空「お!そうだ!あれやろ」
庭に大きな防術の陣を書いてその中心に立ち、ゆっくり時間をかけながら術を創る。
これを創る理由は、もし私と巫女の戦闘が始まるとき小春さんに危害を及ぼす事がないようにかけるものだ。
まあ、こうして待ってる間に眠くなって寝てしまわないようにするのも理由の一つだけど
私ならこのような術は数秒あれば簡単にできるが、ゆっくりと時間をかけることで緻密に、簡単に解かれる事のないように、簡単に術が崩れて小春さんが傷ついてしまわないように出来る。
「はぁっ!」
体から勢いよく放出された黄色い光は、私が手をかざすと手元にお札という形で具現化された。
「これを小春さんに貼れば」
縁側から家に上がる。
小春さんは巫女が寝ている布団に伏せて寝てしまっていた。
小春さんの腕にお札を貼り付けると、腕に染み込むように消えていった。
そして掛け布団を引っ張り出して小春さんにかける。
「よし。これでいいや」
また縁側に座ると、術を創り上げた後の疲れに襲われ眠ってしまった。
「ぉ……ぉーい」
「ん、んぁ?」
誰かに肩を叩かれた。
目を開けると巫女が立っていた。
「おはよう」
「お、はようございます」
いきなり話しかけられたのでびっくりした。
「小春が起きたら、ありがとうと伝えておいてくれ」
巫女はそう言うと足を引きずりながら去ろうとしたので、一瞬迷ったが引き留めた、
「待て、怪我がまだ完治していない」
「こんなのかすり傷だ」
見た感じは大丈夫に見えるが、彼女の足のけんはすぐに切れて歩けなくなるほどの激痛が走るだろう。
それに巫女自身も気付いてない。
「その足」
巫女は意味がわからないようで、首を傾げている。
ため息をついて説明を始める。
「…腕とかはまだ浅い傷だったが、その足のは程度が違う。あと少しでも運動したら確実にけんが切れる」
やっと分かったみたいで自分の足を見つめている。
「だから、もう少しここで休んで行け。足のが治るまで」
「巫女様!」
小春さんがやっと起きたみたいで、巫女に駆け寄り腕を引く。
「巫女様、まだ寝ててください!」
「いや私はまだやる事が。しかも、まだ妖怪が残ってるかもしれない。このまま放っておけば里に下りてくるかもしれない」
「巫女様がこのまま歩けなくなって戦えなくなったら誰が里を守るんですか?!」
巫女は小春さんに引かれおとなしく戻って行った。
私もそのあとに続いて戻る。
「…っ!」
やばい!消したはずなのに術陣が少し残ってる?!
消し忘れたか
「空さん?どうかしましたか?」
「え?ああ、なんでもないです」
足でさりげなく消し、庭全体をもう一度確認して家に戻る。
◆◆◆
〜1日前〜
里で妖狐の話が出回っているらしい。
私は生憎、感知には優れていないから気配や妖気を感じる事が難しい。
「来たわよ〜〜」
「紫?何をしに来た?」
「そんなこと言わないの。ただお茶もらいに来ただけよ」
仕方なくお茶を準備して紫に出す。
八雲 紫
スキマを操る妖怪だ。
「あ、そうそう最近里で話題になってる妖狐だけど」
「ああ人間の娘を連れて消えたそうだな」
その娘の父親が血眼になって妖狐を探しているらしい。
「それは置いといて、今森で暴れてる妖怪のことだけど。見つけたわ」
少し前から、大きな妖怪が森から降りてきて、人を攫っていくという噂を聞いた。
「今夜にでも狩るよ。準備があるからお茶飲んだらさっさと帰ってくれない?」
紫は面倒くさそうな顔をした後、重そうに立ち上がりスキマを開く。
一度こちらを振り向いてスキマの奥に消えていった。
1人になった神社で夜の準備を進める。
何人か里の人も襲われたということも耳にした。
暇つぶし程度に狩った妖怪どもの話だと、かなりの手練れで、数々の修羅場を通ってきたような沢山の傷があるという。
「今のうちに巡回済ましとこ」
準備を後回しにし里の巡回をすることにした。
私は時々里を巡回し妖怪の被害をいち早く把握して、被害が広がらないようにしている。
まあ、私が妖怪とかの気配を感じられないから、里や他の妖怪から聞くことしか出来ないからだけど。
「あら、巫女様」
「最近妖怪の被害はあるか?」
「いえ、今のところは大丈夫です」
茶屋の娘はぎこちない笑顔でそう答える。
ざっと里を回り、最後に寺子屋に向かう。
「やあ!巫女、今日は巡回の日か?君も真面目だな」
上白沢 慧音
寺子屋の教師をしている半人半獣。
里に被害は出さないようで、しかも里を妖怪からある程度守ってくれている。
「ここらには例のあの妖怪しか出ていない」
もうこんなに近くに来ていたのか
今夜に狩るのは決定だな
「分かった。ありがとう」
寺子屋では10人程度の子どもが遊んでいた。
鬼ごっこをしていた子供が私の方に後ろを向きながら走ってきていた。
「うわっ」
「おっと、危ないぞ」
転びそうになったので優しく受け止める。
「ありがとう!巫女様!」
「コラー!前見て走れー!」
その子は慧音から逃げるようにまた鬼ごっこに入り、キャッキャとはしゃぎ楽しそうにしていた。
神社に戻り準備の続きを始める。
まあ準備と言っても武器を磨いたりするのはいつもやっているし、札はいつも持ってるし、特にやる事がないので夜まで寝ることにした。
「お休み」
誰にというわけでもないがそう呟き布団をかぶった。
おやすみんご