東方妖狐伝〜雪空〜   作:鳶烏

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覚えてますか?
空が都を去るきっかけとなった出来事を




走馬灯episode 家出 逃走

 

 

 

やっと家に着いた。

小春さんに無理をさせてしまったようで、呼吸がすごく荒い。

 

「大丈夫ですか?」

 

「だ、ハァ…大丈夫、です。空さんは?」

 

「平気です。あと、これからは空でいいですよ。ただいま!雪!荷物!」

 

玄関を壊すように勢いよく開ける。

 

シーン

 

いないのか?

クソッ…このまま逃げるか?

いや、私1人だったら平気だが小春さんは人間だから、無理をさせたらダメだ。

 

人間は脆い。

このまま小春さんを連れて行くか?

私1人が囮に…

 

「空、どうして家から」

 

「えっと、その…あー」

 

どう説明していいかわからない。

小春さんは気づいていなかった。

いや、気づかないように育てられていたのか?

 

おそらく小春さんの一族はかつて狐の種と戦った事があるのだろう。

その戦いから生きて生還すると、狐の種が分かるというが…

でもこれは私と雪の代で終わった秘術の副作用のようなもの。

 

私達の前の代の誰かが人間と戦い、その人間が生きて帰っただと?

 

そんなバカみたいな事をする狐がいるのか?まして、相手の死を確認しないままその場を離れるなんて……ん?

 

 

 

あ、

それ私だわ。

やっべ

あの時だよね

そうだよね

天を助けた時だよね

ヤーッベヤッベ

 

「空?」

 

「あっえー、えっと」

 

ずっと硬直している私を不思議に思ったのだろう。

小春さんが私の肩を揺らす。

 

「小春の先祖で妖怪と戦った事のある方っている?」

 

「え?ええ、ひいお爺様が、妖狐と戦って傷だらけで帰ってきたって話を聞いた事が…」

 

おーあたりー!!

はい、私ですね

 

「逃げよう。小春」

 

机の上に雪たちに当てて書置きを残し、小春さんの手を引き里を離れるために走る。

 

「へ?あっ、ちょ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

〜数十分後〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ…ら、空!」

 

「…はい」

 

「ちょっと、止まって…ください」

 

「あご、ごめんなさい」

 

掴んでいた手を離す。

無心で走っていたので、魔法の森に入ってしまったことに気づかなかった。

 

そうだ、人間は体力がないんだった

茸の胞子は人間には害になるのか

 

「少し……あの家で休ませてもらおう」

 

向こうにある白い建物に小春さんを抱えて向かう。

 

トントン

 

「あのー。誰かいませんかー?…いないみたいですね」

 

背中の小春さんは顔色が悪くなっていて、呼吸も荒くなっている。

どうすればいいかわからなかったので、布を小春さんの口と鼻にあてておく。

 

抱えながら家の前に座る。

 

胞子は妖怪にも効くのだろうか。

私まで気分が悪くなってきた。

 

 

「貴方達、ここで何してるの?」

 

顔を上げてみると、人形の様な綺麗な顔立ちで、周りに人形を漂わせている女性が立っていた。

 

「私は空と言います。小春を少し休ませてほしいのですが」

 

「彼女は人間?なぜここまで連れてきたの?…まぁいいわ、入りなさい」

 

中に入り小春さんを寝かせると、その女性は手慣れた様に薬を調合し、小春さんに飲ませる。

小春さんはそれでだいぶ良くなったらしい。

 

「あなたは平気かしら?」

 

「はい、有難うございます…えっと」

 

「あぁ、私はアリスよ」

 

「アリスさん、ありがとうございました」

 

アリスさんはこの森に住む魔法使いらしい。

 

「彼女を連れてどこに向かってたの?」

 

「バレてしまったので里から離れようかと、追っても来てますし」

 

アリスさんは少し考えると、スッと立ち上がって奥に入ってしまった。

 

少しすると紙を一枚持って戻ってきた。

 

「この妖狐ってあなただったのね」

 

渡された紙には私に似た顔と小春さんの顔が描かれてあり、見つけたら賞金が出るみたいな事が書かれていた。

 

「もうこんなものまで、早いなぁ」

 

「彼女には?」

 

「まだ言ってません」

 

アリスさんは「はぁ」と短いため息をつき、私の向かいに座った。

 

「この紙その子の父親が出したものね、娘も巻き添いにして殺そうとしてるなんて」

 

「だから里から離れようと走ってきたんですが、行くあてがなくて、そこらへんに家でも作りますかなー」

 

テーブルに手をつき立ちあがる。

 

 

「空、が…妖狐?」

 

声を聞いた瞬間頭が真っ白になる。

 

「小春…さん?」

 

ゆっくりと後ろを向くと、こっちを怯えた様に小刻みに震えながら小春さんがこっちを見ていた。

 

「本当ですか?その話」

 

「あ…えあ」

 

頭を抱える。

 

やっちゃダメだ

やっちゃ…

殺っちゃ…

 

頭をフル回転させ今の状況を打破する方法を考える。

その思考を妖狐の正体がばれたら殺すという本能の様なものに邪魔され、なかなかいい案が考えられない。

「っ!」

 

「空!?」

 

私はアリスさんの家を飛び出した。

 

 

 

 

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