ハリー・ポッターと金銀の少女 作:Riena
「君、誰だい?」
「どこから来たの?」
僕らは目の前にいる少女に問いかけた。
綺麗な顔立ちに、春風にふわりと揺れる金色の髪。
顔つきはまだ子供だが、醸し出す雰囲気はまるで大人の様だった。
少しして、彼女はその潤んだ唇を開いた。
「……赤毛……双子……なぜ、森に?」
鈴の音のような声が、静かな森に響き渡る。
見惚れたか、聞き惚れたか……僕らはワンテンポ遅れて、やっと返事をした。
「「えっと、それは……」」
僕らは走っていた。鬼の形相で追いかけて来る、管理人から逃げるために。
「おまえらァーいい加減にしろ!!」
「「やなこったー!」」
「ウィィィィズリィィィィ!!!!」
どうやらフィルチをキレさせてしまったらしい。まあ、いつもの事だ。周りの生徒が白い目で見ながら、「また双子か」などと話しているが、こちらも同じく。
「そろそろだ!」
「投げるぞ!」
互いに意思疎通し合うと、同時に煙幕爆弾をフィルチに投げつけた。
「「じゃあな、フィルチ!」」
「逃がさんぞ!! ゴホ、ゴホッ」
フィルチは煙を吸い込んだのか、咳をしている。その隙に僕らは近くの道に隠れた。
生徒達の声がだんだん小さくなっていき、ついに聞こえなくなった。それを確認した僕達は、足を動かしながら、お互いに声を掛け合った。
「やったな、ジョージ!」
「そうだな、フレッド!」
お決まりのハイタッチを交わした。
今日はなかなかの偉業を成し遂げた。
というのも、今日はフィルチの管理室に忍び込んで、没収された物を取り返す事が目標だったのだ。
入学してから二年が経ち、悪戯に慣れてきた僕らは、その反面怒られる数も、没収品の数も、増える一方だった。そこで今回、没収品の回収をすることにしたのだ。
いざ実行してみると、管理室は意外と簡単に忍び込む事ができ、加えて自分達の没収品以外の興味深い品も手に入れる事ができた。
が、浮かれて油断したその時、フィルチが帰ってきてしまったのだ。どうやら見られなくなかったものがあったらしく……
まあ、そんなこんなで今に至るわけだ。
「ジョージ、そういえば、この道って森に行くんじゃなかったか?」
「……そうかもしれない」
先ほど急いで逃げ込んだため、どこの道か確認し忘れてしまった。
「まあ、着けば分かるさ」
「そうだな、フレッド」
僕らは軽い足取りで前へと進んでいった。
「あなた達、もしかして悪戯をしていたの? フィルチ
心に入り込まれる感覚と同時に発せられた彼女の声で、僕らの意識が現実へと戻った。
「「フィルチさん?!」」
「な、なんで、さん付け?」
「あいつに、敬称付ける人がいたんだ……」
「フィルチさん……何が変なんですか?」
僕達が驚いている理由が分からない、といった様子で、彼女は小首をかしげている。少しして諦めたのか、話を戻した。
「それはさておき。貴方達、やはり、悪戯していたのですね?」
「「ち、違うよ!!」」
「い、悪戯なんて、し、してないよ! ねえ、ジョージ?」
「そ、そうだよ、フレッド。ぼ、僕らは優等生だから、ね?」
「怪しいですね……」
「「……」」
「はあ…ハグリッドがこんなのに半日を費やすなんて、可哀想で仕方ありません……そう言えば、お二人はなぜこんな所にいるのですか? ここは、生徒の立ち入りが禁止されているはずです。先生方も周りにいらっしゃいませんし」
溜息交じりに彼女はそう言った。透き通った瞳が、僕らの目を交互に覗き込んでくる。
「はっ、えっと……僕達、秘密の裏道から逃げて来たんだ」
「そ、そうそう」
「ん? 逃げて来た? やっぱり、怪しい……」
覗き込んで、ではなく睨んで、に訂正しよう。
「そ、それで……君は何でここにいるんだい?」
