空
「ムニャ……もう食べられない…」
小鳥のさえずりで目を覚ます。
最初に真っ赤な天井、次に私を見下ろす顔が見えた。
「起きたかしら?」
「お早うございます、レミリアさん。私はどれくらい眠っていましたでしょうか?」
「1日半くらいかしら」
「じゃあ一昨日の夜からだから…もう昼ですか。」
「昼ご飯にしましょ」
レミリアさんの後を、壁に手をつきながらついていった。
昨日より体は動くようになっていたが、まだ少し動かし辛いところはある。
何度も転びそうになってしまった。
「おはようございます。お嬢様、空さん。昼食の支度は終わりましたのでどうぞ!」
「ありがとう。」
「できた?」
「はい。空さんも早く座ってください。」
私は美鈴が引いた椅子に座った。
目の前にはとても豪華な食事が並んでいてレミリアがパクパクと食べ始めた。
美鈴さんから箸を受け取って食べ始める。
その料理は雪が作ったものよりも100倍美味しかった。
レミリアさんにとっては当たり前らしいが、いつも味が分からなくなるような料理を食べている私にとってはご馳走だ。
雪の料理には慣れてしまったが
「美味しい」
「ありがとうございます。」
レミリアさんの横に立っていた美鈴さんが深々とお辞儀をする。
「美鈴さんは食べないんですか?」
「私は先に済ましていますので」
「そうですか」
私はこのしあわせのような時間を過ごした後、大図書館に行った。
やっぱり本が沢山あるところは落ち着く
本の背表紙を軽くなぞりながら本棚と本棚の間を歩いて行くと、『戦狐』と書かれている本を見つけた。
勝手に読んでいいものなのかと思ったが、
「まぁいっか」
部屋の中心にあるソファーに座って読み始めた。
初めは九尾の狐について、次に戦狐の成り立ちや歴史、戦績などがかいてあった。
「これは…」
そこに書かれていたものは私の戦績。
十六で隊長になり、それから戦績は負け無しだった。
自分の能力を使って勝っていたのだが、改めて見るとなんか照れる。
「勝手に読まれては困るわ」
本に熱中していて気付かなかったが、パチュリーさんが後ろに立っていたようだ。
時間を確認するともう夕方だった。
「かなりの間真剣に読んでたわね」
「すみません。懐かしいものがあったものですからつい」
軽く謝りながら、目の前のテーブルに本を置く。
「懐かしいってその戦狐のやつ?ん?…………あなたまさか!この本に載っている空狐?」
「そうですけど?」
「えー!?」
「えーっ!?って、もうお気づきになられているのだと思ってました。」
「じゃあ、あなた十六歳で負け無しのあの隊長?」
え?ちょっと待って、本当に照れるからやめて
「はい…そんな呼ばれ方してたんですね。戦場と都以外には出なかったもので…」
「負け無し?!」
声がした方を見ると美鈴さんが目をキラキラさせて立っていた。
「何よ美鈴どうしたの?」
「いえ 戦狐の鞭の零番隊隊長って相当強いじゃないですか!」
「よくご存知で、本にも零番隊とは書かれていないのに」
「じゃあ飴の副隊長って……雪さんですか?!」
「そうですけど」
困惑しながら答えると、美鈴さんは目をキラキラさせて私を見始めた。
「私、死ぬまでにお二人と戦ってみたかったんですよ」
「戦うのはいいんですけどここ数年本気を出してないんで、つまんないと思いますよ。多分。治ったらいいかもですけど」
「治ったらいいんですか?!」
「私は反対ね」
パチュリーさんが速攻反対するも、後ろから飛んできた声にかき消される。
「いいじゃない!面白そうね、それ」
後ろではレミリアさんがこちらに歩いてきているところだった。
「レミィ、本気?」
「治った後に条件付きでね」
しまった
この流れだと一昨日みたいにトントン拍子で話が進み、戦わなければいけなくなる。
「私はいいんですけど、雪が……」
「雪さんは戦うのは嫌いなんですか?」
「雪の父親は戦で死んだので戦うのには抵抗があるみたいで、小さい頃の訓練もあまり乗り気じゃなかったっていうか、嫌々っていうか。」
「そうですか」
美鈴さんは肩をすくめて残念そうになった。
「戦うのは雪に聞いてからですけどこれなら見せれますよ」
私は両腕を前に出し息を吹きかけ、右は白、左は黒の炎を作り出す。
それを合わせて灰色の炎にし、それをいろんな形に変えてみせる。
鳥や犬、兎などの動物達を何匹も作る。
みんな驚きすぎて、その動物達に目が釘付けだ。
「熱くないの?」
「白い方は熱いですけど、黒い方はそれ程では」
「黒い方は何に使うの?」
「料理程度ですかね」
「料理もできるのねあなた」
大体のことはできるが、改めて言われると照れる。
「夜お作りしましょうか?得意なのはオムライスですかね」
「夜はそれにして頂戴」
「では美鈴さんも座っていてくださいね。みんな一緒の方が美味しく感じますよ!」
私は夕食の準備を始めた。
準備と言っても材料を出して刻むだけ。
調理に入るのは夕食のちょっと前、出来立てを食べて欲しいからね。
空
「ああ!!指切った!!」