雄英高校へやって来たまではいいが、俺と響香は早くもある問題に直面した。
「ったくどんだけ広いんだよこの学校はよぉ!?1-Aのクラスはどこにあるってんだぁ!?」
「落ち着きなよ幽義。確かに広過ぎて現在進行形で迷っちゃってるけどさ……」
この学校、滅茶苦茶広かった。響香と同じクラスだったのはラッキーだったが、このままだと入学初日から遅刻しちまいそうだ。
「誰だよこんな複雑で広い学校に設計した奴はよぉ?もし会ったら絶対文句言って………あん?」
文句を言いながら1-Aのクラスを探していると、廊下の隅をモゾモゾしながら進んで行くデカい芋虫みてぇーな物体を発見した。
「なぁ響香……あの芋虫みてぇーなのはいったいなんだ?」
「いや、ウチに聞かれても……」
「……ん?なんだお前等?こんな所で何してる?」
「「うわっ!?喋った!!?」」
いきなり喋り出したからビックリしてつい響香と揃ってスタンドを出してしまった。攻撃はしてねぇーがな。
……って、よく見たら芋虫じゃなくて寝袋に入った人間だった。しかも駅のホームとかにいればホームレスと間違えちまいそうな風貌をした小汚い黒髪長髪の男だ。
「えぇ〜っと…俺達は今日この学校に入学した者なんだがよぉ。広過ぎて1-Aのクラスがどこにあんのか分からねぇ〜からずっと探してたら、廊下の隅をモゾモゾ進んでるあんたを見つけたんだよ」
「あぁ〜そう言う事か。結構居るんだよな、この学校広いから……俺は君達の担任になる
((担任かよ!!?))
全然見えねぇー!!いや、ここは雄英のヒーロー科だ。教師は全員ヒーローだから、普段はヒーローのコスチュームで過ごしているんだろう。………少なくとも俺は寝袋に入ってモゾモゾ動くヒーローなんて聞いた事ないがな!!
「じゃ、さっさと教室に向かうから。2人共付いて来い」
「え?あ、ちょっと……」
「そのままの状態で行くのかよ……」
俺と響香は廊下をモゾモゾ進んで行く担任に続いて、自分達のクラスに向かった。
★
((ドアでっか……))
教室に着いて先ず俺達が思い浮かんだ言葉はそれだった。多分図体がデカい“個性”持ちの為に考えられて作られたんだろうな。ドアは開けっ放しになってるが、入口付近で茶髪でなんかふわっとしている少女と緑色の縮毛の少年と、眼鏡を掛けた委員長っぽい雰囲気の少年が話していて入らない。
「おい、お前等。話し合ってるとこ悪いが、通してもらえねぇ〜かなぁ?通行の邪魔になってるぜ?」
「む!?こ、これは済まない!」
「え?あ!!ご、ごめん!」
「わ!ホンマや!ごめんな……」
3人が退いてくれたので、俺と響香は教室に入り、自分の席を探して座った。それと同時に廊下にいた相澤先生が話し出した。
「お友達ごっこしたいなら他所へ行け。ここはヒーロー科だぞ……」
相澤先生は寝袋に入ったまま立ち上がり、ファスナーを開けて寝袋から出た。ほぼ全身真っ黒なコスチュームで、首にはマフラーの様な布が何重にも巻かれている。
「ハイ、静かになるまで8秒かかりました、時間は有限、君たちは合理性に欠くね。担任の相澤消太だ。よろしくね。早速だが、コレ着てグラウンドに出ろ」
そう言うと相澤先生は自分が入っていた寝袋から雄英の体操服を取り出してみんなに配り始めた。どっから出してんだよ。
・・・・・え?体操服着てグラウンド?