「制服じゃ無いけど、ホグワーツの生徒?」
「理由は無いです。強いて言えば、この森が好きだから、ですかね。それと私は、ホグワーツの生徒ではありません」
「「そうなんだ……って、へ?!」」
僕らは幻聴でも聞いたかと思った。見かけによらず、随分と大胆な事を言う。
「へ? と言われましても。そのままです」
「せ、『生徒でもありません』って、じゃあ君は誰なんだい?」
「どこから……というか、まずいくつ?」
「その、女性に年齢を聞くのはどうかと思いますよ? どこからかは、城からです」
「「ひ、姫?!」」
「漫才ですか……?」
そう言って苦笑する彼女は、姫と呼ぶのにふさわしい。それに、黒を基調としたワンピースが、彼女の雪のように白い肌を映えさせていて、彼女の周りだけ冬がきたのかと思ってしまうくらいだった。
「何か、言いたいことでも? 早めなら聞いてあげますよ?」
「あ、ああ、ごめん。そうだ! せっかくこうして会えたんだから」
「お互い、自己紹介をしよう!」
「…お好きにどうぞ」
そう言って、彼女はツンっと顔を反らしてしまった。
「僕はフレッド! よろしくな」
「僕はジョージだ。よろしく!」
「「それで、君の名前は?」」
僕らはそう言って、彼女の顔を覗き込んだ。すると、いきなり小さな悲鳴をあげて、後ずさりした。よく見れば、みるみるうちに赤くなっていく。
もう一度僕らが覗き込もうとすると、もう五歩程度後ずさりをして、やっと口を開いてくれた。飛びっきりの早口で。
「……ひ、秘密、です!! それに、貴方達が知る権利も、私が教える義務もありません! 私が貴方達の名前を知っていれば、いいのです!」
「「え?」」
先ほどの威厳はどこへやら……耳元を赤くしてそう答えた彼女に、僕達は唖然としてしまった。今の会話のどこに、恥ずかしがる要素があったのだろうか?
「な、なにをジロジロと見ているのですか?! 私の顔は見世物ではありません!! しかも、授業を抜け出してここに来ているとマクゴナガル女史が知れば、ただ事では済みませんよ? それに……」
「「ぷっ、ぷはははっ」」
僕らは吹き出してしまった。あまりにも彼女のおどおどしている姿が面白かったのだ。
「なにが面白いんですか? 私は怒っているんですよ!」
「だって君、注意しながら」
「僕らの心配をしてるんだもん」
「な! 心配など、これっぽっちも………してない事も……ない事も……ない……?」
「「ぷはははっ、ははっ」」
「ちょっと、もう!! いい加減にして下さい」
――これが彼女との出会いだった。
「お二人はまた来たんですか? 全く懲りない人達ですね……」
「もちろんさ!」
「明日も、明後日も、明々後日も」
「なんなら毎日来るぜ!」
「ふふ、お二人らしいですね」
あの日から、彼らは毎日森に遊びに来るようになった。その姿を見つける度に、私は彼らにこうして声をかける。彼らの意図は分からないが、いい話し相手だ。
「ねえ、今日は何してるんだ?」
「また、魔法見せてよ!」
「今日は動物と話したり、守護霊呪文の練習をしたりしていました。
呪文を唱えると、私の杖先から銀白色のフクロウパトローナスが現れた。気高い仕草で私の肩に乗っているパトローナス。私は彼らの周りを飛ぶよう命じた。
『キューキュー』
「わあ、すごい!」
「君、本当にすごいよ!」
「ありがとうございます」
賞賛してくれる二人に私は頬を緩ませた。
随分と長い間、年の近い人と接する機会がなかったためか、彼らといるとなんだか新鮮だった。それに、彼らは気さくで明るい。気を張ることなく話せる人は彼らが初めてだった。
深入りは良くないのだけれど。
そう思いつつも、私は彼らと会う事が楽しみだと感じるようになってしまった。そう、いけない事だと分かっていたのに。
