戦場を駆る歌姫と記憶を無くした鍵使い   作:ネヘモス

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とある島、星型の木の実がなる木の上で。

「ソラ、どこに行っちゃったの?」

赤髪の、ミドルヘアの少女が泣いていた。自分を助けることと引き換えに、この世界から消え去った少年を想って。


鍵使いと奏者

「なるほど、我々の言う『アンノウン』の本来の名前は『ハートレス』と呼ばれるもので、心の闇に引き寄せられて現れる、そういう事だな?」

 

「そうだ。ソラ、さっきキーブレードを大槍に変えた少年は本来の記憶を失っている。あまり手荒な事はするな。例え本来の力を思い出せないのだとしても、アイツはマスターに匹敵する実力者だからな」

 

「分かった。緒川にそのように伝えよう」

 

弦十郎は突然現れた黒コートの少年に驚いたが、少年に敵意がないと分かるやいなや、モニターに写っている少年、立花宙について話し合っていた。

まず、彼は記憶を失っており本来の力は出せないと言うこと。黒コートの少年は「大切なものを取り戻した代償」と言っていた。それと、本来キーブレードは基本的に一人に一本しか宿らない事も教えてくれた。だが、宙や彼自身は特殊な事情で例外で、宙は限定的にキーブレードを二本操ることができ、彼自身は普通に二本のキーブレードを自在に操れるらしい。

そして、奏がキーブレードを使えた理由、それは、宙の本来持っていた「目覚めの力」が起因してる可能性があるという。絶唱の力をキーブレードが吸収した時に、宙の心と奏の心が触れ合って、奏に何かしらの変化が起こり、純粋な「守りたい」気持ちに反応して勝手にキーブレードが選んだのだろうと。

 

「さて、俺はここらで帰らせてもらう。元の世界の仲間に現状を知らせないといけないからな」

 

「ありがとう、色々助かった。君の名前を教えてくれ。宙くんに伝えておこう」

 

黒コートの少年は少し考えて、頷いた。

 

「ロクサス、それが俺の名前だ」

 

それだけ言い残すと、闇に飲まれて消えていった。

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「それでは私が現状の説明をするわね」

 

眼鏡をかけた白衣の女性、櫻井了子が翼と奏に状況を説明した。宙は連れて行かれたあと、二課の別室で休んでいた。

 

「まず奏ちゃんのLiNKERの反作用だけど、きれいさっぱり無くなってるわ。その代わり、二度とガングニールを纏うことは出来ない」

 

「やっぱりそうなのか…」

 

「ただし、歌うことでフォニックゲインを生み出すのは可能みたいね」

 

「どういう事だ?」

 

了子の言うことを纏めるとこういう事になる。まず、奏を蝕んでいた毒素は浄化されてるということ。その代わりに、ガングニールを纏えない、即ち奏者になれないという事だった。だが、今回の戦いでキーブレードという武器の使い手に選ばれた奏は言うなれば、二課で唯一アンノウンに対抗出来る存在になったのだ。

 

「それと、あのキーブレードって武器を持ってる限り、どうやらノイズの攻撃を遮断できるみたいよ?」

 

「そんな、デタラメなことが…」

 

「あの宙って男の子のキーブレードの変化を見たでしょ?あくまで私の推論だけど、キーブレードはこの世界の物理法則に縛られない。だから、ノイズも手を出せないのよ」

 

言われてみればそうである。宙のキーブレードは見た目からは想像もつかない急激な変化を遂げた。片手剣が大槍に姿を変えたのだ。どう考えても物理法則を無視してる。

 

「ところで、何で奏は選ばれたのですか?」

 

「多分、絶唱を使った時だな。あの時私、宙の心と触れ合ったんだ。その時にアイツが私の代わりに戦うから歌ってくれって、そしたらガングニールは無くなってるわアイツはノイズを倒すわで歌いながらでも困惑したんだぜ?」

 

「でも、奏さんはノイズへの復讐よりも目の前の少女を守ることを選んだ。だから、キーブレードが奏さんを選んだんだ」

 

そこに第三者の声が響いた。声の主は件の少年、立花宙その人だった。

 

「あら?意外に早いお目覚めね?」

 

「流石はモーグリ印のハイポーションってところかな?」

 

『モーグリ?』

 

すると、白いぬいぐるみのような何かが宙の前に現れた。

 

「クポポー。ソラ、呼んだクポ?」

 

「あの時の変なやつ!?」

 

「失礼クポ!ボクはモーグリのモグだクポ!」

 

「まあまあ、奏さんもモグも落ち着いて。ね?そうだモグ、悪いけどエリクサーとエーテルのセット頼める?」

 

「いいけど、材料によるクポよ?」

 

「ねえ、宙くん?この子何者なの?」

 

宙、ここに来て話に着いていけない三人に気がつく。

 

「ごめんごめん、こいつはモーグリのモグ。簡単な回復薬を売ってくれたり、合成で強力な道具を作ってくれたりするんだ。でも助かったよモグ。お前がエリクサー届けてくれたから、響は一命を取り留めたんだから、サンキューな」

 

「例には及ばないクポ。それとこれは差し入れクポ!」

 

モグから何やら光るものを宙は受け取った。それは銀色の一対の翼をイメージした様な、二つのイヤリングだった。

 

「ソラ以外の二人に作っておいたクポ。これは闇に対する耐性を上げてくれる優れものクポ!」

 

宙はイヤリングを受け取ると、それを奏と翼に渡した。

 

「奏さんと翼さんは二人で一対の翼、でしょ?」

 

「全く、アンタには敵わないな」

 

奏は鍵使いとしてハートレスを

 

「あ、ありがとうございます」

 

翼は奏者としてノイズを倒すことを改めて誓った。

 

それを見届けた了子はそろそろかしらと呟くと、

 

「では、宙くん。改めましてようこそ

 

 

特異災害対策起動部二課へ」

 




「ソラを見つけたのは良いが、ディスティニーアイランドにもトワイライトタウンにも帰れないなんて、どうしたものかな…」

ロクサスが1人で路地裏を歩いていると、

「クソ!こんな時にアンノウンかよ!!」

銀髪の少女がハートレスの大群から逃げていた。そして、盛大にコケた。

「チィ!こうなったら…!?」

ロクサスがすかさず少女とハートレスの間に入る。そして、両手に白と黒のキーブレードを出現させ、

「逃げろ」

それだけ言うと、ハートレスの群れにぶつかって行った。

これが、ロクサスと雪音クリスの出会いであった。
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