「はぁ……」
使い魔召喚の儀の翌日、授業の始まる前の教室でキュルケは朝からため息をついていた。
理由は、前日に見てしまった衝撃のせいだ。
今朝に目を覚まし身支度を済ますなり隣の部屋に突撃したのだが、目的を達せられずに引き下がるしかなかった。曰く、彼の人物は学院長室から一度戻り、再び行って以来どこへ行ったかわからないらしい。そもそも使い魔じゃないし知らないとか抜かしていたのでとりあえず嫌味を一つ二つ言ってやった。そんな朝一番の出来事から、一体何度目のため息だっただろうか。
今も群がる男子勢が何やら語りかけてくるものの全く耳に入って来ず、正直に言って相手をしていられない状態だ。だというのに、アンニュイな表情がまたいい等といった呟きと共に男子の視線が己の顔に注がれている感覚がある。普段から見られることを意識しているためにそれを知覚できるようになった事が、彼女のことを想う上では非常に煩わしいと思わざるをえない。
さらにその周りはといえば、半ば上の空となっているこちらをまた微熱云々の何とやらだろうと勘違いしているらしいが、それは根本的に間違っていると言わせてもらいたい。確かに微熱のようなものだが、それは燃え上がるような情熱を表すものではない。正しく言葉にすることは出来なかったが、それはまるで親しみのような、憧れのような――
そこまで考えたところで、教室の扉が開いて三角帽子を被った恰幅のよい中年の女性が入ってきた。身なりからして、これからの授業を担当する先生とみえる。
周囲の男子生徒も流石に声を潜め、こちらへは流し目のような視線を送る程度になった。普段から相手をしている自分が言うのもなんだが、もう少しまともに授業に向き合えばいいと思う。そう、例えばルイズのように――
などとルイズのほうへ目を向ければ、普段は静かに授業を受けているあのルイズが今は使い魔の少年と何やら声を潜めて話をしている。
珍しく持ち上げてみれば勝手に株が下がっていく、そんなルイズにため息をついた。ついでに言うとそのため息の理由の半分は、ルイズの傍に居るのが彼女ではなかったことだった。
――というより、今日から一緒に授業を受けるというのは嘘だったのかしら。
朝にルイズから聞いた情報が当てにならず、思わず頭に手を当てる。すると周りからは何やら気を使うような声がしたが、適当にあしらってやった。
全くもって、煩わしいったらありゃしない。
そうこうしているうちに先生――二つ名が『赤土』のミセス・シュヴルーズというらしい――が自己紹介を終え、授業を始めていた。
魔法の系統の確認から始まり、『土』系統のすばらしさについて滔々と語る、気だるい時間。起きてから数えて三桁に達してしまうのではないかと思えるような、幾度目かもわからないため息をつきそうになった、その時だった。
「――遅れてしまったようで申し訳ない」
開いた扉、皆の視線が集中する先。
キュルケの待ち望んでいた姿が、そこにあった。
始まりには遅れてしまったが、魔法学院初めての授業は、実に興味深いものだった。
内容は錬金という魔法についてであり、私からの軽い自己紹介を終えた後にまずは教師――ミセス・シュヴルーズ先生の実演から始まった。ローブの袖から取り出した三つの小石を机に置き、杖を取り出し呪文を唱える。するとたちまちそれらは光り輝く黄金色――周囲はざわめきすわ黄金かと声も上がったが、実際は真鍮だった――に変じた。
ここで生徒からの質問の答えと同時に追加の説明があった。黄金を作ることが出来るのは『スクウェア』クラスのメイジだけであり、今実演したシュヴルーズ先生は『トライアングル』クラスであるため不可能、とのことである。
『スクウェア』と『トライアングル』。これは先ほどまでいた学院長室での勉強会でも上がった単語だった。つまり魔法使い、メイジとしての階級だ。つまるところ今目の前のシュヴルーズ先生は上から二つ目の位階ということになる。
ならば私はこの場においてどの程度のクラスなのかとふと思う。クラスアップの条件である属性を重ねる云々の話はさっぱり理解できなかったので正確にはわからないが、そもそもがただの二次職、セージである私では『ライン』クラスでせいぜいだろう。
さてそんなことを思っていれば、シュヴルーズ先生が一人の生徒の私語を注意した。その対象は私を召喚したルイズだ。隣にいた才人と喋っていたせいで注意を受け、その罰としてシュヴルーズ先生の行った錬金の魔法の実演を求められた。