今日は3日ぶりの雨が降っていた。動物たちが次々と目覚め出すこの時期に、この天気で森に行くのはさすがに危ない。そのため私は図書館で読書をする事にした。
双子達には「雨の日は図書館にいる」と前から話していたので、しばらくすると彼らが現れた。
「「やっほー!!」」
「ねぇ、今日は僕達の部屋においでよ」
「ここだと、マダム・ピンスが……」
「ウィーズリー兄弟!! また、貴方達ですか。すぐさま、出ていきなさい!!」
「「はい……」」
図書館に入ってきて1分も経っていないのに、追い出されてしまった。
肩を落として図書館を出て行く彼らを見て、私はつい笑ってしまう。待たせるのも悪いので、すぐに本を閉じ、ポケットに忍ばせて、彼らの後を追った。
「もうすぐイースター休暇だぜ!!」
「うさぎの悪戯グッズ、大量生産しないとな!」
「ほどほどにしてくださいね? 私、ダンブルドアさまにうっかり話してしまうかもしれませんから」
意地悪な笑みを浮かべながら、彼らに釘を刺した。これで当分、大掛かりな悪戯は起こらないだろう。
「そ、それにしても
「ホグワーツにいつまでいるの?」
「そうですね……来年入学して卒業するま……」
私はピタリと口を閉じた。今彼らは、私の名を呼んだ?
思考が追いついた時には、もう彼らに杖を向けていた。
「「!?」」
彼らは突然の事でなにが起きたか分からず、取り敢えず両手を上げている。
「なぜ……なぜ貴方達は、私の名を知っているのですか? まさか、魔法省の使い? こんな事に子供を使うなんて……私も迂闊でしたね」
「な、なにを言っているんだ?」
「魔法省の使い? 僕らは……」
「黙りなさい!!」
いつもなら独り言で済ませる言葉を声に出し、口調もだんだん強くなっていく。いつもならもう少し頭を使ってから行動するが、真っ先に杖を出している。
結論、私は怒っていた。純粋な子供を使う魔法省に。そして、それに気づけなかった、自分自身に。
「なにを言っているか? そんな事、分かり切っているのでしょう? 最初から、私を魔法省に連れて行くことが目的だった。どうせ、貴方の父親にでも言われたのでしょう?」
「「……」」
つい先日、ダンブルドアに警告されたばかりだった。なのに、私は――
「まあ、そうでしょうね。ですが、子供に彼らが多くのことを教えているわけでは無い。しかし、残念でしたね。あと一歩だったのに……後で手紙にでも書いておきなさい。『魔法省の餌になるつもりはない』と言っていた、と。どうせ、その時には、貴方達の記憶はありませんが」
そこまで言って、彼らがやっと口を開いた。
「ま、待ってくれ」
「一回、僕らの話を聞いてくれないか?」
「……まあいいでしょう。どうせ明日には覚えていないのですから」
「僕達は魔法省の使いなんかじゃ無い」
「僕らが君の名前を知ったのには、訳があるんだ」
そう言って、彼らはぽつぽつと、語り始めた。
――君と出会った日のことだ。
あの日、僕らは没収品を返してもらうために、フィルチの管理室に行ったんだ。
『ジョージ、全部見つけたかい?』
『ああ、それとなんか面白いものもあったぞ』
そう言ってジョージが古い羊皮紙を出して来たんだ。
その時はただの羊皮紙だと思ったけど、ここに置いてあるってことは、何か意味があるんじゃ無いかなって……。
僕らは寮に帰って調べて見ることにしたんだ。
そしたら、びっくり! なんと、地図だったんだよ。しかも、誰がどこにいるかまで分かる特別な地図。
それで、3日前の雨の日。君に会いに、図書館に行ったんだ。その地図を開きながら。
そしたら……
「今すぐ、その地図を持って来てください!」
二人の話を遮って、私はそう言った。
