キングスピア < K I N G S P I A >   作:明暮10番

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ハニーハント2018『 肆 』

 目を覚まし、リビングに行く。

 

 ソウゴがテーブルに座り、朝食を食べていた。

 今日は母親がすぐ仕事に行くので、トーストとマーガリンと簡単なものだ。

 

 

「あ。おはよ〜」

 

「あのぉ……いつまでいるんですか?……ご家族さん、心配しているんじゃ……」

 

「まぁまぁ、良いじゃん良いじゃん」

 

「良くないですよ、学校も行かないと……テストとか大丈夫なんですか?」

 

「うっ……」

 

「今、『ヤバイ』って顔しませんでした?」

 

「い、いやいやいや! 余裕だってば! 余裕余裕!……な、気がする」

 

 

 母親も席につき、トーストにマーガリンを塗る。

 

 

「私はずっといて貰っても構わないわよ?」

 

「ママ……流石にそれは……あのソウゴさん、今日こそ学校ですよね?」

 

「そ、創立記念日……」

 

「ソウゴさんの学校は何回建てられているんですか……」

 

 

 はぐらかし切れず、ソウゴは瞬時にテレビのリモコンを取って点けた。

 

 朝のバラエティ番組が流れている。

 レギュラー出演の芸能人が町に繰り出し、旬な店を探す、在り来たりなコーナーだ。

 

 そのコーナーが終わると、三本程度のCMを挟み、朝のニュースが始まる。

 

 

『都内の私立高校で、女子生徒に猥褻な行為を強要したとして、四十五歳の男性教員が昨日、逮捕されました』

 

「あ! これ昨日の! うわぁ、ニュースに出たよぉ!」

 

「………………」

 

『また男性教員は過去にも同様の行為を繰り返しており、児童買春、強制猥褻の疑いもあるとして、警察は引き続き捜査を行うとの事です』

 

「まぁ、名前は出ないよね。これで反省したら良いんだけど」

 

 

 嬉々としながらトーストを齧るソウゴ。

 当事者で被害者の姫乃としては少し気まずいが、聞こうと思った事をソウゴへ投げかけた。

 

 

「……ソウゴさんのこの……コダマスイカちゃん? とかは、どうしたんですか?」

 

 

 姫乃はポケットからコダマスイカアームズを取り出す。

 引き続き、お守りとして持たされていた。

 

 

「ソウゴくん、のほほんとしていて意外と大胆ねぇ」

 

「そりゃ、王様になりたいからねぇ〜……あ、姫乃の質問だったね。言っても、それもこれも全部貰い物なんだけど」

 

「あの、鳥のロボットとガラケーみたいな物もですか? どなたから……」

 

「んー……まぁ、俺の〜……先輩? みたいな人とか、俺が王様になるのを助けてくれる人とか」

 

 

 そんな人いるのかと、姫乃は唖然とする。

 

 

「でもそのお陰で……あのクソッタレ畜生の性欲猿のド屑から姫乃を護ってくれた訳でしょ? 改めてありがとうね、ソウゴくん!」

 

「お母さんと約束したもんねー!」

 

「ご飯中に言っちゃいけない言葉が聞こえたような……」

 

 

 暫くして母親は仕事に行く為、二人を残して出て行く。

 家を出るまでまだ少し時間があるし、多分渚が来るであろうから、そのまま待機する。

 

 

「昨日あんな事あったけど、大丈夫?」

 

「みんなが私を助けてくれたんですから……それに今日も多分、警察の人に色々聞かれるだろうし」

 

「でも姫乃は良く頑張ったよ! それに俺を信じてウォッチ持っていたんでしょ? 嬉しかった!」

 

「ソウゴさんって、不思議と信用出来るんですよね」

 

「おぉ? そぉ?」

 

 

 嬉しそうに微笑むソウゴ。

 一見すれば少し子供っぽく、あどけなさと無邪気さを感じさせる少年だ。王様になると言った夢も含めて、世間一般で見るなら変わり者の不思議っ子だろう。

 

 

 しかし何か、底知れなさがある。ふとした時に大人びた顔を見せる。

 そこにある種の不気味さが垣間見えた。まるで何年も生きて来たかのような、達観した目をする。

 

