一周した世界線 作:Achoo!
「それじゃ、後でな!」
「はい、それでは」
辰巳さんがもう1人残っていた上級生を連れて巡回に行った。ここに在籍しているってのは管理官から聞いていたけど、まさか風紀委員になってるとはね...
「仲が良いんだな」
「ちょっとした縁ってやつだ」
「...さて、もう良いか?」
「あっ、すみません...」
渡辺先輩の話をぶった切って...いや、始まってすらいなかったか。
「まあ良い...さて、君達には今日から動いて貰うことになる。風紀委員として活動する時は腕章を付けて貰う。何か問題が起きた時はこのビデオレコーダーで記録してくれ。まあ、原則として風紀委員の証言は単独で証拠採用される」
そう言うとそれぞれ風紀委員の腕章とビデオレコーダーを手渡される。ビデオレコーダーはかなりの薄型で、ちょうど胸ポケットに入る。
「次に委員会のコードを通信端末に送る。指示を送る時も、確認の時もこのコードを使うから覚えておけ」
「コードに介入されるって事はないですよね...?」
「ああ。一応暗号化されているからその問題はないぞ。
それからCADの使用についてだが、風紀委員はCADの学内携行が許可されており、使用に関しても誰かに許可を取る必要は無い。ただし不正使用が発覚した場合は一般生徒よりも重い罰が科せられるから覚悟しておけ。一昨年はそれで退学になったものも居る。わかったな?」
「「「はい!」」」
「他に何か質問はあるか?」
「CADは委員会の備品を使用してもよろしいですか?」
そう達也は質問した。確かにあまり『シルバーホーン』を持っているとは知られたく無いだろうが、かといってガラクタを使うのはどうなのだろうか...まてよ?
「君が使いたいのなら構わないが、本当に良いのか?」
「あの商品はエキスパート仕様の最高級品ですよ」
「何!?」
やっぱりかよ...昨日の片付けで目につけといたのか?そんな事を考えて、棚から1つ適当なCADを取り、情報強化の魔法を起動する。
「マジか...下手な専用CADより処理速度早いな...」
「本当か?」
「ええ。少し前のモデルですけど処理が通常仕様より早いです。ホレ森崎」
「うわっと...いきなり何をする!?」
「適当に魔法起動させてみろ」
すると森崎は非殺傷の魔法を起動する。
「確かに早い...」
「なるほど。なぜ君がこの部屋の掃除に拘ったのが分かったよ...好きに使ってくれたまえ。どうせ今まで埃を被ってたのだからな」
「それでは、この二機をお借りします」
達也はそう言うと、棚から二機のCADを取り出す。
「二機?本当に君は面白いな」
普通CADを二機同時に使用すると、それぞれのサイオンが干渉しあって魔法式が上手く展開されない。達也自身もその事を知っているはずだが、一体何を考えているのか...
「なんだ司波、お前ごときがサイオンの干渉をさせずにCADを使用できる訳がないだろ!」
「アドバイスのつもりか?随分と余裕なんだな」
「僕はお前とは違う!この間は油断しただけだが次は違う!格の違いを見せてやるからな!」
次があるとか、どんだけ相手が甘いんだ。戦場なら既に死んでいる。
委員会室を出ると巡回が始まる。初日から面倒な事に巻き込まれたくはないが、そう言うわけにもいかないだろうな...
「達也、お前はどうする?」
「俺はエリカと合流して、そのまま巡回に入る。お前は?」
「俺は特にないしなぁ...適当に巡回するわ。てか、エリカと待ち合わせとかデートですかな?」
「俺が風紀委員だから体のいい盾にするつもりだろ...断じてデートじゃない」
「そうかい。深雪さんに言っても良いんだぜ?」
「勘弁してくれ...」
そう言うと達也と別れ巡回を開始する。
校舎などを回り、少し勧誘が過剰だと感じたクラブを重点的に見回る。一応ここまで問題には遭遇していない。良い傾向です。(CUBE並感)
...なんでこんなセリフを知ってるかって?
レトロゲーム大好きなんだよ。ACとかMGSとか。
『聞こえるか財田!?』
...どうやらそれもここまでらしい。騙して悪いがってか?それはレイヴンだけにしてくれ。
「はい。どうしました?」
『今お前がいる場所は?』
「えーっと...第2実技棟前ですけど」
『もうそろそろしたらそっちにSSボートアスロン部のOB2人が来る。そいつらは少しやり過ぎた。そっちで停められるか?』
「...了解しました。その代わりしっかり追い込んでください。後は仕留めます」
『わかった!』
【解放礼儀】を行い財団神拳を使う準備を整える。続けて【二段解放】を行いリミッターを外す。
「あらっ?こっちにも風紀委員?」
「遠回りでも構わないわ。とにかく連れて行くわよ」
見えたのは小脇に生徒を抱えた女性2人組。上から【量子反作用空歩術】で強襲して捕まえようか...
「暁!」
「暁さん助けてー!」
北山に光井!?あまり神拳を見られたくはない。なら...
「【虚喰掌握】...!」
「ええっ!?」
「ちょっと何よあれ!?」
「待てこらぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!」
引力場を発生させて一気に彼我の距離を詰めるだけにとどめる。
「もっとスピードを...!」
逃走者達が更にスピードを上げ、更には気流を発生させる事で行く手を阻む。
「朱!準備はいいな!?」
自分と並んで飛んでいる朱がこちらを向く。それと同時に周辺の【認識】が置き換わる。【認識による事象の改変】が起こり自分の位置が移動、逃走する2人の真後ろにつける。
「一瞬で!?」
「チェックメイトだ。大人しく投降して貰おう」
「いっ、いつの間に...」
ゆっくりと2人の逃走者を地面に移動させる。それと同時に通信が入った。
『財田、大丈夫か!?』
「ええ。取り敢えず報告します。SSボートアスロン部のOB2名を確保、それと捕まっていた新入生2名を保護しました」
『本当か!』
「自分1人では対応できないので応援をお願いします」
『もうそこまで来ている!』
そうして十数秒後、渡辺先輩が到着した。
「これで良いですか?」
「ああ。良くやってくれた」
「にしても毎度この部活はこんな事を?」
「いや、そういう訳ではないんだがな...」
「あのー、暁さん?」
「暁?」
光井と北山から声をかけられる。
「ん?」
「助けてくれてありがとうございます!」
「ありがとう」
「どういたしまして...まあ仕事だからな」
「1つ良い?」
「どうした?」
「SSボートアスロン部まで行くのに着いて行ってくれない?」
「...どういう風の吹きまわしで、北山さん?」
「雫でいい」
「名字呼びの方が...」
「雫って、呼んで?」
...なんでこの子こんなに押しが強いの?
「...わかった。で、雫さんよ。どういう風の吹きまわしなんだ?」
「...むぅ」
「もう...あのですね暁さん、私達、あの人達に誘拐されている間に少し興味が湧いちゃって...」
「でも目的地まで行くのに勧誘の嵐が待っている、か」
「そうなんです。入試成績が流出しているみたいで...」
「マークされてるって訳か...わかった」
「ほんと?」
「ああ。こっちも巡回の仕事がまだ残ってるしな」
「ありがとうございます!」
そんな訳で女子2人を連れてSSボートアスロン部のブースまで行く事になった。
...あれ?これってただの無駄働らきじゃないか?
次回には闘技場まで行きたい。
てか入学編でどこまで話数がかかるんだ。