綺麗な夕日が描かれている扇です。
「橙!どこだ橙!」
「藍!こっち!」
呼ばれて屋敷の入り口を見ると、今にも死にそうな母と母におぶわれている橙の姿が見えた。
かなり重症のようであの母がかなり息があがっている。
「橙!母上!何があったのですか?」
近づいて橙を背負うのを代わると、私の顔を覗き込んだ。
「屋敷の中に槍とかあるかなって探したら、案の定罠が仕掛けられててね。元壱番隊隊長の頃の力は出せなかった」
優しい笑顔を向けられる。
母の腕の骨はバキバキに折れているようで、母が動くたびに一緒に揺れ動いていた。
「橙は?なぜ」
「狐神器は見つけたんだけど、その時屋敷の天井の張りが降ってきて、私を守るために橙ちゃんが」
「そんな」
私は涙をこらえるだけで精一杯だった。
背中に柔らかい重さを感じながら、紫様の元へよろよろと近づいていく。
母は覚束ない足で雪の元へ向かった
「雪ちゃん!」
母が扇を投げる。
扇は美しい曲線を描いて雪が挙げた手の中に収まる。
雪がそれを取るとここら一帯の空気が変わった。
重々しくなり歩こうとすると、何やら波動のようなものが出ているのか、ゆっくりにしか歩けなかった。
「雪お前、それを使ったらどうなるかわかっているのか?」
掌を向け前傾姿勢になり、暴れる雪をなだめるように語りかけていた。
「おい、落ち着け…な?」
「分かってる……分かってるわよ!これを使ったらここら一帯、この炎の結界の中は地面が抉られ地面にいる藍達は死ぬかもしれない」
駿の制止も聞かず、ただ淡々と喋り続ける。
雪さん。
なんてものを持っているのですか?
でも私達が耐えれば駿は死ぬ
「雪さん使って下さい。私達は大丈夫です。早くしないと完全に取り込まれる」
「藍…分かったわ」
「空も死ぬんだぞ!」
決心を決めた雪に対し苦し紛れに叫ぶと、雪さんの動きが止まる。
扇を使うのをためらい始めた。
「紫!生きてる?!」
「・・・なんとかね…でもあと少しで」
雪が紫の元へと駆け寄って行く。
それを追うように駿も動き出したので母と私で行く先を塞ぐ。
「どけよ!」
「行かせない!」
「空起きなさい!いつまで寝ているの」
「うるさい!この体は俺のものだ!やっと手に入れたんだ、簡単に手放すわけにはいかない!」
駿は私の顔に向かって拳を飛ばす…が、スレスレのところでもう片方の手が伸びてきた手を掴み抑え、拳が目の前で止まる。
「藍ニ触レタラ許サナイト言ッタダロウ?私ノ妹ニ触ロウトスルナンテ良イ度胸ダナ駿」
「空」
「雪ダッタライイカナ?ト思ッタケド藍ハ許サナイ」
その時の声は昔一度だけ聞いたことのあったガチでキレてる、激怒している声だった。
空は片方の手で目を潰した。
グチャ
「コレデ完全ニ見エナクナッタナ」