一周した世界線   作:Achoo!

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ゴールデンウィークいかがお過ごしでしょうか。
作者は連休ど真ん中に部活の試合があります...


処理

『先ほど公安部本庁から、《司一》の身柄を受け取ったと連絡があったわ』

「先ほどって...めっちゃ本庁は溜めてましたね」

 

学校に戻って朱を回収し、家に帰ってきた数時間後。リビングに設置されたモニターを通信機器と繋ぎ、響さんと連絡を行なっている。

 

『そうもなるわよ。実際に作戦が行われるのはこの時間帯だったのに、あなたが繰り上げるから...』

「連中にオブジェクトを確保させる訳にはいきませんから。ましてや【あの子】を保護させるなど以ての外です」

『連中?』

「第一高校の生徒会と部活連と言ったらわかります?」

『ああ...十師族の《七草》と《十文字》ね』

 

画面の向こうにいる響さんは溜め息をつく。

 

『それと上層部から言われたわよ。少しやり過ぎだって』

「やり過ぎたのは認めますが...そう言われるって事は何かあるみたいですね」

『そうよ。あなたが先程言っていた《七草》と《十文字》、それと...』

「それと?」

『《四葉》まで今回の一件を調査し出したわ』

「《四葉》までもですか...」

 

流石に十師族の3家から調べられるのは予期していなかった。まあ情報媒体自体は紙だしデータの物はスタンドアロン化した端末での保存なので、ネットワーク使って調べている限り情報を掴まれる事はないだろう。

 

「響さん、1つ頼みごとをしても?」

『そりゃ条件によるわよ』

「んー...今度特課のみんなで食べに行く時に、勘定を全て自分が肩代わりするってのはどうです?」

『そうじゃなくてね...私に何かないの?』

「えー、どうせ頑張るのは特課のみんなじゃないですか。響さん1人じゃダメです」

『ちぇっ...まあそれで良いわ。で、頼みごとっていうのは?』

「1人...いや、2人調べて欲しい人物がいます」

『誰かしら?』

 

 

 

「第一高校1-Eの《司波達也》並びにその妹の《司波深雪》です」

 

 

 

『...一般人を調べてどうするのかしら?』

 

響さんの表情が変わる。

 

「それは表向きでしょうに。何か裏があると感じましたので」

『その根拠を聞いても?』

「風紀委員での業務時の制圧作業ですよ。1対多数であるのに勝利する時点でまずおかしい。それともう1つは【反応速度】です」

『【反応速度】?』

「明らかに自分に向けられた魔法に対する【反応速度】がおかしい。まるで最初から撃たれると分かっていたとしか思えないんです」

『...わかったわ、やっておきましょう。でもあなたがそう言うなら、我々の【存在理念】に関わりかねないと判断したのかしら?』

「まだそこまでは...ですが用心に越した事はないでしょう。それと【会議】について調整はお願いしますよ?」

『わかってるわよ...これはみんなも過労死必須ね...』

「休暇取った時はこちらでリフレッシュプラン立てますよ?」

『お願いするわ...』

 

そう言って響さんは連絡を切った。既に時刻は夜の0時を回っている。さっさと寝なければ明日はキツイだろうと部屋に戻ろうとした時、壁にかけられていたポスターが目に留まる。

 

「多分、また【この名】に戻る時が来るんだろうな...それも遠くないうちに...」

 

ポスターには大きな十字と小さな十字を少しずらして出来た部隊章を背景に、かつての仲間たちが写っていた。

 

 

 

ーーー

 

 

 

「お見舞い?」

「ああ」

 

翌日。

授業が午前中に終わり【会議】の調整のために帰宅しようとしていた所、達也に呼び止められた。

 

「時間があればで構わないんだが...」

「ちょっと待ってくれ...」

 

予定まではまだ時間がある。少しは問題ないだろう。

 

「大丈夫だ」

「すまないな」

「にしても誰のお見舞いなんだ?」

「ああ、そう言えば暁は会った事は無かったか?1つ上の壬生先輩なんだが...」

「壬生?確か放送室を占領してた...」

「知ってたか。彼女自身は『邪眼』で洗脳されていただけだったんだ」

「って事は司先輩もか?」

「そうだが...なんでそれを知ってるんだ?」

 

ああ、この情報は一部しか知らないのか。ちょっと言い過ぎた。

 

「落し物ってあったろ?そこからだよ」

「そうなのか?」

「その時に勧誘されてね。まあその後委員会業務もあったから、すぐに蹴ったんだ」

「それは災難だったな」

「まあ解決したからいいさ。で、今から行くのか?」

「いや、深雪ももうすぐ来るはずだ」

 

 

 

ーーー

 

 

 

「ヒューム値、ですか?」

「ああ。独自に考えた理論なんだけど...」

 

壬生先輩のお見舞い後、達也が少し外してくれと言ったので病室を出た後、休憩所で深雪さんと談笑していた。

かと言っても壬生先輩ともあまり面識があった訳でもないので、願ったり叶ったりなんだが。

 

「魔法っていうのは【現実改変】という現象を起こすための1つ方法だと思うんだ」

「それでヒューム値と言うのは?」

「どれだけ【現実改変】の強度が強いかを数値化した物で、1が基準で0に近付くほど改変強度が増加するんだ。あくまで独自理論の範疇だけどね」

「なかなか面白そうな話をしているな」

 

そこへ達也がやってきた。どうやら用事は終わったらしい。

 

「ああ。【現実改変】について、自分なりの考察を披露してた所だよ」

「【現実改変】?」

「まあ詳しくは深雪さんに聞いてくれ。そろそろ時間なんで失礼するよ」

「そうか。またな」

「ありがとうございました」

 

休憩所に残る2人を後にし、病院の入り口へと向かう。出たところで通信が入ってきた。相手は響さんなので、多分【会議】の予定が確定したのだろう。

 

「はい、もしもし?」

『暁くん?【会議】の予定が決まったわ』

「そうですか」

『来週の連休最後の日曜日、午後6時から。場所はうちのオフィスの地下会議場よ』

「来るメンバーは?」

『【国家安全保障局 超常関連政策班】

【警視庁公安部特事課】

【公安調査庁 第三部 特異案件対策室】

【文部科学省 国立室戸研究所】

【国土交通省 緊急災害対策派遣隊特事班】

【防衛省 国家高脅威情報収集課】

【世界オカルト連合】

【アメリカ連邦捜査局異常事件課】

【ロシア連邦軍参謀本部情報総局P部局】

【Wilsons Wild life Solutions】

【Anderson Robotics Corporation】

【Tohei Heavy Industry Corporation】

の各リーダー達、そしてあなたよ』

 

相変わらず思うのだが、参加する組織の名前が長い。

 

「了解です。ではまた来週末に」

『ちょっと待って、議題は何なの?他のメンバーにも伝えなきゃいけないんだけど』

「今回の議題はNHTICDからの報告書について、それと他の要注意団体への対策です」

『ありがとう。また来週ね』

 

響さんはそう言うと通信を切る。

しかし入学からぶっ飛んだ内容の新しい生活だが、これ以上とんでもない事が起きないことを祈るのみである。

 

 

 

 

 

 

...多分フラグだわこれ。




これが平成最後の投稿になります。
令和も頑張って投稿を続けるつもりです。
これからもよろしくお願いします。

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