No Date Friends 語られざる第8次侵攻   作:なまくら林檎

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絶望への道標

 彼女の名前は宮代可奈と言い、五人班で魔物と戦っていた。

 一人が魔力に限界を感じたため、撤退をしていると、突如一人の生徒が壁に叩きつけられた。彼女らは直ぐに戦闘態勢に移行し、敵を見た。

 

 そして絶望した。

 

 タイコンデロガではなくとも、彼女達が戦うには危険すぎる強さの魔物が二体、そこにいた。

 

 彼女らは悟った。このまま戦えば全滅する。今すぐに逃げなければ…と。

 

 直ぐさま彼女達は行動に移った。まず叩きつけられた生徒を起こし、退路を確認。

 魔物が近くにいないとわかれば、魔力が一番残っていた生徒が魔法で魔物の行動を妨害しながら全員で逃亡した。

 視界を塞ぐように妨害したため、少しの間ではあったが足止めには成功した。

 

 しかし、彼女達に降りかかる不幸はこれだけではなかった。

 

 十字路に差し掛かった時、右側の道路から魔物が姿を表した。その個体は二体よりも弱いものであったが、今の五人からすれば充分な脅威であった。

 

 逃げ切れない。彼女達の頭の中でそんな言葉が浮かび上がった。

 

 誰かが囮にならなければ。

 

 でも、誰が?

 

 「私が囮になる」一人がそう言いだした。

 

 三人が彼女の顔を見る。班長を任せられていた生徒だった。彼女は覚悟を決めた目であったが、膝が笑っている。

 これから起きる自分の死を恐れていた。だが、彼女は仲間を助けるために自分が死ぬことを決めたのだ。

 

 それが宮代可奈だった。

 

 「私も行く」再びそんな声が上がった。

 

 四人の中で唯一可奈の顔を見なかった少女であった。彼女は先程壁に叩きつけられた者だ。

 彼女はこのままだと逃げるのに足手まといになると知っていたため、囮を志願した。自分一人でも歩けたが、利き腕の肩を痛めてしまい、戦力としては非常に心許なかった。

 

 ならば、自分が犠牲になって皆を逃がす方が良い。

 彼女は、矢坂恵はそう考えていた。

 

 「二人とも……」三人は悲痛な顔で二人を見る。

 

 その時、一本の触手が三人の内一人に巻き付いた。次の瞬間、巻き付かれた生徒は物凄い速さで引っ張られ、一本釣りのように宙に上がり、先程発見した魔物の後ろに落ちていった。

 もう一体、その魔物の後ろにいる。

 

 これで四体。

 

 手前の魔物の後ろから生徒の悲鳴と拒絶の声が聞こえる。もう彼女は助からない。

 

 「行って!」恵は二人を逃げる方の道に突き飛ばした。二人は嫌でも聞こえてくる悲鳴で動けなかったが、可奈の「早く!」という叱咤で互いに顔を見合わせ、ごめんと言って逃げ出した。

 

 残った可奈と恵は魔物がいる方向に一発ずつ魔法を放ち、自分達に注意を向かせ、誰も、何もいない道へ走り出した。

 

 魔物達はそんな二人を追いかける。一つの道には、首の骨が折れた少女が体を痙攣させていた。

 

 二人は必死で逃げ続けた。途中、恵が怪我をした方の肩を触手に貫かれたが、それでも逃げ続けた。

 魔法を放ち、追っ手を一体は倒すことに成功したが、それでも三体は追いかけてくる。

 

 死の恐怖に耐え、何度目かの魔法を放とうとしたとき、それは起きてしまった。

 

 恵が突如苦しみ始めたのだ。原因は霧が体内に入り込んだためである。

 だが、彼女がその痛みに耐えながら放った魔法は、ほぼ無傷の魔物を一撃で仕留める程の強さだった。

 

 恵の力に驚いていた可奈は、触手が自分に向かって伸びているのに気づかず、鞭のように撓るそれを避けられなかった。

 

 彼女は吹き飛ばされ、道路を何度も転がった。その間、地面に散らばったガラスの破片で腕や脚を切ってしまった。

 傷の痛みは最初こそ無かったものの、立ち上がってそれを確認した直後、痛みが襲いかかってきた。

 

 痛みで顔をしかめる彼女に恵が近づいてくる。そして、まだ動けることを確認すると、自分を置いて逃げろと言った。

 

 自分は一人で魔物を倒せる。ならば自分が残って可奈は逃げるべきだ。

 

 恵の目には力が宿っていた。自分の力に希望を見出したのだろう。

 それを見て可奈は、必ず助けを呼んでくるから死ぬなと言ってボロボロの体でそこから逃げ出した。

 

 その後はひたすら進んだ。幸いなことに魔物は現れず、そして遂に一輝を見つけたのであった。

 

 班員達はその話を聞いて何故一輝が走って行ったのかがわかった。そして同時に、今すぐに追いかけるべきだと、班長以外は思った。

 

 班長は皆の意見を聞いてもそれを却下した。

 

 その直後だった。店の入り口で何かを踏む音が聞こえた。皆がそこに視線を向ける。

 

 そこに立っていたのは、傷だらけの少女の遺体を抱きかかえた市川一輝だった。

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