一周した世界線 作:Achoo!
自分としては幼女とまではいかない、少女っぽいイメージ。
「いっちょあがり!」
イオンは徘徊していた毒緑ゴブリンを【憑依者の豪槍】で突き殺す。
溶けてコールタールの様になった魔物の身体から鼠が出てくると、彼は気にする事なくそれを【生贄】にした。
「...どうかした?」
—いや、なんでもない。
問いかけてきた彼へぶっきらぼうに返答する。
「...飲みなよ」
イオンはそう言うと前に置かれたグラスを呷る。
彼に連れてこられたのは【エルフの谷】にほど近い辺境の街。
そして今居るのは、その街の小さな酒場だ。
【エルフの谷】は色欲の魔物である【エルフ女王】が住まうとされる。
そして【エルフ女王】は特徴的な魔物で、街に現れては幼い子供を攫うという習性がある。
「住人が言うには、ここや近隣で不審な事件が発生しているらしい」
—不審な事件。
近隣の村や町で行方不明者が出ているらしい。
それもまだ小さな子供ばかりだと街の人々は語る。
「ここは【エルフの谷】も近いし、もしかすると【エルフの女王】がまた出てきたのかもしれない」
そう彼は言うと、懐から紙を取り出した。
【エルフの谷】における行方不明者の捜索、並びに【エルフの女王】発見・排除というアヴァロンからの要請書。
「じゃあ、行ってみるか...」
彼は席から立ち上がると、テーブルに幾枚か硬貨を置く。
その金額から見るに自分の分も払ってくれる様だ。
「行くよ?」
既に出口を出ようとしている彼は、自分の方を振り返る。
—わかっている。
そう返事をし、彼を追いかけた。
「そっちはどうかな?」
—誰もいないな。
毒緑ゴブリンを次々と生贄に変えていくイオンを尻目に、自分はある程度応戦しつつ行方不明者の捜索を行っていた。
だが誰もいないのだ。
しかも何かがおかしい。
普段、【エルフの谷】では常にと言っていいほど綿毛が舞っている。
だが今のここには綿毛が舞っていないどころか、タンポポすら咲いていない。
これは一体何が...
「...上か」
彼がそう呟いたその瞬間、真上から物凄い量の綿毛が舞い降り、それに包まれる様に何かが降りてくる。
「来たか、【エルフ女王】」
降りて来たのは討伐対象の【エルフ女王】。
そしてその腕には女の子が抱えられていた。
「攫ってきた直後ってわけか...」
彼はそう言うと『火帝石の破片』を供物に炎の槍を顕現させる。
「いけるな?」
彼は自分に、女の子を傷つける事なく助けられるかを問いている。
彼に合わせて自分も『魔王のフォーク』を供物に炎の剣を顕現させた。
—あたりまえだ。
記憶がプッツリと途切れている