東方妖狐伝〜雪空〜   作:鳶烏

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夢は未来の前兆


五話 夢現つ

 

 

目を開けると見たこともない空間にいた。

 

「ここは?どこだ?」

真っ暗で一寸先も見えなかった。

辺りを見回すと暗闇の中に青白い筋が見え、私はそれに向かって歩いた。

 

その筋を覗き込むと、ベットに横になる雪さんの姿が見え、その周りに父と母が座ってた。

母は泣き崩れ、父は寂しそうな笑顔を雪さんに向けた。

父と雪さんはスゥーと透けていった。

その時、母は立ち上がり自身の首を掻っ切って倒れた。

すると、母が立ち上がりスゥーと透け父、雪さん、母は私に近づいてきた。

 

その瞬間、筋が消えてしまった。

 

私はまた辺りを見回すと少し離れた場所に赤い筋があった。

 

私はそれに向かって走った。

それを覗くと、辺り一面が真っ赤に染まり沢山の死体が転がっていた。

その中に、血の雨を浴びて笑っている空姉と私の姿があった。

 

「空姉」

 

声をかけるも聞こえてないようだ。

すると、空姉が笑いながらこちらに近づいてきて、後ろで藍が陣を組み背後には魔法陣が出現していた。

私はいつの間にか筋の中に入っていることに気がついた。

空姉が一歩ずつ近づいてきていた。

後ずさると後ろから叫び声が聞こえてきた

ハッと後ろを振り向くと血だらけの紫がいた。

 

「もう止めて!あなたは一体なんなの!」

 

「う…うるさい!そこ、をどけ」

 

「いやよ!絶対にどかない。私にとって大切な…」

 

「紫様逃げて!……え?」

 

私は紫の後ろにいる者達を見て声が出なくなり、その場に座り込んでしまった。

そこには、動かないの霊夢、咲夜、橙、母上、雪さんの姿があった。

 

「あの時わたしが…」

 

「その話はするなぁぁ!」

 

紫が空姉に捕まり、空姉が紫の首に触れ、腕を振り上げると紫の首が……

 

「ーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 

紫が言葉にならない悲鳴をあげた。

 

 

 

 

 

 

「紫様ああああぁぁぁぁあ!!!!!!」

 

自分の声で目を覚ました。

 

「藍さん?!大丈夫ですか?」

 

声のする方向に顔を向けるとビックリしたような表情の鈴仙がいた。

 

「とてもうなされていたようですが」

 

「いえ、大丈夫ですよ。ところで私は?」

 

「いつの間にか廊下で寝てしまっていたので、空いていた近くの部屋に運ばせて頂きました。服の着替え持ってきたので着替えて下さい。そのままだと風邪を引いてしまうかもしれないので、着替えが終わったら呼んでください。」

 

そう言われて汗だくだったことに気づいた。

待たせるのも悪いと思い、着替えて鈴仙と共に永琳のところに行った。

 

「あ!起きたのね、大丈夫だった?あまりにも酷くうなされすぎて熱を出して」

 

「すいません。あの、雪さんは大丈夫なんですよね」

 

「えぇ、一命は取り留めたわ。でも…」

 

「でも?」

 

「傷に特殊な術がかけられていて、その術が内臓や脳、神経まで及んでいたの。それで何かしらの後遺症が残ってしまったかもしれないの。」

 

「そんな」

 

「でも、記憶には影響はないと思うけど、いつ意識が戻るかはわからない。いったんあなたは帰ったほうがいいわ。紫も心配しているかもしれないし」

 

「分かりました。何かあったら教えてくださいね。」

 

「お送りします。」

 

鈴仙と一緒に永遠亭を出た。

竹林を抜けると慧音が妹紅と話していた。

 

「藍!雪さんは?」

 

「ご心配おかけしました。まだ意識が戻らないみたいです。」

 

そこから鈴仙と分かれて、家に向かった。

家に着くと縁側に座っている橙の姿が見えてきて、なんだか懐かしい気がしてきた。

私に気が付いた橙が走ってくる。

 

「藍様ーどこに行ってたんですか?昨日からどこにもいなくて、帰ってきたと思ったら紫様ともうひとり藍様にそっくり尻尾の人が来て」

 

ん…?私にそっくりな尻尾? まさか!

