僕と剣姫の物語   作:泥人形

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神託

 ──ロキ。

 我らがロキ・ファミリアが主神。

 天上からここ、人界へと降りてきた神の一柱。

 オラリオで今、知らぬものはいないほどの知名度を誇る神。

 フィン・ディムナを代表とした高レベルの冒険者を次々と輩出し、瞬く間にオラリオ内でも一、二を争うほどのファミリアへと発展させた非常に有能な女神。

 特徴的な緋色の髪に、いつも閉じているんじゃないのかと思うような糸目で良く周りを見ている彼女は今、僕に馬乗りになっていた。

 背中をパチンと叩いて、ロキは言う。

 

 「さぁて十華ァ……今日はアイズたんと何をしてきたぁん……?」

 「どうしてそんなネットリとした言い方をするんだ、気持ち悪いぞ」

 「うっさいわ! 良いからキビキビ話さんかい!」

 

 バシバシと叩く勢いを強めたロキにため息を吐く。

 参ったな、とそう思う。

 神に嘘は吐けない。

 これは気持ちの問題とかそういうことではなく。

 ただ純然たる事実としてそうなのである。

 人の子は神に対して誤魔化すことも騙すことも叶わない。

 彼女ら神という存在は、僕等人間の吐いた嘘を見抜くことが出来るらしいのだ。

 つまり僕は彼女に何をしてきたのかと問われた時点でほぼ詰みが確定していた。

 何度も言うようだが、ヴァレンシュタインは彼女の大のお気に入りなのである。

 そんなロキに今日の出来事を言ってみろ。

 この場で折檻を食らうこと間違いなしである。

 めんどくせぇ……

 忘れているかもしれないが僕もれっきとした冒険者であり、レベルだってまあ、低いわけではない。

 いや、謙遜はよそう。

 僕は一級冒険者だ、ぶっちゃけフィンと殺りあっても生き残れる自信がある。

 故に、生半可な攻撃じゃ痛くも痒くも無いわけである。

 そして彼女ら神といった存在は、人界に降りる時に、その神としての能力を封印しているらしい。

 端的に言えば、ロキは現在そこらの一般人女性と変わらぬ能力しか無いということだ。

 だから、彼女に何をされようが特段問題にはならない。

 強いて言うのであれば、面倒なのである。

 無駄に智慧が回る神だけあってロキは非常に狡猾な手段で嫌がらせをしてくるのだ。

 具体例を挙げるのであれば、シャンプーとリンスを入れ替えたり。

 僕の日めくりカレンダーを二日ほど先んじて破っていたり。

 僕お手製の砂時計を勝手にひっくり返していたり。

 そう言った特に目くじらを立てるほどではないが、絶妙にうざい嫌がらせが行われるのだ。

 といっても、僕にはやはり包み隠さず話すという選択肢しか無かった。

 というのも、別に嘘を吐いても無駄だとか、そんなことは関係なく。

 僕はロキに嘘は吐かない。

 そう誓ったのだ。

 

 「そこでだな、僕はヒリュテ(姉)の言葉を思い出して──」

 「んなっ!?」

 「ゴブニュに何故か追い出されて──」

 「ほぉん…?」

 「腹の虫が鳴いたから───」

 「ぷっ……アイズたんきゃわわ……」

 「髪の毛が邪魔そうだったから──」

 「はぁぁぁぁんん!!?」

 「そんで何故か手を差し出してしまった。正直ちょっと違和感すら覚えたよ」

 「………ほぉ」

 

 一言一言発する度に面白いくらいリアクションを取っていたロキだったが、最後の言葉を聞いた瞬間スッと、熱が冷めたように表情を落ち着かせた。

 え、えぇ……何、最後のが一番琴線に触れちゃった?

 おかしいだろ、そこに触れちゃうくらいなら髪の毛の下りで表情変えろよ!