 子供っぽいのに、彼の事は実は殆ど知らない。

 それらのギャップが、妙なカリスマ性を持っているような。

 

 

「……子供の時の事とか、昨日の事とか……男の人が少し、怖いです」

 

「……そうだよね。それは、仕方ないよ」

 

「あっ、で、でも!……ソウゴさんは違いますよ? ソウゴさん、とても良い人ですし……多分、私が出会って来た男の人だったら、断トツですよ」

 

「……えへへ。そう言われたら照れるよぉ〜?」

 

 

 後頭部を掻きながら、また嬉しそうに笑う。

 感情が表情と身体から滲み出て隠し立てしようとしない辺りも、また子供っぽい。

 

 

「……こんな私を受け入れてもくれました。心強かったです」

 

「姫乃のあの力は、洗脳だとかじゃないんだよね?」

 

「……はい。それは絶対に……なんだか、私への愛情が強まるらしいですけど……」

 

「でも能力の取り扱いには気を付けてね」

 

「分かっています……仲間も、能力の使用も、あのメンバーで留めます。まぁ、現状は自由に使えないんですけどね」

 

「自由に使えない?」

 

「どうやら、私が強く願うと……針が出るようで」

 

 

 体内から表出し、人間を突き刺す。

 すると刺された相手は愛情を思い出し、姫乃の同じ針を手に入れる。

 

 精神の変動と、肉体改造。その二つを同時に行う。考えてみればなかなか、凄まじい。

 

 

「じゃあさ! 今、俺を仲間にしようって願ったら出て来るの!?」

 

「え、えぇ!? いや、ソウゴさんにはしませんよ!」

 

「と言うか、どっから出て来るの? おし」

 

「ソウゴさん、あの、朝から辞めましょうよ……」

 

「?」

 

 

 朝食のお皿を片付けながら、ソウゴは疑問を口に出す。

 

 

「でもその能力って、どうやって手に入れたんだろ?」

 

「………………」

 

「まさか生まれた時からって訳じゃないでしょ?」

 

「心当たりがあるんです」

 

「え?」

 

「……服部さんに食べさせられた、蜂……じゃないかなって」

 

 

 無理やり口に入れられ飲み込んだと言う、蜂の死骸だ。

 

 

「蜂食べたらそうなるの!?」

 

「いや、そうじゃなくて……その蜂って言うのが、真っ赤で、針もおかしい、妙な蜂だったんです」

 

「……真っ赤な蜂」

 

 

 ソウゴも見覚えがある。

 この世界に来た時、校庭で見たあの蜂だ。

 あの後、姫乃を刺した時に彼女に潰され、それを食べさせられたらしい。

 

 

「心当たりと言ったらそれしか……」

 

「……分かった。俺、その蜂を探してみるね」

 

「……え?」

 

「姫乃の能力の秘密が分かるかもしれないじゃん! 姫乃も、何も分からないままじゃ不安でしょ?」

 

 

 それは言えていると、姫乃はコクリと頷いた。

 

 

「なら話は早いねっ! 巣は学校に近いだろうし、見つけてみるよ」

 

「あの、校内に入るのは避けてくださいね……?」

 

「まぁ、そうだよね。常識的に女子校に男子はマズイか」

 

「それ以前に不法侵入になんですけど……」

 

 

 チャイムが鳴り、渚がドア越しに姫乃を呼ぶ声。

 支度は済ましていた彼女は鞄と、母親が作り置きしてくれたお弁当を持って家を出ようとする。

 

 

 

 ソウゴも合わせて外出しようとする。

 点けっ放しのテレビを消そうと、リモコンを握った。

 

 

 

 

 

『先日に発生した、女性二人が犠牲となった通り魔事件ですが、犯人は未だ不明との事です。近隣住民の皆さんは、夜間の外出を控える、複数人で行動するなど、注意をしてください』

 

 

 ふと流れたニュースを見て、ソウゴは呟いた。

 

 

「……姫乃の学校の近くじゃん」

 

 

 彼女に伝えてあげようと考えながら、テレビの電源を切る。

 

 

 家から出れば、また渚に因縁つけられた事は言わずもがなだろう。

 

