Infinite possibility world ~ ver Servant of zero 旧版 作:花極四季
「僕は先にヴェストリの広場で待っている。逃げるんじゃないぞ」
マントを翻して去っていく少年。三枚目キャラの筈なのに、なんかかっこいい。
「ヴァルディさん、ありがとうございます。それに、ミス・ヴァリエールも」
メイドの子がお礼を言ってくる。
「気にしなくていい。私はああいう道理に沿わない発言が通ると思っている輩が嫌いなだけだ」
「私も、ヴァルディと同じよ。気にくわないから突っかかっただけ。別にアンタの為なんかじゃないわ」
あれー?さっき借りがあるって言ってなかったっけルイズさん。
ハッ、これが噂に聞くツンデレか!
まさかのリアルツンデレ。テンション上がってきた。
「それでも、です。本当にありがとうございます」
「―――ッ、それよりも!ヴァルディ、貴方ヴェストリの広場に向かうの?」
明らかに露骨な話題変換だけど、彼女の名誉のために指摘はしないでおこう。
「無論だ。行かぬ道理はあるまい」
決闘の申し込み発言から今に至るまでの間に、実は色々あったりする。
ぶっちゃけると、口で負けたからバトルしようぜ!お前が相手な!ってことである。
まぁ、無理矢理感はあるけどクエストの流れを止める訳にもいかないだろうし、強硬手段に出たってところだろう。
そういう可能性を考慮してああいうキャラ付けにしたっていうんなら、中々の慧眼だと褒めてやりたいところだ。
「ヴァルディ、貴方剣で戦うの?」
「そうだが」
「アイツは、ギーシュはドットの土メイジよ。ドットとはいえ、その中では実力者のアイツに剣一本で戦うなんて………」
ドットってなんぞ。ファミコン?
ルイズさんの言い方からすると、メイジのランクみたいなものなんだろう。
んで、ドットは恐らくランクの中では低い方だと。
お誂え向きな初期の敵ってところか。軽くひねってやんよ、シュバババ。
「それなら問題ない」
お、タバサちゃん!タバサちゃんじゃないか!
いつの間にか現れたことに、みんなびっくり。
「彼は、私と戦い勝利した。少なくとも、彼に負ける道理はない」
「戦ったって―――まさかあの時!?なんてことしてるのよ貴方!」
「どうしても彼の実力を知りたかった。ごめんなさい」
素直に謝るタバサちゃんに、ルイズさんは身じろぎする。
あまりにもあっさりしてるもんね、言い訳の一つもしないとは思わなかったんだろう。
「も、もういいわよ。それよりも、確か貴方はトライアングルのメイジなんだっけ?勝ったって本当なの?ヴァルディ」
「あれが戦いと呼べるのかと言われれば甚だ疑問だがな」
だって、僕は攻撃を一回迎撃しただけですし。
「―――!そう、なら心配はいらないわね。せいぜい手加減してやりなさい」
「了解した」
タバサちゃんはトライアングルメイジらしい。
そしてギーシュ?だったかよりも強いらしい。
………んー、もしかしていきなり面倒なルートを選択しちゃったんだろうか。
まぁ、箱庭ゲーではあるあるだし、気にしないでおく。
「では、行ってくる」
さーて、せっかくだし技の実験台になってもらおう。
昼食を終えた私は、シルフィードの下へと足を運ぶ。
普段はもう少し時間を掛けるのだが、何やら食堂が騒がしくなっていた為、早々に退散した。
「あ、おねえさまなのね」
シルフィードが口を開く。
間髪入れずに頭を叩いた。
「痛いのね………」
「喋っちゃダメ」
シルフィードは通常のドラゴンではなく、韻竜と呼ばれる人語を解する竜で、絶滅したとされている種族でもある。
故に、そのことがばれれば嫌でも注目が集まってしまう。
少なくとも、プラスに働くことはないだろう。
だからこそ、この子には喋ることを制限させている。理由はまだ完全に理解していないようだが………。