 個人的にあそこが一番赤面ものだったんだけどなぁ……

 急に静かになったロキの一挙手一投足に注意していれば、彼女は驚くほど──それはもう驚愕の域に達するほど穏やかで優しい手付きで僕の背中を撫でた。

 スルスルと、柔らかい感触が肌を伝う。

 少しだけ擽ったくて、何とはなしに身をよじればロキは、それこそ慈愛を込めたように声をかけてきた。

 

 「なぁ、十華」

 「ん? なにさ……というか何だ、不穏だぞ……」

 「良いから聞け、十華は今、楽しいか?」

 

 んん?

 質問の趣旨が分からない。

 そんなシリアス風な雰囲気まで漂わせて聞くことか? それ?

 そんなもの、聞かなくても一目瞭然だろうに。

 

 「あぁ、勿論。ロキに拾われたあの日から、俺はずっと楽しいよ」

 「ん、それならええんや、さて、そろそろやろか」

 

 と、ロキは意図が分からないながらも答えた僕の返事に満足して、小さな針を取り出した。

 そしてその針を、プツリと己の指に指す。

 赤く染まった神の血は、ポトリと僕の背中に零れ落ちた。

 瞬間、皮膚に波紋が広がった。

 ブワリと広がったそれは、スルスルと僕の身体へ染み込んでいく。

 ロキはそれを中心に指を添え、丁寧に僕の背中に刻まれた刻印を更新していった。

 【ステイタス】の更新。

 僕等のような一般的な冒険者は全員、この【ステイタス】と呼ばれる刻印を背中に刻まれている。

 これは僕等が神の眷属であることを意味する、唯一つの証明だ。

 また神の眷属と言っても、別に大層なものではない。

 僕等みたいなファミリアに属する冒険者というのは皆、そこの主神から"神の恩恵(ファルナ)"と呼ばれるものを授かっていて、そうした者たちを眷属と呼ぶのだ。

 神達が天上の世界で使う【神聖文字(ヒエログリフ)】なるものを背中に刻みつけ、対象が経験してきた様々なものを【経験値(エクセリア)】とかいうものに変換し、それを元に対象の能力を引き上げる。

 それが、【ステイタス】の更新。

 神なる力を以て、人の子の上限を超えさせる、人外の術。

 この力があるからこそ、神達は僕等人間に尊敬され、敬われているし、僕等はダンジョン攻略とかいう、生き死にを賭けた戦いに身を投じることができているという訳だ。

 今回、僕は数週間ほどしていなかった【ステイタス】の更新を建前にロキに尋問されていたのだ。

 上半身の服を全て脱いでいたのは、そういう理由だった。

 決してアマゾネスのような裸族というわけはないのだ。

 ロキと如何わしいことに発展仕掛けていたという訳でも全く無いのである。

 終わったで、と言いながらロキは降り、僕はいそいそと服を着る。

 そうして彼女は、僕に【ステイタス】を書き写した紙を渡してきた。

 

 「んー……やっぱあんまり上がらないなぁ」

 「何言っとるんや。十華はランクアップしたばっかりやろ、そう考えれば馬鹿にならんくらい上がっとるわ阿呆」

 「む、そう言われればそう、かも?」

 「かも、じゃなくてそう、なんや。そんくらいいい加減分かれ」

 

 阿呆、とロキは重ねて言う。

 

 「ま、それならそうで良いや」

 

 と、ベッドから立ち上がる。

 ───違和感。

 そう、違和感を感じた。

 何だか自ら死にに行っているようで、あまり言いたくは無いのだが、僕はその違和感を見過ごせずについに口に出した。

 

 「それにしても──珍しいな。ロキならもっと深くねちっこく、へばりついたガムの如くしつこく聞いてくるかと思ったよ」

 「あん? あぁ、アイズたんのことか」

 

 ていうかガムに例えるのやめへん? ウチそこまでしつこい……? と言う彼女に無言で首を縦に振る。

 

 「うん、てっきりもっと根掘り葉掘り聞かれるかと思ったし、今度はどんな嫌がらせを受けるんだろうとすら思ってた」

 「十華はウチを何やと思ってるんや!? そんなことで一々ウチがそんなことするかぁ!」

  