 

「てめぇぇッ!! 姫乃のお母さん公認とか、刺されてぇかゴラァッ!?」

 

「イデデデデデ!? だからなんで、ヘッドロックなのぉ!?」

 

「服部さんったら……あまり暴力はしないようにしてくださいね。ソウゴさんは私たちの友達ですよ」

 

「分かった。ごめんね姫乃?」

 

「いやいや、俺に謝ってよ」

 

 

 ニュースでやっていた事を教えて、ソウゴはバスに乗る二人を見送った。

 

 ここからどうしようかと、バイクの上で考える。

 姫乃には多くの仲間がいる。暫くは自分がいなくても、護ってもらえるだろう。

 

 

「取り敢えず、士を探そっかな」

 

 

 行く宛も無いので、暇潰しがてらに門矢士を探しに行く。

 ライドストライカーのグリップを握り、都心の方へ走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方でその、門矢士。

 

 

「てめぇはいつまでいるんだよココに!?」

 

「金は出してんだ。いつでも良いだろ」

 

「ウチはホテルじゃねぇんだよッ!!」

 

「一ヶ月以内には出る」

 

「今すぐ消えろッ!!」

 

 

 リビングのソファを牛耳り、足をフットレストへ優雅に乗せ、雑誌を読みながら紅茶を嗜む士。

 そんな彼に食ってかかるは、三つ編みの捻くれた目つきの少女。

 起きて間もないパジャマ姿のまま、お高いスーツ姿の士にぎゃあぎゃあ喚く。

 

 

「あの公園で会ったと思えばこの家にいて……なに!? ママのストーカーか!?」

 

「ストーカーが許可貰って家に居座るか普通」

 

「じゃあなんなんだよお前は!?」

 

 

 紅茶を飲み、砂糖が足りないのか、角砂糖を追加。

 

 

「ここは俺の前線基地だ。そう言う訳」

 

「どう言う訳なんだよ!? テロリストか!?」

 

「テロリストと言ったら、そうかもな。世界を滅ぼすテロリストだ」

 

「頭おかしい……」

 

「お互い様だ、ガキンチョ」

 

 

 少女は苛つきを滲ませながら、テーブルに用意されていた朝食には目もくれず、居間に置いてあったパンを焼いて食べる。

 

 

「俺が作った飯、食わないのか?」

 

「誰が食うか」

 

「スクランブルエッグ……焼き加減から、加えるマヨネーズの量まで拘ったんだぜ」

 

「勝手に一人で全部食ってろ」

 

「こいつは困った。想像以上のワイルドハニーだ」

 

「ぶっ殺すぞ」

 

 

 さっさと朝食を済ますと、彼女はまた自室に戻ろうとする。

 士は時計を見た後、声をかけた。

 

 

「学校はどうした? もう始業の時間だろ」

 

「指図すんな」

 

「不登校か。まぁ、まだ中坊だから卒業は出来るか。でも来年から高校だろ? 受験は?」

 

「こいつ……ッ!!」

 

 

 キレた少女は食卓にある、士の作った料理の皿を取る。

 そのまま彼へ一思いにぶん投げた。

 

 

「おおっと」

 

 

 瞬時に士はフットレストを蹴り上げ、皿を止めた。

 士に当たることはなく、盛大に料理をぶちまけて床に落ちる。

 

 

「くそ……! スペックだけは無駄に高いのなんだよ……!」

 

「散らかしたなぁ。掃除するのは俺なんだが?」

 

「じゃあコレも含めてやっとけ!」

 

 

 テーブルを掴み、ひっくり返し、残りの料理まで床に倒す。

 その様を見て、士は呆れたように溜め息を吐く。

 

 

「……これは少し、お灸を据えなくちゃならないか」

 

「やる気? ハッ! 来いよッ!!」

 

 

 落ちていたフォークを手に取る少女。

 士は紅茶の入ったカップを置き、彼女へツカツカと近付く。

 

 

「お前なんか、指一本で十分だ」

 

「言ってろッ! 病院で過ごさせてやるッ!!」

 

「おら、来やがれ。こいよ、ほら」

 

 

