僕と剣姫の物語   作:泥人形

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完結で良いのでは?


想起

 それを一言で現すのであれば、"悪魔"だった。

 禍々しく捻じくれた二本の雄々しい角に、深紅に光る双眼、閉じられた、額の瞳。

 二対の腕を持ち、下半身は馬のような筋肉質な四つ足。

 背中には二対のコウモリのような翼を生やし、金の光沢を放つ尾は、さながら蠍のようだった。

 まるで誂えられたかのようにポッカリと存在しているこの巨大な空洞の中にありながら、空間を埋め尽くすその体躯はあまりにも巨大。

 逃げ場は無い。

 先程まで立ち上がっていた火柱の影響か地面や壁は所々溶解している。

 ヴァレンシュタインを下がらせながら、ゴクリと喉を鳴らした瞬間そいつは動いた。

 いつ、どこから取り出したのかはわからない。

 けれども確かに右手に握られていた漆黒の剣は、鋭く振り抜かれた。

 ───金属音は、響かない。

 鈍重な音だけが、響いて広がった。 

 

「ぐっ………うぉぉおおぉ……」

 

 受け止められたのは、ほとんど反射だった。

 それはこれまでの経験を押しつぶすような威力で、あまりの重さに足場が埋まる。

 馬鹿げた破壊力の込められたその一撃は刀を通して僕の身体に悲鳴をあげさせた。

 

「あぁぁぁあああぁああああ!!」

 

 全力で抵抗しながら力を逃すように刀を傾ける。

 炎を幻視するような造形の剣は激しい火花を散らせながら刀をスライドしていって地に埋まった。

 斬撃は遙か後方まで斬り裂いていって、爆風と煙が、僕を包み込んだ。

 瞬間、加速。

 姿勢を低くしながら駆け出して、グッと身を捻るように回転、跳躍。

 僕を狙うように放たれた漆黒の槍が身体のスレスレを通り過ぎて、地を穿つ。

 あまりに洗練され尽くしたその一撃は無駄に地面を砕くことはなく、ただ純粋に大地を貫き止まった。

 突き立った槍に手を置きながら着地して、滑るように駆け抜け僕は、更に跳ぶ。

 少しだけ浮いた僕は真っ黒に染まった腕に着地し、その勢いを持って一気に駆け上った。

 長々と時間をかけるつもりは毛頭無かった。

 未知の怪物であることに加えて、これだけの巨体にあの膂力。

 長期戦になればなるほど不利になるのは明白だった。

 だから、僕が注意をひいてヴァレンシュタインの一撃で決める。

 奥の手だとか、特殊な能力だとか、そんなものを見ている余裕はない。

 弾けるように眼前に飛び込んで、幾条もの剣閃を何度も重ねて斬り放つ。

 間違いなく全力だった。

 文字通り己に出せる最高速の攻撃だったそれはしかし、()()()()()()()()()()()()()()

 まるで上質なアダマンタイトにでも弾かれたような硬質な音が響いて、刀は弾かれた。

 火花が散って、視界を照らす。

 

「は、ぁ────?」

 

 動揺は判断力を一瞬鈍らせた。

 鈍った思考は、致命的な隙を生む。

 振りかぶられた拳を、分かっていながらも躱せない。

 焦りを抱いた僕を嘲笑うように、強烈な一撃は全身を貫いた。

 

「───────!?」

 

 悲鳴を上げることすら不可能だった。

 叩きつけられた衝撃は身体を砕いて轢き潰す。

 骨も肉も内臓も。

 何もかもがごっちゃになって等しくゴミと化す。

 勢いを弱めることも、ダメージを逃がすことも不可能で、僕は壁まで押し潰されて、それから壁ごと押し砕かれた。

 未だに無事な右耳が、己が壊れる音を拾う。

 無様に血に濡れながら、それでも僕は力を込めた。

 ジャラリと、鎖の音が鳴る。

 一本一本の指に丁寧に絡み合わせた鎖が、仄かに光を灯して縛り上げた。

 それを、渾身の力で引っ張り上げる。

 既に千切れそうな右腕はミシミシと嫌な音と共に軋みながら、それでも一級冒険者の名に恥じない力を見せつける。

 ガシャン! と激しく響いたそれは、抵抗するやつの力と少しだけの拮抗を作り出す。

 それだけで、充分。

 僕等のような一級冒険者にとってはそれだけでも充分すぎるくらいの隙だった。

 ─────風が吹く。

 溜めに溜められていたそれは、まるで嵐を凝縮したかのような力を内包していて、抉るように、消し飛ばすように。

 鎖に絡め取られたその腕に、風穴を空けた。

 

