一周した世界線   作:Achoo!

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三週間も書いてなけりゃ、筆の質も落ちますよねぇ...


CADで遊ぼう

「えーっと?これとコレとそれとアレを...」

「...何しているんだ」

「何って、術式突っ込んでるんだけど」

 

高校生活も1学期が終わり、夏休み序盤。

九校戦の練習やCADの調整を踏まえて学校へと来ているのだが、特別何かするというわけでもない。

使用するCADの調整を繰り返して術式の効率化を図る。ただそれだけなのだ。

 

「その術式は?」

「スピードシューティング用に作ったんだけど、使える人がいなくてねぇ...」

 

ディスプレイに表示しているのは自分がスピードシューティング用に片手間で作った、向こうの世界で言うところの雷属性の魔法。

 

10m四方の空間の中心に空気圧縮でプラズマを発生させ、空気を圧縮させる際の気流によりクレーの飛行可能空間を限定し分裂させたプラズマを当てて破壊するという術式だ。

一見すると中々良さげな術式なのだが、達也に言った通り使える人がいない。その原因は気流の操作と、クレー位置の把握に重要な空間認識能力を必要とする事にある。だが自分の担当しているメンバーの中にこの2つを同時に処理できる魔法師がいないのだ。

まさに宝の持ち腐れ。

 

「取り敢えず自分でもやってみっかな...」

 

そう言うと術式をインストールしたCADをラップトップに繋ぎ、VRメットを被る。

 

「...何をするんだ?」

「んー?仮想空間で実際に自分でやってみる。見る?」

「少し気になるな...見せて貰ってもいいか?」

「うい、これ被ってラップトップに繋いでくれ」

 

達也がメットを被ったのを確認すると、ラップトップにシミュレーションプログラムを走らせる。

すると目の前のスクリーンにプログラム起動画面が映る。そのままラップトップを操作すると、九校戦のスピードシューティングと同じ様な風景が浮かび上がった。

 

「おお、すごいな。どういう仕組みだ?」

「予め保存しておいた個人データと接続したCADから仮想空間上に魔法が使える空間を作ってある。あんまり使った事ないけど」

 

ラップトップに繋いだCADを持つと、仮想空間上の手も同じ様にCADを持った。

 

「よし、始めるぞ」

 

自動的にスタートする様にセッティングしたプログラムが動き、スピードシューティングがスタートする。

 

有効破壊領域は空間上に浮かぶ1000㎥の立方体、つまり縦横奥域10mの空間内部。その中心に気流を収束させプラズマを発生させる。

 

スピードシューティングが対戦になるのは決勝トーナメントに入ってからなので、予選では有効なはず。そう考えると、空間全体から中心に気流を収束させた。

するとクレーは気流に巻き込まれて自動的に中心のプラズマへと集まり、プラズマの持つエネルギーによって破壊される。

 

「...もうちょい遊べるかな?」

 

さらに気流の収束域を限定して一直線に繋げ、最終到達点を中心に設定する。すると空間全域が台風の目に向かう暴風の様に風が吹き荒れた。

さらにプラズマを分裂させ気流の中へ混ぜると気流全体が電流のブレードの様になり、クレーが砕かれていく。

 

「やりすぎじゃないか?」

「そうかね?」

 

既に点数自体が予選基準を遥かに上回っている。ここらで手打ちとするか...

 

「確かに使う人がいないのはよく分かった」

「やっぱり?」

「予選で使うには申し分ないんだが。本戦で使うとなると、な」

「やっぱり気流収束と空間把握能力かぁ...」

 

これ以上は自分も出来ないしなぁ、と思いつつメットを外す。流石にこれに気をとられ続ける訳にもいかない。CADの接続を解除し術式データを解体すると、CADのリソースにクリーンナップをかけて元の状態へと戻す。リソース内のデータが再度消去しきった事を確認すると保管されていたラックへ戻し、CADの保管庫の中へ入れて厳重にロックをかけた。

 

「そう言えば暁、あの術式をどうして作ろうと思ったんだ?」

「うーん...元は悪ノリで作ったんだよなぁ」

「悪ノリ?」

「なんか派手なの作れないかなー?ってね。んでそれを改造してみたんだ」

「それで改造の度が行き過ぎたって訳か」

「多分な。まさかここまで面倒なもんが出来るとは思ってなかったんだけどねぇ...」

 

元を辿ればこの術式、THIに行った時に犀川主任たち先端技術開発部の方々と悪ふざけで作った代物である。そのため術式そのもののポテンシャルは非常に高いのだが、それが原因で細かな制御が滅茶苦茶面倒なのだ。

 

「術式そのものはかなり洗練されていたな。使用するサイオンも必要最低限、しかもそれを有効活用している」

「やっぱり読み解けるやつは違うね。見る所が」

「財田、いるか?」

 

達也と談笑していると、服部先輩が室内へと入ってきた。服部先輩は自分の試験の実験台になってもらった上に、良い評価も出してくれたのというのもあったので、自分が競技用CADの調整を担当している。

 

「服部先輩?どうしました」

「実はクラウドボール用の術式のここなんだが...」

 

どうやら何らかの問題でもあったのだろうか?