 いやだってロキだぜ? 天上でも悪名が高かったと噂のロキ。

 如何に主神だろうが──いや、むしろ主神だからこそそこら辺の信憑性が分かってしまう。

 この人──神は最高に悪戯好きだ。

 そんな目で見ていればロキはため息を吐いてから「そもそもなぁ」と指を立てた。

 

 「ウチはこれでもちょっと嬉しいねん。あまり人と交流したがらない十華が相手がアイズたんと言えども順調に仲を深めようとしているその成長に、ウチは感動すらしてんのや」

 「いや僕は確かに友達は少ないけれども、そんなぼっち野郎みたいな言い方はするか?」

 「そのお友達も片手で数えられるくらいやないか、だからな、ウチはちょっと安心したんや……」

 「ぐ、ぐぬぬ……」

 

 反論できなかった。

 僕のコミュニケーション能力は低くはないと自負しているが、言われた通り、確かに僕の人脈はあまり広くない。

 

 「それにな? ウチはこれでも十華のことは信用してんねん。アイズたんに何か如何わしいことをするような男ではないという信用をな」

 「なっ───」

 

 ロキ、お前……

 滅茶苦茶いいヤツじゃないか……

 この僕を紳士だなんて……分かっているじゃあないか。

 僕は誤解していたようだ、貴方は悪戯神でも何でも無い。

 己の子らをちゃんと見ていてくれているれっきとした女神───

 

 「───いや、むしろこれは確信やな。そう、確信すら持ってんねん。十華みたいな童貞野郎がウチのアイズたんに手を出せるような肝の太いやつでないって信頼しとんねん!」

 

 前言撤回である。

 ろ、ロキ、貴様──!!

 

 「数秒前までの僕の感動を返しやがれ――! 何かちょっとあれ、この神実はめっちゃいい神じゃん……とか思った僕が馬鹿みたいじゃないか――!?」

 「アッハッハッ、何を言うんや。勝手に勘違いして勝手に後悔してるのは十華やろ?」

 「勘違いさせるような言い振りで語ったのはお前だロキ──!? 明らかに嵌めるためのような口上だったろうが!?」

 「人聞きが悪いなぁ、全く、これだから童貞くんは……」

 「あまり童貞を連呼するんじゃない! 一体僕が何をしたっていうんだ!?」

 「調子こいてウチのアイズたんとデートなんてやらかすから……」

 「しっかり根に持ってんじゃねーか! 何が信頼だ馬鹿野郎!」

 「お、因みになんやけど知っとる? 野郎って男を罵って言う言葉なんやで?」

 

 む?

 そうなのか。

 であれば相手が女性の場合はどうなるのだろうか。

 野の反対は……山か。

 この馬鹿山郎!

 ……うん、絶対に違う。

 だとすれば……ハッ!

 

 「分かったぞ、正解は女郎、だ!」

 「フッ、良くわかったな……正解や……」

 

 やったー!

 ってあれ?

 僕は何をしていたんだっけ?

 ……あぁ、そうだ、思い出した。

 

 「いやそんなことは置いといて──」

 「まあウチはどっちも当てはまらんけどな」

 「な、何──!?」

 

 どういうことだ!? と思ったのも束の間。

 ちょっとロキを見てみれば、その答えはすぐに分かった。

 そのツルペタストンな体型を見れば一目瞭然である。

 僕は慰めるようにロキの肩に手を置いた。

 

 「そう嘆くなよ、いくら無乳だからといって女性では無い、なんてことは無いんだ。ロキは立派な女性だよ」

 「うっさいわボケ――!? ウチは神やからどっちにも属するのは正解じゃないって言っとんのや──! 誰もジブンの体型の話しとらんわ――!!」

 「どうどう、落ち着けよ。いくら女性的要素が薄くてもロキはロキだ。もっと自信を持て」

 「余計なお世話や――! 誰も自信喪失なんかしとらんわ! 十華のボケ! 馬鹿! あんぽんたん! この童貞が──!」

 「そう荒ぶるなよ。無理に隠そうとしなくたって良い。誰だって自分が欠点だと思うところはある。でも、それを凌駕するくらい良いところ持っているのもまた事実だろう?」

 「いやどっから目線やねんお前!」

 「だからさ、自信を持ってその無い胸も張って生きていこうぜ」

 「ぶっ殺すぞお前───!!!?」

 

