一周した世界線   作:Achoo!

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今回は少し過去に遡ります。




「死に晒せェェェ!」

「ぐはっ...」

「なんなん...」

 

魔力で作り上げた槍を振るう。

振るう度にこちらに襲いかかって来る敵が吹き飛ぶ。

 

「クッソ数が多い!絶対に離れるなよ!?」

「う、うん...」

 

槍を振るう右腕と逆の左腕には、1人の少女を抱えている。少女の服はボロボロになっており服の意味をなしていない。今はその上から自分の着ていた【王道の法衣】の上着を羽織っている。

 

少女を助けたのは偶然だった。ちょうど大陸の方を旅していた時に偶然出くわしたのだ。誘拐である。大陸の方では未だに子供の誘拐事件が多発しているが、魔法使いとしての勘が何か別の空気を感じ取ったのだ。

誘拐犯の連中を追跡してみると、連中は大陸の現代魔法研究のメッカである『崑崙方院』の関係者だった。しかもその誘拐した少女に性的暴行を加えようとしていた。結局見て見ぬ振りは出来ず、現実改変を行い彼女を助けて連中を叩き潰そうとした訳だ。

 

「まずい。もうすぐ【憑依者の豪槍】が切れる...」

 

【憑依者の豪槍】の顕現限界まで残り5秒。これ以上は供物が切れるので使用できない。

さらに【巨炎神の腕】は既に残り1回しか残機がないので使えない。

仕方がないので、別の魔術を使用するために腕の刻印に魔力を流し込む。

 

「目を瞑れ!」

「!」

 

【憑依者の豪槍】が崩壊するのと同時に、魔術刻印に魔力が行き渡って準備が完了する。

 

「【月光】!」

 

腕の魔術刻印から光が溢れ、右手に光が収束して剣が顕現される。

刻印魔法【月光】。

初めて渡った先の世界で習得した一つの魔法。ただその世界の魔法には慣れなかった上に無理矢理習得したので、体の負担が大きく顕現限界が5分と持たない。

 

「ハァッ!」

 

さらに【月光】の刻印へ魔力を流し込んで振るい、斬撃を飛ばす。

 

「ぐわつ!」

「ぐふっ!」

「まだ来るか!朱、彼女に認識阻害をかけろ!」

 

少女を降ろすと同時に朱が認識阻害をかけて姿を隠させる。それを確認すると懐から【SCP-710-JP】を引き抜き、片手でシリンダーを開ける。更に【月光】を左腕に押し当てて傷を作る。

 

「【変質 水銀弾】、マグナム装填!」

 

傷から流れ出てくる血液が一瞬で水銀仕様の.357マグナム弾へと置き替わり、【710-JP】に装填される。

右腕で【月光】を振るったまま、左手で【710-JP】のダイヤルを操作。タイムジャンプを5秒後の未来へと設定し、引き金を引き絞る。

 

ガンッ!ガンガンガンッ!ガンガンッ!

 

マグナム弾による強烈なノックバックを無理矢理腕力で抑え込み、ダブルアクションで即座に装填された6発を発射する。

マグナム弾がタイムジャンプで再び現れるまでの残り時間で【月光】を振るいつつ、今度は水銀仕様の.380スペシャル弾を【710-JP】に装填する。

 

「3!」

 

【月光】の刻印に再び魔力を流し込み、斬撃を飛ばす準備をする。その間に左手では【710-JP】を操り、近づいてくる敵に発射。

 

「2!」

 

斬撃の準備が完了し、右手で【月光】を構えたまま【量子反作用空歩術】で飛び上がる。

 

「1!」

 

構えた右腕を振るい、上から斬撃を飛ばす。狙いは敵の足元だ。

 

「0!」

 

斬撃が敵の足元に着弾し、吹っ飛ばす。そしてそこへタイムジャンプしてきた.357マグナム弾が突き刺さり、不幸にも直撃してしまった敵の身体がズタズタにされた。

だがー

 

「一体何人いるんだ⁉︎」

 

既に500はくだらない数を殺しきった筈なのに、敵はまだまだやって来る。【月光】の顕現限界まで残り時間は少ない。現実改変も【ruler】の能力を【Yaldabaoth】の殺戮衝動を抑えるのに使っているため、使用できない。まさにジリ貧だ。

...こうなったらやるしかない。

 

「【魔犬の喉笛】!」

 

掲げた右腕から途轍もない衝撃波が発生し、周囲の敵を吹き飛ばす。これでしばらく猶予が出来た。早く終わらせなければ...