 士の挑発に乗り、フォークを逆手に持って刺しかかる。

 しかし彼はその動きを見抜いており、サッと身体を翻し、少女の背後に立つ。

 

 そのままフォークを持つ方の腕を掴み上げ動きを止め、もう片方の手を親指だけ立てる。

 

 

 

 

「食らいやがれ。『笑いのツボ』」

 

「ごぅ!?」

 

 

 立てた親指をグッと、首筋のある一点に押し込んだ。

 その隙にフォークを奪い取り、少女をソファへ突き飛ばした。

 

 

「てめぇ、なに……うふ……!?」

 

「よし。成功だ」

 

「ふふ……ちょ……あは……あははははは!?」

 

 

 突如少女は、気が触れたかのように腹を抱えて笑い出す。

 腹がよじれて苦しいのか、ケタケタ笑いながらソファの上をのたうち回っている。

 

 

「あはははは!? にゃ、にゃにこれ……あーっはっはっはっはっは!?」

 

「掃除が済むまで笑ってろ」

 

「はははははは!! ひぃー! ひぃー! こんなんで私が……あはははははは!!」

 

 

 大口を開け、涙を流し、足をバタつかせて笑いの苦しみに耐えている。

 その間士はエプロンをつけ、散らかった居間を黙々と掃除する。

 

 

 ものの五分で片付けは終わり、『笑いのツボ』による発作が治まった少女はゼェゼェ、ソファの上で脱力していた。

 

 

「はぁー……はぁー……ゴホッ! ガハッ!」

 

「久し振りに笑ったんじゃねぇか?」

 

「ゼェ……ヒィ……絶対に殺す……!!」

 

「もう四日だぞ。俺に傷一つつけてないけどな?」

 

「殺す……うぅ……息苦しい……お腹痛い……」

 

「それが治ったら学校ぐらい行け」

 

 

 呼吸を整える彼女の横にどかっと座り、また紅茶を飲み出した。

 すぐ隣にいるのに、今の彼女には飛びかかる気力がない。

 

 

「全く。とんだロクでなしだな、お前の母親は」

 

「………………」

 

「一等のタワーマンション、過不足ない生活用品、快適な部屋、潤沢な金……ただ一つ、『愛がない』」

 

 

 そもそも、自分の娘がいる家に、金は出しているとは言えど、知らない男を居座らせる……この時点でおかしいだろう。

 

 

「あれはどう言い聞かせても無理だな」

 

「……そんなの私は望んでないっての」

 

「………………」

 

「クズはクズのまんま。そのまま大人になっちまえば……絶対に変わりやしない」

 

「諦めてんのか?」

 

「諦める? なに言ってんだか」

 

 

 少女は寝っ転がりながら身を捩り、士の太腿に自身の足を乗っける。

 

 

 

「それが私のママ。それ以上を求めていないし、それ以下も求めていない。諦めてんじゃない、『ただそれだけ』の話」

 

 

 士は乗っけられた彼女の足を払う。

 

 

「……大体分かった」

 

 

 それ以上、彼は聞いて来なかった。

 

 

 

「お前誕生日近いよな」

 

「なんで知ってんだよ」

 

「保険証預かってんだ」

 

「返せッ!!」

 

 

 彼女にとって士に唯一感心する所は、引き摺らない性格な点だろうか。

 いつも唐突に話を変えたり、振ったりしてくる。めんど臭いが、アレコレ干渉されるよりかはマシだ。それでもめんど臭いが。

 

 

「なんかプレゼントでもしてやろうか?」

 

「いらねぇよ! 祝ったら殺すからなマジに……!!」

 

「そうか」

 

 

 再び紅茶に口を付けようとする。

 

 

 しかし何かに気付き、それを取りやめて立ち上がった。

 

 

「……なんだ?」

 

「いきなりなんだよ」

 

 

 彼は窓際に近付くと、ガラリと開ける。

 ここはタワーマンションの上層、冷たい風が入り込んだ。

 

 

 

 

 

『サーチ・ホークッ!』

 

『探す・タカ・タカ!』

 

 

 開けた窓から部屋に入って来た物体は、タカウォッチロイド。

 突然飛び込み、パタパタ天井を旋回するそれに、少女は愕然とする。

 