その瞬間の教室のざわめきといったらどうだろう。突然の要求にルイズが困惑している間に、周囲の生徒からやめたほうがいい、危険だ、という意見が出る。だがシュヴルーズ先生は彼女が努力家であるとし、失敗を恐れずに挑戦することの大切さを説いた。いい先生だと素直に思った。この時までは。
結果としてルイズの錬金は失敗し、小石は極光とともに爆発した。その威力たるや教室を爆風と粉塵が覆い尽くし教卓は言うに及ばず周囲の机椅子をなぎ倒し近くにいたシュヴルーズ先生とルイズは吹き飛ばされた。そしてこの騒動でパニックを起こした周囲の生徒達の使い魔が暴れだし、あたりはたちまちGvG――ギルド対抗攻城戦中の砦もかくやといった大混乱である。大魔法防衛ラインにも勝るとも劣らない阿鼻叫喚の世界がそこにあった。
おそらくは錬金により金属ではない何かを錬金したのだろう。現状を見るに先ほどの生徒達のの忠告は確かに正しかったのだ。そう思いながら教卓近くで伸びているシュヴルーズ先生を介抱するために近寄れば、そのすぐ脇でピンク色が動いた。服はボロボロで見るも無残だが、見る限り傷も無いようで見事に昏倒しているシュヴルーズ先生との区別はどこでつけられたのだろうかと不思議に思う。人の身体的特徴を余り言いたくはないが、おそらくは体格とか質量とかそのような類だろう。
それはさておきシュヴルーズ先生だが、頬を軽く叩いても返事が返ってこなかった。こういうときにスタン状態を回復するリカバリーが使えればいいのだが、あいにくプリースト専用スキルだ。キュアーが使えるような装備ならあるのだがそっちは毒、混乱、暗黒を回復するに過ぎない。
なんにせよ、ルイズは失敗した。そうなれば周囲の生徒は口々にルイズを責め始めた。『ゼロのルイズ』等という野次も飛び、それを聞くルイズも悔しそうにしている。今ここで彼女を元気付けることもできるが、それはおそらく知り合って一日の私の立場から言ってもただの無責任だっただろう。
ただ罵倒されるだけのルイズに申し訳ないとは思いつつも、シュヴルーズ先生を担ぎ教室の外に出たのだが、医務室の場所がわからないことを思い出した。
とりあえずどこかで学院勤めの人に聞けばいいだろうと歩き出そうとした時、
「先生を医務室に連れて行くの?」
声に振り返れば赤毛と褐色肌の、やや露出過多な生徒の姿。肯定すれば、道を教えてくれるとの事なので素直に礼を言いついていき、シュヴルーズ先生を医務室のベッドに放り込んで後を近くを通りがかったメイドに適当に任せたのがつい先ほどのことだった。
それからマキナとその生徒――キュルケは、それ以降の授業をフケて学院の中庭にあるオープンカフェのような場所で昼食後の紅茶を飲んでいた。もっとも、授業は担当のシュヴルーズ先生がいないために自動的に無くなったと同義であったのだが。
さて、マキナがメイドに給仕をしてもらうという慣れない経験に戸惑いながらも、キュルケと話すのは服飾のこと。
「――本当なの?その服が貴女の、職業の制服というのは」
「うむ、見た目からはそう思えないかもしれないが、実は結構機能的でね……特に動きやすいのは重宝しているよ」
キュルケに問われたのは、今マキナが身に纏っているセージクラスの服のデザインについて。
やはりキュルケは年頃の女の子らしく、服飾などに興味があるのだという。更にその女性らしい肉付きの肉体が己の武器であることを自覚しているため、露出の多いものを好むのだという。それ故に気になったのがこのセージの衣装なのだとか。
「そんな重要な服にしては、その……少し、扇情的ね」
「そういわれても反論が出来ないね。おそらくは昔に助平な賢者がいたのだろう」
ちなみに冒険者は普段からもクラス制服以外着てはならないなどという規定はない。ただし、身分をわかりやすくするために冒険者として活動するには着なければならないという規定がある。そのために服で何のクラスとなるかを選ぶ人もいるくらいだ。
更に余談ではあるが、職業とクラスは別カテゴリである。正確に言うならマキナは職業が冒険者、クラスがセージとなるわけだが、生憎この世界ではそのような概念が薄いらしい。マキナは一応説明はしたがキュルケには気のない返事で流されてしまっていた。
「でもそんなに大事な服なら、私がそれを着るわけにはいかないわね……はぁ、残念だわ」
「ふむ……こちらには冒険者制度がないのだから少し着る程度はいいと思うがね?」
また、マキナは既にキュルケに対して、この地方の出身ではないと明言している。本当は別地方などではなく異世界出身ということになるのだが、その情報をごく一部以外にばらす事はオールド・オスマンに止められている。