 閑話休題。

 

 ロキは「んんっ」と咳払いしながら椅子に腰掛けた。

 

 「まあ、さっきの話は別としても、信頼しとるのは本当や。それに、アイズたんはアイズたんで心配なところもあるしな。正直な所コンビ組んでくれて助かったわ」

 「うん? あぁ、ヴァレンシュタインは結構無茶するタイプらしいもんな、遠征でもその片鱗見えたし」

 「せやろ? まあアイズたんの程の実力なら心配は無いとは思うけど、ダンジョンやしなぁ」

 

 ダンジョン───ここオラリオの下に広がる巨大な地下迷宮。

 無限かと思うほど何層にも渡って広がっているそこは、数多のモンスターが蔓延る地獄の場所だ。

 どれだけ卓越した技術を持つ達人であろうが、どれだけ準備をしていった熟練者だろうが、何度も死地を超えてきた実力者であろうが、ともすればあっさりと死んでしまう死の迷宮。

 そして、そこを開拓するように下へ下へと突き進んでいくのが僕たち冒険者。

 そうするべき確かな理由はない。けれどもロマンはある。夢がある。

 誰もが未だ見ぬ何かがそこにあると信じて。あるいは己の限界を目指して、もしくはその限界を超えられると信じて。

 僕等は果ての見えないダンジョンに、日がな挑戦している。

 強大なモンスターに出会って絶望しても、誰かが死んで後悔しても。

 それでも僕等はお構いなしに突き進む。

 冒険者というのは、皆そんな存在だった。

 勿論例外は認めるが。

 それでも大多数はそんな感じなのであった。

 当然例に漏れず、この僕も。

 そしてきっと、ヴァレンシュタインも。

 

 「ソロだと対応しきれないことってあるからなぁ……まあ僕が目を光らせておくさ」

 「阿呆か、アイズたんだけの心配をしてるんとちゃうんや。十華もやぞ。」

 

 ちゅーか、無茶をするっていうんなら、お前が一番無茶をするんやから。

 ロキはそう言って深くため息をついた。

 失礼なやつである。

 僕ほど準備は念入りに、しっかりと前情報もチェックしてからダンジョンに潜る冒険者なんてそういないと言うのに。

 最早模範的ですらあるというのに。

 この超優秀かつThe・お手本的な冒険者などオラリオ広しと言えども僕くらいなものだというのに。

 何を言っているんだろうか?

 

 「いや自分のこと過剰評価し過ぎやないか!?」

 「いやいや、これこそ正当な評価ってやつだよ。何せギルドの方からも貴方のような冒険者は初めてですって言われたくらいだぜ?」

 「それはお前みたいな頭のネジがぶっ飛んだ冒険者は初めてだっていう皮肉や! 気づけ!」

 「またまたぁ、そうやって言葉の裏を取ろうとするのはロキのいけない癖だぜ?」

 「う、うぜぇ─────!!」

 

 パチンとウィンクまで付けてみればロキに叫ばれた。

 確かに今のはちょっとキモかったかもしれない。

 反省点だな。

 

 「ハァハァ、まあええ。取り敢えずウチは二人共死ぬほど心配ってことや」

 「だから、大丈夫だって。流石に僕たちも長年ダンジョンに潜っていないさ。そもそも何かあっても、大抵のことならどうにかなるし」

 「その大抵のこと、で済まないのがダンジョンや、ホンマに気ぃつけろよ」

 「理解ってる理解ってる、大丈夫だ。何に代えても、ヴァレンシュタインの命は救うさ」

 

 瞬間、ロキは形相を変えて僕を掴んで引っ張った。

 あまりにも急なことだったので、抵抗することもできずに彼女に引っ張られて顔を近づけられる。

 額がコツンとぶつかった。

 突然真剣味を帯びた彼女の緋色の眼差しが、僕を射抜く。

 

