耳郎 響香side…
『狭間奪少年の準備が整ったようなので、これより屋内対人戦闘訓練を開始する!スタートの合図と共にヒーローチームのインカムは使用不能になるが、誰かが戦闘不能になった場合はこちらからインカムに連絡するぞ!』
耳に付けたインカムからオールマイトのスタートの合図が聞こえる。ウチ等3人は開始前の作戦会議は禁止されてるからそれぞれ黙って開始の合図を待っている……んだけど、なんか隣の2人の雰囲気が悪い。あまり話した事は無いけど、なんとなくチームプレイは期待出来ない事は理解出来るぐらいにはギスギスしてる。
『それでは、屋内対人戦闘訓練……スタート!!』
「始まったな。2人共退がってろ、俺がやる」
スタートの合図が出されると、轟がそう言って右手でビルに触れた。何をするのかは知らないけど、今の言葉に爆豪って人がキレた。
「あぁ!?テメェこの半分野郎!この俺に指図してんじゃ…ッ!!?」
「……ッ!!?」
すると轟が触れている部分から一瞬でビルが凍り付いた。轟は幽義の“ホワイト・アルバム”みたいな“個性”を待っているみたい。
さっきまで怒鳴っていた爆豪も今は唖然としてる。
「これで終わりだ。さっさと核見つけに行くぞ」
「……チッ!」
「あ、ちょっと待って。先にウチの“個性”で確認してから入った方が……」
ウチはビルの中に入ろうとする2人を止めようとしたけど、轟はそのままビルのドアノブを握ってドアを開けた。
「ぐあっ!!?」
「あん?何やってんだ半分野郎」
ドアを開けた瞬間、轟が急に握った右腕を押さえてドアから離れた。その時ウチには轟の右腕の中に入り込んでいるピンク色の糸に繋がった大きな
「な…んだ!?ぐッ……!?」
「なッ!?オイ!!」
轟はそのまま壁に叩きつけられ、そのままビルの中に引き摺り込まれて行った。やっぱり幽義はまだ終わってなかったんだ!それにあの釣り糸と針には見覚えがある。前に幽義に紹介してもらった“平行世界”のちょっと頼りない感じだった幽義のスタンドだ。
名前は確か……“ビーチ・ボーイ”!!
「クソが!!何が『これで終わりだ』だぁ!?あの半分野郎が!!」
「ちょ!?爆豪待って!1人で行ったら……ッ!?」
1人で轟の後を追おうとする爆豪を呼び止めようとしたけど、上から聞き覚えのある重圧なプロペラ音がして上を見上げると、幽義の“エアロスミス”がこっちに向かって急降下している光景が目に入った。
ドガガガガガガガガガッ!!!
「ッ!“ダイバー・ダウン”!!」
“エアロスミス”が撃って来た弾丸を“ダイバー・ダウン”の拳で弾きながらウチはビルの中に転がり込む。爆豪は既に奥へ行ってしまったのか姿は見えない。“エアロスミス”は一度急上昇してからウチがいるビルの入口に機銃を撃ちながら向かって来た。だからウチは出来るだけ呼吸をせずにビルの奥に向かって走る。
“エアロスミス”は二酸化炭素を探知する能力があるのは知っている。幽義はウチの呼吸で出る二酸化炭素を探知してウチを攻撃してるんだ。
(“ダイバー・ダウン”!!)
ウチは“ダイバー・ダウン”をビルの壁に潜行させ、手足を階段の様に外に出させてからそこを登って息を止める。ウチの呼吸を探知出来なくなった“エアロスミス”はそのままウチの前を通り過ぎてビルの奥に飛んで行った。
普段は殺傷能力が高いからって理由で模擬戦に“エアロスミス”を使わなかった幽義がこんな使い方をするって事は、向こうも本気でこっちを潰しに来てるみたい。
『と、轟少年!リタイア!』
「……ッ!」
やっぱり轟はやられちゃったか。爆豪はまだ倒されてないみたいだけど、見えないし触れない攻撃が可能な幽義が相手だと分が悪いと思う。
………って言うかコレ、ウチがいなかったら皆初見で倒されちゃうんじゃない?やっぱ幽義のスタンドはズルい。
(兎に角、爆豪となんとかして合流しないと)
ウチは壁にプラグを刺して爆豪と幽義の場所を探す。耳を澄ませていると、同じ階でそう遠くない部屋の中で爆豪と幽義達
[死ねぇぇぇぇぇ!!《BOM!!》]
[さっきから死ね死ね死ね死ね……ヒーロー目指してんならまず口調をどうにかした方がいいんじゃあねぇーか?]