「ア────アァァアァァァアァアア!!!!??」

 

 赤黒い血液が雨のように降り注いで悲鳴が鳴り響いた。

 僕を残して落ちていく腕を見ながら、鎖を戻し、万能薬を全身に浴びせかける。

 ジュクジュクと、音を立てながら身体が再生していくのを感じながら僕は壁を蹴った。

 跳躍というよりは飛翔。

 さながらロケットのように飛び出して、滞空しているヴァレンシュタインを抱えた僕は()()()()()()

 まるでそこに床があるように。

 僕は気軽に蹴った。

 彼女を抱えながら後方へ、くるりと回って退けば同時に火柱は突き立った。

 熱気が、空気を歪めて溶かす。

 揺らめく視界の中で、僕は違和感を覚えた。

 ───槍が、無い。

 あれだけ巨大な武器が霞の如く消えていて、それが収まっていた掌には橙色の魔法陣が幾つも交差するように回っていた。

 ───魔法。

 ダンジョン内のモンスターが魔法だなんて、聞いたこともないがそれは間違いなく魔法だった。

 直感的に、不味いと思う。

 地に足をつけると同時に僕等は駆け出した。

 次の瞬間、極大の魔法陣は光輝いて、空間を埋め尽くすように無作為に炎の矢は放たれた。

 雨のように降り注ぐそれに、しかし当たることはない。

 否、そもそも当てに来ていない。

 それは僕等の眼前に突き立って、次の瞬間その炎は()()姿()()()()()

 数百の矢は、数百の怪物へと姿を変える。

 

「行けるか、ヴァレンシュタイン」

「うん、大丈夫」

 

 僕等が止まることはなかった。

 視界いっぱいに広がる炎の群れに飛び込んで、それから互いの背中を合わせて刀を振るう。

 踊るように、舞うように。

 彼女の隙を埋めるように、僕の死角を消すように。

 破竹の勢いで僕等はその全てを蹴散らした。

 火の粉が舞って、戦場を明るく照らす。

 瞬間、未だ残る炎の群れごと消し飛ばすように、それは放たれた。

 闇夜のように深い、黒の剣。

 左斜め前方から振ってくるそれは全てを叩き斬る。

 当然のように回避行動をとろうとして、同時に火柱は突き立った。

 灼熱の柱は、逃げ場を塞ぐ。

 

「邪魔だ───!」

 

 刀を振るう。

 その一閃は確かにそれを斬り飛ばし、出来た隙間に飛び込んだ。

 そして、僕は()()を見た。

 僕とは違い、蛇のように姿を変えた炎の群れに絡まれた彼女が火柱に飲み込まれるその瞬間を。

 そしてそれごと消し飛ばすように落ちてきた極黒の一撃を。

 

「あ──────」

 

 瞬間、背中が燃えるような錯覚を覚えた。

 熱は広がり、頭が激しく痛む。

 どうしてか、彼女の声が脳内で響いた。

 思考する前に動き出していた僕は火柱へと飛び込んで、彼女の身体を掴み、突破する。

 轟音と衝撃、爆風に身を煽られながら、僕は惜しむこと無く万能薬を彼女へと振りかけた。

 

「十華──私──」

「気にするな、お互い様だろう」

 

 荒い呼吸を必死で収める。

 ───頭痛が酷い。

 背中はずっと熱を持っていて、それは時間を経るごとに増しているようだった。

 そんな状況下で僕は何故か、ヴァレンシュタインとの記憶を思い出す。

 ()()()()()()()()()()()