 「何に代えても、なんて絶対に言うな。何にも代えずに、必ず毎日、二人で無事に帰ってこい。うちとの約束や」

 

 ロキは、怒ったような、泣いているような。

 二つの感情を混ぜこぜにしたかのような表情で、そう言った。

 

 「────ッ」

 

 驚いてしまって、声が上手く出ない。

 どうしてロキが、そんな後悔しているような顔をしているのか。

 僕には全く分からなかった。

 分からなかったけれども、ロキは冗談などが混じる隙間も無いほど本気で、真剣に言っていることだけは分かった。

 

 「無理も無茶も、するなとは言わへん。冒険者は、冒険するのが仕事や。それはうちかて理解ってる。けれども、絶対に二人で、何も失うこと無く戻ってこい」

 

 約束や。

 そう言ってロキは僕の襟を離した。

 呆然としてしまって、その場に棒のように突っ立ってしまう。

 身動きも取らずに、頭は彼女の言葉を再生し続けていた。

 ──何も失うこと無く戻ってこい。

 なぜだかわからないが、その言葉は重しのように僕の心に沈み込んでいった。

 でもそれも、どうしてか悪い気分じゃあない。

 どちらかと言えば、心地よい。

 それがロキの言葉だっていうのが、少し癪なのだが。

 やはり彼女は僕の(おや)なのだ。

 

 「───あぁ、分かったよ。その約束、(ロキ)に誓って、必ず守る」

 「良し、ええ子や」

 

 言質は取ったぞ、もし死んだら飛んでく魂追っかけてどこにも行けへんように檻にぶち込んだるからな!

 ロキはそう言ってビシィッと僕を指さした。

 

 「そいつは勘弁願いたいな。まあなんだ、任せろ」

 

 苦笑しながらそう言って、僕はサムズアップした。

 剣呑な雰囲気を収めたロキはそれにカラカラと笑って、良し!十華!と僕を呼ぶ。

 今度は何だ、と目を細めれば彼女はドンッと瓶を取り出した。

 ───酒瓶である。

 

 「今夜は呑むで!」

 「えぇ、今からぁ…?」

 「あったりまえや!ほら、行くで十華! 宴は何時だって突然、やで!」

 

 何だその言葉は。

 熟語っぽく言ってもそんな言葉はねーよ。

 でも、まあ。

 たまにはこういうのも悪くない。

 飛び乗ってきたロキを背負いながら、部屋を出る。

 ホームでも一番天辺に位置する部屋から飛び出した僕は風をきるように走り出した。

 あちこちの部屋の扉を開け放ち、瞬く間にホーム中を駆け抜ける。

 

 「宴の時間だぁ──────! 今夜は特別にロキの奢りの上に、特上の神酒(ソーマ)が飲めるぞォ────!!!」

 「なっ……!? そこまで出すとは言っとらんわ──!?」

 

 神酒(ソーマ):簡単に言ってしまえば、このオラリオでも屈指の知名度を誇る、曰く神域の酒。

 つまるところ、超高級品である。

 具体的に言えば、僕等のような一級冒険者用に作られた武器が買える値段。

 桁は最低でも6。ちょっと良さげなのを買えば余裕で7,8である。

 そしてロキは、この酒を秘蔵していた。

 日がなちびちびと、一人で楽しんでいるのだ。

 でもまあ、良いじゃあないか。

 皆で楽しもうぜ。

 そう言えばロキは「ははは」と苦笑した後に「少しだけやぞ……」と絞り出した。

 

 「言質は取ったぁ───!! 集まれ集まれぇ──!」

 

 ぞろぞろと、団員たちが顔を出す。

 もう一度「宴だぁ!」と叫べば、それだけで把握した団員たちは一斉に騒ぎ始めた。

 その声は、当然フィンやヴァレンシュタインたちの耳にも届く。

 ───そう言えば。

 ヴァレンシュタインは酒を禁止されているんだったな。

 ちょっと後で呑ませてみようと、僕はそう思うのであった。

 

 

 

 

 

 




アイズ出せなかった……

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