一周した世界線 作:Achoo!
「はぁ...入学三日目にして、早くも猫の皮が剥がれかけたな」
「申し訳ありません!」
「しょうがないさ。結局どうなろうとこうなる羽目になる。ならさっさとやった方がいい」
「そうだな...」
達也は入試の結果、自分は校門で森崎のCADを吹っ飛ばした事だろう。結局は生徒会が『すべてが平等である』というイメージ戦略に使う駒でしかない。
そんな事を考えつつ鞄から【THI】から貸し出されているCADを取り出し、腕につける。
「暁さん?そのCADは...」
「【THI】社製の最新汎用型CAD『シグナリオ』。まあ、入れてある術式は一個だし、貸出のやつだけど」
「...なんでそんな物を持っている?」
「金があるから。理由になった?」
「...まあな」
そう言うと達也はケースから翡翠に近いような色をした特化型CADを取り出し、専用ストレージを装填する。
「とかいうお前はFLTの『シルバーホーン』じゃねえか。それこそ学生が持つもんじゃないぜ」
「まあ...コネがあるからな」
それぞれ準備が完了すると渡辺先輩が待機室に入ってきた。
「準備は終わったか?」
「大丈夫です」
「こちらも...」
「しかし君達が意外と好戦的で驚いたよ」
「楽しそうな顔で言われても困りますよ...」
「俺達は見世物か何かなんですかね?」
「そう言うな。しかし大丈夫か?服部はこの学園でも五指に入る実力者だ」
「もちろん真っ向から戦えば勝ち目は無いですよ。でも幾らでもやりようはあります」
「こっちもですよ。ただじゃ死ねませんね」
「そいつは楽しみだ。それじゃあ移動しようか」
渡辺先輩の後をついて行くと、広い部屋に着いた。ここが今回の演習場だろう。
「やっと来たな。どちらからやる?」
「達也、先に行かせて貰うぞ」
「...言っても聞かないだろうな。わかった」
達也から了承を貰い、先に出る。
「それではこれより、二年B組服部刑部と一年E組財田暁による模擬戦を開始する。試合はどちらかが降参、もしくは審判が止めるまで。また命に関わる術式は禁止。怪我は最高でも捻挫までに留めること。そして素手での攻撃は許可する」
素手での攻撃はok。なら存分にやれる...!
「審判は私がする。フライングや反則をした場合は私が力ずくで止めるから覚悟しておくように。双方、準備はいいな?」
左手の掌に右手の拳を合わせきっちり45度腰を曲げ、【解放礼儀】を行う。周りから奇異な目で見られるが問題は無い。そして腕につけたCADを意識を向ける。同時に朱と一体化した様な感覚に陥る。準備は出来た。
「始め!」
すぐさまCADが動き自分の情報体と周辺2mの情報が強化される。それと同時に服部先輩がCADを操作し術式を展開する。速度重視の単純な基礎単一系移動魔法。実力者と呼ばれるだけあって展開までのスピードが早い。だけど...
「...遅い!」
自分の掌を握力で圧縮し引力場を作り出す。そして引力場の発生と同時に服部先輩の方に腕を向ける。すると...
「「「!?」」」
服部先輩の背後に瞬間移動する。これが財団神拳奥義【虚喰掌握】だ。振り向くと同時に服部先輩の首に手を当てる。
「勝負あり、ですね?」
「...勝者、財田暁」
勝 っ た 。やったぜ。
「ちょっと待ってください!」
「なんです?」
「今のは、一体...」
「後にしましょうよ。次にいきましょう?ねえ、渡辺先輩?」
「あっ...そう、だな」
なんでそんなに固くなっているんですかねぇ...
次は達也が戦う番だ。壁に背中を預け、達也の方を見る。
「それでは、二年B組服部刑部と一年E組司波達也による模擬戦を開始する。双方、準備はいいな?」
渡辺先輩に確認されて服部先輩も達也も頷いた。服部先輩が腕につけた汎用型CADに手をやり、達也がシルバーホーンを床に向ける。
「始め!」
服部先輩はCADを操作すると、先程と同じ基礎単一系移動魔法を使う。客観的に見れば、後ろの壁まで吹っ飛ばして気絶させようとした事がよく分かる。
だが達也はその一歩先を行った。単純な体術による圧倒的な加速と斜めに抜ける動きで認識から外れ、自分がやったのと同じ様に背後に回り込む。そして...