ともかく、こんな広場にいるだけでも目立つというのに、小声とはいえ喋ろうもの なら、バレる可能性が飛躍的に高まってしまう。
「小声でなら喋っていいのね?おねえさまにどうしても言いたいことがあったのね」
私に顔を近づけ、私にだけ聞こえる声量でそう語る。
これなら安心かもしれないが、長時間この体勢を取るのも不自然なので、早々に話を終わらせてもらおう。
「何?」
「さっき、背中に乗せたエルフが来たのね」
エルフ、という言葉に過敏に反応する。
「―――それで?」
「彼、とっても優しかったのね。シルフィの気持ちいいところを優しくなで続けてくれたのね。それだけじゃなくて、彼からはおねえさまが思っているほど邪気を感じないのね。むしろ、ゼロと言っても差し支えないレベルなのね」
シルフィードは動物である為、人間と比較して圧倒的に感性が鋭い。
理詰めで物事を判断するのが人間ならば、直感ですべてを決めるのが動物だと解釈している。
だからといって、莫迦にはできない。
本での知識によれば、野生生物の予想外な行動に苦しめられたというケースは後を絶たない。
だからこそ、この子の発言を戯言と切り捨てるつもりはない。
「………それで?」
「おねえさまは彼を怖がっていたけど、そんな心配する必要はないのね。彼はなーんも気にしていないに決まっているのね」
「―――そう」
どこまで信じていいかはわからない。
だけど、信じたかった。
誰も彼も疑うより、信じた方が絶対に幸福だから。
「その、彼はどこへ?」
「学院に入っていったのね。さっきから騒がしいけど、きっとそこに向かったと思うのね」
「わかった」
私は食堂へと引き返す。
食堂前は、先程とは違い人だかりが出来ていた。
十中八九、彼がこの場にいるからだろう。
「ヴァルディ、貴方剣で戦うの?」
「そうだが」
「アイツは、ギーシュはドットの土メイジよ。ドットとはいえ、その中では実力者のアイツに剣一本で戦うなんて………」
近づくと、そんな会話が聞こえてくる。
どうやらドットメイジと彼が決闘をするらしい。
………莫迦なことを。
大方、プライドの高いメイジの方が彼に喧嘩をふっかけたのだろう。
私をも圧倒した彼が、負けるわけがない。
とはいえ、その事実を彼の主は知らない。
どうせすぐに知るだろうけれど、ここで無駄な時間を取らせる理由はない。
それに―――不謹慎ながら、再びあの圧倒的な力をこの目に焼き付けたいという思いもあった。
「それなら問題ない。彼は、私と戦い勝利した。少なくとも、彼に負ける道理はない」
「戦ったって―――まさかあの時!?なんてことしてるのよ貴方!」
必至の形相で私に迫るルイズ。
それも当然だろう。半信半疑とはいえ、私を信じて彼を同伴させたのにその気持ちを裏切ったのだ。
「どうしても彼の実力を知りたかった。ごめんなさい」
だからこそ、私は誠意を持って謝る。
「も、もういいわよ。それよりも、確か貴方はトライアングルのメイジなんだっけ?勝ったって本当なの?ヴァルディ」
「あれが戦いと呼べるのかと言われれば甚だ疑問だがな」
己が使い魔を見上げ問いかける。
そして、何でもないように告げられる事実。
その通りだ。彼にとって私は、障害にすら成り得ないのだから。
「―――!そう、なら心配はいらないわね。せいぜい手加減してやりなさい」
ルイズも私と似た感想を抱いているのだろう。
直接見ていないとはいえ、当の本人からお墨付きを貰ったのだ。
嘘を吐く理由もないし、信じるに値したのだろう。
「了解した」
そう告げる彼の表情からは、どこか楽しげな雰囲気を感じた。
―――今度は貴方は何を見せてくれるの?
期待に胸を膨らませ、ヴェストリの広場に向かう彼の背を見送った。