「ガアァァァァァァァ!!!」
「ウワッ!?っと、取り敢えず逃げるしかねぇーか!」
横薙ぎに振るわれた道路標識をしゃがんで回避し、野郎の脇を抜けて走る。正面から戦うのは“無個性”の俺にはパワー的に無理がある。道路標識を引っこ抜いて武器にする様な奴だからな。
(とにかく耳郎がヒーローと警察を連れて来るまでの時間を稼がねぇーとな。しかし俺、生き残れっかな?)
俺は奇声を上げながら追って来る奴をチラッと見る。正直滅茶苦茶怖い。だが幸い奴は足がふらついてあまり早く走れねぇーのか、すぐに追い付かれるなんて事はない。普段から体鍛えといて良かったぜ。
「……ッ!うおッ!!?」
嫌な予感がして少し頭を下げると、奴が投げたと思われる道路標識が俺の髪を少し擦りながら頭上を猛スピードで通過して行った。もし頭を下げてなかったら俺確実に死んでた!
(冗談じゃあねぇーぞこのカ○リキー擬き野郎!テメェマジで俺を殺す気じゃあねぇーか!)
どうする!?何か物でもぶつけるか?だがランドセルの中には教科書と筆箱ぐらいしか入ってねぇーし、例えそれ等を投げたとしても奴のあの太い4本の腕に簡単に防がれちまうのがオチだ!
やっぱ今はこのまま走って時間を稼ぐしかねぇ!このまま人があまり通らない道を通りながら耳郎と別れた場所に戻って、そこから耳郎が通った道を辿れば耳郎が呼んだ助けに出会える筈だしな!……多分………きっと。
ガシッ!!
「は?…ヒデブッ!!?」
俺は顔から地面に転んでしまった。幸い鼻血は出てないが、メッチャ痛い!てか誰だよ今俺の足を掴んでんのは!?
俺は鼻を抑えながら自分の足を見て、固まった。何故なら俺の足を掴んでいたのは奴の腕だったからだ。
(な、なんで奴の腕が俺の足を掴んでんだ!?野郎と俺の間は少なくとも
改めてよく見てみると、奴の腕が俺の足を掴んでいる理由が理解出来た。
奴の腕が
「(4本の腕を減らすほどその分残りの腕の長さを伸ばせる“個性”って事かよ!?)ぐっ!?うおおおおぉぉぉぉぉ!!?」
俺はそのまま足を引っ張られ、一度上に上昇してからそのまま地面に叩き付けられた。激しい痛みに動けずにいると、奴が俺に拳を振り下ろして来た。俺は防ぎ切れないと分かっていながらも腕を顔の前に持って来て防御の構えを取り、襲ってくる痛みと衝撃に備えた。
ドゴン!!!
「…………あれ?」
凄まじい音がしたのに痛みや衝撃が全く襲って来る気配がない事に疑問を抱きながら俺は防御の構えを解き、体を起こして周囲を見回すが、どこにも奴の姿は無い。
「み、見逃された?……訳ねぇーよな。最後のパンチは完全に俺を殺す気で打ってたと思うし、だとしたらあいつどこ行った?」
突然奴が消えた事に疑問を抱いていると、背後から驚いた様な声が聞こえて来た。
「…は?え!?どういう事だ!?」
「あ?……はぁ!?」
振り返ると俺も目を見開いて驚いた。てか驚くしか無い。なんせ俺の背後にいたのは……。
「「なんで俺が2人いるんだ!?」」
「え!?狭間奪が2人!?どうなってんの!?」
驚いた表情で俺を見ている
(……いや、待って!ホント待って!?意味が分からん!なんで俺がもう1人いるんだ!?耳郎はヒーロー事務所に向かったんじゃないのか!?)
様々な疑問が次々と浮かんで来るが、答えを得る事が出来ない。ちょっとしたパニックに陥っていると、背後からまたあの視線を感じた。紛れも無い、いつも感じているあの誰のものかも分からない視線だ。俺は反射的に振り返ると、そこにはちゃんと視線の主がいた。
「な!?お、お前は………!?」
『……………』
★
4本の腕を持つ男…
しかし殴った瞬間、狭間奪の姿はまるで最初からいなかったかの様に綺麗サッパリ
「フゥー…!?フゥー…!?」
何処だ?何処へ行った?と四肢寺は息を荒くして周囲をキョロキョロ見回す。だがどこにも狭間奪の姿どころか人影1つ無かった。やがて狭間奪を見つけるのを断念し、歩き出した。
「フゥー…!フゥー…!………?」
その時、道端にあったものに彼の目が止まる。それは誰かが捨てた新聞紙だった。錯乱状態で自分が何をしているのかも分かっていない彼は、何故かその新聞紙が気になってジッと見つめる。
その時………。
「ドジャアア〜〜〜ン……」
「……ッ!?!?!?」
突然新聞紙の
「よお?また会ったなこの野郎。借りを返しに来たぜ」
狭間奪は先程と違って余裕そうな笑みを浮かべながら四肢寺を睨んだ。四肢寺は突然現れた事に驚きはしたが、次の瞬間にはやっと見つけた狭間奪に殴り掛かっていた。
「ガァッ!!?」
だがその腕は狭間奪から約2m手前で止まってしまった。まるで
「どうした?殴って来ねぇーのか?ならこっちから行かせてもらうぜ!!“D4C”」
「グペッ!!?」
狭間奪がそう叫ぶと、四肢寺は体中に凄まじい衝撃を受けて吹っ飛ばされた!そのまま彼は近くに設置されていた自動販売機に激突すると、完全に気を失ってしまった。
「“
狭間奪はそう言うと、「ふぅ…」と小さく息を吐いて壁に背を預けるように座り込んだ。
数分後、耳郎に通報されて駆け付けたヒーローと警察達によって狭間奪は保護され、気を失った四肢寺は無事……ではないが逮捕された。