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 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 どうしてか、全て記憶には無かったことで、それなのに全て鮮明に思い返される。

 違和感が拭えない。

 けれどもそれは事実であると、僕の中の何かは叫びを上げる。

 それらを全て無視するように、グッと怪物を見上げれば、またしても鈍痛が頭に響いた。

 やはり僕はこいつを知っている。

 吐き気すら覚えるその感覚に思わずたじろげば、彼女が支えるように、僕の肩に手を添えた。

 あまりに真っ直ぐな瞳だった。

 あまりに純粋な眼差しだった。

 僕の全てを見透かしているようで、僕の全てを見通しているようだった。

 しかしそれに、不快感を抱かない。

 どころか安心感すら覚えて、そのことに更に違和感を重ねた。

 そんな僕に彼女はゆっくりと

 

「思い、出してきた?」

 

 と、そう言った。

 何だよその口振りは。

 それじゃあ、まるで僕が──

 轟音は鳴り響き、思考は寸断された。

 否、戦場でこんなことをしている僕等が阿呆だったのだ。

 振るわれた剣を反射で躱し、続く炎の群れを斬り飛ばす。

 瞬間、突風。

 風に押されて空を翔けた彼女は怪物の腕へと剣を振り抜いた。

 金属音が弾け合うような音が響き、斬り裂かれることはない。

 しかし強力な一撃だったそれは、怪物の腕ごと態勢をほんの少しだけ押し崩した。

 ───抜刀。

 彼女が斬ったそこへと寸分違わず合わせ、斬り放つ。

 ズルリと、腕は落ちた。

 血潮を吹き出して、ゴトリと肘から先が地に落ちる。

 痛みに耐えかねるように、怪物は暴れ、絶叫した。

 それを見て、油断でも何でもなくただ純然たる事実として、いけると思った。

 そうして一歩踏み出して、次の瞬間僕等は吹き飛んだ。

 不可視の攻撃に、抵抗することすら叶わない。

 一体何が起こったのかすら把握できなくて、無様に壁に背を押し付けることになった僕は怪物の姿を見上げた。

 閉じられていた額の瞳が開かれて、黄金色に輝いている。

 ドクンと心臓は音を鳴らした。

 背中が、燃えるように熱い。

 ───強烈なデジャヴ。

 頭の何処かで、やつとの記憶がちらりと姿を見せた。

 それがもどかしくて、何とか掴もうとして身体に力を込める。

 ──否、込めようとして、込められない。

 震える手で回復薬を取ろうとして、怪物が槍を携えるのを見た。

 間に合わない、避けられない。

 それでもどうにかしようとして、身をよじれば僕の前に彼女は立った。

 立ちふさがるように、守るように。

 アイズ・ヴァレンシュタインは僕へと背中を向けて、剣を構えた。

 

「今度は、私が守るから。だから、大丈夫」

 

 そう言った彼女に、眼を奪われる。

 言葉の意味を噛み砕くのに、そう時間はいらなかった。

 そしてその姿が、いつかの逆だなと、そう思った。

 ───いつかっていつだ?

 僕がいつ、そんなことを口にした?

 僕は彼女の何だ? 彼女は僕の何なんだ?

 背中の熱が、増していく。

 揺れる視界の中で、僕等を屠るようにそれは動いた。

 半ば炎と化した黒の槍は空間を赤熱させながら全てを穿たんと放たれて。

 同時、業風は全てを巻き上げ凝縮し、さながら矢の如く撃ち込まれた。

 風と炎はぶつかり合って、拮抗し、混ざり合って弾け合う。

 それは莫大な爆発と衝撃を伴って、槍は穂先からひび割れ決壊し、彼女は不安定に宙へと浮いた。

 けれども、彼女は止まらない。

 空中にありながらエアリエルは彼女の体勢を整えて、それから銃弾のように飛び込んだ。

 風を纏い、空を翔け、敵を穿つ。

 ギラリと光る銀の剣は───しかし届かない。

 不可視の()()に止められて、見えない力に彼女は吹き飛ばされた。

 青い柄を握る腕は、本来曲がらない方向へと折れている。

 受け身を取ることすら出来ずに彼女は地に落ちた。

 瓦礫に受け止められて、ゴボリと血を吐き出し、()()()()()()()()()()()()