 

「あっ、おかえりなさい藍。あなた本当に良い主人に出会ったのね」

 

そこには笑顔で掃除をしている母がいた。

 

「母上?!なんでここに?怪我は大丈夫なのですか?」

 

「怪我?あぁそういえば、1日で治ってしまいましたよ。」

 

私はそれを聞いて安心してしまい、地面に手をつき座り込んだ。

その様子を橙は驚いた顔で見ていて、そんな橙に私は笑顔を向けた。

そこから私は人里におりて食材を買い、ついでに博麗神社に向かい、永遠亭でのことを話した。

 

「じゃあ、その雪が意識を取り戻したら私にも教えなさい。聞きたいことがタップリとあるんだから」

 

そのまま博麗神社を後にする。

 

家に着いて夕食の準備を始めた。

母と並んで調理場に立つのは久しぶりだったので、なんだか嬉しかった。

食事の準備が出来たと同時に紫が帰ってきた。

 

「紫様おかえりなさいませ。」

 

「藍、大丈夫なのね。よかった」

 

私達は久々のみんな揃っての食事を始めた。

そこで永遠亭であったことを話すと、聞いていた母は泣きそうになってた。

その後私は片付けを済まして布団に入ると、疲れと眠気が襲ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数週間だったある夜。

 

いつも通り布団に入りウトウトしてきた。

 

ダンダンダン!!

 

「藍さん!藍さん!」

 

誰かが家のドアを叩いている。

 

なんだこんな時間に

やっとウトウトしかけていたのに

 

今にも瞑ってしまいそうな目を擦りながらドアを開けた。

そこには、息を切らして立っている鈴仙がいた。

 

「藍さん!雪さんが、意識を取り戻しました。すぐに伝えたほうが良いと思って」

 

「本当に?!!ちょっと待っていて下さい。」

 

そう鈴仙に告げると私は部屋に走った。

半ば乱暴に襖を開けて紫様と母を叩き起こし、橙をおぶって、永遠亭と急いだ。

 

 

 

 

永遠亭に着くと私達は雪さんの部屋へと走った。

扉を開けると、窓から月を見上げている雪さんがいた。

私は飛びつく様に雪さんの元へ。

その時雪さんの身体が全身包帯で巻かれていることに気づいた。

 

「そんなに慌ててどうしたの?少し落ち着きなさい。」

 

誰をも魅了する透き通った声でそういった。

永遠亭についてやっと起きた橙と鈴仙はその声に聞き惚れていてペタンと床に座り込んだ。

 

その姿を見て雪さんはクスクスとわらった。

 

その儚げな姿を見て橙と鈴仙は倒れてしまった。

さすがに焦ったのか雪さんはベッドから降りようとすると、苦痛に顔を歪めた

 

「った!くうぅぅ…ゲホッゲホッ」

 

「大丈夫ですか?!」

 

苦しそうに咳き込んだ雪の手は赤黒く染まっていた。

そこに永琳が沢山の薬を持ってきた。

それを雪に飲ませると少しラクになったのだろう、咳が治まり呼吸もゆっくりになった。

 

「雪さん無理しないで下さい」

 

「ゴメンゴメン。ハハハ」

 

雪さんは乾いた笑顔を見せた。

それを見て私はなぜか胸が痛くなり涙が流れてきた。

雪さんは私の頬に触れ親指で涙をぬぐう。

 

「そんな悲しい顔をするな。藍は笑顔が一番似合うぞ!笑え笑え。」

 

「うん。うぅ…」

 

雪さんは泣くなと言いながら私の頭を撫でてくれた。

手からは包帯で覆われてはいたが、とても温かく感じた。

 

「包帯かえるわね」

 

それを見ていた永琳が雪の手をとって、丁寧に血で汚れた包帯を取っていった。

その包帯で覆われていた雪の手が火傷を負ったように赤くただれていた。

それを見て私は、思わず目をそらしてしまった。

 

「雪さん」

 

「ん?どした?ほらまた暗い顔になって。だから笑ってって藍が泣くと私も悲しくなってくるから」

 

