調のお姉さん   作:ヨメナ

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現在の時系列としては原作シンフォギアG時空になります
これを書くために徹夜でGを一気見したら寝不足になりました



お姉さんはコンビニバイト

私が始めてその子の姿を見た時の感情は、可愛い。だった

烏の濡れ羽のようにしっとりとした黒髪のツインテール、憂いを帯びながらも強い意志を感じさせる桃色の瞳。

まあるい卵形の小顔に映える、伏せられた長いまつ毛。

一般的な観点から見れば、"可愛い"よりは"綺麗"と表現するのが正しいのだろう。

でも、然し私の胸に過ぎった単語は、可愛いという一言だけだった。

そもそも私は女の身の上、どんな美人を見たとしても心が動くのは色々と不味い。

女子が言う、簡単に口をつく可愛いという言葉ではなく、心の内側から溢れるタイプの可愛いという感情

それに加えて、守ってあげたいという庇護欲までも湧き上がって来るのだ。

先程も言ったが、この身は女性、同性に心を惹かれる事などあってはならない。

私はおっかなびっくり、自分の桃色の瞳による視線を目の前の女の子に這わせる。

変わらず女の子はそこに居て、変わらぬ見た目と、郷愁にも似た切ない気持ちを私の胸に去来させた。

自然と鼓動は早まり、急速に口の中が乾いていく。極度の緊張にも似た感覚を覚えて、私は自分の平坦な胸に左手を添える。胸の鼓動は早いままだった。

そんな私とは裏腹に、女の子は少しだけ眉根を寄せ、不思議そうにこちらを覗きこむ同じ桃色が一度瞬いて――

 

「あの……」

 

「ひゃいっ!?」

 

私はついうっかり、素っ頓狂な声を上げてしまった

可愛い見た目を害さない、涼しい鈴鳴の声が鼓膜の奥の脳を揺さぶる。

鼓動はまた少しだけ早まり、スキャナーを持つ手が僅かに震えた。

 

「お姉さん、お会計は……」

 

「あっ、は、はい!すみませんっ!」

 

――何故だか、その五文字はストンと胸に落ちる。

言葉を発した方の女の子も、涼し気な目をほんの少しだけ見開いているように見えた、というのは私の錯覚なのだろうか

そして、現在私が居るのはコンビニ。サッカー台を挟んで私と少女が見つめ合う形になる。

分かりやすく私たちの関係を表すのなら、コンビニ店員とお客様という関係。

女の子に言わせれば、商品を買おうとレジに持ち込んだら店員がこっちを見て硬直したという状態。もし私が逆の立場なら頭に?マークが三つほど浮かんでいるかもしれない。

ともあれ、何故だか非常に気になる女の子を目の前にして私は動揺していた。端的に言うのなら、もう少し話してみたいというのが本音。

然し、私に許された時間はレジに置かれたチョココロネとメロンパンをスキャンして、お代をいただくまでの僅かな時間しかない。

我ながら少し気持ち悪いとも思うけれど、どうしてもこの子と一緒に居たいと思ってしまって。

同時に、この子はコンビニの味気ないパンでお昼か夜のご飯を済ませるのか、だなんて余計なお節介も焼きたくなる所なのだけれど。

そんなことを考えているうちに、私に与えられた持ち時間は終わり。2つのパンをスキャンしたレジは240円という数字だけを弾き出す。

何故だか焦りを覚えて、ナンパに必死な男の人の気持ちが少しだけわかった気がした。今の私はそれに近い心理状態にいるから。

 

「あ……えっと、240円です」

 

「300円でお願いします」

 

女の子の白魚のような細く白い指が、取り出したお財布から硬貨を抜き出して、カウンターに置かれる。サッカー台には燦然と輝く3枚の銀色硬貨。パンを2つともレジ袋に詰めて、レジスターに数字を打ち込みながらも頭の中は『何か話したい』という気持ちで一杯で、レジのキーを叩く私の指はいつもより仕事が遅いように感じた。

 

「あ、あの……甘いパン好きなの?」

 

「切ちゃんが……あ、友達が甘い物好きで、私も嫌い、じゃないです。」

 

「そ、そうなんだ」

 

結果、搾り出せたのは特に毒にも薬にもならない無難。というよりは違和感しかない質問。話題を広げようとしても空回って、沈黙

切ちゃんというのは同じ女の子なのかな、とか。それこそ夕飯はパンだけなの?とか。聞きたいことは次から次へと湧いてくるのだけれど。

お釣りを返してしまえば、この時間は終わりだ。打ち終わったレジから60円だけをお釣りとして手に取り、レシートの上へ文鎮替わりに二枚の硬貨を乗っけて差し出す。

 

「ろ、60円のお返しになります」

 

「ありがとうございます」

 

……終わってしまった。なんでこんなにこの子が気になるのかは分からないけれど。これ以上引き止める理由もないし。恐らく女の子にしてみれば違和感しかないだろう。仮に私の性別が男だったらこれはもう事案になりかねない。

お釣りを手にしてレジを離れとうとする女の子、自然と私の目は女の子と出入口を行ったり来たりして。

 

「調ぇー!まだデスかー!」

 

「もうお買い物終わったよ、切ちゃんの好きなメロンパンも見つけたよ。」

 

「本当デスか!?ありがとうデス調ぇー!」

 

「そっちのレジ袋も持ってあげるデスよ!」

 

「ありがとう切ちゃん、でもこれくらいなら平気だから」

 

仲睦まじいとは、ああいう事を言うんだと思う。会話の内容から推測するに、出入口から入ってきた元気一杯の金髪の子が切ちゃんで間違いないはず。両手に持ったレジ袋は近所のスーパーの奴かな。あと私より胸が大きい。

同時に、あの子の名前は調と言うらしい事も把握出来る、なんだか思考がストーカーじみてる気がしないでもないけれど。

グッジョブ切ちゃん、と内心でサムズアップ。仲睦まじくお店から出ていく二人の背中を見送って。

 

「ありがとうございましたー!」

 

調ちゃん、また買い物来るかな。今度来たら何か聞いて……でも逆にしつこくして来なくなったらどうしよう……

――あの事故がなければ、私の妹も丁度中学生くらいかなぁ。

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「調、あのレジのお姉さんと何か話してたんデスか?」

 

「ん、甘いパン好きなのって聞かれただけだよ。」

 

「そうデスか……なんだかあのお姉さん調に似てたデスねぇ。」

 

「そう?」

 

「デース!調より背は高かったデスけど……あとやっぱりそっちのレジ袋ももつデスよ、調ってば、なんだか調子が悪そうデスし……」

 

「ありがとう、でも。さっきも言ったけど平気だから」

 

「うーん……じゃあ、少し休憩して行くデス」

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