 

「...【禁術】、起動!」

 

右手を胸へ当てる。そのまま突き刺して心臓を取り出し、潰して右腕へ取り込む。

 

「ぐぅぅ...朱、頼む...!」

 

それと同時に朱が現実改変を起こして自分の空いた胸に擬似的な心臓を創り出し、更に毎秒280回にも及ぶ現実改変を行い拍動を起こすことで無理矢理延命措置を取る。

 

「エクス...」

 

右腕へ脊髄や各内臓が引きずり出され、巨大な剣を顕現させる。更に朱が現実改変を行って、自分の身体へ擬似的な器官を創り出しスペースを埋める。あとはー

 

 

 

「カリバァァァァァァァァァッッッッッッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

振るうだけだ。

その瞬間前方に衝撃波が走り、贄の剣から魔力の奔流が溢れ出て周囲を飲み込む。そして飲み込んだ全てが生贄として右腕へ引きずり込まれた。

 

「ハァ、ハァ、ハァ...」

 

周囲には自分と朱、助けた少女しかいなくなった。もう大丈夫なはず...

 

「ぐっ...!」

 

膝から崩れ落ちた。

駄目だ...完全に身体のあちこちがイカれてやがる。【元素功法】でもここまでの欠損はカバー出来ない。こんな事なら【パチクマ】を連れて来るんだったと後悔する。

だがその瞬間に頭の中でキィンと甲高い音がなった。

 

「...あれ?」

 

するとたった今取り込んだはずの魂が抜き取られる様な感覚と共に、一瞬で身体が再生された。でも頭がフラつく。【水銀弾】の生成で血を失いすぎたのだろう。

 

「すまない...」

「は、はい!」

 

【王道の法衣】を羽織った少女に一つ頼みごとをする。

 

「その上着の中にある輸血パックを一本取り出してほしい...」

「えっと、これですか...?」

 

少女が取り出した輸血パックをもらい、封を切って中身を煽る。即座に血液が分解し鉄分として吸収されて、血液量が増加する。これで大分マシになった。

 

「はぁ...」

「あ、あの...」

「...ん?」

 

少女が話しかけてくる。

 

「助けてくださって、ありがとうございます...」

「...気にする程じゃない」

「でも...!」

「もうすぐここには君の迎えが来るだろう。自分は立ち去るとするよ」

 

そう言うと立ち上がり少女が羽織っていた【王道の法衣】から手持ちの物を取り出すと、再び少女に着せた。

 

「これはあげるよ。いつかまた会った時に返してくれればいい」

「え...」

「じゃあね」

 

そう言って復活した【ruler】の能力を使い転移の魔術をかける。少女からは自分が少しずつ消えていく様に見えるだろう。

 

「私は...」

 

最後に少女が何か言おうとしたのは、聞こえなかった。

 

ーーー

 

 

 

 

 

 

「...懐かしい夢を見たな」

 

もう40年程前の出来事を昨夜は夢に見た。

未だに、あの時なぜ自分の身体が再生されたのか分からない。

 

だが問題はそこではない。

いちばんの問題は『過去の夢を見た時、それに関連した出来事が起こる』という予知夢の様な能力である。

ちなみに今までにも何回かはあった。

 

「まさか、ね...」

 

悪い方に傾かない事を祈りつつ時計を見ると、時間は既に朝の7時をとっくに過ぎていた。

 

「...やべえ遅刻だぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」




予知夢はいわゆるマーリンの予知魔法と同じです。
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