 

「ここをもう少し負担を減らせれないか?」

「割いたリソースは十分だと思いますけど...」

「実は試合がフルセットになった時、最後の方がだれてしまうんだ」

「ちょっと見せてください」

 

服部先輩の腕からCADを剥ぎ取り、調整機器へ接続。手持ちのラップトップに状態を表示させる。

 

「...なるほど。ここか」

「どうしたんだ?」

「少し預からせてもらっても良いですか?」

「明日の練習までなら良いぞ」

「ありがとうございます。それまでに仕上げてくるので、服部先輩は終わった方がいいですよ。明日からが大変ですので」

「わかった」

 

服部先輩から預かった競技用CADを特殊素材(SCP-148)製のケースへ入れる。

 

「それじゃ、お預かりします」

「頼んだ」

 

服部先輩が部屋を出ていくと、自分も机の上に散らかした物を鞄へ戻す。

 

「もう帰るのか」

「今日ちょっと用事があってね」

「用事?」

「親戚の子がうちに来るから、そのお出迎えをしなきゃいけないんだ」

「そうか...そう言えば」

「ん?」

「お前に渡しておく物がある」

 

達也はそう言うと鞄からひとつの封筒を取り出した。

 

「なにこれ?」

「指導室に呼び出された後の事、覚えているか?」

「あー、そんなんあったねぇ」

「そんなんって...ともかくだ。ここでなく家で開封してくれ。確かに渡したぞ」

 

そう言うと達也は鞄を持って部屋を出ていった。

...この封筒、一体何なのだろうか。

 

 

—————————

 

 

結局、封筒の中身は分からずじまいだ。

中身は一体何なのだろうという疑問を抱きつつも、彼女達をお出迎えするために東京駅へとやって来た。

 

「...っと、どこだ?」

 

東京駅は昔から相変わらず広い上に複雑だ。世界線を超える前から何も変わらず、更にその複雑怪奇さは増したと思う。おかしいなぁ...既に100年近く経ってるはずなんだが。

そんな感想を抱きつつも、リニア新幹線の改札へと向かう。リニアの改札は構内で最も地下に位置しているため、非常に場所がわかりやすい。

 

「ハーイ!███!」

「お世話になります」

「よく来たね、シガーロス、███。」

「お久しぶりです、総隊長」

「久しぶりだな、bailouter(ベイルアウター)。護衛ご苦労様」

「いえ、仕事ですから」

 

改札から2人の少女と、その間に挟まれる形で1人の男が出てきた。【SCP-053】こと███に、【SCP-239】ことシガーロス=ステファンドッティル、そしてその護衛を務める【Ω-11(イジェクションシーツ)】部隊長のbailouterである。

 

「しかし良かったのですか?」

「なにがだ?」

「彼女達を東京まで連れてきて...」

「もしかすると、力を借りる事になるかもしれない。bailouter、【Ω-11】は動かせるか?」

「富士演習場には【Ω-7】が配置されると聞いていますが?」

「保険だ。今回ばかしは一筋縄じゃいけないらしい」

「...わかりました。すぐに手配します」

「悪いな。ボーナスはこちらで持つ」

 

唯一の問題である無頭竜の事と言い、FBIUIUが絡んできているのはどうにも納得し切れない自分がいる。

 

「███、アベルはー?」

「家にいるよ。それとここでは███じゃなくて暁って呼んでね?」

「わかった!」

「じゃあ、家に行こうか。bailouterも来てくれ。どうにも嫌な予感がする」

「それは我々に危害が加えられるとでも?」

「いや...そういう事じゃないんだが」

 

...この時はまだ、帰宅直後にとんでもない情報がもたらされる事により、嫌な予感を感じた事へ自分は気がつけなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

...そう、『組織には裏切り者が付き物だ』というセオリーからは、何人たりとも逃れる事は出来ない。

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