俺は試験が終わった後、“平行世界”から連れて来た俺達をジュースを奢ってから元の世界へ帰し、試験中に怪我をした他の受験生の治療を行った。
その時俺が使っていたスタンドの名は“クリーム・スターター”。第7部『スティール・ボール・ラン』に登場するホット・パンツのスプレー型のスタンドだ。こいつは自分もしくは他人の肉体を搾り取って放射する能力を持っていて、俺はその能力で転んだり、落ちて来た瓦礫などで怪我を負った受験生達の治療を行った。骨を折っちまった奴等は雄英が用意していた治癒系の“個性”を持った婆さんに治してもらった。物や怪我、エネルギーなどを直す能力を持った“クレイジー・ダイヤモンド”があれば骨折なんかも治せたんだが、生憎俺はまだそいつを持った俺に出会った事がないんだよなぁ〜?
ま、そんな風に怪我人の治療を終えてから家に帰って、そっから1週間ぐらい経過した。んで、今日雄英からの試験結果について書かれた書類が届く筈なんだが………夜になったってのに未だに合格通知が来ねぇ。
(ま、まさか“平行世界”の俺を連れて来たのがマズかったのか?やっぱ“平行世界”の自分とは言え、この世界の試験を受けていない俺を連れて来るのはダメだったのか?)
だとしたら俺、合格出来ないんじゃあねぇ〜か?マズイなぁ〜……もし合格しなかったら響香や波動先輩にどやされるぞ。響香の奴は今日の昼に結果が届いて、合格したらしいしなぁ……これでスタンドをあげた俺が合格出来てなかったら格好悪いぜぇ〜……。
「ゆ、ゆゆゆゆゆゆ幽義!!!」
「ぬわぁ!!?か、母さん!!いきなり“個性”使って部屋に入って来るんじゃあねぇー!!」
すると突然俺の部屋のドアの隙間から滅茶苦茶慌てた様子の母さんがスルリと現れた。合格出来ているのかと心配になっていた俺は驚いて座っていた椅子から落ちた。メッチャ痛い……。
「いつつ………ったく!いったいどうしたんだよ母さん!そんなに慌ててよぉ〜!」
「と、届いたの!ゆ、ゆゆ、雄英からの試験結果!!」
「な、何ぃ〜〜ッ!!?」
母さんが差し出して来た封筒を受け取って確認すると、確かに雄英高校から送られたものだった。母さんは俺に封筒を渡すと、「あ、後で結果を教えてね」と言って“個性”を使って部屋のドアの隙間から出て行った。どうやら1人で見させてくれる様だ。俺自身は別に一緒に見てくれても構わないんだが、今は早く結果が知りたいので1人で見ることにする。
「……………あん?こりゃ〜なんだ?なんか妙なもんが入っているぞ?」
封筒を開けて中を確認すると、中に入っていたのは1枚の折り畳まれた紙と、薄くて丸い機械だった。どうするのか分からなかったんで、取り敢えず適当に弄っていると、その機械から空中に映像が投影された。
『私が投影されたぁ!!!』
「は?オ、オールマイト??」
しかも何故か映像にはあのNo.1ヒーローのオールマイトが映っていた。何やってんだこの人?テレビ出演やヒーロー活動だけじゃなく、これからは母校で教師活動でもしようってのか?
『 HA〜HAHAHA!!今、何故私が投影されているんだって思ったよね?実は私、今年から雄英で教師を務めることになったのだよ!』
・・・あ、マジで教師活動するんだ。
『……え?何?……巻きで?後が支えてる?あぁ〜そうだったね。分かったOK!えぇ〜、じゃあ、試験の結果を伝えよう!!』
いよいよか……合格してっといいんだがなぁ。
『筆記については十分合格ラインをクリアしている。と言うか、今年の受験生の中で2位の高得点だ!凄いな君!』
いよっしゃあ!!必死に勉強しといた甲斐があったぜ!!まぁ、まさか2位になるとは思わなかったがな。
『そして実技試験!こっちは分身した君の得点も含め、
おぉ!!マジか!?俺達そんなに稼いでたのかよ!?取り敢えず目に入った仮想敵を片っ端からブッ壊してただけなんだがなぁ……ま、いいか。
『だがこれだけじゃあない!実は先日の入試、観ていたのは敵ポイントのみにあらず!!
やっぱりあの巨大な0P敵には意味があったのか。しかしまさか試験後の治療行為も採点されてるとは思っても見なかったぜ。
『来いよ、狭間奪少年!ここが君の…………ヒーローアカデミアだ!!!』
映像はそこで終わった。俺はすぐさまスマホを手に取り、響香と波動先輩に合格した事を伝えた。2人共俺が合格する事は分かっていたと言ってはいたが、入試1位になったとまでは思わなかったようでかなり驚いていた。
………なんか、スッとしたぜぇ♪
★
そして、入学初日がやって来た。俺は雄英高校の制服に身を包み、家の玄関で靴を履いている。
「幽義!ちゃんとティッシュは持った?ハンカチは?生徒手帳は?忘れ物とかない?」
「うるせぇ〜なぁ〜!母さん!心配してくれてるのは有り難いんだがよぉ!流石に同じ質問を20回もするのは止めてくんねぇ〜かなぁ!?」
流石に20回は言い過ぎだと俺は思う。つーかどんだけ俺は忘れ物の心配されてんだよ!?俺はそこまで物忘れは酷くねぇーし!今日は入学式くらいしかやらないから先ず必要なものも少ないっての!
「はぁ……んじゃ、行って来るぜ。母さん」
「……うん、行ってらっしゃい」
玄関のドアを開けて家を出ると、家の前で女性用の雄英の制服を着た響香が待っていた。
「あ、遅かったね幽義。さ、早く行こ?」
「あぁ、遅れて悪い。んじゃ、行くとするか!」
そして俺達は、雄英高校に向かって歩き出した。