なのでこの場においてマキナは東の世界、ロバ・アル・カリイエと呼ばれる地域からルイズの召喚で才人と共に呼び出された、ということになっていた。
「い、いいの!?」
「愛着があるので返してもらえるのであれば、貸すくらいどうということはないのだが……ふむ、しかしキュルケが着るのであれば少しばかり胸と尻がキツくなるのではないかな?」
「うっ……で、でもそれはそれで!」
「どういうことだがさっぱりだが……君がそれでいいなら、こちらの学院の制服を受け取ってからしばらく貸そう」
「やったー!ありがとうマキナ!お礼に私の服を貸してあげるわ!!」
「余り派手なものは好まないのでお手柔らかに頼みたいものだね、それは」
嬉しそうにはしゃぎマキナの手を取りぶんぶんと上下に振るキュルケ。様々な化粧品で大人っぽく見せているが、こういう表情は年相応だな、とマキナ苦笑した。
服の話もひと段落し、私は次はキュルケに先ほどの授業について少し聞いてみようと思った。
まず頭に浮かぶのは錬金のこと。先ほどはシュヴルーズ先生の実演からそのままルイズの錬金に移ったため、理論的なことは一切教わらずにいたのだ。
メイドに紅茶のお変わりを頼んでいるキュルケに、そのあたりについて質問しようとした、まさにその時である。
塔と塔を結び中庭を区切る回廊の向こうから歓声が上がった。それと共に、その理由も耳に飛び込んでくる
「ギーシュが決闘するぞ!相手はルイズの平民だ!」
決闘。つまりはPvP――個人対戦のようなものだろう。私自身は対人戦向きなスキル構成ではないためあまり関わらなかったが、それでもある程度内容は知っている。つまり、相手が死ぬまで殴りあうルール無用で命を懸けた遊び。命は投げ捨てる物の精神で、笑いと憎しみの渦巻く混沌の支配する領域だ。
などと元の世界のことを思い巡らせたが、ここは平和な土地だというのでそこまでの大事ではないだろう。だが、学院に通う年頃の者たちにとってはこういった娯楽は滅多になく心踊るものだということは理解できる。大歓声から察するに、かなりの人数が集まっているらしい。
キュルケを見れば、回廊の壁の向こうをじっと見つめていた。はた、とこちらに気付けば苦笑い。
「あらごめんなさい、決闘なんてどうせたいしたことじゃないし、こっちはこっちで楽しく喋ってましょ」
などと宣うては何事もなかったかのように再び紅茶を口にする。が、私としてはそうも行かないのであった。
「すまないがキュルケ、私は少し彼らの様子を見に行くよ。気になることもあるのでね」
「え?あっ……だ、だったら私もいくわ!」
こちらの用事に付き合わせるのは申し訳ないと思い、側にあえて目立つように置いていた杖、リリースオブウィッシュを手に取り立ち上がる。だが、先ほどまでのどうでもいいといっていた態度はどこへやら、キュルケも急に私に付き合うと言い出した。
一体どういうことだかはわからないが、先ほどから妙にキュルケに懐かれている気がする。こちらが年上であるがタメ口でも問題ないと告げたし、話題としてセージ服で盛り上がったのが原因だとは思うが、一体どこにこれほど懐かれる要素があったのか。
昔から人付き合いは苦手な性質でこういうことには疎く弱いため、どうせ理由など思いつかないだろうと断じる。思考することを諦めて隣の中庭へと続く回廊を横断すれば、そこはやや日陰になった以外は先ほどまでいたのとさほど変わらない中庭、だった場所。今やそこは100人は下らない人数が決闘を観戦していた。遠巻きに円を形作り眺める彼らギャラリーの中には人影が決闘者人数である二つ……ではなく、更に甲冑を着た女戦士のような姿があった。
「青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」
才人と対峙する金髪の少年――おそらくは彼が才人の相手のギーシュなのだろう――がそう告げれば、その『ワルキューレ』とやらが才人に突っ込んでいき、その握り締めた拳が才人の腹にモロに刺さった。青銅製の塊がそれなりの速度で突っ込んできたのだから、才人が痛みに目を見開き呻きながら膝から崩れ落ちるのも無理はない。
ゴーレムの動き自体はそう早いものではなかった。目測でも、AGI(早さ)のステータスはいいところ30前後、多少訓練された兵士並といったところだ。その動きに対応できなかった才人は、やはり戦闘経験のない素人なのだろう。
