「はぁ〜……とんだ1日になっちまったなぁ」
カイ○キー擬き野郎をぶっ飛ばしてから数時間後、事情聴取や怪我の治療その他諸々を終えて漸く家に帰って来れた俺は、自室のベッドに座りながら深い溜息を吐いた。
「さてと……“D4C”」
俺がそう呟くと、俺の目の前に巨大な2本の角がウサギの耳のように生えた頭部と全身にある縫い目状の模様が特徴的な白い人型が出現した。
“
俺が前世で好きだった漫画、【ジョジョの奇妙な冒険】に登場する特殊な能力を持ったパワーある
そして俺の目の前にいるウサギの耳の様な角を持つこのスタンドの名前は、“Dirty Deeds Done Dirt Cheap”。日本語に訳すと『いともたやすく行われるえげつない行為』だ。ご覧の通り名前が長いので、英文の頭文字を略して
“
この“D4C”は第7部『スティール・ボール・ラン』に登場するラスボス…ファニー・ヴァレンタイン大統領のスタンドだ。
そしてこいつは、物体に挟まれる事で、“平行世界”を自由に行ったり来たり出来る能力を持っている。
「……いや、なんで俺が使えんの?」
お前前世の漫画の中の能力だろーが。明らかにジョジョと全く関係ないこの世界に存在してていいのか?
まぁ、俺の好きな漫画の能力だし、漫画読んでてついポーズ真似してスタンドの名前を言ったりするぐらいにはスタンドは好きだけどさぁ?
「ひょっとして、転生したから神様がサービスしてくれたとか?いや、それ以外にあり得ないな」
実際に会った訳じゃあないけどありがとう神様。これでもし今日みてぇーに
「でも本音を言えばもっと早く能力発現してて欲しかったがな。毎日誰のものかも分からない視線を受けてた所為で、今じゃ視線に敏感になって………あん?待てよ?」
俺は毎日何処に居ても必ず
そして、内の1つがこの“D4C”だったとして………。
「…………じゃあ」
もう
「時よ止まれぇ!“ザ・ワールド”ォ!!!」
狭間奪は前世の漫画やアニメで見た第3部のラスボス吸血鬼のポーズを頑張って真似しながらそいつのスタンドの名前を叫んでみた。
・・・しかし、何も起こらなかった。
「…………恥っず!!何やってんだ俺?」
バカか俺!?バカ俺は!?“D4C”が発現してる俺が“ザ・ワールド”なんか使える訳が無いだろうが。スタンドは1人に1体!これがスタンドの基本ルールだろぉーが!
「じゃあ、あのもう1つの視線は誰の視線だ?俺はてっきりもう1体スタンドを持っていると思ったんだが……」
『……ハイ、ソレデ間違ッテオリマセン』
「うおぉい!!?」
俺は突如背後から声が聞こえたので、ビックリして座っていたベッドから飛び退いた。慌てて俺が座っていたベッドを見ると、そこには塩基配列の描かれた包帯状のラインが全身に走り、 顔の上半分や腰の辺りなどが紫色の装飾品で覆われている人型のスタンドが俺を見下ろしていた。
そいつを見て俺は目を見開いた。何故ならそいつは“D4C”と同じく、ラスボスが持っていたスタンドだったからだ。
「ホ、“ホワイトスネイク”!!?」
“ホワイトスネイク”。第6部『ストーンオーシャン』のラスボスであるエンリコ・プッチ神父のスタンドだ。
こいつの能力はかなり強力で、“ホワイトスネイク”が対象に触れる事で、そいつの記憶やスタンド能力をDISCとして抜き出す事が出来、それを他者へ挿入する事で、DISCの中にある記憶やスタンド能力さえも与える事が出来る。
神様、“D4C”はまだいいとして、“ホワイトスネイク”まで俺に与えるのは流石にやり過ぎではありませんか?俺は別にラスボスになりたい訳じゃあないんだけど?
「てかお前、自我があるのか?」
『ハイ、自我ハアリマス。御主人様…』
「ご、御主人様……責めて名前で呼んでくれ」
『デハ、幽義様ト……』
第6部のラスボスのスタンドに『御主人様』って呼ばれるのはなんか複雑な感じがする。つーか俺マジでスタンドを2体も持っているのか?しかもチート能力のスタンドを……?
『ハイ、幽義様ニハ、私ト“D4C”…2体ノ スタンド ヲ持ッテオリマス』
「あ、俺の考えてる事分かっちゃう感じ?」
『私ハ、貴方ノ スタンド トナッテオリマスカラ……』
そういうもんなのか?いやスタンド持つ事自体初めてだからそこら辺は知らないけどよ。
「……ん?なぁ“ホワイトスネイク”。お前の能力は人の記憶やスタンドをDISCとして抜き出す事出来たよな?この世界にはスタンドじゃあなく“個性”って力を持ってる奴が殆どなんだが…“個性”はDISCとして抜き出せるのか?」
もし可能ならこの世界ではほぼ無敵の能力だ。どんなに強い“個性”を持っていたとしても、“ホワイトスネイク”が触れるだけで“個性”はDISCとして抜き出され、相手は“無個性”になるんだからな。
すると“ホワイトスネイク”は首を横に振って俺の質問に答えた。
『不可能デス。私ニ出来ルノハ、対象ノ記憶ト スタンド ヲ抜キ取ル事ダケデス。ツマリ私ノ能力ハ、精神ニ影響ヲ与エルトイウ ジャンル ノ能力。ナノデ、精神ガ強ク影響スル スタンド シカ抜キ取レマセン』
「ですよね〜………」
ていうか、今思えばそもそも“個性”はどちらかと言えば身体能力だしな。“個性”まで奪えたら完璧チート能力だし。
『デスガ、命令ヲ書キ込ンダDISCヲ挿入スレバ、一時的ニ“個性”ヲ封ジル事ハ可能デス』
「前言撤回、やっぱり“ホワイトスネイク”はチート能力だ」
つまりどれだけ強い“個性”を持っていたとしても、『“個性”の使用を禁ずる』なんて命令を書き込んだDISCを挿入さえすれば、そいつは一時的とは言え“無個性”同然になるって事だからな。
「ま、これからよろしく頼むぜ?“ホワイトスネイク”、“D4C”」
『畏マリマシタ。幽義様…』
こうして俺はチートなスタンドを2体も手に入れてしまいました。