「わ、分かった…」
いきなりの事に驚きながらもそう言って、ジョージが悪戯グッズの入っている箱から羊皮紙を出して来た。
それをひったくった私は、中央部に杖を当て、叫ぶように言った。
「我、ここに誓う。我、よからぬ事をたくらむ者なり」
「なんで、その呪文を?」
ジョージの声を他所に、先ほどまでなにも書かれていなかったはずの羊皮紙に、文字や図形が浮き出していく。現れたのは、地図だった。
私は知っている。この地図の正体を。これは。
「やっぱり。これは……忍びの地図」
「「しのび?」」
「ええ、この地図の名前は忍びの地図と言います……はっ」
ここまで言って、私はある事に気がついた。すぐさま現在地を地図で確認する。
そこには足跡が三つと、名前が三つ。そして、その一つには『シエル・スタージェント』と書かれていた。
「お二人とも、すみませんでした!!」
シエルが額を床につける勢いで頭を下げていた。東の方にある島国では、土下座とかなんとか言うらしいスタイルで。しかも、僕達に向けて……
「いや、勘違いしてただけだから」
「そこまで謝らなくても大丈……」
「大丈夫な訳がありません! 私の勘違いによって貴方達に忘却術をかける所だったのですよ! 謝る他になにをしろと? 本当に申し訳ありませんでした!!」
さすがに見苦し過ぎる………これ以上彼女が、地面で伏せているのは見ていられない。そう思った僕らは、シエルにもう一度声をかけた。
「とにかく、一度顔をあげてくれ」
「君に謝る気があるなら、僕達の話を聞く義務ってものがあるだろう?」
そう言うと、渋々といった感じで、シエルは顔を上げた。
「取り敢えず、説明してくれ」
「なぜ、名前を知られたらいけないのか。魔法省とどんな関係があるのか」
「なんでそんなに神経質になるのか」
「「教えてくれ」」
僕らがそう頼むと、シエルは近くのベッドにぺたんと座り込み、少しずつ話し始めた。
「シエル・スタージェント……名前、特に名字に、聞き覚えは無いですか?」
「「スタージェント?」」
「ジョージ、分かるか?」
お手上げの様子のフレッド。ジョージは顎に手をやりながら答えた。
「えーと……確か、随分前の新聞で見たような」
「新聞ですか……
呼び寄せ呪文によって、どこからか飛んできた新聞ががシエルの手に収まった。そのままページをめくると、少しして僕らにそれを差し出した。
そのページの見出しには『スタージェント家、復帰か! 秘密多きスタージェント家の謎に迫る……!!』と書かれている。
「これです」
「まさか、君……そのスタージェント家、なの?」
シエルは静かに頷いた。
「そうです。私が、スタージェント家の
「「………え?」」
「当主………その年で?」
「一体何があったんだい?」
「私は―――なのです」
僕らはシエルの言葉をよく聞き取ることができなかった。俯き加減のシエル。周りを漂う空気がどんよりと重いものに変わっていった。
少ししてシエルは大きく深呼吸をした。そのときにはもう、彼女に悲しみの面影は消えてなくなっていた。
「ふぅ………それで、ですね。スタージェント家は代々、大きく政治・経済面で魔法省を支えてきました。しかし、現在スタージェント家で魔法省で務めている者はいません。というか、スタージェント家に務められる人はいません。イコール魔法省は今忙しいんです。猫の手も借りたいくらい。それなのに、
「でも、君はまだ子供じゃないか!」
「そうだよ! 魔法省もそこまでは……」
僕らの言葉にシエルは首を振った。
「自分で言うのもあれですが、私は魔法力が高いです。これはスタージェント家として、異例の事態。一種の先祖返りだとダンブルドアさまに言われましたが、魔法省はこのことを見逃さなかったのです。これもダンブルドアさまから聞きましたが、私は生まれた時から出世を約束され、少し前まで
