一周した世界線 作:Achoo!
そして短いです。許して...
「無頭竜が?」
『その様です。富士演習場付近で構成員が確認されたとの情報もあります』
「なんでそんな事やってんだ...」
その日の夜。
帰宅するとNHTICDの中嶋課長から連絡が入り、通話早々にとんでもない情報をもたらしてくれた。
「確か無頭竜って...」
『リチャード=孫がリーダーを務める香港の国際シンジケート...』
「それは表向き、だな?」
『...その通りです。正しくは中国での魔法技術、その発展における悪用や犯罪行為を抑えるためのFBIUIUの協力団体。そしてリチャード=孫はFBIUIUのフーヴァー局長の旧友でもあります』
「だが表向きには大規模なシンジケート。支部を世界中に持っていてもおかしくはない、か」
『そしてその目標は...』
「九校戦か...」
勝手にやっとけと言いたくなる内容だが、流石に自分の参加する行事に殴り込んでくる様な真似をされては、こちらとしてもそれ相応の対応をしなければならない。
...会議の前に建てたフラグを早々に回収する事になりそうだ。
「取り敢えず、自分が連中から話を聞こう。行動を起こすのはそれからでも遅くない」
『わかりました。こちらも独自で調査に入ります』
「頼んだ」
中嶋課長との通信が切れると、今度はフーヴァー局長へ連絡を始めた。
『もしもし』
「フーヴァー局長か?財田だ」
『議長か...何用だ?』
「リチャード=孫の連絡先を教えて欲しい」
『...何かあったのか?』
「どうやら無頭竜が九校戦で何かおっぱじめようとしてるらしい」
『なるほどな...多分それは日本極東支部の連中独自の動きだろう。リチャードによれば連中は九校戦での非合法な賭博をここ数年行って利益を出しているらしい』
うーん、これは...微妙なラインか?向こうが手を出さなければ大丈夫だろう。
『更に言えば、ソーサリーブースターの専売をやっているのも極東支部の連中だそうだ』
「確定。判決は黒だ」
『その言い方は...一応俺からも確認しておこう。しばらく外す』
「いや、後から折り返してくれ。流石に風呂に入りたい」
『了解した』
フーヴァーとの通信が切れた。
「さーて風呂に入りますか...」
そう言って浴室へ向かおうとすると、朱が頭の上へ乗ってくる。
「どうした?」
そう問いかけても、朱は頭の上から降りようとしない。
「...濡れるぞ?」
そう言っても降りない。風呂に入りたいのだろうか...?
「...まあいいか。行くぞー」
結局朱を頭の上に乗せて風呂に入る事になった。風呂に入っている間、何故か視線を感じたが気のせいだろう。
————————
着いてきてしまいました...
いや、私は悪くないはず。
最近ずっと構ってくれない███が悪いのです。
確かに貴方がここ最近忙しいのはわかります。
ですが、それを理由に構ってくれないと言うのもあんまりです...
確かに私は荒御魂、悪神とは言え永遠の時を生きる神でしょう。
だから貴方も同じなのです。
貴方と同じ時を生きていけるのは私だけなのだから。
███...構ってくれないと拗ねちゃいますよ?
————————
...なんかとんでもないモノローグを見た気がする。いや、そんな事はどうでも良い。...良くはないか。
風呂に入ってサッパリしたので、気分が良い。このまま寝れれば良いのだが、そうも行かないのが世の常である。
「で、結局の所はどうなんだ?」
『リチャードも連中には手を焼かされているらしい。最近では独断専行で許可なく犯罪行為を起こしている』
救い難いなオイ...
『さらに言えば、無頭竜が犯罪シンジケートとして有名になってしまったのも連中が原因だと』
「それは流石にないだろう...まあでも多分、無頭竜絡みの犯罪は日本支部が関わっているだろうな」
『FBIUIUとしては、ここで無頭竜が潰されると中国方面の情報精度が格段に落ちるから、なるべくそうなって欲しくないんだが...』
「...少し考えさせてくれ。NHTICDも動いている。情報自体がまだ少ないからな。連中が今回の九校戦で何を起こそうとしているのか知らないが、何かしらアクションを起こすとわかったらこちらも動く」
『すまないな...何事もなければ良いのだがな』
「そうである事を願ってるよ」
フーヴァーの言葉にそう応えると、通信のウィンドウが消えた。
...流石に疲れた。
九校戦に何事もなければ良いが、今回ばかりはそうも行かない。
NHTICDから連絡があったと言う事は、既に達也の部隊は何かしら無頭竜の情報を掴んでいるだろう。だがそれはあくまで表向きの情報。FBIUIUの協力団体と言う事は流石に掴みきれていないはずだ。その情報を元に無頭竜を潰されたとあっては、FBIUIUが動けなくなるのは目に見えている。
第一にこっちはアベルがついているとは言え、【053】と【239】が来る予定だ。彼女達に何かあったとあっては、富士演習場は文字通り消える。
やはり何かあった時のために、機動部隊を用意しておくべきか...
「神州」
『はい』
「8月上旬にフリーな機動部隊はある?」
『少しお待ちを...アベルは既に行くのですよね?』
「そうだけど...まさか【Ω-7】がフリーなのか?」
『はい。また【Ο-4】の第2部隊もフリーです』
「第2部隊か...いや、【Ω-7】でいいや。九校戦の間、富士演習場近くに待機させておいて」
『待機中はどうされますか?』
「自分からの指示が出た時に3分以内に集合できるなら、遊んでても構わない。ただし、3分以内は厳守だ」
『分かりました。こちらから伝えておきます』
「頼んだ」
神州がウィンドウから消える。
時刻は既に日をまたいでいる。今から寝てもそこまで意味はないだろうが...いや流石に寝ないとまずい。
明日からは九校戦関係のものも始まる。そこに寝不足で参加するのはいただけないだろう。
そう思うとさっさと部屋に入り、寝た。
赤文章は朱の独白です。