 彼女の瞳は、未だ死んでいなかった。

 指の一本すら動かすのも億劫な僕を置いといて、やつは彼女に眼を向ける。

 瞬間、彼女は鞠みたいに吹き飛んだ。

 エアリエルで風を鎧のように纏った上で、二度三度と彼女は宙で弾かれる。

 黄金の瞳に見つめられた彼女に、抵抗の余地はない。

 そうして地に落ちて、それなのに彼女は俄然として立ち上がった。

 自分は大丈夫だと、そう言わんばかりに彼女は僕を見た。

 そんな姿に、見知らぬ記憶が重なっていく。

 何度目の、デジャヴだろうか。

 デジャヴが重なるごとに吐き気がする。

 背中が熱を持つたびに、頭痛がした。

 ────思い、出してきた?

 彼女の言葉が、頭の中で繰り返される。

 己の記憶に疑惑をかければかけるほど、強烈な違和感は生まれ続けた。

 

 ───彼女とはプライベートなやり取りをしたことがない筈なのに、一緒にいればどこか懐かしい。

 ───コミュ力は有ると自負するくせに、友人は少ない。

 ───ちょっと寝すぎたくらいで、自ら起こしに来るほど過保護なリヴェリアがいながら、幼い頃に教育してもらったのはフィンとガレス。

 ───ステイタスを更新したにも関わらず、アビリティしか見なかった。

 ───不自然に後悔を滲ませるくらい無事を願うロキ。

 ───ファミリア内どころか、オラリオ全体で見てもトップクラスの僕等に、下へ行き過ぎるなよとわざわざ忠告されたという事実。

 ───そもそも、何階層にも渡って火柱はダンジョンを破壊したのに、何故此処にいるのは僕等だけなんだ?

 

 疑問は違和感を呼び、違和感は記憶を刺激した。

 僕がそういうものである、と認識していた記憶が形を変えていく。

 知らない───いや、違う。

 

 "知らない"ではない。

 

 "身に覚えがない"ではない。

 

 "どこか見たことが有る"ではない。

 

 僕はただ───忘れていただけだ。

 ガチりと記憶と違和感の歯車は噛み合った。

 白黒になって朽ちていた記憶が、鮮明に色を取り戻す。

 あまりにも、時間をかけすぎたことにやっと気づいた。

 こうなってしまったことは、仕方のないことであると思い出しながら、それでも迷惑をかけてしまったと奥歯を噛みしめる。

 ───背中が熱を持つ。

 否、背中に刻まれた神聖文字が、爛々と燃えるように熱を発していた。

 英雄讃歌(アルゴノゥト)

 スキル欄に刻まれているその文字の後には、こうした説明が続く。

 ・強い想いが込められた能動的行動に応じた一時的な器の昇華とそれに伴った強い記憶の燃焼、記憶の再構築。

 ・記憶を一度でも燃焼した場合、記憶を取り戻すまでこのスキルとそれによる影響に対する認識阻害の発生。

 ・燃焼された記憶を取り戻した時に限り、能動的行動に応じた能力、器の昇華。

 ・同恩恵を持ち尚且記憶の対象者である者のみ同じ効果を発揮。

 僕の持つ、唯一のスキル。

 恐らくこのオラリオで、僕だけが保持するレアスキル。

 誰が見ても馬鹿げた性能で、それに見合ったデメリット。

 何度も使ってきた、しかし思い出したのはこれが初めてだった。

 高等回復薬(ハイ・ポーション)を胃にぶち込みながら立ち上がる。

 ───思い出す。

 僕は───僕等は、こいつに負けている。

 スキルに頼った上で、敗走した。

 アイズを抱えて逃げるので、精一杯だった。

 そうして僕は今までもそうしてきたように、デメリットを受け入れ僕は彼女を忘れ去った。

 その後はご覧の通りの結果である。

 あぁ、なんて、なんて────

 

「情けない」

 

