屋内対人戦闘訓練が終わり、俺と響香、そして“ソフト・マシーン”の能力を解除されて元に戻ってから一言も喋っていない轟と爆豪と一緒にオールマイトと他の皆が待機しているモニター室へやって来た。訓練中の様子は全部ここで観られているらしい。
「初戦お疲れ様!ヒーローチームは勝利おめでとう!……って言いたいんだけど、轟少年と爆豪少年は大丈夫なのかい?さっきから一言も喋っていないが…?」
「………あぁ」
「……なんともありません」
オールマイトに心配されて、2人はなんともないと言っているが、そうには見えない。まぁ仮死状態から元に戻ったばかりだから、精神的に疲れたんだろうな。
「そ、そうかい?まぁ無理はしないようにね。それと訓練が終わった後にその講評をしようと思ってたんだけど……カメラでは何が起こっているのか殆ど分からなかったから講評出来ないんだよね」
まぁ、俺と響香の使うスタンドはカメラには映らないから、ただ互いに距離をとって走り回ったり、周囲の壁や床が突然破壊されたりした様にしか見えなかっただろうから講評のしようがねぇーわな。
「そこで済まないが、狭間奪少年と耳郎少女には何があったのか説明して欲しいんだけど……頼めるかい?」
オールマイトは「あ、嫌ならいいんだよ?」と後から付け足しているが、聞きたくてしょうがないってのが雰囲気で分かる。それは待機していた他の生徒達や、表情は暗いが轟と爆豪も同じだ。
まぁ別に話しても問題ないので、説明する事にした。
「俺の“個性”は【守護霊】。スタンドと呼んでいる目には見えず触れない、そして特殊な能力を持った精神エネルギーの塊の様な存在を操る“個性”だ。だからカメラにも映らなかった」
「む?しかし映像では耳郎くんはそのスタンドとやらを認識していた様だが……?」
飯田が顎に手を当てながら疑問を口にすると、他の皆も確かにと頷いた。
「そりゃあそうだろうよ。なんせ響香も俺と同じくスタンドを持っているんだからな」
「持ってるって……そのスタンドというものは狭間奪さんの“個性”なのですわよね?何故耳郎さんが同じものを持っているのですか?」
「さっきも言ったが、俺の操るスタンドにはそれぞれ特殊な能力を持っている。その能力の内の1つを使って、俺は昔響香に1体のスタンドを与えたんだ。……そうだな、今響香は“個性”を2つ持っている様なものって言やぁ理解出来るか?」
「「「「「ッ!!?」」」」」
俺の例えが解りやすかったのか、クラスメイト全員とオールマイトは顔を驚愕に染める。まぁ、無理もない。他人に“個性”を与える“個性”なんて聞いた事ねぇーからな。
「因みにスタンドにはそれぞれ名前があって、ウチが幽義に貰ったスタンドの名前は“ダイバー・ダウン”。人や物体に潜り込む能力を持っていて、内部から操ったり、構造を組み替えたり出来るよ」
「ッ!!もしかして昨日のテストの時に握力計を壊したり、凄いスピードで移動してたのもそのスタンドの力!?」
宙に浮いた手袋…確か透明人間の
「マジか!?“個性”2つ持ちってスゲェ!」
「じゃあさっき轟と爆豪を空気が抜けた風船みたいにベロベロにしたのもその守護霊の能力ってヤツなの!?」
「つーか名前カッコイイなオイ!じゃあさ狭間奪!俺にもなんかスタンドくんね?」
なんか金髪チャラ男みたいな奴が俺にそんな事を頼んで来た。こいつに続いて次々と自分にもスタンドをくれ、もしくは貸してと頼んで来る。
お前等なぁ……スタンドDISC1枚手に入れるのがどれだけ大変なのか知らねぇーからってそんな「100円貸してくんね?」みたいなノリでスタンドをねだってんじゃあねぇーよ。
「悪いがそれは無理だ。スタンドを与えられるのは適正のある限られた人間や動物だけだからな。それに普通知り合ってまだ2日も経っていねぇー奴にスタンドをやる訳ねぇーだろーが」
「あ……それもそうか。なんか悪いな」
「分かりゃあいいんだがよ。………あん?」
「なんて応用力のある“個性”なんだ。しかも能力によっては戦闘から敵の拘束それにもしかしたら治療とかにも使えるかも知れない。それに姿を見る事が出来ないって事は攻撃を相手にバレる事なく仕掛ける事が出来るだろうしブツブツブツブツブツブツブツブツ…………」
なんかどっかからブツブツ声が聞こえて来たのでそっちを向くと、なんか何処となくオールマイトをモデルにした様なコスチュームの緑谷が顎に手を当ててずっとブツブツ呟いていた。
何こいつ怖ッ!!?“ザ・ワールド”の俺程じゃあねぇーがなんか別の意味で怖いぞこいつ。他の皆も心なしか距離とってる感じがするし、これもしかして子供が見たら泣くんじゃねぇーの?
「な、なぁ?あいつはいつからあの状態なんだ?なんか怖いんだけど……」
「幽義の説明が終わってからずっとあの調子だと思う。なんかウチもちょっと怖くなって来た」
俺達が緑谷から距離を置いて話をしていると、モニター室の壁に掛けられた時計を見たオールマイトが手を叩きながら話し出した。
「話で盛り上がっている所済まないが、そろそろ次のチームの戦闘訓練を始めるぞ!話はそこまでにして、次の対戦チームを決めよう!」
その後、次々と対戦が行われ、初めての“ヒーロー基礎学”は終わりを迎えた。なんか授業が終わった後、オールマイトが随分焦った様子で部屋を出て行ったが……具合でも悪かったのか?
まぁ、俺が気にする事じゃあねぇーか。