「雪さー…あれ?咲夜さん?」
扉が開いて顔を出したのは美鈴だった。
美鈴に雪の事を伝え、また横になることにした。
「美鈴さん美鈴さーん!」
騒がしいな
廊下は静かに歩いてくれないと
病人がいるんだから
「どうしました?そんなに慌てて」
「先程、永琳さんがいらっしゃいまして、咲夜さんに合わせてと」
ん?
永琳?
「今はどこに?」
「お嬢様のお部屋に」
美鈴と小悪魔は部屋から飛び出して行ってしまった。
暇になり、少し呼吸の荒い雪に目を向ける。
最初はお嬢様の信頼も厚くて。
私がここに来る前からの関係だとしたら仕方ないが、私を救ってくださったお嬢様を取られたような気がした。
ふふっ、私は子供か
それからは辛く当たってしまったり、相手が不快になるような態度で接してしまった。
「ごめんなさい」
私の目からは涙が…
「なぜ…泣いてるのですか?そんなに辛かったですか?」
いつの間にか雪は目を開けていて、いつもの優しい笑顔でこちらを見ていた。
い、いつの間に起きた?!
ゆっくりと大量の包帯が巻かれた腕を伸ばしてきて、指で私の涙をぬぐった。
その後子供をあやすように頭を優しく撫でる。
泣いていたのを見られて私は窓に顔を向けてしまった。
「咲夜さん…ゴホッ」
「寝てなさいよ、妖獣だろうがなんだろうが体調崩したら寝てるのがいいわ」
「失礼するわ」
部屋に永琳が静かに入ってきた。
手には薬箱。
「風邪らしいじゃない咲夜。あら?雪も?」
「私は、大丈夫です。私はいいので咲夜さんをみてください。まだ熱と咳ですが違う症状が出てくる前に治さないと…命に、関わる」
永琳は咲夜の診察を始めた。
風邪みたい
「大丈夫なの?」
部屋には紅魔館の住人全員が揃っていた。
「まぁ風邪だと侮らないほうがいいわ」
「永琳さん…ゲホッ、紅魔館へは何用でいらっしゃったんですか?」
永琳はキョトンとした顔になる。
「永遠亭に手紙が、紅魔館に風邪の患者1名って。貴方が出したんじゃないの?」
チリン
不意に外から鈴の音が聞こえてきた。
「なんの音?」
「これは…」
窓を開けた。
自身の手足の変化を解き、獣の物に変え、窓の外に飛び出し壁を駆け上っていった。
「「「え?」」」
戻ってきた雪は口に黒い炎で作られ、首の所に鈴が付いている狐ような幻獣をくわえていた。
「雪さん?くわえていらっしゃるのは?」
「うわ!つい癖で、すみません」
雪は恥ずかしそうにくわえていた幻獣を美鈴さんに渡した。
「空の使う幻獣です。これがいるってことは近くに空が…」
雪は立っているのも辛かったのか窓枠に腰掛けた。
すると煽るような風が吹いて、そのまま頭から…
「雪!」
レミリアは落ちていく雪を止めようと窓から飛び出したが、窓枠に羽が引っかかりレミリアもバランスを崩す。
「キャァ!」
「お嬢様!」
咲夜の声とともに、美鈴の持っていた幻獣が窓から飛び降りる。
くるくると回転して一瞬人型になる。
キイイイイイイイイイイイイイイイイイイン
全員が耳を塞いだその時、雪の声が紅魔館に響いた。
「空ぁ!」
音が止み、全員が窓の外を見ると、雪は森の方に向かって叫んでいて、レミリアは赤い羽織の上に寝かされていた。
雪はフラフラと立ち上がり森の方へ歩いていった。
森の奥へと歩いていく人影を追った。
雪には確かに見えていたのだ。
人影の腰のあたりに生えている、《八本》の大きな尻尾を。
雪
「すとーかー」
空
「監視だ」