東方妖狐伝〜雪空〜   作:鳶烏

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二十九話 死の代償

 

 

 

 

「なーんちゃって!冗談、冗談だって、殺すわけないでしょ。だからそんな怯えないで」

 

そう言われワシャワシャと乱暴に頭を撫でられる。

駿はあり得ないという顔をして悠に怒鳴りかかる。

 

「は?どういう事だよ!早く殺れ!そいつを殺せば空は完全に戦意を失って、完全に支配できるのに。雪だって!」

 

「あなた…雪ちゃん?」

 

「残念ながら悠でーす。でも〜私〜…これ!貰っちゃったからー!」

 

どこに隠し持っていたのか、悠は駿の身体に付いているべき右肘から先を持って軽快に笑っていた。

 

「返せ!」

 

気付いた駿は傷口を強く掴み、悠が持つ腕に向かって飛びかかった。

それをひょいとかわし、ニコニコしながら私たちの方に飛んでくる。

 

「だって雪が腕取れば『いい』って言ったんだもん!そりゃあ話に乗るしかないじゃん」

 

駿は痛みに耐えようとじめんに膝をつき、肘のあたりを押さえ悶絶している。

 

「・・・や、ばい。そ、らぁ!まだ…まだ私は!あ…ぅ」

 

少ししたらゆっくりと立ち上がる。

 

 

 

 

雰囲気の変わったその狐はゆっくりと、もう見えることのない目で空を見上げる。

 

「空姉?ですか?」

 

「妹にそんな怯えたような声色で話しかけられるほど、私はひどいことをしてしまったのか?」

 

「空なのね、良かったわ!」

 

母と私は空姉に駆け寄る。

もう空姉の目にはなにも映らないけど、しっかりと私たちの方を向いてくれた。

 

「ねぇ駿は?」

 

シリアスな雰囲気をぶち壊すような悠に空は笑いかける。

 

「もう出てこさせないさ。ありがとうな引き戻してくれて」

 

「べーつにー、雪がとったら良いよーって言ったから」

 

悠は愛おしそうに空の腕を撫でる。

 

「悠、私の腕がそんなに欲しいのか?」

 

「うん。でもくれないでしょ」

 

悠は子供のように拗ねたような表情を浮かべる。

空姉は悠に向けて微笑む。

 

「それあげるよ」

 

「なに言ってるの?!それがなかったらあなた腕が再生できないのよ?」

 

「そうですよ空姉!」

 

私と母が止めるも聞こうとしない。

 

「本当に?本当にくれるの?」

 

「その代わり雪を……雪に変わってくれないか?頼む。今雪が必要なんだ」

 

悠はニコッと笑って空姉に駆け寄って、空姉の頭もワシャワシャと撫でる。

 

「良いよ!」

 

悠は目を閉じて眉間にぐっと力を込める。

すると、空姉の右腕が消えていき、目を開けた時には雪さんに戻っていた。

 

「空!」

 

雪さんは空に抱きついてワンワン泣く。

目を奪ってしまったことに対しての罪悪感からなのか、本人にも涙が止められないらしい。

 

空姉はそんな雪さんを引き剥がした。

 

「お前が一緒に来ていたメイドさんと今の代の巫女、あの化け猫はどうした?気配が感じられないんだが」

 

残っている空以外の藍、雪、紫、母は顔を伏せるが、空にはそれがわからない。

なおも話を続ける。

 

「あのメイドは紅魔館から来たのだろう?レミリアの匂いと、紅茶のいい香りがかすかに残ってる」

 

空は懐かしいものでも見るように言う。

咲夜は地面に突っ伏していて、目を閉じていても凛々しい顔だと分かる。

もう目覚めることはないが。

 

「博麗の巫女はむかつく先代の匂いがする。神社をあまり離れたらダメだぞ?境内が汚れてしまう。先代は境内の掃除ばかりしていたからな」

 

空は旧友の話をするように言う。

霊夢は地面に落ちた衝撃で、顔面の骨が崩れ、あの子どもっぽい所もあるが大人びた綺麗な顔が無残な事に。

 

「あの猫は藍と同じ匂いがする。匂いはするのに気配がない。何故だ?」

 

空は疑問を浮かべるように言う。

橙は母を救った時に背中に木材が刺さっていて、抜くと血が大量に出てくるのでそのままにしているので、地面から突き出た木片に突き刺さっているように見える。

 

「三人は…」

 

「しかも、今言った匂いに血の匂いが混ざっている。怪我をしているのか?雪治してやってくれよ」

 

「三人は死んだわ」

 

雪が言うとうっすらと微笑んでいた空の顔から笑みが消える。

空は残っている左手で顔を覆う。

 

「私が殺したのか?」

 

声が震えていた。

どんな事があっても冷静で、慌てているところもそんなに見た事がないあの空姉の声が震えている。

 

「違うわ空、貴方じゃない。あの鬼がやったのよ」

 

「違くない、私だ。私が巻き込んでしまったから、鬼の言うことに従ってしまったから、私があの時…」

 

空はフラフラと血の混ざった匂いを頼りに三人に近づき膝をつく。

一人一人、顔の輪郭をなぞっていく。

 

「私が紅魔館と博麗神社に連れて行くわ」

 

紫がスキマを開こうとすると、空が制止の声を上げる。

 

「待ってくれ。母上、私の…この背中の紋章は儀式の紋章ですね」

 

空は着物を脱ぎ背中を見せる。

 

「ええ、そうよ。まさかっ…貴方儀式をやるんじゃないでしょうね!?」

 

「ダメよ空!儀式は、私達が都を捨ててまで回避した災い」

 

「儀式ってなんのですか?」

 

空は儀式の説明をしながら、手の感覚だけで陣を地面に書いていく。

 

「これしか方法がない。母上、私を封印してくれますか?雪は母上が封印し終わった後、私を封印から解いてくれ。私が復活したら、私の命と引き換えに三人と藍、紫の怪我を完全に治す」

 

母上と雪は一度こう言ったら聞かないことを知っているので、準備を一緒に進めている。

藍は唖然として紫のそばについていた。

 

 

 





今更ですが、説明というか「」以外のところで、キャラの呼び方が 雪 だったり 雪さん だったりとバラバラなところがあります。
基本◆◆◆で視点変更となっていますので、雰囲気で読んでください。

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