★
「「「「「“個性”把握テストォ!!?」」」」」
体操服に着替えてからグラウンドに出て、待っていた相澤先生にいきなり言われたのはこれから“個性”把握テストってヤツをやるというものだった。
「入学式は!?ガイダンスは!?」
「ヒーローになるなら、そんな悠長な行事、出る時間無いよ…」
いやまあ確かにそうだけども!?グラウンドに俺達しかいないって事は、少なくとも隣の1-Bとかは入学式に出てるよなぁ!?
「雄英は自由な校訓が売り文句。そしてそれは教師側もまた然り……お前達も中学の時にやってるだろ?“個性”使用禁止の体力テスト。国は、未だ画一的な記録を取って平均を作り続けてる。合理的じゃない…まぁ文部科学省の、怠慢だな。実技入試成績のトップは狭間奪だったな?狭間奪、中学の時、ソフトボール投げ何mだった?」
「あん?確か最後に測った時は……74mだったな」
俺は中学の時に測った最後の記録を相澤先生に伝える。なんか髪が紅白の奴と、金髪で爆発した様なトゲトゲの頭をした不良みたいな奴が敵意みたいなものを含めた視線を向けて来るが気にしない。面倒だからな。
そう思っていると、相澤先生は何やら機械が埋め込まれたボールを投げ渡して来た。
「んじゃ、“個性”を使ってやってみろ。円から出なけりゃ何をしてもいい。投げろ。思いっきりな」
「………ホントに何やってもいいんだな?」
改めて確認すると先生はコクリと頷いた。それを確認した俺は体操服の上のジャージを脱ぎ、空中に投げる。響香とおそらく先生以外はこれが何を意味するか分からず首を傾げる。
「“D4C”!!」
俺は体操服と地面に挟まれて“平行世界”へ行き、入試の時にも連れて着た脇腹に穴がある薄いピンク色のシャツを着た俺を連れて戻って来た。
「え!?えぇ!?き、消えたと思ったら増えた!?」
「いったいどんな“個性”なんだ?」
「なんだか騒がしいな……で?今度はなんの用で呼んだんだ?」
連れて来た俺は騒ぐ生徒達をチラッと見てから俺に何故呼んだのか聞いて来た。
「今“個性”使った体力テストみてぇーなヤツをやっててな。これからやるのがソフトボール投げなんだよ。ここまで言えば分かるよな?」
「……成る程な、理解した」
「んじゃ……やるぜぇ!!“D4C”!」
「“クラフト・ワーク”!」
俺は円の中心でボールを真上に放った。そしてそのボールを連れて来た俺から現れた歯を食いしばった緑色のエイリアンの様な見た目をした人型のスタンドが触れると、ボールはその場で
“クラフト・ワーク”。第5部『黄金の風』に登場したサーレーのスタンドだ。触れたものをその場に固定する能力を持っており、固定されたものに衝撃を蓄積させ、能力解除時に一気に解放させる事が出来る。
俺は“クラフト・ワーク”が固定したボールを“D4C”のパワーで斜め上方向に殴り続けた。殴ると狙いが正確じゃあなくなるが、今は正確な狙いは必要ないからなぁ!
「よし!いいぞ!」
「“クラフト・ワーク”!能力を解除しろ!」
ボールにかけられた固定の能力が解除されると、殴られた衝撃が一気に解放され、ボールはまるでぶっ放された大砲の弾みてぇーなスピードで空の彼方へ消えていった。
「………ボールが耐え切れずブッ壊れたか。……先ず、自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」
相澤先生が持ったスマホの様な機械には、『測定不能』と書かれていた。それを見た生徒達は騒ぎ出す。
「何だこれ!!すげー面白そう!」
「測定不能ってマジかよ!今何やったんだ!?」
「個性を思いっきり使えるんだ!!さすがヒーロー科!!」
『面白そう』と言う単語を聞いて相澤先生が眉をピクッと動かした。雰囲気もさっきのホームレス的なものからガラリと変わった。
………なんか、嫌な予感がする。
「………面白そう…か。ヒーローになる為の3年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?…よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し除籍処分としよう」
・・・は?
「「「「「はあぁぁぁぁぁぁぁ!!?」」」」」