ハスター様の荘園日記   作:砂嵐に潜む昆虫

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 とある屋敷にやってきた探偵は、積み重なった埃まみれの書物の中からある1つの書物を見つけた。大分痛みが酷く、古びているが中の字はまだ読める。読んでみると、それはある追跡者の日記のようなものだった。




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  ◯月◯日

 

 我の名はハスター、又の名を『黄衣の王』と言う。早速だが、我は今日から日記を定期的につけようと思う。

 

 何故日記を付けようと思ったのかについては、荘園の主からの突然の申し付けからであるとここに記載しておこう。元々日記をつける事など一度も無かった我にとって、日記とは正直どのようにつければ良いのか分からず、仕方なく同じ追跡者にして自称紳士を語るナルシストの『リッパー』に、癪だが教えて貰うことにした。

 

 『リッパー』曰く、日記とは毎日の出来事やその日思った感想を記録しておく事らしい。我にとって、その日1日など一々記録しておく意味も価値も無いと感じて生きてきたが故に、何を書けば良いのか全く思い浮かばなかった。

 

 何を書けば良いか思案に耽っていた我に、偶々その話を聞いていた『道化師』が何でも良いからとにかく書いておけと助言?のような事を言ってくれたので、この日記を書く経緯をまずは記載しておく。

 

 それに、明日もこれを書くとは限らぬし、何より明日は我が試合に出ねばならぬから早々に切り上げるとしよう。

 

 

 △月□日

 

 今日は散々な1日であった。荘園で4人の生存者(サバイバー)追跡者(ハンター)1人で行われる試合(マッチ)で、まさかあのような珍事が起こるとは一体誰が予測出来たであろうか。

 

 今日もいつものように生存者をさっさとロケットチェアに吊るそうとしたのだが、不幸にも生存者側に『庭師』がおり、彼女によって複数のロケットチェアが使い物にならなくなった。故に我輩は『庭師』を先に潰そうと彼女を追いかけ回し、暗号機3つが解読されてからようやく『庭師』をダウンさせる事が出来た。

 

 しかし、『庭師』をダウンさせた周囲は壊れたロケットチェアしかなく、ここから『庭師』を運んで遠くのロケットチェアまで運ぼうとすれば間違いなく逃げられる。そう考えた我は、『庭師』対策に装備してきた補助特質の『異常』で近場のロケットチェアを修理した。そしたら『庭師』に泣かれた。曰く、「こっちが時間を掛けてチェアを壊してるのにそれをすぐ直すなんてあんまりだ」とか、「追跡者には血も涙もない」とか。

 

 いや、我は追跡者で貴様は生存者、どう足掻いてもその事実が覆らない以上泣いて喚いたって仕方ないではないかと、そんなことを『庭師』に説きながら『異常』で修理したロケットチェアに拘束した。するとどうしたことか、遠くから『医者』がやって来るではないか。これ幸いと『医者』に接近したとき、我は恐らくその時浮かべていた『医者』が顔を一生忘れないだろう。

 

 『医者』の顔は、それはもう言葉で形容するのはあまりにも難しい程恐ろしい顔で、前に『芸者』の試合を観戦したときに見た般若の形相に似ていた。しかも、片手には鎮痛剤では無く信号銃を携えていたのだから思わず戦慄を覚えた。しかしこちらには脅威度が上がった事によって『凝視』による触手の自動攻撃が可能だ。既に『庭師』のロケットチェアの前には触手を生やしてある。

 

 しかし、我の予想は意図も容易く覆された。なんと我の後ろから『泥棒』がアメフトボールを使って突撃してきたのだ。これには我も驚き、反応が少し遅れたが、それと同時に暗号機が5つ解読されたことによって、内在人格の『引き留める』が発動。我は致し方無しと逃げようとする『泥棒』をダウンさせ、『庭師』と『医者』を追おうとしたが、振り返ったその目の前に至近距離で信号銃を我に突きつけた『医者』とその後ろに未だ半べそで隠れている『庭師』の姿、後から駆けつけた『空軍』が更に横から信号銃を突きつけてくる。

 

 正直に言おう、我はあの時『医者』の浮かべる恐ろしい形相を前に恐怖で悲鳴を上げなかった我自身を誉めたい。『医者』はおよそ女性が出してはいけない程低い声で、「『泥棒』をチェアに拘束して『庭師』を泣き止まさせろ、さもなくば2回分の信号銃を頭に当てる」と脅迫され、我はそれを食いぎみに承諾した。我は感じたのだ、その時感じたのは紛れもなく生存本能だと。『医者』の言われるがまま『泥棒』を拘束し、『庭師』を泣き止ませようとしたが、如何せん少女の泣き止ませ方等知らない我は、昔幼くして信者であった2人の子供によくしていた高い高いを、『庭師』にすることにした。最初は怯えていた『庭師』であったが、段々楽しくなってきたのかすすり泣く声がいつの間にか楽し気な笑い声になっていた。

 

 そして満足した『医者』は「『泥棒』()は好きにしても良い」と言い、ゲートに向かっていった。『庭師』も我にお礼を言いながら『医者』についていった。『空軍』は既におらず『医者』達とは反対側のゲートから脱出していた。『泥棒』は『医者』にあらんかぎりの恨み節と罵詈雑言を喚きながら空高く飛ばされていった。

 

 試合には負けたが、無事生き残ることが出来た我は、何とも言えない複雑な心境で試合会場(マップ)を去るのであった。荘園に戻ると、試合を観戦したいたのかハンター達から慰められた。しかし『芸者』からは、「ここでは絶対に子供(庭師)は泣かせてはいけない」、「子供(庭師)を泣かせると(医者)が激怒する」と忠告された。我は、この試合を機に怒れる女性は末恐ろしいものであると深く心に刻み付けられる事になった。

 

 

□月◯△日

 

 『庭師』に懐かれた。

 

 

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