小春ちゃん
可愛いですねぇ
うん、
◆◆◆
「大丈夫です、私があなたを守ります」
その言葉を聞いた瞬間、空さんの顔をまともに見れなくなった。
耐えられなくなり目をそらす。
「あの、どうかしましたか?」
「あぁ、いえ、なんでも無いです。ごちそうさまでした。先片付けますね」
まじか、無自覚なの?!
こういう恥ずかしい事をサラッと言うなんて。
私が食器を洗い始めると、食べ終わった空さんが横から手を伸ばしてきたので、びっくりして一歩下がる。
「驚かせてしまいました?大丈…」
「あ、いえ!私が勝手にびっくりしただけなので!食器は洗っておくので、空さんは休んでてください」
空さんは少し困った顔をしたが、おとなしく部屋に戻っていった。
「ふー、これからどうしよう」
皿洗いも終わり部屋に戻ると空さんの姿が見えなかった。
少しすると、腕まくりをしたままの空さんが部屋に入ってきた。
「小春さん。お風呂ってどうしますか?」
「お先どうぞ」
「そうですか?じゃあお言葉に甘えて」
空さんがお風呂に入りにいき、部屋には私一人になったので、縁側に座ってお茶を飲むことにした。
外はもうすっかり暗くなり蝉が鳴いている。
ここは里から離れていて森に近いので、蛍がチラチラ見えるし、森から下りてくる心地よい風で風鈴が綺麗な音を奏でている。
「巫女様。強いんですよね」
「小春さん、お風呂どうぞ」
ボソッと呟くと、後ろから空さんの声が。
びっくりしてお茶をこぼすところだった。
「は、はい!空さん早かったですね」
「あまり入ってると変化が解けてしまいますので」
浴室に向かう。
私はお風呂に入るために服を脱ぐ。
私の背中には大きな傷跡がある。
この傷は妖怪につけられた傷で、その時に巫女様に助けられた事があったのだ。
巫女様は紅白の巫女服に身を包み、艶やかな長い黒髪を一本に結わえ、お祓い棒とお札を持っていた。
横顔がとても綺麗だったことを覚えている。
「痛っ!…いつまでたっても慣れないなぁ」
湯船に浸かり、傷にお湯が触れるとズキっと痛みが走る。
この痛みを感じるたび、あの時巫女様が妖怪に向けた、親の仇でも見るような鋭い眼光が蘇ってくる。
あの人は本気で妖怪が嫌いなんだ。
体を素早く洗い、お風呂場から出て寝巻きに着替える。
部屋に戻ると空さんが縁側に座って空を見上げていた。
「あ!小春さん!早く早く」
「え?」
空さんが縁側から呼んでいた。
夜空を指差し、キラキラとした目で私をみつめていた。
横に座ると、里の方から光の筋が上がり空に大きな花を咲かせる。
そうだ、今日は花火大会だった。
「小春さん、花火ってこんなに綺麗なものなんですね」
「え?はい、花火は私の一番好きな物なんです」
「そうなんですか。あ!大きいのが上がりましたよ」
空さんは子供のようはしゃぎ、妖狐の面影など全く感じさせられないような感じだった。
だんだんと花火の上がる数も減ってきて、そろそろ終わりなのかと寂しいような気がしてきた。
「空さん。あれ」
「小春さんは下がっててください」
大きなヒューという音を立て、高く高く夜空に上がる大きな花火の光を背に、こちらによろよろと近づいてくる人影が森の中から歩いてくるのが見えた。
◆◆◆
小春さんの指差す方に人影。
花火が逆光で影になり顔が見えない。
「小春さんは下がっててください」
まずは小春さんを下げる。
戦闘になるかもしれないからな。
「あの方は!」
小春さんが後ろから飛び出し、その人影に向かっていく。
小春さんが何やらその人に言い、肩を支えてこちらにゆっくりと歩いてきた。
「空さん、横になってもいいように布団かなんか敷いてください。水と救急箱もお願いします」
「は、はい!」
訳も分からず小春さんに言われた通りに準備をする。
小春さんがその人を寝かせると、私は硬直し目を見開いた。
ハッとして小春さんの方を見ると、小春さんも私が考えていたことがわかったのか、大きく頷いた。
そこに寝ている人は紅白の巫女服に包まれていたのだ。
意識がないようだが強い『気』を感じる。
「こ、小春さん」
私は情けなく、微かに震えた声で小春さんを呼ぶ。
「ええ、空さんは初めて見たと思いますが、この方が博麗の巫女様です」
こんな細くて弱っそうな身体してんのに巫女?
身長は高い方だが私より少し小さいか
「空さん、巫女様の傷が回復するまでここにおいてもいいでしょうか?」
は?
何言ってんだ?
こんな危険人物、弱ってる時にさっさと殺しておくべきだろう
いっときの情が今後の危機を降らせるかもしれないんだぞ?
「ダメ…でしょうか?」
「それは!・・・はぁ、分かりました」
こうも迫られると断れないのが私の悪いところだな。
この里に巫女がいるっていうこと自体危険極まりない事なのに、家に置くなんて。
私はあまり近づかず、距離をとって接しよう。
「では私が巫女様についていますので、空さんは休んで下さい」
「寝ずにずっとですか?」
「はい、夜中に目を覚まされたらびっくりすると思いますので」
促されるまま寝床につかされる。
巫女の所に1人でいさせられる訳もなく、私は縁側に座り夜風に吹かれながら、目覚めるのを待つことにした。
空「巫女を置くとか…まじかぁ」