No Date Friends 語られざる第8次侵攻   作:なまくら林檎

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孤独の復讐

 ―身体が……痛い………

 

 五メートルを悠に超える怪物を目の前に、少年は心の中で呟いた。怪物は既に彼を敵と認識しており、触手を数本振り回して威嚇している。触手が当たった場所は砕け、その破片が宙に舞う。

 

 ─でも、負けられない

 

 怪物は雄叫びを上げてこちらに走り寄る。少年も負けじと雄叫びを上げた。しかし、彼からは動くことはない。

 

 ─あいつの…

 

 怪物は先程脅威的な破壊力を見せていた触手を彼に向かって突き出した。彼はそれを体を横にずらすことで躱し、その後に放ってきた二本も顔を傾けたり、強化した手で弾いたりして直撃するのを避ける。

 

 怪物は触手を一本に集束し、地面に振り下ろした。彼は腕を交差させてそれを正面から受ける。衝撃でアスファルトの地面が彼を中心に凹む。

 

 しかし、この一撃では彼の腕の皮膚が痛む程度で、体には一切傷がない。伸ばしていた三本の触手が後ろから彼に巻き付いた。そして、少年を持ち上げ、近くのT字路へと投げ飛ばした。

 

 少年はビルの壁に叩きつけられる。奥歯を噛み締めながら立ち上がると、丁度真横にあった標識を引っこ抜いた。

 

 ─仇を…

 

 それを強化したのと、怪物が触手を伸ばし始めたのは同時だった。彼は標識を槍投げの如く飛ばした。しかしその軌道は山なりでなく、地面と平行で、まるで強い弓から放たれた矢の如く飛んでいく。

 

 矢は少年へと伸びていた触手を裂きながら進んでいく。やがて怪物という的に中ると、その身の半分まで突き進んだ。

 

 痛みで怪物は悲鳴を上げる。それに同情などせずに少年は怪物に駆け寄り、数メートル手前で跳躍、頭部にある巨大な目玉を殴りつけ、怪物を後ろに転倒させる。

 

 倒れた怪物の上で彼は標識を抜き、そこに出来た穴に、左手で作り出した火球を突っ込んだ。

 

 ─取るまでは

 

 直後、穴の中で爆発が起きた。怪物の断末魔を聞きながら、少年は近くの大きな瓦礫の上に着地した。怪物からは血が噴き出ず、代わりに黒い霧のようなものが噴出している。

 

 この霧が、怪物たちが霧の魔物と呼ばれる所以である。

 

 彼は胸の真ん中に命令式を浮かび上がらせると、その霧を全て吸い込んだ。吸い込んでいる間、彼の身体を言い表せぬ痛みが襲う。

 

 霧を全て吸い込んだ瞬間が痛みが最大である時で、体中から脂汗が出てきていた。ようやく痛みが和らいだときには、体力の殆どが失われていた。

 

 彼は近くにあった飲食店に割れた窓から侵入した。その時、ふと窓ガラスの破片に写った自分を見た。

 

 元々黒かった髪の毛の半分が、白く変色していた。

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