雪は強い子です。
◆◆◆
「紫!」
「ここ…よ」
紫は咲夜と霊夢、橙を横に寝かせ、力なく座っていた。その辺りには血が広がっている。
「紫、最後一回だけスキマ開けられる?」
「えぇ、本当の最後になりそうだけど?」
冗談と言えない冗談を言う紫の肩を掴む。
「扇を振って能力が発動したら数秒間この炎の結界が緩む、だからその時全員連れて外に出て、人里にある元々私達が住んでた家に入ってて」
「あなたは?あなたも巻き添えに」
「私はいいの。この…幻獣について行って」
幻獣を創り出し紫の手に乗せ、すぐに駿の元へ戻る。
紫が何か叫んだようだったが聞いている暇はない。
「おばさん、藍」
駿を見ると雪がその場に止まる。
「どうしてどっちも潰れてるの?」
「空姉が」
「そうか、あなたもう終わったわね。視界を奪われた今のあなたは私に勝てない」
雪は扇を使う隙を作るために攻撃する。
視界が奪われている駿はがむしゃらに拳や術を使ってるが、雪は弱点を正確に突き体力を削っていった。
私達は紫様達の元へと駆け寄っていく。
「母上…そもそも駿って誰なんですか?」
「空のもう一つの人格よ。あなたの前、空と雪ちゃんの代でその秘術は禁じたんだけど、もう一つの人格で戦うことによって情を捨て、完全に戦闘に打ち込めると言うものなの」
「じゃあ雪さんにも?」
「雪ちゃんの方は駿よりも強いもう一つの人格を持っている。」
「それを出せば…」
「強力な分、飲み込まれるのも早いのよ。空は時々正気に戻っていたけど、雪だと数十分…いや、数分で飲み込まれる」
顔を俯かせ考え込む母の上から声が飛んでくる。
駿のとても明るい声だった。
「雪!そうだよ悠を出せ!」
悠?それが雪さんのもう一つの人格?
「出せよ!悠!起きろ!」
「やめて!」
駿が怒鳴るように催促をすると、雪さんが自ら勢いよく地面に向かって落ちていき、大きなクレーターができた。
その中心で頭を抱えながら地面にうつ伏せになる。
「いやぁぁ!!あぁ!」
自分の頭をぎりりと締め付けるようにして必死に抑える。
力が強いせいか抑えてるところから血が流れていた。
クレーターの中を、まるで水から出た魚のようにのたうち回り頭を抑え叫び続ける。
「藍!行くわよ!」
「行くってどこに?!」
「アレから離れるのよ!」
アレって雪さんでしょ?
なんで雪さんは地面に寝てるの?
駿はなぜニコニコしているの?
雪さんはクレーターの中心で動かなくなっていた。
でも、かすかには動いていて生きていることは確かだ。
するとゆっくりと立ち上がった。
「まだ眠いんだけど」
その人は確かに雪の容姿をしていたが、雰囲気が全く違う。
雪さんは凛々しさの中にどこか幼い部分が感じられるが、今の雪さんから感じるものは、純粋な恐怖。
近くにいたら殺されるのではないかと思えるほどの殺気で満ち溢れていた。
「なぁ悠、お前は私の味方だろうなー。戦おうぜ、そしてお前のそれと私のこの体を完全に自分のものに…」
駿の言葉が終わる前にあくびをしながら話す。
「戦うのはいいよ?ふぁーあ、あと…100年くらい寝てても良いでしょー。あーねっむ。これだから戦は嫌いなのよ、睡眠妨害もほどほどにしてよねー」
悠が体を伸ばすため体をねじると、後方にいた藍と目があう。
興味津々な様子で藍に近づいていく。
「…天?大っきくなったねー!」
「この子には近づかないで」
急に近づいてきて私の顔を至近距離から見つめてきたため咄嗟に離れる。
そうすると悠と私の間に母が立った。
「んー?どいてよー」
悠は満面の笑みを浮かべながら母の腰のあたりを思いっきり蹴る。
「うっ」
蹴られた衝撃で吹っ飛んだ母に駆け寄り起こす。
「母上!あなた誰?!誰なのよ!」
「分からない?そっかぁちっちゃかったもんねー。しょうがないか、じゃあ…」
少し考えるそぶりを見せ、その後に子供のような無邪気な笑顔を見せ言葉を放った。
「殺してもいいよね!」
駿「ごめん、話遮らないでもらっても…」
悠「天?おっきくなったねー」スタスタ
駿「?!話聞けよ!」