雪はそういって紫に手招きをした。

 

「もう良いのかしら、感動の再会は」

 

「えぇもう十分よ。藍、おばさん、倒れている二人を運んであげて、ずっと床に寝かせているのはかわいそうよ。」

 

「藍。少し席を外してくれる?その橙のこともあることだし。

 

私と母は倒れている橙と鈴仙を抱えて部屋を出た。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

上半身に走る何度も刀で斬られるような激痛で目が覚めた。

その時の私はとても息が荒く、自分で自分を落ち着かせようと深呼吸をするも、あの時の空の狂った笑いが脳裏にべったりと残っていて、思い出すだけで手が激しく震え、頭を鈍器で何度も殴られているような頭痛がする。

 

ガチャ

 

そこに、誰かが入ってきた。

私は一瞬身構えるも、はらの奥底からこみ上げてくる吐き気に手で口元を抑える。

 

「大丈夫ですか!?」

 

部屋に入ってきたその兎が、私の背中に手を当てて優しくさすってくれた。

 

「ゴメンなさい、大丈夫よ。あなたは?」

 

「私、鈴仙・優曇華院・イナバと言います。鈴仙と呼んでください。今師匠を呼んできます。待っていてください」

 

そういって鈴仙は走って行ってしまった。

一人になった私は「名前長っ!」とか思いながら、窓から見える綺麗な満月を眺めていた。

 

「あぁ起きたのね。よかったどこか痛いところは?今鈴仙に藍のところに行かせたから後少しでくると思うわ」

 

「私は?今まで何を」

 

「空との戦闘の後、気を失ってこの永遠亭に運んできたのよ。その間藍は心配して熱を出したり…あなたよっぽど大切に思われているのね」

 

その話を聞いて私はなんだか嬉しくなった。

あんなに小さくていつも空の後ろについてきていたあの藍が……

 

私は急に襲ってきた吐き気に口を抑える。

手は血で汚れていてまたあの激痛が走った。

 

「ゲホッ」

 

「少し待っていて、薬を持ってくるから」

 

永琳が部屋を出るのと入れ違いに鈴仙と藍が入ってきて、藍は勢いよく私の所に駆け寄ってきた。

 

「そんなに慌ててどうしたの?少し落ち着きなさい。」

 

藍の後ろにいた鈴仙と小さな化け猫の二人が床に座り込んだ。

どうしてかは分からなかったけど、その姿が面白くて失礼と分かっていても、クスクスと笑ってしまった。

 

バタン

 

とうとう倒れてしまった。

なぜ倒れたのかはわからなかったけど、私はびっくりして、ベットから降りようとすると吐き気と激痛がこみ上げてきた。

私が呻くと藍が心配そうな顔をしていた。

そこに、永琳が薬を持ってきてくれてその薬を飲んだ。

そしたら嘘のようにあのひどい吐き気が消えた。

 

この薬めっちゃ効くやん!

 

「雪さん無理しないでください」

 

私はそんな藍に乾いた笑顔を見せることしかできない。

激痛に耐えていつものように笑うことができるほど私は強くない。

 

私は倒れた二人を運んであげてと藍とおばさんに頼み、紫と二人にしてもらった。

 

「っくゲホッゲホッゲホッ」

 

「大丈夫?そんなにひどかったのね、さっきはそんな風に見えなかったけど。」

 

我慢していた咳が止まらない。

 

「えぇ。ゲホッ、藍にこんな姿見せられないもの。ゲホッゲホッ、あなたが藍の主人なの?一つお願いがあるのだけど」

 

「何?遠慮なく言ってちょうだい。」

 

「藍を空に近づけないようにして欲しいの、お願い」

 

「え?それはなぜ」

 

「それは…」

 

ガチャ

 

藍が戻ってきた。

藍を見た瞬間私は笑顔を作った。

永琳がそろそろ休んだほうがいいと、紫と藍を帰るように言った。

私はまた深い眠りにつこうと横になり目を閉じると、ちょうど睡魔がやってきた。

私はナイスタイミングと思って、一人でクスッと笑った。

 

 





雪の声は特に特殊なものはかかってないです。

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