誰かに頬を軽く叩かれて目が覚めた。
「藍かな?」と思ったが違った。
体を起こしてみると、信じられない光景が広がっていた。
なぜならここに居ないはずの空が笑顔で、小さな箱を持って立っていた。
じゃあ頬を叩いていたのは誰だろう?
首を向けると思わず涙が出てきた。
そこにはもう居ないはずの弟の秋斗が座っていた。
「あ…きと?」
「姉貴、久しぶり」
秋斗は逝ってしまった時と同じ、好青年の姿で座っている。
「おい雪、何してるんだ?行くぞ準備しろ」
「貴方達!何をしているの勝手に入っちゃダ…モゴモゴ」
永琳さんが部屋に入ってきた。
その瞬間、永琳さんの口が何かに塞がれた。
それは稲荷寿司だった。
見ると空が壁に凭れながら、箱に入っていた稲荷寿司を口いっぱいに頬張っていた。
「ははくいくほ」
「え、なんて?」
「早く行くぞって言ったんだよ」
「この稲荷寿司うまっ!じゃなくて貴方達!なんで勝手に入ってきたの。」
「"大切な家族を迎えに来た"って言う理由だけではダメなのか?」
私は人の前だってのに、秋斗の首に腕を回し大粒の涙を流しわんわん泣いた。
目が腫れるであろうほど泣いた。
バタン
「雪さん!空姉が」
真っ赤な藍が慌てたように入ってきた。
「お前さっきの。何しに来やがった。なぜ雪を知っている?それになぜ空姉と呼んでいる?その呼び方は天しかしないのに」
私は自分が着ているものの袖で涙をぬぐいながら空に尋ねる。
「空?誰だか分からないの?」
「あぁ知らん。雪お前知ってるのか?」
私は『天』という名前を口パクで伝える。
その瞬間、空は持っていた箱を落とし床に座り込んだ。
「嘘だ。嘘だ嘘だ!あいつがこんな所にいるわけがない。確かにあの時」
「本当なのよ。新しい主人に出会って名前を貰ったようね。『八雲 藍』それが今の名よ」
「お前、本当にか?」
「はい」
藍は空にすごい勢いで抱きついて、空の胸で静かに泣いていた。
空も嬉しそう笑っていたが、その顔の裏には哀しみの表情が隠れているように見えた。
「空?その声そろそろ直したら?」
「あぁ?変えてなかったか?じゃあ戻す」
空はそう言って小さく咳払いをした。
「この声が一番いいな」
空はさっきまでの男の声をやめ、元どおりの女の声に自分の声を戻した。
もうどんだけ変化の能力高いのよ!
「その声なんで変えてたの?」
「ん?お前は知らなかったか?あぁそういえば寝てたなぁ〜」
「あぁあの時ね」
「どの時ですか?」
「是非聞かせてもらいたいわ。その話」
「ちょっと貴方達!私の事を忘れてたでしょ!」
紫はスキマから、霊夢は扉から二人ともほぼ同時に声を発した。
「これはこれは博麗の巫女様?どうしてここに?それと…紫か久しぶりだな」
「ここに?じゃないわよ。あんたの後ろに誰がいるの?!教えなさい!」
「今の代の博麗の巫女様は、小柄で可愛いもんですね〜。先代はもっとデカかったぞ」
「まあまあ…藍。あの時なんで私達が都を出たのか知りたい?」
「是非」
「長くなるけど良いか?」
「はい」
「かなり前だなー。お前が人間にさらわれた後助けて、都に帰った後の話…
おっとその前に、秋。じゃあな」
「じゃあね空さん、姉貴。また会えるかわからないけど」
「何言ってるの空?秋斗はここに……?なんで?秋斗!秋斗?!」
「今さっきまでは『黄昏時』だから私の力で秋を連れ戻していたんだ。
秋に起こされた方がお前は喜ぶ思って。」
「また会えるのよね」
「あぁ。必ず」
「そう。じゃあ藍、あの時何があったのか話すわね」
秋斗はすでに死んでます
空はキザです