しかしそれはほぼ不意打ちだったということもあり、才人が十全な能力を発揮できなかったという可能性もある。もう少し、様子を見ることにする。
などと考えている間に才人とギーシュの間にルイズが割り込み、問答をしていた。決闘が禁止されている、それは貴族同士に限ったものだ、前例がなかった、この平民に恋をしているのか、そんなわけはない――。
どうも話が飛躍した気がするのだが、気のせいではないだろう。このギーシュという少年は、少し常人とは違う頭の回転をする類の人種なのかもしれない。
さて、そうこうしている間に才人が立ち上がり未だやる気を見せている。ルイズがそれを止めようとして理由を聞いているのだが、
「ムカつくから」
なんとも若い答えを聞いてしまった、と感じた。私自身にもあったそういう尖っていた時期の記憶が不意に呼び覚まされ、一瞬気が遠くなる。傍にいたキュルケがなにやら気を使うように声をかけてきたが、本音を答えられるわけもない。適当にごまかした。
「――メイジだか貴族だかしんねえけどよ。お前ら揃いも揃って威張りやがって」
権力、社会構造に対する反発。実に若い、と苦笑すると同時に妙に眩しく見えた。
冒険者という自由な職業に就いている私にとってそれらは縁遠いもの――などでは決してない。無数の冒険者のうちの一人という形ではあるが、国家規模の依頼に協力したことは何度かある。国王や大統領、教皇に謁見したことも、そしてその裏に見え隠れする人間同士の黒い争いも同様に。
そのような諍いが起こる基盤は当然どの世界にも存在し、ここではそれがメイジと貴族という力を拠所としている。それに対し、真っ向から一人で抗おうとする何も持たない少年の姿。
それが、どうしようもなく眩しかった。
そのためだろうか。様子見は切り上げて少し早めに動こうと強く思ったのだった。
既にいくらか傷を負っていて、そしてそれを言ってしまえば更に痛みを与えられるに決まっているのに、それでも自分の思いを口に出してしまう。
周りに流されるのではなく、たった一人で理不尽と感じたことに声を挙げる、その才人の気概に敬意を評し、
『――来たれ』
私は最短規模の詠唱と共に、杖を振るった。
才人の挑発に顔を歪めたギーシュだが、表面上はさらなる冷静さを以ってワルキューレに命令を下す。
先ほど才人をたったの一撃でダウンさせたその青銅の拳が再び襲い掛かり、その顔面へと吸い込まれていく。周囲の者は更なる暴力と流血の予感に心を躍らせ、ルイズは思わず目を瞑りそうになり、
――その刹那、ワルキューレが巨大な氷塊に成り果てた。
「……え?」
「ギーシュのワルキューレが……凍ってる!?」
「なっ……一体、何が起こったんだ!?」
当事者である才人とルイズ、そしてギーシュ以外からもこの不可思議な現象に対して困惑が広がっていく。その最中に人垣を掻き分けて現れたのは一人の女性。
ギーシュをはじめとする周囲の者たちにとって、先ほどの授業において初めて見ることになった奇妙な雰囲気の持ち主。そして才人とルイズにとってはお互いの世界の交差点。
マキナ・ムラクモの姿がそこにあった。
「すまないが、少し首を突っ込ませてもらうよ」
「……これは貴女の仕業ですか、ミス・ムラクモ」
「うむ、さすがにこのまま見ているのも心苦しくなったものでね」
マキナは、周囲の訝しげで敵対感情すら包括した不穏な視線をものともせず、そのまま中央付近の三人と一体に近づいていった。
才人とルイズはどうやら助力がきたということに気付いたが、これ以上使い魔に危害が及ぶことはないと素直に喜ぶルイズとは正反対に、水を差された気分になった才人は少し不貞腐れていた。
一方のギーシュは、たった一瞬で自慢のワルキューレを氷塊に封じられたことに警戒心を抱いている。眉間にしわを寄せ、マキナの様子を注意深く観察していた。
そんな三者三様の感情を向けられながら、マキナは才人の傍らに立つ。
「――いい啖呵だったよ、才人君」
「……あのくらい平気だったってば」
「ちょっとサイト!助けてもらったんだから感謝しなさいよ!」
「俺は助けてくれなんて言ってねえ!」
元気に言い争いをはじめる才人とルイズに苦笑し、そのままギーシュへと向き直った。
相変わらず警戒の視線で見つめるギーシュにマキナは口を開きかけ――少し、止まる。
ふむ、と唸りを一つ、
「……失礼、なんとお呼びすればよろしいかな?」
「……自己紹介がまだでしたね、ミス・ムラクモ。僕の名前はギーシュ・ド・グラモン、二つ名は『青銅』です」
「ではミスタ・グラモン、一つ提案があるのだが」