「がっ!」
トリガーを引くと服部先輩が倒れた。へぇ...なかなか面白い事をする。
「...しょ、勝者、司波達也」
審判の宣言と共に達也は場を離れる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「何か?」
「今のは自己加速魔法なのか?」
「いえ、身体的な技術ですよ」
「だが……」
やっぱりあの動きが体術とは信じられないのだろう。だがあの時に起動式は出ていなかったのだから魔法ではない。
「私も証言します。あれは兄の身体的な技術です。お兄様は九重八雲先生の弟子なんですよ」
「忍術使い、九重八雲か!身体技能のみで魔法並の動き...流石古流だな...」
あの忍術使いかよ。たしかGOCの108評議会にも在籍していた気がするんだが...
「なら、はんぞーくんを倒した魔法も忍術ですか?」
「いえ、あれはただのサイオン波です」
「でもそれじゃあ、あのはんぞーくんが倒れてる理由が分からないのだけど」
確かにサイオン波だけでは服部先輩が倒れている理由がつかない。
「波の合成ですね」
「リンちゃん?」
なるほど。
「船酔いって事か...」
「暁くん、どういうこと?」
「市原先輩にお願いしましょう」
「ありがとうございます。私の推測では異なる3つサイオン波を丁度服部くんの位置で重なる様に発射し、結果的に先程財田くんの言った『船酔い』ならぬ『サイオン酔い』を起こしたのではないかと」
「さすが市原先輩、お見事です」
「ですが、あれだけの短時間で三回の振動魔法の発動...その処理速度で実技評価が低いのはおかしいですね...」
確かにそうだが、それは『シルバーホーン』の『ループキャストシステム』で説明がつく。だがそれだけで異なる3つのサイオン波を起こす事は出来ない。すると中条先輩が声をかける。
「あの~、これってひょっとしてシルバーホーンじゃないですか?」
「シルバーホーン?シルバーってループキャストを開発したあのシルバー?」
「ですがループキャストシステムは同じ魔法しか使えませんよ?」
まさか...そういう事か!
「可変数化...」
「えっ?」
「振動数、座標、強度、持続時間の4つを可変数化して毎回サイオン波を起こすごとに決定すれば可能だ...」
「ですがそれって...まさかその全てを実行してたのですか!?」
「可変数化処理は学校では評価されない項目ですからね」
まさに鬼才だなコイツ。やべーやつだ。
「なるほど、司波さんの言っていた事はこう言う事か...」
「大丈夫ですか、はんぞーくん?」
「大丈夫です!」
「そして残る問題は...」
!?
「財田、あれは一体なんだ?」
「あれ、とは?」
「最初に手すら動かさず情報強化の魔法を使っただろう?」
「それですか...コイツです」
そう言って腕につけたCADを見せる。
「それは...」
「これって『シグナリオ』ですか!?」
さすがCADオタクの中条先輩。速攻で名前が出るとは...
「ええ、そうですよ」
「『シグナリオ』?何でしょうか?」
「会長!『シグナリオ』を御存知じゃないのですか!?最近になってTHIが開発した最新の汎用型CADですよ!でもなんでそれを持っているのですか?」
「まあ彼処には色々と出資とか、なんやらかんやらやっているので...」
お茶を軽く濁す程度に話す。すると渡辺先輩が口を開いた。
「そしてもう一つ。いきなり服部の背後に出て来たのは?」
やはりそれか...
「簡単に言えば、引力場を発生させて瞬間移動しただけです」
「!?」
「暁、それは...」
「前にも説明したよな?それと同じだ」
「そういう事か...」
「ちょっと、2人だけで納得しないで私達にも説明してくれる?」
「ここから先は企業秘密です。あしからず」
持って来て壁に立てかけておいた自分の鞄を掴み、出口へ向かう。
「ちょっと!?まだ...」
「すみません。今日はこれからまだ用事がありますので、これにて失礼させていただきます」
そう言うと演習場を後にし昇降口まで走る。ここから先を突かれる訳にもいかないし、用事があるのも嘘ではない。
THIまで急がなければ...
そういやレゴで戦闘機作ってみたけど、クオリティが低くて笑った。
どうにか創作クオリティが上がらんかねホントに。