東方妖狐伝〜雪空〜   作:稲荷寿司の使い

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二十六話 封印 2人の犠牲

 

 

「もろい!もろすぎるぞ人間!先代あんなに硬くて強かったのに!」

 

「咲夜!」

こいつ、かなり強い

鬼だからか?

萃香や勇儀より少し強い?

いや、二人よりも圧倒的に強い。

あの時よりも私は強くなったが、私以上にこいつは強い。

 

「博麗の巫女よ。なぜ邪魔をする?我はこの幻想郷に迷惑はかけていない。」

 

「あんたの存在が目障りなのよ!……は?」

 

不意に視界に入った雪達の異様なほどの戦い方に目が離れなかった。

鬼もそっちを向いて固まっていた。

 

お互い狂った笑みを浮かべ、爪で斬りあったり牙で噛みあったりとかではなく、自分の全てを使って相手の目や腕、足などを切り取ろうというような戦い方だったのだ。

 

あいつも固まってる

今だっ!

 

「『神技 八方鬼縛陣』」

 

「ぐぁぉぁぁぁおぉあ!」

 

「『霊符 夢想封印』『夢符 二重結界』」

 

鬼の身体を何重にも結界が張られる。

 

「くそっ!俺を封印したらお前も死ぬぞ!博麗の巫女ぉぉぉ!!」

 

封印完了!

え?

 

私は体から力が全て抜けていくような感覚に襲われ完全に動けなく。

 

動かなくなった。

 

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

 

 

「かなり…きついわね」

 

腹の回復が間に合わない。

このままだと、

 

「これだけは使いたくなかったんだけど、我慢しなさいよ藍、ハァッ!!」

 

「アァァァァァァ」

 

藍はゆっくり地面に向かって落ちていく。

私は急いで藍を抱えて地面に下ろすと藍が目をゆっくり開けた。

 

「紫…様?」

 

「もう少し休んでいなさい」

 

「紫様、申し訳ありませんでした」

 

小刻みに震えていて泣いているみたいだ。

 

「いいのよ……うぅ」

 

回復が追いつかない

深くまで行ってしまったみたいね

力が……はいら、ない

 

「紫様!しっかり」

 

藍の肩を借りて立つのがやっとだ。

雪達の戦闘はどんどん激しさを増していき、両方ともものすごい怪我を負っている。

 

「もっと……もっとよ!」

 

「あぁ!もっとだ!」

 

その表情はもうこの世のものとは思えないものに変わっている。

 

これが戦狐の戦い方?

下手したら藍もこうなっていたのね。

 

「雪さん!空姉!」

 

「ア"ァ?」

 

「・・・藍!他の心配をしなさい!咲夜さんは?霊夢さんは?あなたの式の橙は!?」

 

藍が声をかけても駿は邪魔をするなと言わんばかりかりの視線を飛ばすだけ。

雪は正気を取り戻したみたい。

 

そういえば戦っていた霊夢達の姿が見えない。

橙は母上と屋敷の中に入って行ったけど、鬼と戦っていた霊夢と咲夜がいないのはなんでだ?

鬼がいないってことは二人が倒したか?

 

鬼がいたところに目をやると倒れている霊夢の姿が、近くには咲夜も倒れていた。

 

「霊夢!咲夜!」

 

「紫様!?」

 

藍の支えてくれていた手を振り離し、霊夢の元へと駆け寄った。

霊夢らはすでに息絶えていて、いくら呼んでも体を揺すってもいくら声をかけても、

再び、

凛々しい笑顔を紫に向けることはなかった。

 





凛々しい顔_| ̄|○ 尊い

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