一周した世界線 作:Achoo!
そういや評価バーがオレンジ色になってた。評価してくれた人ありがとうございます。
生徒会室を出ると実習室へと向かう。午後からは座学ではなく実習なので少し憂鬱だ。
「それで達也、生徒会室での話しはどうだったんだ?」
「はぁ...何だか妙な展開になった」
「妙?」
「いきなり風紀委員になれと言われてな...」
「暁は?」
「俺も似た様なもん。今年から増えたとか言う、風紀委員会合同選出枠に推薦する予定だって言われた」
「なんだそりゃ?」
そんな事言われてもなぁ。あぁ、実習めんどくさい。もちろん二科なので担当する教員は居ないが、やらなきゃ単位は貰えない。
「でもさ風紀委員って問題を起こした生徒を取り締まるんでしょ?暁くんはともかく達也くんならぴったりじゃん」
「馬鹿言うなよ、俺は実技は苦手なんだぞ?」
「そうだぞー。俺も実技苦手だし」
既に課題をクリアーしているので隅っこで話しを出来ているが、自分は先程まで何回かやり直している。結果を見れば一目瞭然、俺はクラスの中でも悪い方の部類だ。まあ体質的に問題があるからなんだが...
「ですが、暁さんや達也さんなら魔法を使わなくても取り締まれそうですよ?」
「確かに。昨日のやつさ凄かったな」
「あーあ、私の見せ場だったのになぁ...」
「エリカ?」
「ううん、何でも無いわ」
なにやら不貞腐れているエリカを不審に思ったが、深く追求して藪蛇する訳にもいかない。聞かぬが吉だろう。
「それで、放課後も生徒会室に行くのか?」
「ああ。呼ばれてるからな」
「でも、面倒なら断っちゃえば?」
「さっきピッタリとか言ってたくせに、断れって何だよ」
「アンタには言ってないでしょ」
「何だと!」
「何よ!」
「だから二人共喧嘩は駄目ですよ!」
「あーもう、何やってんだ...」
なんで自分らの事で2人がイザコザを起こすんだ...そんな事を考えると、自分が朝に預かっていた書類の存在を思い出す。
「あっ、そうだ達也」
「どうした?」
「放課後に生徒会室に行くの遅れるわ」
「何かあるのか?」
「用事を思い出した。終わったらすぐに行く」
「わかった。頼むから来ないとかやめてくれよ...?」
「わかってる」
放課後。
ホームルームが終わるとすぐにカウンセラー室へ向かう。
「小野先生いますか?」
『はい?どうぞー?』
返事が返ってくると扉を開けて部屋に入る。
「どうしましたか?」
「先生に渡す物があって...」
鞄から茶色い封筒を取り出し先生に渡す。
「これは...?」
「読めばわかるはずです。ではこれにて失礼します」
「あっ、ちょっと!?」
「なんです?こちらはこの後の用事が立て込んでいるのですが...」
「...そう。また後で話すことは出来るかしら?」
「...わかりました。でも今日は無理です」
「わかったわ。また今度私から呼ぶわね」
「了解です」
カウンセラー室を出るとすぐに生徒会室へと向かう。なんでこんなに用事が立て込むんだ...
「失礼します...」
ロックが開いていた生徒会室の扉を開ける。すると...
「自分はそこの二科生の風紀委員入りを反対します」
「禁止用語を私の前で使うなんて良い度胸だ」
...何が起きている?
「おい達也。どうなってんだ?」
「来たか暁。少し面倒な事になった」
「やっぱりか...」
内容を聞けば生徒会副会長の服部刑部少丞範蔵先輩、通称はんぞー先輩が、達也の風紀委員会入りを反対しているらしい。多分この流れだと自分にも波及するな...
「身内贔屓に目を曇らせてはいけません。魔法師は常に冷静を心掛けるものです」
「私は目を曇らせてなどいません!お兄様の評価が芳しくないのは、評価方法がお兄様のお力にあっていないからです!それに、本来のお力を―」
「深雪!!」
「ぁ...」
...どういう事だ?本来の力って?
「ふん...そしてお前は?」
「紹介するわ。1-Eの財田暁くん。彼は今年から増えた風紀委員会合同選出枠の生徒会推薦にする予定よ」
「なら自分はそれも反対します」
やっぱり波及したか。だがこちらにもプライドって物がある。かつて『人類を守る為に戦ってきた財団の末裔』というプライドが、ある。
「...なら服部先輩、俺と勝負しませんか?」
「なに!?」
「暁、俺がやる」
「...お前ら思い上がるなよ、補欠の分際で!」
熱くなった服部に対して、達也は冷静に服部先輩の反応を鼻で笑う。
「何がおかしい!」
「『魔法師は常に冷静を心掛ける』。違いますか?」
「「プッ」」
どんな公開処刑ですかねぇ...やっぱりコイツはやることがエグい。
「別に風紀委員になりたい訳では無いのですが、妹の目が曇ってない事を証明する為には仕方ないですね」
「こちらにもプライドって物があります。それを笑わせる訳にはいきません」
「...良いだろう。叩き潰してやる!」
「それでは30分後に第三演習室での模擬戦を開始します。双方にCADの使用を生徒会長として認めます」
「風紀委員長として、この模擬戦が私闘で無い事を証明する」
これでしがらみは無くなった。入学式の後に睨みつけてきた分を含めてぶっ飛ばそう。
次戦闘入りまーす。