[黙れこの分身野郎!ブッ殺す!]
[ホントォ〜〜に口悪いなぁ、お前]
どうやら爆豪はかなり苦戦しているみたい。ウチはすぐに“ダイバー・ダウン”から降りて幽義達がいる部屋へ急ぐ。少しすると爆発音がする部屋の前に辿り着き、ドアの隙間から中を覗くと、爆豪が全身に丸い凸があるのとレイピアのような武器を持つのが特徴の人型スタンド…確か“平行世界”の幽義のスタンドの“ソフト・マシーン”に刺されたのが見えた。どうやら遅かったみたいだね。
刺されて出来た穴から空気が抜け、爆豪の体が空気の抜けた風船の様に萎んでいく。これがあのスタンドの能力。あのレイピアを突き刺した対象を空気の抜けた風船の様に萎ませる能力。側から見たら死ぬんじゃないかと思うだろうけど、あれで刺された生物は仮死状態になるだけで、能力を解除すれば意識を取り戻す。
「ク……ソが…ぁ……」
『ば、爆豪少年!リタイア!』
「これで2人目だ。さてと……そこにいるのは分かってる。入って来い」
バレてたみたいだから大人しく部屋の中に入る。中にはウチがよく知る幽義と、“平行世界”から連れて来られた釣竿を持った幽義と、やたらトゲトゲした服の幽義がいた。トゲトゲした服の幽義の手には萎んで仮死状態の轟と爆豪がいて、ご丁寧に拘束用テープも巻かれている。
「気付いてたんだ?」
「視線に敏感なんでな。ドアの隙間からこっち見てたのは分かったぜ」
そういえばそうだった……。
「てか、思ったより大人しく入って来たな?無視して核を探しに行くって手もあったんじゃあねぇーか?」
「普通ならそうするけど、“ソフト・マシーン”がいるって事は、3人の内誰かが萎ませてポケットにでも入れてるんでしょ?」
「…!やっぱお前の勘スゲェーな。正解だ」
この世界の幽義がポケットから折り畳んだ黒い物体を取り出した。やっぱりそうやって持ってたんだ。
「んじゃ、俺は帰るぜ。今度なんか奢れよ?」
「分かってるっての。あぁ、“ソフト・マシーン”の俺は悪いがもう少し残っててくれ。ただし、手は出さないでくれよ?」
「分かってるって、後でマ○クのバーガーセットな?」
「……分かったよ」
この世界の幽義は釣竿…“ビーチ・ボーイ”を持った幽義を能力で元の世界に帰す。トゲトゲした服の幽義は部屋の隅の方にあるドラム缶の上に座って傍観を決めるようだ。
「これで1対1だが、今回俺は他のスタンドも使うからよぉ、そっちも本気で来いよ?」
「幽義相手に手加減とか出来ないって!行くよ!“ダイバー・ダウン”!」
「来やがれ!“エアロスミス”!!」
そしてウチは“ダイバー・ダウン”を、幽義は“エアロスミス”を出した。“エアロスミス”の弾丸と、“ダイバー・ダウン”のラッシュが交差する。
そして時間にして数分後……勝負が付いた。
互いにコスチュームはボロボロだけど、目の前には「しまった!」と言いたげな表情の幽義がいて、ウチの手の中には、隙を見て幽義のポケットから取った折り畳まれた
「この勝負でのウチの勝利条件は、幽義を倒すか……核に触れるかなんだよね。普段はウチとどっちが一本取れるかの模擬戦だったから、そこんとこ忘れてたでしょ?」
「………あぁ〜〜あ、すっかり忘れてた」
『ヒーローチーム!!WIN!!!』