「聞くだけは、聞きましょう」
「単刀直入に言おう。才人君に武器の使用を認めて欲しい」
「武器、だって……?」
周囲からざわめきが起こる。平民ごときにそのような事をする必要があるのか、否このままでは一方的過ぎて面白くない等々あちらこちらで論議がなされた。
さてギーシュはといえば、提案など馬鹿馬鹿しいとばかりに鼻で笑っている。
「何故僕がそのようなことを許可しなければならないんだい?これは使い魔くんに上下関係というものを決闘という形で教え込んでいるのだよ」
「ならばこそ、だよ。彼のような気質の者は、ただ上から押さえつけるだけでは納得はしない。全ての手を尽くした結果、それでも相手が上回るというなら負けを認めるのではないかな」
マキナの言葉にギーシュも一理あると感じたか、一言唸ると顎に手を当てて考え始めた。
一方で才人が勝手な事をするな等となにやら騒いでいるが、マキナは意にも介さずにギーシュに更なる一押しをするために、腰のポーチから髪飾りを一つ取り出した。
ヘアバンドのようなリング状の金属に、細く細工された質素ながら気品の感じられる装飾がついている髪飾りだが、問題はそれが余りに輝いていること。先ほどの授業で作り出された真鍮にも似た、しかしそれ以上に何かを感じさせる輝きこそは、
「金細工の……冠?」
「ミストレスの王冠という名の、無条件で精神力の底上げをしてくれるマジックアイテムだよ。もし才人君の武器の使用を認めてくれるのであれば、この決闘の間こちらを貸し出そう」
ギーシュが呆気に取られ、周囲がざわめく。
マジックアイテムは当然貴重なものでありそれを貸し出すというだけで大盤振る舞いである。だというのにその効能がメイジのランクの基準にもなりうる精神力の底上げというのであれば、その価値は計り知れないだろう。
ならば何故それをギーシュに貸し与えるのか。
「……それを僕に貸す理由は、君が平民君に強力なマジックアイテムを渡すつもりだからじゃないのかい?」
「ふむ、そう思うのも道理だね……これが、才人君に渡すつもりの武器だが――確かこちらでは魔法の掛かった品かどうかを判別する魔法があるのではなかったかな?存分に調べてみるといい」
マキナが手にしたのは小ぶりなナイフ。側面に小さな傷のようなものが入った、ギーシュのゴーレムと戦うにはあまりに貧相といわざるを得ない得物だ。
渡されたギーシュが呪文を呟きディテクトマジックを使用するも、反応はない。
ただのナイフであることを確認したギーシュが刃を持ちマキナに差し出せば、代わりにマキナは手にしたミストレスの王冠を手渡した。
ギーシュの手に収まったそれは、細く優美な見た目以上の重みがあると同時に、強い力を持つことが感じられる。
思わず手に取り眺めてしまっているギーシュをよそに、マキナは仏頂面のサイトへと近づいて、ナイフを突きつけた。
至近距離にナイフ――小型ながらも己を殺すこともできる得物を差し出されてたじろぐ才人に、マキナは独特な気の抜けた笑顔を向ける。
「さあ才人君、このナイフであのゴーレムを解体するといいだろう」
「お、おう……」
「才人君が私の力を借りたくないという気持ちはわかる。しかし、素手で相手をするにはあのゴーレムは少々堅すぎると思うのだよ」
「だから、このナイフ使えって言うのか?」
「そうとも。ナイフとはいえやり様によっては斬鉄すら可能だという。聞けばあのゴーレムは青銅製のようだし、十分バラせるのではないかな」
「…………」
「それに、才人君がその武器を手にしたと同様に彼もまた私のミストレスの王冠を手にした。先ほどよりも条件としてはより対等に近くなったはずだ……日本男児の心意気を、此処の者達に見せてやるといい」
「……わかった。そこまで言われたら、やるしかねえよな」
頷き、才人はマキナからナイフを受け取る。
そのとき……。
才人の左手に刻まれたルーン文字が、光りだした。
長らくお待たせしました。
その分若干長めですが、逆に短くても期間あけないほうが良さそうなのは確か。
今回は切るタイミングが見当たらなかったのでだらだらとしています。
内容としてはちょっとづつRO要素とか捏造設定が入っていますが流れとしては特に変わらずなのでもっと面白くしたいものです。
叉焼を肉塊から仕込むことになりました。
めっちゃ臭うのと肉の質が変わって扱いづらくなった代わりに一枚がデカァァァァイ説明不要ッ!
ところでスライサーの調子が既に悪いらしいですよ、コンセント刺したら勝手に回りだすってどういうことなの。