一周した世界線 作:Achoo!
「なぜお兄様が二科生なのです!?」
「落ち着け深雪」
目的地である第一高校に着くと、入学式が行われる講堂の前から声が聞こえる。そちらを見ると男子生徒と女子生徒の2人がいた。なにやら揉めている様だが、関係ない所に首を突っ込む訳にもいかないので、騒ぎが遠目に見えるベンチに腰をかけた。頭の上にいる朱はどうやら眠たい様子。そのためあまり動けないので、あらかじめ鞄に入れて置いた本を引っ張り出して内容を確認していく。全く、朝早くに起きるからだ...
「やっぱり難しいよなぁ...」
「隣いいか?」
声をかけられたので顔をあげると、先程揉めていた男子生徒だった。
「ああ、いいけど」
「すまない。もしかして君も新入生か?」
「そうだけど。ていう事はあんたも?」
「ああ。司波達也だ。よろしく」
「財田暁ってんだ。こちらこそよろしく。オレサマオマエマルカジリってね」
「なんだそれ?」
「昔のゲームの決まり文句、らしい」
「へぇ...それで気になる事があるんだが」
「ん?」
「その...頭の上の物はなんだ?」
達也には朱が見えているらしい。認識の鳥である朱は通常、広範囲に認識災害を起こす事で自分の身を隠している。ならば達也はその認識災害の影響を受けない、つまり認識災害耐性を持っているという訳だ。
「何が見える?」
「...赤い鳥か?はっきりとしていないが...」
「大体それであってる。よく見えたな」
「いや、はっきりと見えてない。もしかしたら錯覚かと思った」
「コイツについてはあまり深入りしないでくれよ。危ないから」
「...危ない?」
「うん。危ない」
はっきりと見えていないレベルなら、達也は認識災害耐性ではなく、かなり高度なBS魔法を持っており、それにより朱の何かが見えたのだろう。そんな事を思っていると自分達の周囲から内緒話をするレベルの会話が聞こえた。
「ねぇ、あの子
「こんなにも早く...所詮補欠の分際で張り切りすぎるのよ...」
選民思想も甚だしい。ここ第一高校では一科二科制度を取り入れているが、その差はあくまで魔法が展開されるまでのスピードだ。
自分なら魔法より早く『量子指弾』を撃ち込む事が出来るので、あまり魔法構築のスピードは気にしていない。はっきり言って評価なんぞどうでも良い。使うのなんて『解放礼儀』を邪魔されない様にする物くらいだ。
「雑草か...」
「どうした達也?」
「いや、何でもない」
再び本へと目線を戻す。そして数分後、講堂が開く時間になるのを確認して本を鞄へとしまう。それと同時に朱が起きる。すると目の前に気配を感じた。
「新入生の方ね。もう講堂は開いているわよ」
目線をあげるとそこには女子生徒がいた。腕にはCADが巻かれており、明らかに学校内での地位がある者と容易に推測出来る。自分としてはあまり関わりたく無いので手短に礼を言い、立ち去ろうとする。どうやら達也も同じ様だ。
「「ありがとうございます」」
「いえ。それにしても感心ですね、スクリーン型なんて」
すると女子生徒は達也がしまい損ねた端末に食いついたので、自分はなるべくばれない様に講堂へと走って行った。
まだ続くよ。