ここからは空視点の話になります
◆◆◆
小春さんが巫女を引き止めたその日の夜、嫌々巫女の足を診ることにした。
なぜボロボロでここまで来たのか、誰にやられたなどの詳しい理由は聞いていないので分からないが、傷の位置や形状、大きさなどで妖怪にやられた傷であることはわかる。
「包帯外しますね」
足には血でベッタベタになった、真っ赤な包帯が乱雑に巻かれていた。
血で包帯が皮膚や傷口にくっついていて、それをとっていくと巫女が顔を歪める。
丁寧に外していくと、2、3本横に肉が抉れている傷があって、目を覆いたくなる。
「空さん、これ治りますか?」
眉間にしわを寄せながらそんなこと言われても…
「ん〜。まあとにかく傷は乾かさないほうがいいですね」
巫女を抱え上げ縁側に座らせると、何が何だかキョトンとした表情をしていた。
傷が見えるように袴をあげさせる。
「小春さん、桶に水を入れて持ってきてくれませんか?あと新しい包帯も」
「?…はい、分かりました」
意味がわからないという顔だったが、井戸へと走って行った。
小春さんがいなくなると巫女が口を開いた。
「小春はあなたの妻なのか?」
「ふぇっ?!」
何聞いて来るんだこいつは?!
まあ、普通の人ならそう思うのは当たり前かもしれないが…
真顔で聞かれると改めてビビる
「いや、自分達は…」
巫女が私達を夫婦と思っていることを訂正しようとすると、ナイスタイミングで小春さんが戻ってくる。
「空さん持ってきましたけど」
「あ、ああ…はい。有難うございます」
水の入った桶と包帯を受け取り、庭に出て巫女の足元にしゃがむ。
巫女は驚いた様子で私を見る。
「何をする気だ?」
「今から傷口を洗います。かなり痛いと思いますので我慢してください」
まぁ、水に再生させる効果のある術をかけたから、洗うついでに治っちゃうんだけど
立て膝にして巫女の足を膝に乗せ固定する。
巫女の手を自分の肩に置き体を安定させ、小春さんに巫女の肩を押さえてもらう。
「いきますよ。少しの間だけですから」
水を少しずつ傷口にかけていく。
「痛"ぁぁぁぁぁ!!!!」
悲鳴のような声をあげながら、痛みに耐えようと私の肩を力を込めて掴んでくる。
いーだだだだだだだだだだ!!
痛い痛い痛い痛い!!!
肩が、肩がぁ!
水をすべてかけ終わり、傷口じゃないところを軽く拭いたあと作っておいた塗り薬を布に塗り、それを当てて包帯をきつめに巻く。
「終わりました」
「巫女様大丈夫ですか?」
小春さんが少し震えた声で問いかける。
「…ええ」
「じゃあ上げますね。ある程度傷がよくなるまでなるべく足は使わないようにしてください」
足を拭いて巫女を抱え上げ布団の上に戻す。
巫女はそのあと何かすることも無く、おとなしく寝てくれた。
こうして寝顔だけ見るとかわいいところもあるんだけどなぁ
水で濡れてしまった服を着替えようとすると小春さんに呼び止められる。
「あの、ちょっといいですか?」
◆◇◆
痛かった。
あの後、布団の中でただ純粋にそう思った。
空と言ったか?彼は
空の手際はとても良く、医者をやっていたのかと思えるほどだった。
私は職業柄怪我などは日常茶飯事なのだが、私の処置が悪いのか、怪我をした後数日は痛みが治まらない。
でも今は、痛いっちゃ痛いがいつもの傷よりも深いもののはずなのにそこまで酷くはない。
さて、神社に戻らないといけないな。
2日も掃除をしないと神社がえらいことになる
彼の言うことは聞いておいたほうがいいのか?
「空さん、ちょっと」
小春が空を庭の方に連れて行く。
「空さんあの……ぬ…っ」
なかなか聞き取ることができない。
家から少し離れたところで話してるのだろう
「私…術で……コレ…」
術?人間が術という事を話すとは珍しいな
空、何者だ?
・・・
まあいっか
寝よう。
◆◆◆
小春さんに連れられて、家から少し離れたところにある石段のところに座る。
「空さんあの時塗った薬って」
「ああ、私が術を練って作ったものです」
「それって大丈夫なんですか?それが元で巫女様に空さんが妖狐だってことがバレるって事は」
私の事を心配してくれていたみたいだ。
「かなりの大妖怪が巫女の近くにいなければ、ばれる事はまずないと思います」
「大妖怪…ですか?」
「そう。私程度の妖怪の作ったもの、大妖怪にとっては簡単に見破られてしまいます」
でも妖怪嫌いの巫女の周りに妖怪がうろついている事はありえないだろう。
ほとんど妖力を使わずに作ったから、一部を除いてすべての妖怪に見破られる事はない。
感知に優れてない巫女にも分からないだろう。
「小春さんはそろそろ休んでください」
「はい、ではおやすみなさい」
小春さんを先に家に戻して石段に座り込む。
少しの間空を眺めてから家に戻り、布団を敷いて寝る。
空の処置の仕方は荒療治すぎると思いますが、無視してください。
処置の仕方も適当です。
くれぐれも実際にしないように。