 ヴァレンシュタイン───アイズに救われて、守られてばかりな己が恨めしい。

 彼女に焦がれた、だから強くなろうと思った。

 そんな理由すらも忘れてのうのうとしていた自分が酷く情けない。

 血塗れで、身体ももう限界なのに立ち上がる彼女の姿が目に映る。

 今なら分かる。

 彼女がわざわざ僕をコンビに誘ったことも。

 あの日、僕の手を何ら躊躇うこと無く取ったことも。

 僕の動きに完璧に合わせられることも。

 相性が良いとか、頭が混乱していたとか、そんなこじつけみたいな理由じゃない。

 僕と彼女は元より()()()()()だ。

 だからこそ、彼女は僕をここに連れてきた。

 生半可なことでは思い出すことはないことを知っていたから、彼女は賭けに出た。

 アイズは37階層まで来て暴れれば、こいつが反応することを分かっていた。

 己の命を張ってまで、僕の記憶を取り戻そうとした。

 やり方が些か乱暴過ぎるだろう、とは思う。

 思うが、そうでもしなければ僕もまた思い出すことは無かったであろうことも理解できてしまった。

 トン、と地を蹴りつける。

 それだけで、僕は彼女の元へとたどり着いた。

 蹌踉めく彼女の身体を抱きとめ、最後の万能薬を彼女にかける。

 

「悪い、待たせた」

「うん……本当、待ちくたびれた」

「帰ったら何でも言うこと聞いてやるから」

「約束、だよ? 守れる?」

「勿論、僕が約束を破ったことがあるか?」

「さっきまで、全部忘れてた癖に……」

「───もう、忘れないから」

「───うん」

 

 彼女を離し、柄に手を置く。

 怪物は余裕そうに僕等を見ていて、振り向くと同時に黄金の瞳は輝いた。

 瞬間、抜刀。

 同時に、僕の腕から先は蒼の光に包まれる。

 振り抜かれた刀は見えない何かとぶつかり合って、そして斬り裂いた。

 僕を避けるように、大地が吹き飛ぶ。

 もう、不可視のそれの種は割れていた。

 斥力。

 それがあの力の正体だ。

 要するに、物と物とが反発し合う力。

 だから、鎧を纏ったアイズを弾きはすれどもそれ以上のダメージを与えることはなかった。

 そしてそれは、あの瞳に入る範囲内にしか効果は無い。

 そうでなければ彼女が弾かれるのと同時に僕の身体もぶっ飛ばされていた筈だからだ。

 わざわざ一人だけ狙う理由が無い。

 厄介では有るが、分かればどうということはない。

 というか、分かったところで今の僕にはあまり関係が無いのも事実では有るのだが。

 なにせ力づくで斬り裂ける。

 動揺するように瞳を揺るがした怪物に、僕等は踏み込んだ。

 蒼の光が、僕等を包む。

 身体は異常なほどに軽かった。

 僕等は光の帯を靡かせて、地を、空を駆け抜けた。

 時には共に、時には離れ。

 時折躱しきれないそれを斬り飛ばし、僕等はやつの眼前へと躍り出た。

 僕等を阻むように動いた両腕を彼女の剣が斬り落とし、蒼く靡いた風が、不意打ちに気味に放たれた蠍の尾を押し阻む。

 グッと刀を構えて宙を蹴った。

 

「お前にも、一応感謝はしておくよ。凶悪で、強大で、僕を打ち負かしてくれて、ありがとう。お陰で苦労もしたが、全部取り戻せた」

 

 けど、お前の顔はもう見たくないや。

 そう言い残して、僕は刀を振り抜いた。

 蒼い光が、帯を引いて明るく照らす。

 

 「───────────────────!!!!!」

 

 盛大な断末魔だった。

 上から下へ、飾り気もなく放たれた蒼光の斬撃は真っ直ぐに怪物を両断し尽くして、ズルリと割れて崩れ落ちた。

 血が吹き出る前に、命の尽きたそれは身体を空に溶かしていって。

 残された巨大な魔石が、くるくる回りながら地に突き立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




でも後日談的なサムシングっぽい何かは書く(多分)

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