのブルー・ティアーズの様なレーザーはあのAICでは止められないはずです。甲龍の衝撃砲は逆に相性最悪ですね」
「うぐっ!」
うわぁ。流れるような言葉の暴力で鈴が叩きのめされたぞ。でも内容は事実らしく、鈴は言い返せないみたいだ。今の説明が確かなら、インパルスのビーム武装は機体エネルギー依存だから止められない。ミサイルやレールガン、バルカンは効かないだろう。仮にラウラと対峙した場合について考えていると、上空から何やら言い争いが聞こえる。
「クッ! 何故AICのエネルギー波を回避出来る!?」
「…………」
上下左右から迫り来る6基のワイヤーブレードによる攻撃。そしてアリオスの回避先地点へと狙いを定めていたと思われる停止結界のエネルギー波、どうやら刹那はそれをことごとく回避しているらしい。代表候補生達が一夏にしている説明によると、レーゲンのエネルギー波に触れた対象は問答無用で動きが封じられるらしい。……それってタイマンならほぼ無敵だよね!? このシマだとそれノーカンだから!!
「…………クハハハハ! ドイツ軍御自慢の超兵はどれ程の完成度かと思ったが、これじゃとんだ期待ハズレじゃねーか!!」
「貴様ァ!」
「『何故AICのエネルギー波を回避出来る!?』って言ったよなァ? ……テメェの動きは動物の様に単純でわかりやすいからに決まってんだろーが!!」
刹那の豹変にグラウンドにいる面々は揃って驚いている。訂正、何か懐かしいモノを見る様な視線を刹那に向けている姉さんをその中から外す。何かが記憶の中で引っ掛かったが、模擬戦の終わりを告げる合図に意識は引き戻されてしまった。
結局、この模擬戦は引き分けで幕引きとなった。試合終了後には刹那の雰囲気は元に戻った様に思えたが、その後の実機を用いた訓練の最中では誰も会話を振れなかったらしい。
(面倒な事なんか起きなきゃいいが……)
こんなささやかな願いすら叶わない事を、俺は後日思い知らされる。
お待たせしました。
例の二機は感想にも出ていた自由と正義でした。