 

「はぁ!? なに!? それ……生き物!?」

 

「……俺を探しに来た訳か」

 

 

 機械的な鳴き声を響かせ、士を玄関先まで誘導。

 外出しろと、訴えているようだ。

 

 

「出かける。学校は行けよ」

 

「てめぇは保護者か!」

 

「そうお前の母親に言われてんだがな」

 

「てか、それはなんだってば!?」

 

 

 彼女を無視して、彼は外に出た。

 

 

 エレベーターを下り、エントランスを抜け、オートロックのガラス戸を超える。

 入り口には、魔王こと常磐ソウゴ。

 

 

「凄い所に泊まってんだねぇ……」

 

「なんの用だ?」

 

「聞きたい事があってさ」

 

 

 ソウゴは士に質問する。

 

 

「……アナザーディケイドの目的って、なんだと思う?」

 

「目的?」

 

「今までのアナザーライダーって、絶対に目的があったんだ。子どもを救う為とか、好きな人を守る為だとか」

 

「………………」

 

「同じ感じで、アナザーディケイドもある気がする。色んな人間をこの世界に送り込むのもだけど、本体がこの世界にいるなら……この世界で、何を成し遂げたいんだろうって」

 

 

 士は顎を撫で、そこまで近付けたソウゴへ素直に感心する。

 

 

「だから、アナザーディケイドの目的さえ分かれば、正体と対策が分かると思う」

 

「……確かに。一理あるな」

 

「それを踏まえて……士に頼みたい事があるんだ」

 

「俺にか?」

 

 

 うん、と力強く頷く。

 

 

「アナザーディケイドが、『この世界に追放した人間』を調べて欲しい」

 

 

 今までもアナザーライダーが襲った人間にも、一貫性があった。

 スポーツ選手、子どもと同じサイズの心臓を持つ人間、天秤座の少女……アナザーディケイドもまた、同様のハズだ。

 

 

「元の世界に行き来出来るんでしょ? だから、士にしか出来ないんだ」

 

「……それを俺が承諾すると?」

 

「しなきゃいけないハズだよ。倒したいんでしょ?」

 

「……まぁ。それもそうだが」

 

 

 士は一旦、ソウゴの元から離れて、ガレージからマシンディケイダーを出して戻って来る。

 

 

「ゲイツとツクヨミにも協力して貰いなよ」

 

「それもそうだな」

 

「じゃっ! よろしくね?」

 

「あぁ」

 

 

 ヘルメットを被り、士はバイクを走らせる。

 暫く走った所で、あの別世界を繋ぐ灰色のオーロラが現れ、彼はその中に消えて行った。

 

 

「……頼んだよ。士」

 

 

 ソウゴもその場を離れようと、歩き出す。

 その間、何度もマンションを見上げた。

 

 

「てか、凄い……ほほぉ……俺も泊まらせてくれないかなぁ」

 

 

 突然、ファイズフォンが鳴る。

 ソウゴは急いで、現場に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこは人通りのない路地裏だった。

 室外機が鳴る、日差しの届かないその場所に佇む、異形の存在。

 対峙するは、二人の少女。

 

 

 

 異形の視線の先には、座り込んで怯える姫乃と、針を出して臨戦態勢を整えていた渚。

 

 

「一体……なんだったんだよ、てめぇ……」

 

「か……怪物……!」

 

 

 怪物と罵る姫乃に対し、その存在は、男と女が同時に喋っているかのような不思議な声で、話し出す。

 

 

『怪物……怪物だと? 笑わせるな、怪物はそっちだろうが?』

 

 

 濁った怪物の目。

 その目には、何も映らない。

 

 

 

 

『お前ら……「蜂」だよな』

 

 

 

 

 頭部を、『十八』の切り刻んだ髑髏を並べた、怪物。

 手を叩き、二人へ怪しく歩み寄る。

 

 姫乃は急いで、コダマスイカアームズのボタンを押した。

 同時に怪物は二人へ飛びかかり、渚の針が瞬時に敵目掛けて動き出した。




(ほしいまま)
アナザーディケイドのデザイン、待っています(他力本願)
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