「「闇祓い?!」」
「それって一年に一人も入れない年があるって噂の仕事だろう?」
「そんな仕事を君に?」
「はい………それから
「
「君……よく生きてるね………」
「厄にでも憑りつかれてるんじゃない?」
「変なこと言わないでください……でも、今生きているのは奇跡が重なったからですね……とにかく私は今、魔法省から追われているんです」
「「へー(棒)」」
「………コホン。今言ったことは、くれぐれもご内密にお願いしますね………これで、返事になっていましたか?」
「うん、まあ君が大人みたいなのは、大変な目に遭ったからってことは」
「よーく分かったよ!」
「そう、ですか………今日はもう帰りますね。明日も雨なので、図書館……ではなく、ここでいいですか?」
「「ああ、もちろん」」
「では………」
そう言って、シエルは部屋を出て行った。
シエルが部屋を出た後、僕らは同じことを思った。
「「イースターが勝負だな!」」
「はあ……」
私は何度目かのため息をついた。
久しぶりにセブルスの研究所に来たのだが、セブルスはおらず、適当な椅子に座り、彼を待っていた。しかし、気が重い。原因は先程の双子との会話だった。
先程から、彼らが言った言葉が耳から離れないのだ。
『君……よく生きてるね………』
ほんとに、その通りだ。いつ死んでもおかしくなかった。
「はあ…」
何度考えても、駄目だ。
次が最後かもしれないという"死の恐怖"。覚えてはいないが、半年の間に、一時は死を彷徨っていた時もあったそうだ。あの時は運が良かっただけで、次は分からない。
「死にたくないな……」
ふと、口からそんな言葉がこぼれた。
そしてもう一つ。ここ最近、私の中で彼らの存在がだんだん大きくなってしまっている。それによって彼らが巻き込まれてしまうのが怖い。もしかしたらという、負の可能性が、思い当たる節がいくつもありすぎて、私の頭は混乱してしまっていた。
明日、彼らの記憶を消そう。
私はそう決意した。
――はずだった。
「ねえシエル!」
「イースター休暇にさ!」
「「遊びに行こう!!」」
「……いいですよ」
あ。
気づいた時には時すでに遅し。
私は断るはずが、承諾してしまったのだった。
窓の外で小鳥が鳴き、森も緑が増え始めているのが見えた。そんな校長室で、吾輩は校長と話をしていた。
「最近、シエルはどうかね?」
「赤毛の双子と仲良くしているようですぞ」
「うむ、そうか」
ダンブルドアは吾輩の報告に、あまりいい顔をしなかった。
「何か問題でもありますか?」
「いいや、それほど気にするほどでもないのじゃが……」
「と、いいますと?」
「シエルはのう、若くして
「……」
吾輩はその彼女の姿を思い浮かべた。確かに容姿も性格もそっくりだ。
「同じ運命をたどらねばよいが……」
ダンブルドアは遠くを見ながらそう言った。
校長室を出ると、吾輩は足早に自分の研究所に向かった。すると、先客がいた。
「ルーシェ、どうしたのだ?」
「…」
返事はなかった。机に伏せて、何かぶつぶつと言っている。近づいていくと、何を言っているのかがはっきりと聞こえた。
「死にたくないな……」
はっきりと聞こえた彼女の言葉。吾輩は自分の耳を疑った。
ルーシェが死を恐れている? あれほど強い彼女が?
吾輩は、すぐに思い直した。ルーシェは超人ではないし、
ふと、先程の校長の言葉が頭をよぎる。
『…シエルはのう、若くして
まさかその
「ルーシェ」
壁。高くて平らで、上ることのできない壁。強くて頑丈で、壊すことのできない壁。
吾輩は気づいてしまった。
――こんなにも遠く離れた場所に。