東方妖狐伝〜雪空〜   作:鳶烏

50 / 57

新婚さん



走馬灯episode 逃亡生活

 

 

 

 

里から少し離れたところで、二人が暮らすのに丁度いいくらいの家を建てた。

目立ってしまうかと思ったがそうでもなく、自然な感じに仕上がったのでよかった。

 

「買い物とか外に出る事全般は私がやるので、家の中のことをお願いします」

 

「分かりました」

 

「もしも誰かここを訪ねてきたら、この扉に入ってください」

 

私は家の奥に作った扉を開けてみせる。

そこはもう1つの部屋があり、布団や食料など、長い間中に入っててもいいように、色んなものを詰めておいた。

 

「この中に入っていればばれませんので。普通の人にはただの壁にしか見えてないので」

 

「分かりました」

 

「じゃあ私は買い出しに行ってくるので、待ってて下さい」

 

小春さんを残し、家を出る。

走って里に行き、素早く買い物を済ませて家に戻る。

戻る途中に私たちを探している連中を見たが、私たちの居場所はまだつかめていないらしく、血眼で探している。

 

「おー怖っ、急がないとな」

 

家に戻ると小春さんは掃除をしていた。

私が帰ってくるのが見えると、私に大きく手を振ってきた。

 

「空さん!」

 

「ただいま戻りました」

 

私達は食材をしまい、これからの話をする。

私は妖狐の事を話した。

 

「そんな儀式があるんですね。その槍っていうのもなんかすごいんですね」

 

「こういうのでしか狐を殺せない世代だったんです」

 

自分が戦場で駆け回ってた頃を思い出す。

小春さんが思い出したように手を叩いた。

 

「そうだ、博麗の巫女って知ってます?」

 

「いえ、聞いたこと無いですね」

 

小春さんから博麗の巫女の話を聞く。

 

「たぶん私達が見つかったら動いてくると思います。妖怪退治専門の巫女です。妖怪が出た時にはとても頼りになったのに、今はとても恐ろしいです」

 

博麗の巫女はとても強くて、そこら変の妖怪は目があっただけで一目散に逃げ出し、里の人からはとても慕われているが、一部の人たちからは「怪物」や「人間じゃ無い」などと言われているらしい。

でも、全てが万能というわけでも無いみたいで、感知はまぁまぁ優れていないらしい。

 

「きっと巫女様も空さんの変化には気付かないと思うので大丈夫です。さぁ、夕飯の準備しましょ」

 

無理やりテンションを上げて夕飯の準備に取り掛かっていった。

 

博麗の巫女か、厄介そうだな

里の人間からも恐れられるなんて、かなり強いと見える。

だが…

 

「空さーん。ご飯とかお願いしていいですか?」

 

「は、はい!」

 

小春さんに呼ばれ、急いで台所に行く。

 

割烹着姿の小春さんはとても可愛く、よく里の男どもが放っておいたなと考えてしまう。

まじまじと見ていると、視線に気づいた小春さんに声をかけられる。

 

「空さん?大丈夫ですか?」

 

「え?…は、はい。ご飯ですよね」

やばい、見入ってしまった。

雪並みに可愛い人間がいたのか

 

私は米をとぎながら小春さんの料理の手際に目が釘付けになっていた。

魚の捌き方から切り方など、ほぼ料理人並みに上手だった。

 

「料理、上手なんですね」

 

「そうですかね?お口に合うか心配で、妖狐って何を食べるんですか?」

 

「普通に人が食べるものを食べますよ。後は…これは言わないでおきますね」

 

「え?なんですか?」

 

「聞かないほうが、だって人の…」

 

「あーー!!言わないでください!」

 

小春さんは私の言おうとした言葉を察して、言葉を遮る。

そう、私達妖狐が食べるのは、普通に人間が食べる肉や魚の他に、人肉なども食べることがある。

 

こんなことをしている間に準備が終わった。

 

「じゃあ食べましょ、いただきます」

 

「いただきます」

 

めっちゃうまい!

口に入れた瞬間に解けるように崩れる魚、味噌汁は口の中にふわっと香る出汁の香りが素晴らしい。

 

「美味しい」

 

「ありがとうございます」

 

「雪のまっずい料理しか食べてなかったから、余計に美味しく感じます」

 

「フフフッ、雪さんは料理苦手なんですか?」

 

「ええ、そりゃもう秋斗のほうが上手ですよ。でも、嫌いになれないんですよね」

 

小春さんは笑いをこらえきれなくなって、箸を置いて笑い始めた。

こんなに笑ってるのは初めて見た。

 

「小春さん笑いすぎですよ」

 

「ごめんなさい、フフッ。そうだ、空さんはこれからも今みたいに男の人の姿で生活するんですか?」

 

「はい、その方が不自然じゃ無いし、もし2人でいる時に客が来ても怪しまれないでしょ」

 

小春さんは納得したような顔をした後、心配するような顔に変わった。

 

「もし、巫女に見つかってしまったら…」

 

「大丈夫です、私があなたを守ります」

 

そう言うと、顔を赤らめて目をそらされてしまった。

前にもこんなことがあったので私は小春さんに聞いてみた。

 

「あの、どうかしましたか?」

 

「あぁ、いえ、なんでも無いです。ごちそうさまでした。先片付けますね」

 

小春さんは素早く食器を重ねて台所に行ってしまった。

 

ただ聞いただけなのに…

なんでだ?

 

部屋を出る小春さんの背中を呆然と見つめるしかなかった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。