東方妖狐伝〜雪空〜   作:鳶烏

27 / 57

小悪魔
「紅魔組って、私の出番は?!」

レミリア
「今からよ」


十二話 腕!!

 

 

 

図書館に着くと見慣れぬ赤い髪の女性が本棚を整理していた。

その人は落ち着きがなくあたふたしていた。

私が見ているとこちらに気づいたのか、本を置いて走ってきた。

「美鈴さん!あれ?こちらは?」

 

「小悪魔さん、この方は雪さんです。」

 

「どうも雪と申します、小悪魔さん」

 

小悪魔さんはとても可愛らしい見た目をしていたが、背中に生えた日本の悪魔羽。

 

この屋敷、やはり凄い

 

「よろしくどうぞ〜、何か本をお探しですか?」

 

「あぁ『戦狐』の本ってあります?」

 

小悪魔さんは棚がズラーっと並んでいる所をまっすぐ突っ切って行って、表紙が白い本を一冊持ってきた。

 

「こちらですね」

 

「これこれ。あの日空さんもこれを読んでいて、この本で雪さんが零番隊の副隊長ってことを知ったんです。」

 

「こんなのにそんな事がねー…これか」

 

てきとーなページを開くと、私のページだった。

 

「えっと、"隊長よりも攻撃は劣っているが、その他の防御力、回復力、特殊能力が特化している" すごいじゃないですか」

 

本の背表紙や表紙を確認する。

 

「そんな事はないです。作者は…さすがに書いてないか」

 

「気になるんですか?」

 

「まぁね、ここまで詳しく書いてあると一度戦ったことがあるやつか、都の内部の狐か、それとも…」

 

「「それとも?」」

 

「都に潜入してきた奴か………でも」

 

「「でも?」」

 

「一度戦ったことがあるやつだと全員死んでると言うか…残さず殺してるから。」

 

その瞬間、小悪魔の顔から笑顔が消え、真っ青になった。

 

ガチャ

 

誰かが図書館に入ってきた。

後ろを振り向くと、朝ごはんを食べ終わったパチュリーがお腹いっぱいと言わんばかりの顔で入ってきた。

 

「来たわよ。話したいことって?」

 

「この足を治して欲しいんです」

 

「は? 冗談でしょ?」

 

さっきの幸せそうな顔から、一気に顔を歪ませる。

 

「本気です」

 

「治せないんですか?パチュリー様?」

 

「何を言ってるんですか美鈴さん!この大魔法使いパチュリー様ですよ!」

 

「難しいわ、これは簡単な術では無いわね。フランにかかっているのも同じ様な感じだけど」

 

美鈴さんはキョトンとして、話の内容が理解できていないようだ。

 

「これはね、普通だったら魔法は何回も重ねて強化していくでしょう」

 

小悪魔さんは相槌を打ちながら、何やらパチュリーの言葉をメモして行っている。

手元を見ずにあんなに早く書けるなんて、彼女やばいな。

 

「空の場合は、重ねるのではなくて一回を広げていくイメージ。一枚だからはがすのは簡単だけど、後にかなり残って今の私みたいに後遺症として残ることが大半なの」

 

「めんどくさいんですね」

 

「そういうことだったのね!」

 

こっちが空の術の特殊性について話していると、後ろからレミリアの声が聞こえてきた。

 

「聞いてたの?盗み聞きなんて悪趣味ね」

 

「私だけ仲間外れってひどいじゃない。あと、私はそんな趣味は持っていない」

 

「仲間外れにしたつもりはないけど、知りたいの?」

 

「お茶をお持ちしました」

 

「当たり前よ!あ、ありがとう咲夜。ずっと不思議に思ってたのよ、お父様やお母様も力を抑える事が出来なかったのに」

 

レミリアはいきなりきたと思ったら、お茶を飲みながら語り出した。

 

「それで、昔紅魔館に空が来た時に背中の紋章の意味を…」

 

レミリアはヤバイ!と、口を手で押さえた。

 

「背中の紋章の意味ってどういうことですか?!レミリアさん!」

 

私はついレミリアさんのところに駆け寄り、肩を掴んで揺さぶる。

 

「あ……ちょっ、えっと…それは」

 

「意味は何だったんですか?!おしえてください」

 

諦めたようにため息をつき、私の手をポンポンと叩く。

 

「はぁー、分かったわよ。内緒にっていわれてたんだけどなぁ…。あれは原罪の証だそうよ」

 

原罪…ねぇ

あの能力のせい?

だとしたら背中には何も無いはず

 

「原罪…か、レミリアさんどんな模様ですか?簡単でいいので」

 

「狐が二匹で円を描いて内側に文字があって、真ん中に半分が火で半分は氷みたいで、その火と氷の絵の中に片腕がない狐がいて、そんな感じだったわ」

 

雪は話を聞いて目を閉じる。

頭の中で今まで見てきた都を思い浮かべる。

 

狐が二匹、火と氷、欠けた身体。

まさか!

 

「儀式の紋章!それは原罪の証ではありません。儀式の紋章です!」

 

「儀式?」

 

「何なの?それ」

 

「あのーパチュリー様これ」

 

今まで話について行けず、戦狐の本を読んでいた小悪魔が口を開いた。

 

「術の解き方ってこれですか?」

 

小悪魔が開いたページには左上の方に大きな字で、『術の解き方』と書いてあった。

 

こんなにはっきり書いてあるなんて

 

「なになに?"全体を見て一番術のかかり方が甘いところに解除魔法をかける"と、意外に簡単ね」

 

「やってみるわ」

 

パチュリーは自分の眼に解視の魔法をかけて雪の足を見た。

すると足全体に靄がかかっているが、一点だけ微かに足が見えるところがあった。

 

「本当にあったわ、ここを攻めれば」

 

パチュリーが解除魔法をかけると靄が消え足が滑らかに動くように

 

「これで空を!」

 

「よかっ……」

 

突然パチュリーが倒れた。

 

「パチュリー様!?」

 

「パチェ!ちょっと」

 

「どいて!」

 

雪はレミリアを押しのけてパチュリーの首に片手を当て、高速で陣を展開し回復魔法をかけた。

 

「雪!どういうこと?」

 

「やられた!これは空の術ではなかったのよ!」

 

陣を展開している雪の腕は陣の風圧で包帯がほどけ、もともとただれていた腕から赤黒い血がだらだらと流れ出てきた。

指の先からポタポタと滴り落ち、パチュリーの服に点々と赤いしみを作っていく。

 

「雪あなた」

 

「今話しかけないで!」

 

雪が陣を消すとパチュリーがゆっくりと目を開けた。

 

「パチェ!」

 

レミリアが声をかけても、肩を揺さぶってもパチュリーは魂が抜かれた抜け殻のようになっていた。

 

「パチェ?ねぇどうしたの?」

 

「少し時間をおいてからにして下さいね。美鈴さんパチュリーさんをお部屋に運んであげてください」

 

美鈴さんはシュンとした顔でパチュリーさんを抱えて図書館を出ていった。

 

「ふー、良かった。あのまま起きてくれれば良いのだけど」

 

 

 





腕痛い
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。